手をつないで春まで歩こう
“実は、内緒の その後があったりして?”
*傾向と対策その2の続きで、
よって、微妙に原作のネタばれな内容です。
コミックス11巻未読の方はご注意ください。
「わあ、ほら見てブッダ。菜の花がきれいだよ。」
「ホントだ、暖かそうだねぇ。」
今年は暖冬と言われつつ、それでも豪雪が降りもした苛酷な冬も、
いくら何でもそろそろ立ち去る態勢に入ったか。
南のほうから花の便りも聞かれ始めて、
旅番組では水仙や梅、河津桜に菜の花なぞを巡ろうなんて
気の早い特集も組まれるようになっており。
二人がいつも楽しみに観ている旅行番組でも、
南房総で一足早い春を探しにと銘打って、
女優さんたちがお花畑や海の幸を堪能しておいで。
房総半島の千葉外苑、今時分の名所が次々に紹介されていて。
陽射しどころか陽気自体もすっかりと春めいて来ているそうで、
弾けるような黄色も生き生きした菜の花や、 緋色に紫の、いかにも春の訪れを知ろしめす可憐な花々が、
絨毯を広げたように一面に咲き乱れる丘が、
暖かそうな陽の下にそれは広々と映し出されていて。
「いいなあ、もうあんなに暖かそうなんだ。」
「きっと暖流の影響だね。」
都内では何とかいいお天気のときの陽だまりが暖かくなって来て、
梅が咲いた報告なぞがようやく取り沙汰されている頃合い。
まだまだ油断はならなくて、
「朝なんて きんと冷たい空気が張り詰めているものね。」
相変わらずにジョギングをお続けのブッダが、
やや残念と言いたげに眉を下げつつそんな言いようをしたのへ、
「花粉ももう飛んでいるらしいのにね。」
ちゃんとマスクしてる?と、
上体を下げつつ ややひねる格好で、お隣のブッダのお顔を覗き込み。
花粉症なのに大変なんでしょ? 内緒は無しよと
心から案じて差し上げるイエスだったりし。
「うん。ちゃんと気をつけてるよ。」
大丈夫と応じつつ、
まだ仕舞えないコタツの布団へ突っ込んだ格好の手へ、
不意に何かが触れて来て。 膝の上に乗せてた手の上、
横合いから、やや硬い感触のイエスの手が重ねられており。
「本当だよ? こないだなんて、雨に濡れちゃって。」
ブッダったらすぐに“大丈夫”って言うじゃないか、
我慢強いのは凄いと思うけど、と、
焦れたようなお顔になって、眉をしかめて言いつのる。
つらい系の試練へのハードルが思い切り低いヨシュア様には、
その“我慢”を抱え込む伴侶様だってこと自体が、
相当に歯痒いことでもあるようで。
「こないだ? ……あ、///////」
いつの話かと問いかけかけて、
だが、その語尾あたりで自分で気がつき。
そのまま言葉尻ごと もにゅもにゅと引き取っての含羞むブッダ様。
というのも、自分の修行好きという趣味半分、
冷たい雨の降る中を、
オニ公園の滑り台の上なんて場所にて座禅をし続けていた彼であり。
それというのも 自分の出した“お願い”を
よしきたと引き受けたからでもあるせいだと思うのか。
その話を自分で持ち出すたび、
冷たい想いをさせたよね、ごめんなさいと、
反省しきりなイエスなのであり。
「何言ってるの、あれは私が強情を張ったからでしょう?」
キミこそ、大急ぎで迎えに来てくれたじゃないかと、
深瑠璃の瞳を細め、柔らかく微笑って見せつつも。
“あんな言いようするなんて、
梵天さんてば やっぱり意地が悪いよな。”
ブッダとしては 別口の“もやん”の方が、
余程に腹が立つやら口惜しいやらで あるようで。
原作 11巻にて広く公開されております
“イングレス騒動”を、こで簡単に浚っておきますならば。
自身の拠点(ポータル)を定め、
それを守りつつ、他のチームのポータルを攻めて破壊し、
陣地を拡張してゆくモバイルゲーム。
いつの間にやら、それへすっかりハマッていたイエスは、
『君の願いなら私が全力で叶えるから!』
事情も判らぬままだったブッダからの そんなお言葉へちゃっかり乗っかり、
10日間守ると獲得できるメダル(ランク・シルバー)欲しやで、
何故だかその姿がポータル認定されやすい彼へ(何故…って・笑) 自分のためのポータルになってほしいと、随分なお願いをしたのだが。
『そなたの願い、叶えてしんぜよう…』
判ったよ、その願いを聞いてあげると応じた如来様、
何と、近所の公園の滑り台の上というそれは開けた屋外で、
座禅をしつつポータルでいると言い出して。
他のエージェント(プレイヤー)が、
そちらは当然、陣地制覇を目指しての“攻撃”を仕掛けて来るので、
補給や防御でそれをしのぎ切れば良し。
本来、無機物が認定されるポータルなのだが、
彼の場合は 当然のことながら意志もつ生身。
まさかの正体に気が引けるのか、
それともさすがは釈迦牟尼様のオーラが攻撃意欲を剥ぐものか、
至近まで訪れたエージェントたちは、
だがだが 攻撃せずに立ち去ってくれるので。
あと数時間で防御達成とまで漕ぎ着けられたのだが、
そんな肝心で大事なときに、
選りにも選って、破壊攻撃するべく現れたのが、
仏教守護神なはずの天部筆頭。
「まさか梵天さんまでやってるとは思わなかったなぁ。」
スマホへの“攻撃”報告は 当然イエスの手元へも届き、
かつて 自分のポータルへの防御の加勢にと
勘違いした大天使たちが降臨したのと同じことだろかと、
通知にあった“攻撃”を見ても、
なかなか事態が飲み込めなかったそうで。
一方のブッダ当人はといや、
苦行なら協力しましょうという、
いつものややこしい方針らしいと悟ったものの、
結構なレベルらしい相手とあって、
一瞬怯みかかってしまったけれど、
『…いいのですか? 梵天さん。
今の私は、イエスのポータルなのですよ?』
『? ……っ。』
はい?と怪訝そうな顔を仕掛かり、
だが、そこはさすが宇宙創造の叡知の司でもある御仁。
何を言いたいシッダールタであるのかも、すぐさま把握出来たらしく。
『そうでしたね、イエス様が護っておられるポータル…。』
手にしていたスマホへの操作を途中で止めると、
風雨激しい中、たなびく長い髪の作る陰に表情を沈めつつ、
クッと苦しげに息をつき、
『そうですか。』
そのまま頼もしい手ごと、
スマホをスーツのポケットへと収めてしまう最強天部様であり。
聞き分けのよさにホッとしつつ、
とはいえ、
“イエスがらみだと話が通じるっていうのもなぁ。”
どれほどに彼があの救世主様を大事にしているものかを、
思い知らされるよなものなので。
それもまたまた、苦々しいことだよなと、
あくまでもこっそりと 胸の隅っこをチクチクと痛めておれば、
『イエス様が“自分の”と宣したことで、
天界の者にとってのあなたは、
浄土と天乃国と双界の至宝となったも同じ。』
『……………はい?』
何だなんだそれ、新しい真理じゃあるまいなと、
意味が飲めずに訊き返せば、
『我らの守護に加えて、
天乃国の最聖からも庇護される身となった。
ある意味、
永遠級の防御レベルを備えたようなものですよ。
いいですか? シッダールタよ。
その身の処遇、徒(あだ)や疎かに扱ってはなりません。
でないと、イエス様が……。』
『あ、わ、判ったから、もう良いでしょうっ。////////』
説法でもしかねぬ真摯な顔で、
何をそんな恥ずかしいことを言い連ねるかな、あなたはもうと。
この場へ近づきつつあるイエス当人の気配を察しつつ、
とっとと立ち去ってくださいなと言わんばかりの
激高半分ともとれそうなほどの、
相当な焦燥の滲んだ非難の声をぶつけたブッダだったようで。
そんな彼の取り乱しように、 果たして気づいていたものか、
ではと姿を消した、 何とも掴みようのない天部様だった顛末を、
ついのこととて思い出したらしい如来様。
「〜〜〜〜。////////」
「……ダ、ブッダ? どうかしたの?」
何を思い出していたやら、
上の空になったのを、 こちらは反応が鈍いと解釈したイエス様。 やっぱりお熱が出たのかなと、 まろやかな稜線を ややしょんもりと下げてた肩に手を置いて、 どらと自分のおでこを近づけ、 彼の白毫の近くへ コツンと当てて来たものだから。
「…………っっ☆」
不意に触れた感触から我に返ったその途端、 間近へ接していた凛々しいお顔に視線が移り。 焦点が合ったそのまま、 イエスのお顔だと気がついて……。 うわぁあっと驚いたその拍子、
はさぁっ、と
ゆるやかに鮮やかに、 螺髪が弾けたそのままほどけ、 つややかでしっとりした 長くて豊かな濃色の髪があふれだし、
「おやvv」 「〜〜〜。/////////」
イエスの身ごとくるみ込んだ、 甘い香りのする麗しい奔流の感触へ、
急なこととて驚きつつも、 しなやかな感触と、
そうなってしまったブッダの含羞みようの愛らしさへ
素直に喜んだのだろ、微笑んだのがイエス様なら、
もうや〜んと ますます照れたのがブッダ様だったのは
言うまでもなかったのでございます。
〜Fine〜 15.02.28.
*何のこっちゃなお話ですいません。
原作11巻だと、
ブッダさんへの攻撃を始めた梵天さんの前にマーラが出て来て、
150日間防御出来たブラックメダルだなんて聞いたことで、
そちらへ梵天さんの注意が逸れる…という展開だったのですが。
ウチだと、ブッダさんが“イエスのポータルだってことを判ってますか?”だなんて、
効果があればあったで やっぱり複雑だろう、
メガンテっぽい言いようをしかねないと書いてたもんで、
そこをもうちっと突き詰めてみたくなりまして。
ま、結果はいつものいちゃいちゃに落ち着いただけでしたが。(笑)
めーるふぉーむvv
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