人恋しき 秋の深まりに
      〜かぐわしきは 君の…

 “秋のお楽しみvv”



ステーションビルなどはなかなか綺麗な作りで
お洒落なテナントも入っているものの、
とはいえ、さほど大きな繁華街だということもないのは、
さして時間も掛からずに都心へ行けてしまうからかも。
その代わりと言っちゃあなんだが、
主婦(主夫)に優しく、生活に密着した品揃えと、
季節のイベントを網羅した売り出しが行き届いている商店街が
そりゃあお元気なのが、ここ立川市のとあるご町内。
雑貨店ではない、洋品店や文房具のお店などにも、
自然な感覚として輸入雑貨を置いてるよな
若い人向けのハイカラなショッピングモールでもないというに(失敬な)
クリスマスのみならず、バレンタインデーやホワイトデー、
こちらは最近隆盛のハロウィンにさえ、
話題になるより結構以前から既に乗っかっていたというから
そのバイタリティは半端じゃあない。
(ちなみに、
  ホワイトデーは日本固有のイベントですので誤解のなきよう…。)

 「そのうちイースターにも
  バーゲンセールをやってくれるかも知れないとか?」

とは、PCの液晶モニター画面からお顔を上げたイエス様の仰有りようだが、
う〜ん、それはどうでしょうかねぇ。
イースターは毎年 日にちが違いますから、
キリスト教徒の方でないと覚えておくのが難しいかも。
日本人には、いっそ“灌仏会に…”という方が
判りやすいっちゃ判りやすいんですがね。

 「そうだよね。
  クリスマスにお祝いとかバーゲンとかするくらいなんだし♪」

そちらがご自身のお誕生日だというの、
そろそろ自覚もなさっておいでか。
(だって、毎年“どっきり”を敢行されてるなんて…)笑
だったら日本人にはずっと親しみやすいことなはずの、
仏教の開祖のお誕生日こそ もっと賑わっていいのではと、
畏れ多くもイエス様が口にしてみたのだけれど、

 「いやいやそんな、滸がましいことを…。/////////」

自分の降誕会を記念されてもなんだかなぁと、
奥ゆかしいブッダ様はちょうど立ってらしたキッチンスペースで
エプロンの裾をもじもじといじりつつ、
顔を赤くして しきりに照れておいで。
とはいえ、

 「でもね、ブッダ。
  その日を祝って全店で20%引きって
  バーゲンをしてくれたら嬉しいでしょう?」

 「勿論ですとも。」

訊いたイエス様の台詞にかぶったほどの、しかも毅然とした即答です。

 「だって灌仏会って甘茶くらいしか付き物がないんだもの。」

イースターだと、
玉子とかエッグハント用のチョコ菓子とか
経費で落とせるものも結構あるのにねと、
きれいな拳を握っての力説です。
さすが、カリスマ主夫は目の付けどころも違います。(笑)
ちなみに、毎年日にちが定まらないイエス様のセカンドバースデー、
何年か前には、何とブッダ様の降誕会と重なったこともあるそうで。

 「ああ、えっと。///////」
 「そんなこともあったねぇvv」

何かあったらしいですが、
何年か前ならよそのサイト様でのことでしょうから
ウチでは割愛するとして。(おいおい)

 「はい、今日のおやつはパンプキンパイです。」
 「わ、美味しそうvv」

さすがに湯気の立つ飲み物が美味しいと思える頃合いになり、
イエスのお好みは甘い目のミルクティー。
今日は、それへの相性も抜群な、
濃厚な甘さのカボチャのパイが、どうぞと卓袱台まで運ばれる。
パイ生地の縁には同じ生地を型抜きした星が飾られていて、
つや出しされた網目で蓋された中にはカボチャのフィリングがたっぷり。
フレッシュな手作りピュレを使いましたという逸品で、
甘いばかりに傾かぬよう、バランスよくシナモンも利いていて、

 「うあ、バランスが絶妙だよねvv」

パイ生地のサクサクさ加減や香ばしさと、
カボチャがただの餡じゃないですと風味も残してるところと、
でもでも、それは丁寧にこしらえたのだろ、
なめらかでしっとりした食感とが、
どれかだけ突出してなくの、それは仲良く一つになっている。
温かなミルクティーで洗い流されても、
シナモンの残り香がふっと鼻へ抜けることで
次の一口を急ぎたくなる美味しさで。
甘いものが大好きなイエスが、そりゃあ嬉しそうにフォークを運ぶのへ。
見ているだけでも御馳走と言いたげに、
向かい側に座してたブッダも
負けないほどの甘さで にこにことお顔をほころばせていたのだが、

 「やっぱりラフティのケーキは美味しいねぇvv」

あ、でもでも、ブッダのお手製のおやつも大好きだよと。
特に慌てちゃあいなかった分、
ご機嫌伺いのつもりはないのだろう付け足しをしつつ、
ご満悦なお顔を上げたイエスだったのだけれども。

 「………あ。////////」
 「…え?」

何てことはない一言だったはずで。
だっていうのに…それを聞いた慈愛の如来様のお顔が
そのまま ふっとこわばってしまい。
最愛の人のそんな反応へ、
こちらも素早く気づいてのこと、
イエス様が“え?え?”と瞬きを数回披露してから。

 「あっ、ご、ごめんねっ!
  いつだって工夫してくれてるのに、こんな言い方しちゃって。」

ああ しまった、
私ったら、またぞろ無神経をやらかしちゃった。
ブッダには そもそもおやつなんて習慣だってなかったのだろうに、
私がやたらスナック菓子を買うものだから、
せめて健康にいいものをと、
気を配って作ってくれるようになったっていうのにね。
その始まり、
勿論わざわざ言われた訳じゃあないけれど、
そこはそれこそ聖人ですもの
ちょっと考えりゃあ判るというもの。
それに、いつだって
たっぷりの手間暇という愛情とか、
美味しいかな?上手に出来てるかな?という、
時には不安げに伺う気配も籠もってて。
ああ、私ってなんて果報者かと
いつだって間違いなく思っているのに、まあなんて失態を……と。

 「えと、あの…っ。」

小さなデザートフォークを持つ手を
あわわと震えさせかかっていたのだが、

 「………あ。いやいや、違うんだって。///////」

無神経なんてとんでもないないと、
すぐさま ぱあぁっと、それこそ満面の笑みで笑ってくれたブッダ様。

 「だってそれ、ラフティさんのじゃないんだもの。」
 「……………え?」

聞き返したイエスなのへ、だが、
えとあの…と口ごもったそのまま、
口許をうにむにと、前歯で咬んだりたわめたりするブッダの含羞みように、

 「………………………あvv」

天然さんなことではブッダと張り合ってますが、(こらこら)
ここでピンと来ないほど、ぼんやりさんじゃありませんとも、

 「えっ、じゃあこれってブッダが作ったの?」

だってそんな、
生地もサクサクだし、この縁飾りのお星様も凝ってるし。
カボチャの風味も甘さも、シナモンの配合も絶妙だし、
私てっきり…

 「駅ビルのラフティさんで買ったのを、
  出してくれたのかって思った、んだけど。」

遠出したおりに時々立ち寄る、喫茶室もあるケーキ屋さん。
待ち合わせには もっぱら“ど○ーる”だけど、
こちらは手作りケーキが素晴らしく美味しいので、
ご褒美にっていうのや、
商店街の売り出しと連動して割引券を配ってる日などに、
特別だよって買ってくれるブッダだったから。
冗談抜きに何の先入観もなく、

 「いやあの、ごめんね。
  そんな…手作りしてくれたのを、
  売りものと一緒みたいな言い方…。」

ありゃりゃあ、重ねての失礼しちゃったかなと。
後ろ頭を掻いちゃうイエス様なのへ、

 「ううん。………あのあの、ありがとね。/////////」

お礼ってのもおかしいかな。
でも何か、嬉しくなっちゃったのと、
自分のお膝に置いた手を見下ろして、含羞むばかりのブッダ様。
以前に愛子ちゃんへとアップルパイを作ったことがあって、
さすがに、リンゴだからイエスには食べさせられなかったのだけれども。
確か当時は事情も話さないままに、
羨ましいなというお顔で見送らせたの、ふと思い出してのこと。
カボチャなら大丈夫だろうと、
それでも料理本とか立ち読みして研究した末の挑戦だったので、

 そんなに美味しい?

 うんっ。間違えちゃったほどvv

 そか、それは良かった、うん。///////
 ……あ、まだあるから、お代わりしてね?

 うんっ!!

甘い甘いかぼちゃのパイとミルクティー。
甘い甘いお二人には、幸せなおやつの代名詞になるかもですね。





   おまけ


「ちなみに、ブッダは何が一番好きなの?」

「そういう順番をつけるのはいけないことなんだけど。
 しいて言えば、そうだねぇ…。」

「うんうんvv」

「こないだイエスが握ってくれた、
 塩昆布入りの大きなおむすびとかかな?///////

「え?////////




   〜Fine〜  13.11.01.


  *ハロウィンは過ぎたのでと差し替えたのですが、
   内容が微妙に ハロウィン絡みやないか〜い。(笑)
   えっと、ブッダ様って確か、
   アップルパイを焼いてたことがあったのを思い出したので、
   今度はパンプキンパイを焼いていただきました。
   ……結構いい匂いするはずなんですけどね。
   イエス様ったら、気がつかなんだのかな?
   それとも、お出掛けしていた隙を狙ったブッダ様だったのかな?






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