“瞳の蠱惑 ”
ブッダの瞳はようよう見ると虹彩部分が大きめで、
いわゆる黒目がちなものだから。
強い意志込め見据えられると、その目ヂカラは半端ないのだろうが、
逆に何でもないときの穏やかな表情の中に見ると、
それはまろやかで嫋やかな、和みの優しさに満ちてもいて。
しかも、漆黒と見紛う深い深い瑠璃色というの、
しみじみと判るほど じいっと見つめておれば、
奥行きもあっての奥深い眼差しなことから、
彼の人柄がいかに深いか、その深遠をも感じさせるようであり…。
「…何をややこしいことを言ってるの。//////」
「わあ。/////////」
声に出してた?と真っ赤になって問うイエスなのへ、
他でもない自分への評だったものだから、
ブッダもまたお顔を赤くして うんと頷く。
「まさかブログに載せるんじゃないでしょね、それ。//////」
コタツに開いたPCへと打ち込んでいたイエスだったのが問題で、
ただの独り言でも赤面ものだったそれ、
まさか広く世界へ発信なんてよしてよと。
午後のミルクティーを淹れて来たブッダが、
どうぞとイエスの分のマグカップを差し出しながら口を挟めば、
「そういうんじゃないから、安心しててvv」
これはちょっとした覚書と言い、
キーボードから手を離すと、カップを受け取って。
美味し〜と幸せそうに眸を細め、
いつもの絶妙な濃さ甘さのミルクティーを堪能なさる。
イエスがそうまでお気に入りとしているブッダの双眸だが、
いかんせん、今現在は 絶賛花粉症との戦いの真っ最中でもあって。
某天部様からのお力添えがあってもなお、
飛散の絶頂期に入った花粉の威勢は半端ではなく。
予防薬もあるにはあるが、
そうそういつも飲んでいては、
それこそ体内にそちらへの抗性も出来てのこと、
いざという時に効力が発揮されなくなる恐れもあるのだとか。
“いざという時っていつだろう…。”
ちょっと考えてしまったイエスなのをよそに、
必要でないときは出来るだけ服用しないほうがいいのかも知れぬと。
買い物以上のお出掛けを構えていない日は、
不織布マスクと目薬、アイウェアのみで何とかしておいでで、
「でもサ、あの素通しのメガネって、私ちょっとイヤなんだけど。」
「………え?」
悪口みたいで気が引けるからか、
手元のカップの中をのみ あえて見つめつつ、
そんな言いようをするイエスであり。
片や、そんな感慨を持っておいでだったとは知らなかったし、
他でもないブッダの、苦しい症状緩和への今や必須アイテムなのに、
そんな心ないことを言い出すなんてと、
ちょっとざわついた自身の胸元へ手を伏せ、
ギョッとしかかったご本人様だったが、
「だってサ、あれを掛けてるキミ、いつもより可愛いんだもの。」
理知的な度合いが増してカッコいいキミになるのかと思いきや、
「いつも以上に眸が潤んでいるもんだから、
何かこう、じっと見つめられると吸い込まれそうになるというか。」
「はい?/////////」
「本屋さんとかで店員さんと話してるの見てると、
あああ、その人はボクんだからねって飛び出したくなるってのか。」
「……イエス〜。//////////」
何だ、結局は惚気ですか。(苦笑)
だからね、
花粉の影響が出てるうちは極力 おウチにいなさいって、と。
相変わらずに無理な相談を言って聞かない、
過保護なんだか独占欲が強いのか、
ちょっぴり困った、でもでも
“そこが嬉し可愛いんですけどねvv”
……だそうな、ブッダの恋人さんであるのだが。
“そういうイエスだって。////////”
いや花粉症とは関係ない話ですが、と、
小さく頬笑むブッダ様。
自分とは違い、それは澄み渡っての玻璃玉みたいな、
淡くて繊細な透明感あふるる双眸をしているのが、
“相変わらずに素敵だなぁvv”と
ついつい見惚れてしまうのだそうで。
素直で純真無垢な彼の心根をそのまま表したような、
光を集めて凝縮させたようなその双眸の繊細さは、
何でも受け入れる彼の柔軟さとも合致していて。
何かしらの思案に耽っているものか、
睫毛の陰が落ちると、そこに深色の滲む様がまた、
眼差しへ深みを与えての、何とも美しくてならぬ。
「イエスの眸こそ綺麗じゃない。」
コタツの天板へひじをついての頬杖をつき、
何とはなしに呟けば、
「え? ブッダってこの眸が好きなの?」
「う、うん。だって綺麗なんだもの。///////」
速攻で訊き返されたのへ、ややもすると怖じけづく。
見栄えに惹かれるなんて子供みたいかなと、
そこはさすがに含羞みを見せれば、
「え〜〜? 私より眸の方がいいの?」
たちまちのように不満そうなお顔になるイエスなのが
……相変わらずの“不思議ちゃん”だと申しましょうか。(笑)
眸だけ好きになっても何にもしてくれないよ?
好きだよって言ってもくれないし、
抱っこも出来ない、
あのその ちうだってしてくれないし。
「私を全部のほうが絶対に得だと思うけどなぁ。」
「…あのねぇ。////////」
何でそんな比較を持って来て、しかも身を乗り出すのと。
いかにも真剣なキメ顔を見やりつつ、
複雑そうな苦笑をこぼしたブッダなのは言うまでもなくて。
“子供みたいなんだものねぇ。”
故意にかな、いやいやこの人のことだから、
案外とこういう意外な物差しも、当たり前にお持ちなのかも知れぬ。
深い思索に耽っているような真剣な横顔のまま、
実は…バラエティを観ようか動物の赤ちゃん特集を観ようかと
それへ迷ってるだけって時もあるし。
そうかと思えば…
『……なに? よそ見?』
その懐ろに招き入れた自分が、
含羞みもあってのこと、なかなかお顔を上げぬままでおれば。
こっちを向きなよなんて直截なことは言わず、
そんな端的な、でもでも自分を差し置いて?と聞こえるような、
ドキドキするよな言い回しをしもする人で。
「〜〜〜〜。////////」
「あ〜、やっぱり眸にだけご執心なの?」
ついついちろんと視線を投げれば、
どう解釈したものか、ややこしいことを言い立てる誰かさん。
彼を差し置いての他を好きだなんてと言われるのは、
ブッダとしても心外だったか、
ああもうっ、と
ちょみっと眉を寄せて見せ、
そのまま身を起こすと…それからは一気呵成で。
「だから…私はイエスの全部が、
いいお声も髪も、頼もしい手も指も、
凛々しいお髭も、ちょっと探れば骨が当たる肩も、
オレンジの匂いがする懐ろも
キスが上手な口許も、
全部全部大好きなのっ。//////////」
どうだ参ったかと、
大きなお眸々に強い意志込め、真っ直ぐ見やって言い切れば、
「う…。//////////」
どんな駄々もこれには敵うはずもなく、
気合いで負けたか、ややのけ反ってしまったイエスだったものの。
「……う、あ、や、あの。//////////」
自分が何を口走ったか、言った後から気づくブッダなのもまたお約束。
しかもしかも、一見、気迫に圧倒されましたという、
逃げ腰な態度を見せたイエスだが、
「………vv」
「何でそんな、嬉しそうなのっ。/////////」
「決まってるでしょ、嬉しいからだよvv/////////」
訊く方も訊く方なら、も少し笑みを濃くして応じる方も応じる方で。
もうもうもうっと真っ赤になった如来様がお顔をおおってしまい、
そのまろやかな肩や背中へと
螺髪が解けての長いつややかな髪があふれ出るまで、あと5秒…。
〜Fine〜 14.03.25.
*相変わらずのバカップルです。
本編と大差無い内容のお礼ですいません。(笑)
勿論、このあとは、
コタツのお向かいまでを立って行って、
ごめんねごめんねと懐ろに掻い込み、
満足してくれるまでぎゅうと抱っこをし、
おでこや瞼へキスを降らせるイエス様なのですよ、はい。
めーるふぉーむvv


|