よってたかって恋ですか?

 

 “師走も ほっこりvv” 



割と順当にやって来た寒さに合わせ…たにしては、
ややバタバタッと出した感のあるコタツが
もはやしっくりと部屋には馴染んでいて。

 「はい、どうぞ。」
 「わ、ありがとーvv」

ブログへの書き込みや返信にとPCを開いていたイエスへ、
お茶でもいかがと いつものミルクティーを運べば。
すぐにもこちらを見上げて来て
それは嬉しそうなお顔になるのが、
ブッダの側へも
胸底から温かくなるほどの“嬉しい”をくれて。

 “お澄まししてると、
  冴え冴えしたイケメンだってのにね。”

切れ長の双眸には玻璃色した虹彩の瞳が据わっており、
伏し目がちになると睫毛の陰が落ちて
淡色に不思議な深みが増すのが何とも言えず。
自分と違って やや頬が薄く、
無心な表情になると
どこか愁いをおびた雰囲気さえ まとってしまうお顔が、
自分と向かい合うと途端に屈託なく微笑うのが、
何だか特別な反応なようで。
そうかも?なんて意識した途端、
胸のどこかや背条のどこか、
擽られたような気がしてそわそわさせられる。

 “昨夜だって…。”

こちらも そろそろそういう時期なのか、
歌の祭典とか銘打って、
たくさんの歌い手さんが大きなホールに一堂に会し、
有名な持ち歌と新曲と、ご披露くださる番組が続いていて。
そんなののうちの一つを
今そうしているようにコタツにあたって観ておれば、

 『…え?』

不意に何にか注意を奪われたかのような顔になり、
そのままポロポロッと涙をこぼしてしまったヨシュア様。
え?というのは自分で上げた声でもあって、

 『なんでなんで?
  どうして私、今 キュンってしたんだろ』

ありゃまあとボックスティッシュを差し出したブッダへ
向こうから訊いて来たほどの可愛いお人でもあって。
ちなみに、そのときに演奏されていたのは、
某熱闘甲子園のエンディングテーマだったので、
条件反射で何か切なかったの思い出しちゃったんじゃない?と
彼からの“なんで?”へ応じて差し上げたところ。
あっと、自分でもそれなりの理解が追いついたらしい顔をしたくせに、
それならそれで恥ずかしかったか、

 『ブ、ブッダだって、
  聖教新聞のCMで涙ぐんでたくせにっ。』

 『そうだったね、ごめんごめん。』

キセキのPVで泣いちゃったのはお揃いで、
ままそれらは、
そういうのへの感受性が豊かなんだからしょうがないとして。

 【 ここ、○○神社の庭園でも紅葉が見事です。】

木枯らしも秋の訪れも順当だったが、
それでも西の方では今がちょうど紅葉の季節であるらしく。
京都や奈良といった古刹の多いところでは、
クリスマス前の市街地のイルミネーションに対抗してか、
こちらも陽が落ちるとライトアップされていてと、
そちらの神秘的な風情も事前に録画されたもので紹介されており、

 「桜のライトアップも幻想的で綺麗だけど、
  紅葉を夜中に見物するなんて、
  なかなか考えたものだねぇ。」

今時分は陽が落ちるのも早いから、
そうそう遅くまで明かりが映えるの待つこともなかろうし、
冴えた夜を背景にした紅葉はさぞかし見ごたえもあろうと。
今は明るい中での西の錦景を紹介中の旅番組、
コタツにあたりつつ“ふぅん”と眺めていたお二人で。

 「こっちではそろそろ散ってるところの方が多いのにね。」
 「西のほうが暖かいのだろうね。」

暖かいのなら、季節の進み具合も早いんじゃないの?と
幼い子供のように素朴なことを訊くイエスなのへ。
春が来るのとか夏が来るのは確かに早いけれど、
秋冬の寒いのが来るのは 北や東のほうが先なんだよと、
これもどうぞと 作り置いてたシフォンケーキを出しながら、
親御のようにやんわり答えて差し上げて。
そっかとあっさり納得したイエスが見やったテレビ画面では、
どこかの街なかだろう、
街路に沿った木々へまとわせたLEDの
明るみも冴えたイルミネーションがそれは華やかに展開しており。
カップルや家族連れなどが、
オブジェの前で写真を撮ったりしつつ仲良く散策しておいで。

 「イルミネーションかぁ。」

様々な光が織り成す華やいだ雰囲気といい、
それを観て それから連れと顔を見合わせてという暖かい過ごしようといい、
この寒いのにと腰が重くなりがちな大おとなはともかく、
イベント好きな層には ちょっとしたお出掛けに打ってつけの工夫でもあって。

 「そういや立川駅前の大通りも
  こういうのされてなかったっけ。」

ほら、メインストリートになる側へ
随分と綺麗なのが飾られてなかった?と、
イエスがわくわくっと訊いて来て、

 「う〜ん、
  クリスマスツリーぽいのの周辺に、
  色んなのがあったような気もするけど。」

そもそも陽が暮れてからのお出掛けというと、
銭湯へ行くくらいのものなので。
いかにもな飾り付けには気づいていたけど、
それがライトアップとかイルミネーションまでされていたかどうかは、
まだ昼間のうちしか見ていないブッダには どうとも断じにくいらしく。
作業も済んだかPCも閉じてしまって、
片手間ではなくのこちらをだけ見つめて来る
そんなイエスの楽しげなお顔と向かい合う格好となり、

 じゃあ今日にでも、
 銭湯に行くついでに少し遠回りして出掛けてみよっか?

 う…んと、でもさぁ。////////

 なぁに? 急に歯切れが悪くなっちゃって。
 あ、人目もあるから
 寒いねなんて まったりとくっついて眺めるのとか
 堪能出来なくて詰まんない?

 だってサ。////////

 図星なんだ(笑)

何しろ彼らは双方ともに、
誰か一人へだけそそぐ格好の偏愛に固執してはいけない身。
よって、
男同士だと土地によっては体面がどうの…という以前のものとして、
互いへの真実の愛を、
そうそう表立ってあからさまにしてはいけない身でもあり。
仲がいいのねぇ程度に収まってる今は良いとして、
それ以上の熱愛を、他の誰にも、人の子にさえ漏らしては不味かろうと。
忘れたころに思い出すのも、何ともイエスらしいことと
(ええ、そういう順番の掛け合いでしたの・笑)
何とも微笑ましいなと苦笑した釈迦牟尼様、

 「でも大丈夫だって。
  こういうのを観に来てる人は
  周りまで そうそう見てやしないから。」

自分のマグカップを両手で包み込み、
ややうつむけたお顔に迷いを浮かべるイエスへ手を延べると。
口許近くまでこぼれていた髪を頬から掬い上げてやりつつ、
問題はないよと言葉を重ねる。

 「そぉっかなぁ。」

それでも納得はいかぬのか、
お顔も上げぬままのイエスなものだから。
しょうがないなと奥の手を思いつき、

 「じゃあ、私は髪を下ろしちゃおうか?
  そうすれば、
  ああ、噂のカノ女だなって思われるだけで済むでしょう?」

 「…それはもっとダメ。」

 「はい?」

不意に 力強い声が返って来て、
そこまでの もじもじがあっさり払拭されたほど。
何だ何だと意外に思い、
ついつい背条まで伸びちゃったブッダだったのへ、

 「そんなしたら、ブッダのファンが増えちゃうでしょー?」

こちらを向いていたイエスの眼差しが、
いつの間にやら随分と真摯なそれへ変わっており、

 今でさえ、奥さんがたとか愛子ちゃんとか、
 ボタン星人なんて かこつけて群がる(!)
 ちびっ子たちに大人気のキミなのに。
 あの素晴らしく麗しい姿を、しかも夜目の中で披露しちゃったら、

 「今度は男性陣の萌えをくすぐること請け合いなんだからね。」
 「はぃい?」

 もうもう相変わらず判ってないんだから。
 何でまた 髪を下ろしたブッダが、
 いつもいつまでも私のカノ女だと誤解されてると思うの。

 「髪の長さなんて単なるおまけで、
  それだけ臈たけた美人さんだからに決まってるでしょー?」

 「え?//////////」

そりゃあさ、
こんな美人が私の恋人なんだよって見せびらかしたい、
いけない虚栄心も沸かなくないけど…と。
もしょりと小声で付け足しつつ、

 「誰かに奪られる原因を、何で自分で作らないといけないの。」

だから、そんなのカモフラージュでもなんでもないのと。
それこそ窘めるように言うイエスなのが、
妙に凛々しくて、しかも間違いなく悋気からの言だというのが、

 “あああ、喜んでちゃいけないはずなのに…。///////”

むしろ、私にはキミだけでしょうと言って
当初からの掛け合いのまんま、リードする余裕はどこへやら。

 「あ、えっと。////////」

何度も触れているものだから
そのふわふかな感触はイエスもようよう知っている、
すべらかな頬をほのかに赤くし。
そちらも蓮の蕾を思わす彩り、
セーターの袖口から伸びる手首や甲のところは透くほど白いのに、
指先に淡く滲む緋色が何とも儚げで、
それはそれは まろやかそうな慈悲の御手にて、
や〜んとお顔を覆ってしまう様子が何とも可憐で。
そこへ はさりとあふれてかかる、
つややかで豊かな深色の髪がまた、

 “ほらほら、これだもの。/////////”

こぉんなまで可愛らしい 私だけの(ここ重要)如来様を、
何でまた 尚も麗しく見えるだろう
イルミネーションあふれる街に連れ出さにゃあなりませんかと。
言い出しっぺはどちらだったやら、
今や憤慨しかかっておいででもあるヨシュア様だったりし。

 ま、まあ、一段と寒くなるらしい師走ではありますが、
 こちら様にはあんまり関係ないかも知れぬ
 幸せな暖かさにくるまれてるらしい…ということでvv




     〜Fine〜  14.12.01.


  *聖教新聞のCMで
   毎回ついつい じわんとしてしまうのは
   何を隠そう私です。
   図書館のお姉さん篇もですが、
   友達へ病室での卒業式篇とか無かったっけ?
   あれは医療製品の会社のだったかな?

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