雄々しき獅子と すばしっこいウサギ、
 一体どこで入れ替わるものなのか。

   “ウサギが去ってゆく前に。”




 「わあ、もうあと10日しかないんだ。」

こたつへ戻りがてら、
何の気なしにカレンダーを見やったイエスがそんな声を上げ。
こちらは漂白していた台拭きを濯いでいて遅れたブッダが、
やはり台所から戻って来たそのまま
“んん?”と深瑠璃の眸を見張るのへ、

 「ほら、今日が20日でしょう?」
 「あ・そうか、そうだねぇ。」

二月は28日しかないので、
となると もう残りは10日もないということで。
カレンダー的には1週間あるけれど、
それでも
もう三月が間近なんだねぇという感慨も沸くというところ。

 「三月かぁ…。」

まだ終わった訳じゃあないものの、
振り返れば何だか公私ともにすったもんだだった気のする二月であり。
突然降って来たケーキ作りとか、
それへくっついて来たささやかな焼きもちとか。

 “いやまあ、あれはその。/////////”

とんでもない大雪にも見舞われて、
ずんと寒い日も多かったような気もするが、

 “…そうだったかな? 確かに外に出れば寒かったけど。”

どうぞと出された湯飲みから立ちのぼる、
ほわりと温かい湯気を見やり。
そこからお行儀よく離れる白い手を視線で追えば、

 「??」

なぁにと小首を傾げる まろやかなお顔。
何も言わぬままに ふふーvvと笑えば、
釣られたようにますますと笑みが濃くなって、
それは麗しい慈愛の笑顔が出来上がる。

 “そうだった。
  一緒にいるからちいとも寒くないんだ、私たち。”

こうやってコタツに当たっているときも、お買い物に出掛けた先でも。
洗濯物を干すときも取り込むときも、
掃除のついでに溜まった新聞紙をくくってまとめるときも。
お風呂屋さんからの帰り道も、ほかほかのご飯どきも。
勿論、お布団や毛布を重ね合って眠る、そんな寝しなのひとときもvv
相手のいる側、掛け布団をちょっと持ち上げて、
おいで〜と合図すれば、
まだ微妙に含羞みながら、もそもそっとこちらへ寄って来てくれて。
えいって飛び込んで来ても良いのにね。
お行儀の良いブッダだから、それは はしたないとでも思うのかなぁ。
でもね、ころんて懐ろへ収まるブッダは、
スェット越しでも 触れるどこもかしこもやわらかくて、
髪からも肌からもそれは甘くて良い匂いがして。
寝場所が落ち着くと ちらって見上げて来るのが またかあいくてvv
何でもないことを話しかければ、
時々こちらの胸元とか撫でながら返事をしてくれて。
ああそんなしたら可愛くって堪らなくなるでしょー?
まろやかな顎とかに手を入れれば、
え?ってお顔になるけど、イヤイヤって逃げたりはしないキミで。
口許がゆっくり薄く開きかかるのに追いつけとばかり、
お顔を近づけてって…、///////////

 「…いえす?」
 「え? な、なにかな?///////」

何を考えていたものなやら。
じいっとこっちを見つめたまま固まってたから、
私が明日の朝はジョギングするかどうか とかかなぁ?(惜しいっ)←
だってもうすぐ三月なせいか、このごろ鼻とか妙にむずむずして。
そういや花粉もそろそろ飛散するねぇって、
イエスとも話してたところだものね。
呑気に焼き餅なんか焼いてる場合じゃないっての。

 “焼き餅…か。”

焼き餅といえば…という引き合いに出して良いものか、
スノウドームという切っ掛けからの、
某氏が絡んだ想いの錯綜というのもあって。
切っ掛けは私の側からの不機嫌というか、
イエスからすれば らしくない態度を見せたから、
それでのこと あんなことを思いついちゃったのかも知れなくて。

 “…人の気も知らないで。////////”

そうとも思いはしたけれど。
ああまで私を大事に想ってくれてたなんてと思えば、
こんな至福も他にはなくて。

 「ブッダ? どうかした?」
 「え? あ、ああいや、うん、あの……。///////」

人のことは言えない、
自分もついつい気が逸れての惚けていたようでと。
えっとえっとと取り繕いかけたブッダ様、
何げなく見やったカレンダーだったが、

 「そういや土曜日って“猫の日”だねぇ。」

そんな記載はなかったけれど、
猫には縁の薄からぬ身なせいか、
ふっと抵抗なく思い当たったブッダであり。

 「猫の日?」

 「そう、2が3つ並んでるから
  “にゃんにゃんにゃん”で猫の日。」

説明のためとはいえ、
にゃんにゃんにゃんなんて言い回しをしたブッダなのが意外だったか。
ついつい おっ?と玻璃の目を見張ったら、
それへ気づいてから、
あっと我に返ったそのままじわじわ赤くなった如来様なのへ、

 「ブッダ、可愛いよvv」
 「う〜〜vv////////」

ちょんと腰を浮かせて身を寄せてくるイエスへ、
だが、退けまではせず、
むしろ待ち構えるよにじっとしていたブッダ様。
お顔を寄せられても、何よぉというお顔になっておれば、
ふふと微笑ったそのまま弧を描いてたイエスの目許が、
ますますと細められたものだから。

 そのくせ、
 視線はこちらの目許から離れなかったものだから

何よぉと不貞てたはずが、そんな気色ごと搦め捕られてて。
気がつけば、含羞みながら視線が泳ぎ始めてたりし。
そんなこちらへ、肉付きの薄い口許をますますとほころばせ、
それはそれは甘くて優しい笑顔になったヨシュア様。
胸元へ一房こぼれている髪ごと小首を傾げてから、
指先で捕まえておくなんてしないまま、
するりと身を延ばし、顔を近づけて来ると。

 「…ん。//////」

まずはのご挨拶にお鼻同士を軽く触れさせ、
それへひくりと肩をすくめた伴侶様を宥めるように、

  大好きだよ、と

ほとんど吐息だけという囁きを捧げれば。

 「〜〜〜。////////」

もうもうと照れ笑いが込み上げる隙をつき、
ふっくらとした唇へ、そっと口づけて

  ほら、もっと暖かいvv




 「そうだ。
  お風呂屋さんの猫たちへ、何か差し入れ持ってこうか?」

 「う…ん。散らからないものにね?」






    〜Fine〜  14.02.20.


  *なんか日付限定ものが続いてないか?(苦笑)
   三月まで繰り越してても笑わないでね?

ご感想はこちらへvv めーるふぉーむvv

拍手レスもこちらvv


戻る