雄々しき獅子と すばしっこいウサギ、
 一体どこで入れ替わるものなのか。

   “一番大切、なのだもの”



今時は 芸人さんもネタばかりやってるワケにはいかないようで、
様々なバラエティ番組に出ては 顔と名前を売らねばならぬ。
年配の方々に人気のトーク番組では、
ひな壇に座っていても リアクションで目立たにゃならぬし、
無理難題に挑戦するよな番組では、
どんな苦手へも、これまた体を張ったリアクションを見せねばならずで。

 「今やリアクションも立派な芸だからねぇ。」

 「みたいだねぇ。」

マグロみたいに呆然としているだけでいいのは、
それこそ、
天然なところがいいと万人からウケてるよな、
世に言う“アイドル”くらいのもの。
危険と紙一重というよな目に遭ってる姿さえ、
笑いのネタにされている御時勢なのが思えば恐ろしく。

 「危険だから真似をしないでどころじゃあない、
  プロの指導の元、
  安全に注意してやっておりますとかっていう
  うかうかと流して見てちゃいけないような
  テロップが出てるときもあるしね。」

そういう番組をゴールデンに流すのはどうかと思うんですが、
小学生には ネタもすぐに飽きるもんなんでしょうかねぇ。(う〜ん)
相変わらず芸人への道を諦めてはいないものか、
何かしら挑戦もののバラエティを観つつ、
そんな言葉を交わし合ってる最聖のお二人だったが、

 【 では、これが 隠していただく100万円で〜すっ!】

アシスタントのお嬢さんが
濃色のビロウドを張ったトレイに乗っけて持って来た札束は三つ。
そのうちの1つを手にした司会者が、
頭上でほらほらと振って見せれば、
モデルハウス前に集合した芸人たちが、
ガッツポーズと共に“おお〜っ”と歓声を上げて見せる。
これを“お宝”とし、
隠す側と探す側に分かれて挑戦する企画で、
見つければ見つけた側の勝ち、
見つからなければ隠した方の勝ちという勝負もの。
隠した側のリアクションも観ぃ観ぃの探索なので、
その反応も可笑しい、
れっきとしたお笑い系の番組なのだそうで、

 「豪気な番組だねぇ。」

昔は視聴者が参加する格好で
結構あったんですけどね、こういう企画。

 「へそくりが得意な人なら勝てるかも。」

 「でも、札束のままじゃあ、
  どう隠しても目立つよねぇ。」

コタツに仲良くあたりつつ、
罪のない範囲で“あーでもない、こーでもない”と
口にするのもいつもの事で。
最初の対決が
制限時間ぎりぎりで3つとも見つけられてしまい、
はらはらしつつ、
結果的に“あ〜あ”と残念がっておれば、

 【 では此処で特別コーナー。お宝を探せです。】

盛大に掻き回されたモデルハウス内部をリセットする間にということか、
スタジオに設けられたワンルーム風セットの中へ、
ゲストの持って来た私物を隠して探させるという、
ミニトライアルが始まって。
見つかれば視聴者プレゼントにするらしく、
とはいえ、
アイドルが持って来た新作DVDはどう考えても宣伝だろう、とか、
サイン入りのキャップは上手に小物に紛れていて難しそうとか、
やっぱり思い思いの言いようを並べていた二人だが、

 「私たちでやるとしたら、この部屋に隠すって事だよね?」

 「お、そう来ますか、イエスよ。」

そんな例えばが出るのも、こういう企画ものには付き物な連想で。
狭いようで案外と盲点は多いよ?
そうだよね、と、
室内をぐるんと見回しつつ言い合ってから、

 「ブッダはどこに何を仕舞ってるか全部把握しているようだけど、
  改めて私が何かを隠すとなると、それはまた別だろうしね。」

 「うんうん。
  イエスの意外性は、
  何百年紀 付き合ってもなかなか読み切れないものね。」

…それって褒めてくれているんだよね?
勿論ですとも、と、
のっけからちょっとした齟齬が生じかけたものの(笑)
そこはまま、よくあるご愛嬌ということで。

 「お宝かぁ。」

どこへの次は
“何を”に話題が移ったようで、
コタツに乗せていた手の指を組みつつ、
イエスが う〜んといやに真剣に唸っておれば、

 「あ、でも。
  イエスには 不利じゃない?」

 「どうして?」

だってと、
ブッダがちょっぴり困ったように眉を下げて苦笑をし、

 「イエスのお宝と言えば、
  つくもんか ライダー龍鼓のフィギュアでしょう?」

潰れると困るから、
布団の間とか滅多なところへは押し込めないだろし、
落とすのもご法度だろうから天井裏っていうのも無理だろうしと、
取り扱い注意なお宝を持ち出したブッダなのへ、

 「私のお宝ってその2つなの?」
 「違うの?」

今一番大切にしてると言えばで思いついたんだけどと、
今度は はんなり笑ったブッダへ。
だがだが、
その把握は微妙に心外ででもあったものか、
はたまた 子供っぽいと思われたような気でもしたか、
イエスが ちょっぴりむうと口許を曲げて見せ、

 「ブッダこそ、
  Jr.じゃあ隠しようがないから
  不利なんじゃないの?」

 「え〜、私のお宝ってまずは“Jr.”なの?」

そりゃまあ このごろは弟みたいに思えても来たけどサと、
決して遠くはないが“お宝”と断言されるのはちょっとと思ったか、
先程のイエスと同じような反応で 不満そうなお顔になってしまい、

 「じゃあ何なの?
  つか、ブッダって何へでも執着が薄いんだものなぁ。」

そういう宗教の開祖ですものねぇ。(笑)
でもまあ、このささやかな幸せ空間の中に限れば、
これは代替がなくて大切とするものくらいはお在りだろうしと、
イエスもまた室内を見回して見せ、

 「スマホかな、それともDSとか。
  あっ、献立ノート?」

 「献立ノートはさすがに失くされては困るけど…。」

あとの二つを“お宝”呼ばわりされると
さすがにちょっと恥ずかしいなぁと、鼻白んでしまうブッダであり。
大切には違いないけれど、それを“お宝”だと思われてるなんてと
そんな把握をされたことへこそ、
物言いしたくなるお二人だったようであり。

 「じゃあ、何が大切なの?」
 「う〜んと、急に言われてもねぇ。」

指摘されたものだと微妙にズレてるけれど、
じゃあ何が?と問われると、
それこそ日頃からの意識が薄いことが祟ってか
これというものを思いつけないブッダであるらしく。

 「そういうイエスこそ、何が一番のお宝なんだい?」

 「え? 何がって…。」

イエスの方はといや、恐らくブッダとは逆で、
1つ2つに絞り込めなくての戸惑いに襲われたらしく。
自分で言ったスマホは勿論のこと、
手持ちのDVD全集も、
ご近所の小さなお友達からもらったストラップや
遊びに行った先で拾った ちょっと変わった形の小石までと、
数え切れないあれこれを、実はサブレの缶に取ってあったりし。
こういうことでも アガペーの申し子なのかも知れぬと、
訊いたブッダが先んじて気づいてしまい。

 “やれやれ…。”

煩悩とは微妙に一線を画した“大切”なのだろうけれど、
それでも迷いの源たる要素には違いない。
でも、そういうところがらしいんだよねと、
可愛らしいじゃあないですかなんて、
目許をたわませて頬笑んでおれば、

 「一番…。///////」

えっと・ええっとと
キョロキョロしていたイエスが、ふと、
そんな動作を止めると こちらをじいっと見やって来る。

 「?」

視線を据えられたブッダが、
やや怪訝そうに目を見張っていたのも一刻。
お互いに何か言った訳でもなければ、
思わせ振りな顔になった訳でもない。
ただ、二人してほぼ同時に、その手で押さえたのが自分の胸元であり、

 「えっと…。/////」
 「…あ。/////////」

そこへと提げている指輪が、
でも ほわんと温かくなったのは、
手のひらで押さえてからのこと。
ただ、お宝という言葉から どれが“一番”かを
ぐんぐんと煮詰めていったら
辿り着いたのが、奇しくも同じだったということかと。

 「…隠しようがないよねぇ。」

そうとつぶやいたイエスが、
座ってた位置を微妙にコタツの縁の片側へとずらせば、

 「うん。お宝捜しじゃなくて
  “隠れんぼ”になっちゃうよね。」

ブッダもまた、
相手のいる側に身をずらし、くっつき合ったそのまんま、
顔を見合わせ“うふふーvv”と幸せそうに笑い合う。

  単純な“物”扱いじゃあないからこそ、
  気がつかなんだ、一番大切な“お宝”。

 「私、隠すつもりなんてないもの。」

 「あっ、それは私だって。//////////」

ムキになったのも一瞬だけ、見交わした眼差しも暖かくて甘いまま、
ちょっぴり凭れ掛かり合うよなカッコになって、
互いへ近いほうの手と手で“恋人つなぎ”なんてしてみたり。
今宵は少々冷え込む如月の宵を、
暖かく過ごすことにしたお二人だったようでございます。




  〜Fine〜  14.02.03.


ソチ五輪もたけなわですね。
中継が夜遅い競技もありましょうが、
どうか温かくして観戦して下さいませね?

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