“日々是好日なりvv”
一般からの見学を
当たり前の前提として考慮している工場であるらしく、
駐車場や、そこから工場の入り口へと至るエントランスまでが
それは綺麗にすっきりと整備されていて、
自分たちはマイクロバス規模の団体参加だが、
マイカーで来られたご家族もいれば、
それこそ学校行事なのか、
大型観光バスも数台ほどが見受けられ。
そんなにぎわいを見せている駐車場から、
順路指示の標識に沿い、白い工場棟へ向かって足を運べば。
出荷用というより、それもオブジェの代わりなのだろう、
パン専用らしきコンテナトラックが、
見学来館者の通行には邪魔にならぬ程度の位置取りで、
ロータリーになったポーチ前へ停めてあり。
青空に鯉のぼりがそよぐ下、
きちんと磨かれた銀色の車体の横っ腹には、
「あ。ムーメンだっ!」
「ホントだ、可愛いvv」
子供たちが目ざとく気づいたのは、
コンテナへ塗装されていたパステルカラーのイラストへ。
北欧の物の怪、もとえ、
妖精たちをモチーフにした、
それは有名なファンタジー童話のキャラクターたちを
勿論のこと、ライセンス契約の下に
製品のイメージキャラとして登用しておいでのこちらなのであり、
「そういや、夏のパン祭り始まってたね。」
「うん。今年もシール集めなきゃねvv」
イエスがネタ番組の見すぎでウケまくった挙句、
手持ちのお皿が全部パン化して一枚もないわけでもないというに。
ただで貰えるものならば
貰っておかねば勿体ないという順番に
ついついなってしまう時があるブッダとしては、
大きさや丈夫さなど、使い勝手がようよう研究されている
こちらのキャンペーンのお皿は、
見逃しちゃあいけない逸品であるらしく。
とはいえ、
“ゆるキャラかぁ…。”
ふと、コンテナ車に見とれたように立ち止まってしまわれたのは、
別な思惑が不意にそのふくよかな胸中に浮かんだからだったようで。
それは素朴な愛らしさに人気を博すキャラたちを見やる
釈迦牟尼様の胸中に浮かんだのは、
“販売促進もかねて、
悟アナのキャンペーンに
何かマスコットを作りませんかって梵天さんが言ってたけれど。”
そして、そのときは
瞬殺レベルで “無駄遣いはいけません”と断りもしたのだけれど、
「可愛いよねぇvv」
あのぷっくりしたフォルムが和むんだよねと、
幼子のみならず、イエスまでもが
目元を弧にたわめて笑顔になっているのを見てしまっては
“送り出すのが遅れるほど
間の抜けた二番煎じとの謗りを受けかねないしなぁ。”
イエスが喜んでくれるのならばと、
マスコット案へ微妙に天秤が揺れ始めておいでなのも相変わらずで。
そんな彼の胸中が覗けるはずもなく、
「ブッダ?」
不意に言葉少なな瞑想モードに入ったらしいお連れなのへ、
おいおい、一体何へと感じ入ったのかなと、
促し半分、でも邪魔はよくないしと、
イエスから遠慮がちな声をかけられてしまい、
「あ、ああ、
えっと、ごめんごめん。////////」
我に返ってにこりと微笑い、
却って不審がられてどうするかと
冷や汗かきつつ、他の皆様の後へと続く。
「???」
時々、いやいや結構相手の意図が読めないのは、
この際、ご愛敬な相性のお二人だということで…vv (いいのか、それで)
◇◇
駐車場にバスや車があっただけはあって、
館内には他からも多数の見学者たちが居合わせており。
だがだが、それも納得の広々とした施設は、
見学者コースが製造ラインとは大きなガラスで仕切られていて、
やや高い位置からのぞき込む仕様なのが本格的。
「わあ、甘いいい匂いがするねぇvv」
お気に入りのお兄さんだからと、
イエスとブッダの双方の手を取ったまま、
愛子ちゃんが無邪気にガラス窓へ張り付いて見せ。
「どらどら。」
「おお。すっかり機械化されている。」
清潔にとピカピカに磨き上げられた様々な機械たちと、
それらをつなぐ長い長いベルトコンベアという
一連の生産ラインの稼働っぷりを、
他の子供たち同様に最聖のお二人もまた
わくわくと見下ろすこととする。
すぐ傍らでは、案内役のお兄さんが、
慣れた様子で解説も受け持ってくださっていて、
「はい、ここは食パンの製造ラインですね。」
全部が全部、オートメイション化されているというのでもないようで、
先ずはと示された一角では、
大きなバスタブのような
深さのあるステンレスのワゴンを押してきた作業の人が、
中に入っていた粉を
よいしょと最初の機械の中へと投入する。
「まずは、小麦粉とイースト、
塩にショートニングという植物性の油脂を配合し、
そこへ分量の水を入れて
よぉくかき混ぜつつこねていきます。」
解説のタイミングがそちらへも届くのか、
そこまでを語り終えた良い間合いにて、
皆で見ていた大きな装置が、
横型のドラム式洗濯機のような案配で、
大きめのドラム缶ほどはあった大量の材料を
一気にどごろんどごろんと掻き混ぜ始めて。
「おお、何て力強い。」
「うん。あんなに沢山が、もう粉っぽくなくなってる。」
大したものだねぇと、
そちらはたまには自分でパンを焼きもするブッダが、
だからこその感心したような声を出しており。
「あ、愛子、
ブッダが焼いたチョココルネ大好きvv」
「ああ。あれは職人裸足だよねぇ。」
愛子ちゃんの無邪気なお言葉へ、
静子さんも “そうそう”と相槌を打てば、
「おや、ブッダさんたらそんな特技がおありなの?」
途端に、同じグループに参加していた皆様も、
もはやよく馴染んだお人だがそこは知らなんだか、
おやおやまあまあと感心するよな視線を向けてきて。
「あわわ、いやあの。//////」
とんだ格好で、如来様への注目が集まってしまったり。(笑)
「あー、えっとぉ。次の工程へ入りますよぉ?」
何だか話が逸れている顔ぶれへ、
解説担当のお兄さんがコッチ見てと注意を促し、
約一名だけほっとする中、
皆で再び作業の方を見守り直せば。
機械が止まってこね終わったパン種が
やはり大型のワゴンへと移される。
「続いて、一次発酵に90分置きます。」
勿論、実際には既に発酵を終えている種を用意してあり、
それを分量にちぎり分けつつ、
長い長いラインの上へ乗っけてゆく作業が紹介されて、
「ここからは完全にオートメーションに託されます。」
工場生産の食品は、
できるだけ人が直接触れないようにするのが
衛生的には一番なのだそうで。
「効率のためってだけじゃあないんだねぇ。」
ところどころで上下から強く挟み込まれることで、
余計なガスを抜き取られ、
ライン上での二次発酵ののち、
やはり上下からのローラーで
ぐるりんと挟み込まれての成形をされて
個々に型へ入れられ、
今度は長い長いオーブンへと流れに任せて入ってゆく。
「どんな苦境も甘んじて享受し、
抗うことなく整然と進む姿は何て潔いものか。」
…もしもし?
「これはきっと、
解脱への崇高な苦行や試練を表してもいるのかも。」
「…ブッダ、それは考えすぎ。」
余程に興味あっての余波だろう、
たいそう真剣に見守るあまり、
自分より先に結構な発言をこぼすお連れなせいか。
どちらかといやイエスの方こそ
夢中になりかねず
そこから勢いよく羽目を外しかねないところが、
今日は幸いにして、
今のところは宥める側で収まっている模様。
『まま、場所がパン工場だけに、
ややこしい奇跡が起こっても
誤魔化しようはあったかもしれないけどね。』
なんて言い様をして笑って思い出せれば良かったのだが、
そうはいかないのは、もはやお約束ということか、(おいおい)
「焼きあがったパンは、
型から出されて冷却用のラインに移されます。」
金属製のローラーが連なるそちらのラインとやらは、
自然に粗熱を取ることでふっくら仕上げるようにと
考案された工程であるらしく。
長い長いラインは、途中から螺旋を描きながら、
天高く、タワー状に上へ上へと延びてゆく。
「わぁー、すごいすごいvv」
食パンの行列が、まるで隊列を組んだようになったまま連綿と
吹き抜けになった工場内の限りなく上へ上へ
登ってゆく様はなかなかに圧巻であり。
愛子ちゃんを始めとする子供たちのみならず、
大人の見学者たちも “これは大したもんだ”と
感嘆しつつ見上げていたが、
「おおハレルヤ、祝福せよ。」
昇天の図に見えたらしいお人が約一名いて、
「あわわ…イエス、落ち着いてっ。」
一応は小声で叱咤をし、
淡い色合いの双眸をうっとり潤ませる神の子様へ、
天使が迎えに来た訳じゃないからと、
何とか説き伏せたのでございます。
その日焼かれた食パンは、微妙に風味も格別だったそうで。
たまたま購入した方々が、
どういう手違いだろう、またあんな美味しいのが出回ればいいのにねと、
こそり噂したこと、
ヤマギワパン広報まで伝わったかどうかは不明だそうな…。
〜Fine〜 15.05.07.
*微妙な都市伝説を作ってどうしますか
という、工場見学になっちゃいましたな。(笑)
一応、テレビで紹介されてたのを思い出しつつ書きましたので、
工程等々間違ってはないと思います。
工場見学ものは昔から大好きで
ようつべの “ザ・メイキング”は今でもたまに観てますしねvv
めーるふぉーむvv
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