キミが望めば 月でも星でも
      〜かぐわしきは 君の…

 “暖かくして おやすみなさい”



いつまで続く残暑やらと、
10月に入りての、半ばにまで至っても
真夏日レベルの気温が続く異常さへ辟易しておれば。
ならば拭い去ってあげましょうということか、
これもまた今年は山ほどお目見えの台風の、
それも一際大きな暴れん坊が襲い来て。
あっと言う間に晩秋並みの空気、
涼しいを通り越し、肌寒いほどの気温にまで
一気に下げてくれたおっかなさ。

 『これは、合い布団どころの話じゃあないね。』

毛布を出しておかないと、足元から冷やしかねないよと。
こういうことへは周到なブッダ様、
押し入れの上段の“此処”と記憶してらしたところに
ドンピシャで仕舞ってあった二人分の毛布を引っ張り出して。
寒いなと感じたら手探りで羽織れるように、
それぞれの寝床の足元へ
二つ折にして掛けてという用意をしておかれて、さて。

 “…………?”

今日は特に観たい番組もなしと、
それでもイエスと何だかんだお喋りをしてからのことではあったれど。
日付も変わらぬうちに眠くなっての
いつものこととて、先にお休みなさいと床についたブッダだったものが。

 “あれ?”

何でだろうかと、
他でもない本人が不審に思うほどの取り留めなさにて目を覚ます。
部屋の中は明かりも落とされての真っ暗で、
それでも寝ていたところから見回す分には不自由も少なく。
まずはと見やった窓辺はカーテンも引かれての閉じているし、
PCのバックライトの明かりも見当たらないから
イエスももう寝ているらしい。
とはいえ、

 「〜〜っ。」

布団がお背(おせな)から滑り落ちたのを、
ついついそのままにしておれば、
ほんの1分もせぬうち、ふるるっと肩に震えが来るほど
仄かに寒いくらいだというに。

 “…おかしくなぁい?”

まだまだ“涼しい”内からのこと、
朝晩の爽やかさの中でブッダが風邪を拾わないようにと、
先に寝付いてたこちらを
その懐ろへ掻い込んでいた彼ではなかったか。
それだのに、こんなに冷え込んでる晩だというに、
何にも仕掛けて来てないだなんてと。
いやあの、期待した訳ではないんですが、
それでもあのその、
理屈が合わぬというか、平仄が合わぬというか、
あ・どっちでも一緒だったかな?///////
何でかな、どうしたんだろと、却って気になったらしいブッダ様。
すぐお隣りの寝床を透かし見やれば、
そこには確かに、
シェア生活の相方で…最近ちょっぴり甘い意味合いから何かと接近中の、
愛しいお人が横になっていたのだが。

 「…ちょっと待って。」

ああいや、待ってちゃいかんかと。
ギョッとしながら身を起こし、
あれあれと大急ぎで布団と毛布とを広げて掛けて差し上げる。
どうやら“寝オチ”というやつをやらかした彼であるらしく、
PCの液晶画面の明るみが消えていたのは、
無意識で消したか、それとも省エネモードになっていての
反応がなくなったのでと“つくもん”が判断し、自動で消えたか。
しんしんと寒さが少しずつ増す中、
何も掛けずのTシャツ姿で寝入っていた彼であり。

 “風邪は引かないと言ってはいたけど…。”

それもまた神の子たる奇跡の一つか、
病気は滅多に寄り付かないと言ってた彼だが。
それでも暑さ寒さが堪えてはいたようだから、
身が凍えかけていたには違いなく。
襟元をしっかと整えてやろうと押さえていて触れた耳や頬が
ずんと冷たかったし、肩も仄かに震えておいで。

 “もうもう、何してるかなぁ。”

ちょっと目を離したらこれだものと、
ようも気がついたものだとの吐息をついたものの、

 “……それだけかな。”

何かもう一つ見落としている気がする。
この気配だけで自分が起きたとは思えないブッダであり。
寝床へ身を起こしての座り込む格好のまま、
何とか布団と毛布でくるんだヨシュア様を見やっていたものの、

 “……。”

ふるると身を縮めていかにも寒そうなイエスなのを見るにつけ、
う〜んと視線が左右に揺れる。
誰も見てはないのだが、いやさ、そういう問題ではなくてという
つまりは本人の踏ん切りが問題という逡巡に、
う〜んう〜んと思い切りがつかなんだのも…ほんの1分もないうちのこと。

 このままじゃあ、
 イエスが生まれて初めてという風邪を引きかねないからね

そうなったら可哀想だもの、だから仕方がないんだ…などと。
随分な言い訳を、しかも誰へ対してだか判らぬままに呟いて。
自分の布団と毛布をぐいぐいと引っ張って来ると、
それを半分ずつ重なるようくっつけてから。
布団の縁を引っ掴んで丸くなっているイエスを、
そのまま懐ろへと招きいれる。
冷え切っていた頬や、線の細い鼻の頂がひやりと触れて、
ああああ、もうもうと苦笑を誘ったが、
不思議としばらくすると、彼の側からも暖かさが伝わって来る。
間近になった寝息も穏やかなものとなり、
そのままうにむにと擦り寄って来る現金さへ、

 「〜〜〜。////////」

いやいや、寝てるんだもの仕方がないってと、
再び誰への言いようだか、そんな言い訳を並べつつ。
とはいえ、眠っている相手だからこその、
とある“内緒ごと”だけは忘れなかったブッダ様。

 「…イエス?」

寝てるよね?起きてないよね?と、
すぐの胸元にいる愛しいお人へ、
確かめるように小声でその名を呼んだ、

 その声がもう既に、
 仄かに甘い、睦みのそれで

だというに…ちょっと間をおいての、深呼吸を一つ。
ああ どうしようかな//////
こんなして抱っこしてるんだもの、今夜はもういいかしら。
でもね、あのその//////
機会があれば ちょっとでも言うようにしとかなきゃあ、

 “いざって時に咬みかねないし。///////”(…おいおい)

お顔を見てだと恥ずかしいから、この体勢はちょうどいいかもと。
薄い頬へかかる髪をそおと退けてあげつつ、
きゅうとその痩躯を抱き込むと、
こっそりこっそり呟いたのが、

 「…………好き、だよ?」

あああああ、/////////
口にした途端、胸元から背中から、
むずむずもぞもぞと、色んな熱が渦を巻いて沸き上がり。
恥ずかしいやら居たたまれないやら
行き場のないそんなこんなが 逃げ場を求めるせいだろか、

 「…っ。////////」

ああやっぱり、
螺髪がさあっとほどけてしまい、熱っぽい頬をひやりと覆う。
キミからは そりゃあもう降るようにくれるご褒美なのにね。
その甘さが嬉しくてくすぐったくて、
何でも出来るよになるほどの元気をくれて。
そんなほどの一言なんだもの、
私にはまだまだ、けろりと言うには日がかかりそうだねと。
相変わらずな含羞みを、深い吐息でそおと吐き出すと、
さあ寝よう寝ようと目を閉じるブッダ様であり。










  「…………………。////////」


えっとぉ、くしゃみをしちゃってブッダを起こしちゃったんで、
いろいろとお説教されるかと思って、寝たふりをずっとしてたんだけど。
これってもしかして、ワタシの一人得?/////////
暖ったかいし、抱き込められちゃてるし、
好きって言ってもらえたし〜〜〜〜〜、////////



  いいから早く寝なさい、ヨシュア様。
(苦笑)






   〜Fine〜  13.10.16.


  *急転直下の寒さの到来ですね。
   台風の雨風のせいとは思いにくい寒さで、
   ああでも、毎年このくらいにいきなり寒くはなってましたかね。
   きっかけが意外すぎるだけでしょうか、今年のは。


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