キミとならいつだって お出かけ日和

  “本日はお日柄もよく… ”  〜枝番 四月馬鹿 Ver.



随分と長いことのいつまでも、
寒い日が続いた三月弥生は、
終盤になって“おっといけねぇ”という大慌てで、
春めきをめきめきと進めた感があり。
各地で桜の開花が確認され、
花粉も活発に飛び交う中、
日本では新しい年度が始まる節目、
四月睦月がやって来た。

 “でもでも何ぁんか、
  世間様の話題は消費税のことばっかだったけれどもね。”

こちらもその煽りからという運び、
店内の値札の張り替えを手伝ってほしいと
顔なじみの雑貨屋さんから頼まれてしまったイエス様。
毎日単価が変動するような生鮮ものを扱う大型スーパーや、
全国規模でチェーン展開しているコンビニなどでは、
棚の表示はともかく、個々の商品への対応の方は、
大元のPOSシステムを通じ、
バーコードデータを切り替えれば済むのだろうが。
個人経営の小さなお店ではそうもいかない。
バーコード表示しかないような商品が大半なため、
混乱のないようにと1つずつへ貼られてある値札を、
なんと一斉に全部貼り替えねばならぬ。
一番数の多い定番商品ほどそれが必要とあって、
人手が要るんだと依頼され、駆り出された彼であり。
昨日までは陳列棚用の値札製作に集中し、
案外と後回しになってた入学祝い品などへの駆け込みのお客様を見越して
遅くまで開けていた昨夜の閉店後からこっちは、
棚やPOP、現品への、
値札の張り替えをと一斉に取り掛かった。
他のお店でも似たような騒ぎだったようで、
商店街全体がごそもそ胎動していたようなものだったが、

 “……それにしても、”

昼の気温が上がる前触れ“放射冷却”というやつのせいで、
陽が上がる頃合いの今、一番ぐっと冷える中。
結局は徹夜の作業になってしまったため、
眠くてたまらぬ目許をしょぼつかせつつ、
ほてほて辿る帰路の途上にあったイエスだったが、

 “ブッダは大丈夫だったのかなぁ。”

実は昨夜の大仕事には、
絵を描くのも得意というブッダ様も駆り出され、
POPの書き換えを手伝う要員として頑張っておられたのだが。

 『……っ、ご・ごめん。』

棚やワゴンへ添える、カラフルで見やすい真ん丸な字体のPOP、
お願いしますと頼まれた分は全部、そりゃあ見事に描き上げたものの。
やれやれと気が緩んだ途端に、何だか具合が悪くなった様子を見せたので、

 『ブッダ、大丈夫?』
 『真っ青よ、ブッダさん。』

棚の値札は油性のサインペンで書き直していたから、
その匂いのせいかしら。
それとも もしかして花粉症が悪化したかなと。
居合わせた店長さんやバイトさん、勿論のイエスも案じた末に、
一番頑張ってくれたのだから、
後は私たちに任せて、
先に家へ帰って休みなさいという運びとなったのであり。

 “陽が暮れてたって花粉は舞ってただろうし。”

それにそもそもブッダは宵っ張りではないほうなので、
慣れないことをし続けたのが堪えたのかもしれない。
送ってってやりたかった気持ちは山々だったが、
ギフトカードや封緘用のシールセットなど、
それは細々した商品の多い雑貨屋さんだったため、
途中離脱2人は認められなくて。

 『私は大丈夫だよ、イエス。』

大丈夫じゃないから帰宅を余儀なくされた人なのに、
心配しないでと気丈に微笑い。
無理はしないでゆっくり帰るから、キミはお仕事に集中してねと、
生真面目な彼らしい一言を言い置いて、
ふらふらしつつ帰っていった後ろ姿が、
どうしても気になってしょうがなく。

  …いえ、お仕事に支障は出してませんよ?

そんなしたらばやり直しとなって、
結果、帰るのが遅くなるだけだから。
日頃、愛想がよくて屈託がないと言われている評を吹っ飛ばすほど、
一点集中して大量の値札張り替えをやり遂げたイエス様。
少し休んで行ったらと勧められたの、
お申し出はありがたいのですがとふっ切って。
くたびれた身を、それでも懸命に動かして、
猛烈な睡魔と戦いつつ、松田ハイツまでの道を頑張って歩み。
すっかりと明るくなった頃合いに、やっと辿り着いた愛しの我家だったが、

 「……?」

あれれと気がついたのは、
いやにいい匂いが辺り一帯に垂れ込めていること。
花のような果実のような甘い甘いこの匂いは、

 「ブッダ?」

そうだよ、これって
ブッダがあのその、含羞んだときに感じる
アンズの匂いじゃないのよと。
あやや〜vvと、まずは やに下がりかけたイエス様、
それから、いやいやそうじゃなくってと、慌てて歩調を急がせる。
だって、間違いなく体調が悪くなったから、一人で戻った彼なのだ。
頑固だから自分からは医者にも行かなんだかも知れないが、
彼もまた、天界を支える柱的な尊の一人ゆえ、
ずんと具合が悪くなったら、
それこそ梵天さんとか天部の方々が案じて飛んでくるに違いなく。

 “そんなまで悪くなってたのかなぁ。”

何か快方に向かうお薬を処方されたとかして、
結果として大事ないならいいけれど。
まさかまさか、尋常でなく熱が上がってのこの香りだったら大変だと。
2階へのステップを転びそうになりつつ駆け上がり、
ほんの数歩分の通路なのももどかしく、
むしるように開けたそのまま、
飛び込むように自宅のドアをくぐり抜ければ。

 「わ、びっくりした。」

上がってすぐのキッチンに立っていたのは、
イエスが瞬間沸かしポットのごとく、
それは勢いよく案じまくったお相手の、ブッダ本人ではないか。
さすがに今朝はジョギングには出なかったか、
寝間着にしているスェット姿であり。
だがだが、こうまで早い時間に起き出しているなんて、

 「どうしたの、眠れなかったの?」

ああそうだよね、
いつもみたいに私が“おいで〜”ってしてあげれなかったんだものねと。
そこを悔いてか
“くっ”と唸って悔し泣きの涙を目尻に浮かべかかるイエスなのへ、

 「いやあの、ちゃんと眠ったよ?」

家に着いたのはそれほど遅い時間じゃなかったから、
そこからたっぷり寝たんですっきりしているんだよ、と。
まずは離れ離れになった後のお話をしてくれて。

 「イエスこそ大変だったでしょう?」

寝ている間に帰って来るかも知れないなとか、
お夜食は冷蔵庫にチャーハンを用意したけど、
ゴソゴソうるさく出来ないって気を遣うキミなんじゃなかろかとか、
いろいろ気になったんだけど、と。
ホントにぐっすり眠ったのかい?と
あらためて訊きたくなるほど、
微に入り細に入り案じたらしい如来様らしく。
さあさあ手を洗ってお部屋へ上がってと、
何やら洗い物をしていた場を譲り、先に六畳間へ向かった伴侶様。
確かに口調もしっかりしていて、
あれほどぐったりしていた容体もすっかり収まっているらしく。
螺髪のせいですっきりとあらわにされた頬や額、
首元や手元などに覗く、乳白色の肌も輝かしいほど瑞々しいままだし。
昨夜はやや重たげだったまぶたに隠れかかってた双眸も、
いつも通りに潤んだ瑠璃の瞳へ、それは澄んだ眼差しを据えており。
やわらかそうな口元も、
それはぷっくりと愛らしい艷をたたえていて。
それらが醸す極上の微笑みの、何と麗しくも温かいことか。

 “だったら良かった…。”

きっと、気分が爽快になったんで、
その反動でこうまでのいい匂いがするんだななんて。
ほっと胸を撫で下ろしたイエス様。
途端にどっと眠くなったが、言われたことはやんなきゃと、
手を洗ってからジャケットを脱いで…。
あ、そういえば玄関で花粉を払って来なかったよと、
脱ぎかけたジャケットを手に回れ右をしかかったけれど。

 “……はい?”

もう布団は畳まれていた六畳間には、
卓袱台代わりのコタツが既に出されていて。
天板の上には、
ブッダが用意したのだろう朝ご飯が整然と並んでいたのだが。

 「ああ、えっと。
  やっぱり眠いよね、ご飯は後にする?///////」

気が利かなくてごめんねと、ちょっぴり含羞みつつ言い出すブッダ。
だがだがイエスがギョッとしたのはそこではなくて。

 「ちょ…ブッダ、どうしたのこれ。」

そこへ並べられてあったのは、
お茶椀に盛られてほかほかと湯気の上がっているまめご飯に
高野豆腐の卵とじ、枝豆入りのポテトサラダ。
大豆ミートの唐揚げに、スパイシーポテトフライに、
レンコンとゴボウのきんぴら、モヤシのお味噌汁と、

 「朝ご飯だよね? まさか、昨夜無理して作ったんじゃないよね?」

イエスの大好物だらけという、
豪華な、だがだがとんでもないラインナップへ、
何でどうしてと眸を丸くするばかり。
チャーハンを作りおきしたというのだって、おいおいと呆れたのに何てことと。
嬉しいと思うよりも断然、案じる気持ちが騒ぐそのまま、
ジャケットの花粉も後回し、六畳間へのしのしと歩み寄り。
コタツの傍らへちょこりと正座していたブッダに詰め寄ると、
一体どうしたのと問いかけたところが、

 「………………あのね?」

えっとうっとと、やや含羞みつつ、
間近に寄ったイエスを、まずは直視できませんとうつむいて接していたものの。
もじもじと俯いてたところから上目遣いになって見せ、
実はイエスへの最強の態度にほかならぬ、そんな含羞みを披露してのち、

 「実は昨夜、薬師さんに頼んでお医者様を紹介してもらったんだよね。」
 「えっ?」

じゃあやっぱり、そうまで具合が悪かったの?と。
あらためてぎょっとしたイエスへ、だがだが、

 「ほら。
  キミがきっと心配するだろと思ったから、
  それで大事をとったんだよ。」

にっこりと蕩けるような笑みを見せた如来様が続けたのが、

 「でもね?
  診てもらったんだけど、どこも悪くはないし、
  サインペンだっけ? 揮発系塗料の中毒でもないって言われて。」

じゃあ単なる体調不良でしょうかねと、結論づけしかかってたら、

 「そしたらそこへ、ガブリエルさんが来たの。///////////」

 「……………ちょっと待って。」



  ………さて、ここで問題です。(こらこらさぼるな・笑)







    〜Fine〜  14.04.01.


  *というわけで、受胎テロネタでした。
   (ズボラのし過ぎで判りにくかったかもですが。)
   ちなみに、エイプリルフールというのは、
   午前中に罪のない嘘をついて、
   午後にはそれを“嘘でした♪”とばらすのが作法だそうですが。
   しばらくほど このまま差し替えないかもです、すいません。

  *でもね、イエス様はきっと、
   嘘でもホントでも(おいおい)
   ブッダとの子供vvと、素直に信じて喜んじゃうと思うのですよ。
   何せお母様は処女受胎なさった聖女ですから、
   イエス様に“心当たり”が全くなくたって、
   自分がそうやって生まれたくらいだ、
   ブッダ様の胎内へ子を宿すことも可能かもと、
   あっさり思い込みかねません。

    「…イエス、そんな調子で
     逢ったこともない女子の人が“あなたの子よっ”て
     赤ちゃん連れて来たらどうするの。」

    「えっとうっと…。//////////」

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