恋でも愛でも 理由なんて あとからでvv

 

 “キミとの おはよう”



いつもと同じ匂いや温みの中にいたせいか、
あまりに自然と目が覚めた。
それは温かだったのと、穏やかな心持ちだったのと。
あ、髪が解けたままみたい。
ちょっぴり窮屈、でも それもいつものコト…だったので。
代わり映えのしない朝の訪れに、
むしろ安寧でよろしいと微笑みがこぼれたくらい。
窓の向こうからは、スズメだろうか、
いや も少し大きいからヒタキかメジロか。
そんな小鳥のさえずりも聞こえていて。

 “今朝もいいお天気みたいだな。”

 さあ 起きなければとのスイッチが、
 まずはと ゆるく入って。

それからそれから、
自分を供寝の相手としてのこと、
甘えるように緩く拘束中の双腕の持ち主を、
その懐ろの中から見上げたブッダだったのだが。

 “……………え?”

あらたにくっついた肩先へ さらりと触れたのは、
シャツ越しの淡い温みではなく。
馴染みのいい しっとり感のある、
それはそれは人懐っこい肌触りの素肌の感触で。

 “え? え? なんでなんで?///////////”

 何で私、シャツ着てないんだろ。
 酔っ払いでもしたっけ?
 あ・イエスも着てないぞ?

カーテン周辺の隙間からのそれでも
もはや十分な明るみの中。
想いも拠らない状況なのへ、
何で どうしてと 朝っぱらから大きに混乱しかかって。

 あ、下は履いてる 良かった、と

総身を見回すように、ちょっぴり身じろぎした拍子、
互いに首から提げてた銀のチェーンが軽く絡まりかかる。
おっと…と、
自分の指輪を軽く引き寄せたその仕草に重なったのが、


  ………………あ。/////


じわじわと思い出すのは昨夜のあれこれ。
自分より ごつりと作りの大きなイエスの手へ、
上から そおと、この手を重ねるようにして。
自分の頬や口許、耳朶の下、
そこからおとがいへとすべらせて、
首条を辿り、鎖骨が合わさるところへ。
そこから胸板、みぞおちへと。
一つずつ確かめさせるように
その指先や手のひらを導いたこととか。

 それから……

シャツの襟を下げてという形でではなく
裾から大きくめくり上げてという大胆さで、
胸のほぼ真ん中に、
あらためてのキスマークを授かってしまったこととか…。

 「〜〜〜〜〜。////////」

今朝は いつもとはちょっと違うんだったというの、
やっとのことで思い出してるブッダだったりし。

 そっかぁ、そうだった。
 わあ、何か、えっと、そっかぁ。////

ついばみ合うよな軽やかなキスや、
好き好きとじゃれ合うような抱擁では もはや足りぬ。
私をもらってほしいと言わんばかり
にじり寄ってしまったブッダだったのへ。
イエスは彼もまた自身に課してた枷を解き、
ブッダへの“もっと”を求めてくれたのだ。

 “えっと…。////////”

とはいえ、二人とも初心者もいいところだったため、
どっちが愛でられ、求められているのやらという案配でもあって。

 “…まあ、それは仕方がないよねぇ。/////////”

具体的な事を何も知らないイエスだったのだし、
ブッダの側にしても、
この身は女性のそれではないのだから、
今までの触れ合い以上の“もっと”って どんなだろと、
戸惑わないでもなかったけれど。

 この私を“もっと”だというのなら…

結果として、好きにしてくれればいいのだと思った。
どこなと触って、抱きしめてくれていいと、
私は どこもかしこもキミのなんだから、
それを確かめてくれればいいのだと。
物怖じしていたその手を導いてあげて……

 “でも…。/////////”

もどかしい気持ちに急かされ引きずられ、
キミが欲しいと、
いかにも激しく ぎゅうと抱き合った割に、

 “こうして素肌同士でくっつくところで
  落ち着いたなんてね。”

一番に心満たされたし、
それでいて、
ああ私たち一つなんだねという、
そんなくすぐったくも甘い気持ちを共有出来もして。
こんなに簡単なことへ、
なのに全く気づけなかったなんてという苦笑が
今もまた洩れてしまったが、
勿論、それもまた
手段なり方向なりが判らなかったればこその
混迷には違いなく。
いい歳した大人同士なのだからして、
剥き身同士でくっつくことなんて、
そうそう思いつくはずないってもので。

 “日頃からのスキンシップがあっても、
  これはやっぱり別物だものね。”

普段から抱き着いてくる側のイエスでさえ、
気づかなかったらしいのだから、これはもう盲点すぎ。
私たちって おっちょこちょいなところも似てるんだなぁ、なんて、
ほのぼのと思いつつ、

 “うん、焦ることはないんだよね。//////////”

くすぐったげに苦笑し、
めでたしめでたしへ帰着しかかった
釈迦牟尼様だった、のだけれども。

 “…………………と いうか。///////”

いやいや、ちょっと待てよ。
そこへ至る前に、結構あれやこれやもあったようなと。

 「………。///////////」

じわじわと思い出すにつれ、
じわじわと頬に赤みが差すのが自分でも判る。

 「〜〜〜。///////////」

何げに押さえているこの胸元へ、
昨夜、イエスから新たに刻まれた熱が、
どれほど なまめかしい刺激だったかとか。
それにより、生前を入れても どんだけ振りか、
思いがけなく火が点いてしまった とある感覚があって。
でもでもイエスにだけは気づかれないよう、
そりゃあ あたふたしつつも頑張って堪えたこととか…。

 などなどなどと 思い出してしまったものだから。

 “うあ、恥ずかしいぃ〜〜〜〜っ。/////////”

昨夜は何とか乗り切れたというに、
今また 壮絶な羞恥のもたらした微熱に襲われてしまい。
慈愛あふるる嫋やかな御手にて、
いやいや・いやん///////と
その ご尊顔を覆ってしまわれたのでございました。


  まだ、当のお相手の懐ろの中におわすというのは
  その“いやん”に抵触しないんでしょうかねぇ?(苦笑)





     ◇◇◇



電子音全盛の今時には古風な響き、
ちりりんという、金属のそれだろうベルの音がして。
それが合図だったかのように、
そこまでは しゃーっとすべるように走って来た自転車が
キキーッという軋み声をあげてブレーキを掛ける音がして。
アパート前というほど近くからじゃあないし、
何と言っても もう随分と明るくなってもいるから、
目くじら立てるほどの近所迷惑でもなし。
寝ぼすけなイエスには、ちょうどいい目覚まし代わりになったほど。

 「………。」

とはいえ、まだ瞼は上がらぬままだし、
まずはと いい匂いが仄かに残る布団の温みを堪能する。

 “あ〜あ、また間に合わなかったよぉ。”

どこをまさぐっても、何を掻き寄せても
誰もいないことへ ちょっっぴり落胆。
残り香の主であるブッダは とうに起き出しており、
習慣としているジョギングへ出てしまっているらしく。

 昨夜の余韻を甘く滲ませた寝顔をじっと見守って、
 そんなされてたんだと照れまくる彼へ、
 悪戯っぽく微笑いながら“おはよう”って言ってあげる…という

よく出来たカレ氏の起こし方に、
実は秘かに憧れておいでのヨシュア様。
いまだに達成されない野望を、今朝もまた残念がっていたのだが。

 「………………あれ?」

つ〜まんな〜いと寝返りを打った途端に、
掛け布団の一角が ぱたりとはだけ、
その途端に肌へ触れた空気感へ、
おおうと意表を衝かれて目が開いてしまったほど。

 “え? え? なんでなんで?///////////”

 何で私、シャツ着てないんだろ。
 酔っ払いでもしたっけ?
 あ、もしかしてブッダが、
 朝一番に洗濯機回すからって、
 剥ぎ取っ、たりなんかしないよね。

まだ引かれたままのカーテンだが、
隙間から漏れているものだけでも十分に
あちこち見回せる明るさになっており。
想いも拠らない状況なのへ、
何で どうしてと 朝っぱらから大きに混乱しかかって。

 あ、下は履いてる 良かった、と

総身を見回すように、ちょっぴり身じろぎした拍子、
首から提げていた銀のチェーンがスルリと揺れる。
不意なくすぐったさへと気がついて、
その先の指輪を軽く引き寄せたその仕草に重なったのが、


  ………………あ。/////


じわじわと思い出すのは昨夜のあれこれ。
それはまろやかで優しいブッダの手が、
視野の中のこの手の上へ そおと重ねられて。
自分の頬や口許、耳朶の下、
そこからおとがいへとすべらせて、
首条を辿り、鎖骨が合わさるところ。
そこから胸板、みぞおち などなどへ。
一つずつ確かめさせるように
指先や手のひらを導いてくれたこととか。

 それから……

シャツの襟を下げてという形でではなく
裾から大きくめくり上げてという大胆さで、
胸のほぼ真ん中に、
あらためてのキスマークを刻み直してしまったこととか…。

 「〜〜〜〜〜。////////」

今朝は いつもとはちょっと違うんだったというの、
やっとのことで思い出してるイエスだったりし。

 そっかぁ、そうだった。
 わあ、何か、えっと、そっかぁ。////

ついばみ合うよな軽やかなキスや、
好き好きとじゃれ合うような抱擁も許されていたのにね。

 もう少しだけ、あのね?
 思うまま触ってみたい、ぎゅうしてみたい、

そうやってキミのことを もっと独占してみたくって。
私になら どこまで許してくれるのかなって、
自惚れもいいとこだけど、それを思うとドキドキしてもいて。

 でも、そんなのいけないと

これまで明かせなかった片想いが両想いになっただけでも
そりゃあ凄いことなんだからと。
もっと…と この身が動くのを、必死になって制していたのにね。
そんな想いのつのりよう、さすがに察してくれたのか。
私をもらってほしいと言わんばかり
にじり寄って来てくれたブッダだったのであり。
とはいえ、
唇 咬みしめ、くぅう〜〜〜っと、
それは甘やかな宵だったのを、
嬉し恥ずかしと振り返ってみたものの。

 “えっと…。////////”

いざ、どうぞと包み込まれると、
それだけでうっとりしちゃったのが我ながら情けない。

 “やっぱり私って初心者なんだものなぁ。////////”

ブッダもさすがに、凄く恥ずかしそうにしてはいたけれど、
でもでも、そりゃあ優しかったし。
くすぐったいツボだったものか、
ところどこで“ひくっ”て震えたりもしていたけれど、
くうって息を詰めて我慢してくれてたし。

 どっちが愛でられ、求められているのやらという案配でもあって。

 “だってブッダって、
  場所によっては物凄く くすぐったがり屋なんだしね。/////////”

耳の内側、ちょいとつつかれただけで、
体中ギュッと縮めてしまっての、
イエスでさえ わたわたと落ち着けなくなるような、
ああまでの艶なお声を洩らすくらいだもの。
もっとずっと誰にも触らせたことのないだろう、
あんなところや こんなところや、
さわさわと不躾に撫でられたんだもの。

 そりゃあ我慢の一つも要ったよねぇと。

……まだちょっと、いやいや随分と
誤解もなくはないまんまの、
イエス様なようではありますが。(苦笑)


 早く帰って来て欲しいような。
 ああでも、なんか
 どんな顔をすればいいんだろかと、
 それが決まらず落ち着けないような。

 それを言ったら、ブッダ様の側だって、
 どんなお顔で戻ればいいやら。
 まだ寝ていたらいいなぁ、
 ああでもそうなると
 私が起こすのか、………私が?////////と。
 いつものコースをもう3周もしていたり。


  やっぱり何だか、
  いつもと違う朝なのだったりしたのでありますvv





   〜Fine〜  14.05.15.


  *某企業グループの
   “おはようから おやすみまで”というキャッチが
   実は大好きなもーりんですvv
   毎日とか一日中とか24時間とかいうよりずっと
   身近な感じで、肌触りのいい言い回しですものね。
   これに迫るのと言ったら
   “お正月を写そうvv”くらいかな?(おいおい)

  *もーりんの どうでもいい照れ隠しはさておいて。(笑)
   お約束の“翌日”編でございますvv
   同じような照れ臭さに襲われ、
   同じような焦りようをしておいでのお二人ですが、
   周辺住民の方にすりゃ、そんなどころじゃないかもです。
   もう一つのお約束、愛の奇跡が大勃発し、
   アパートの周辺のフェンスには様々な蔓草が絡まっていて。
   瑞々しい桃だの葡萄だの、
   サクランボだのイチジクだのザクロだの、
   旬も種類も入り乱れて実ってたら……どうしましょうかねぇ。(う〜ん)

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