またの冬が始まるよ
 

 “お互い様です 



「最近、テレビでネットも出来るっていうツールが増えてるよね。」
「…。」
「NTTさんのBOXに続いて ぐーぐるさんが出したと思ったら、
 あまぞんも何かそういうツールを出したみたいで。」
「…。」
「あ・それに、スマホもこれ以上は進化しにくいかと思ってたら、
 洗剤でじゃぶじゃぶ洗えるのとか、
 ガラケーみたいに二つ折りで畳める“ガラホ”っていうのも出るらしいね。」
「…。」
「ブックカバーみたいなケースは何だか大仰だし、
 そうかといってそのままだと
 カバンの中とかで勝手にスイッチ入って
 誰だか判らないところに電話かけてたたなんて笑えない事態に…。」
「…。」

こたつに入っての長閑な午後。
特に目を剥くようなニュースも…全くないわけではないけれど、
臨時の速報ですと一大事を伝えているでもないワイドショーなんぞをながら見しながら、
他愛ない話を一緒に観ている伴侶様へと振っていたイエスが、だが、

 「……………ブッダぁ。」

あまりに反応が返ってこないことに気がついて。
おやとお顔を上げ、
じいっと見つめること数刻…をかけて確かめてから。
怪訝そうに眉を寄せていただけ、だったところから、
見る見ると心細げに表情を曇らせて、
哀訴するよな声を上げる。

 「もうもう、どうしていちいち瞑想モードに入るかな、キミは。」
 「あ、ごめんごめん。」

家電の話するといつもじゃなあい?
私としては、最新の話題のつもりで
“知ってる?”って程度のノリで話してるだけなのに、
何でそうも過剰に警戒しちゃうかな、と。
今の今のが初めてではないらしい、
性懲りもなくと言わんばかりな抗議の仕方をするイエスだったのへ、

 「うん。ついつい警戒しちゃう癖がね。////////」

いつだったか、
動かないままでいるとマナーモードで知らせてくれる時計の話をした折も、
イエスとしては 一週間も微塵も動かぬままだったブッダを案じて口に出しただけのこと。
だっていうのに、
もしかして買いたいなって要望だったら聞き流した方がいいのかもなんて、
聞こえていたんだねという言いようをしたブッダの言い訳が正しくそれだったので。
ああ今回も何かそれっぽい警戒から瞑想へ逃げたなと、
そこはイエスへも“学習”をさせたらしくって。

 「スマホは今ので十分間に合ってるよぉ。」

洗えるのなんて、どっちかっていうとブッダ向けじゃないかって、
そう思って話に出しただけだしと。
肉づきの薄い口許を、その上に乗っかっているお髭ごと、
不満ですという方向にたわめて見せるヨシュア様なのへ、

 「うんうん、ごめんなさい。」

確かに大人げない態度だったよねと、
肩をすぼめて苦笑を見せつつ、すんなり謝る如来様だったりし。
微妙に上目遣い同士なところがお揃いで、
向かい合っていての同じような格好や表情を取り合ってることへ
先に気付いたイエスがまずは、

 「〜〜〜〜〜ぷぷvv」

こらえが利かなんだか、小さく吹き出してしまい。

 「???」

まだ気がつかないか、イエスが笑いだした意味も判らずに、
キョトンとして顔を上げたブッダだったのへ、

 「何か鏡みたいになってたね、私たち。」
 「あ……。」

片やは拗ねてのこと、そして片やは“ごめんね”と恐縮してのこと、
なのに同じようなポーズとお顔だったなんてねと。
そんな他愛ないことであっさりと機嫌を直してしまい、
それどころかすっかり楽しそうに嬉しそうに笑ってくれるイエスなのが、

 「…。///////」

ブッダには目映くってしょうがない。

 「でもでも、本当にいきなりの瞑想はヤだからね。」

二人でいるのに独りぼっちにされるなんて、
しかも相手がキミだなんて、居たたまれないどころじゃないんだからねと。
イエスの言いようも ごもっともなことだと判るし、
そうと判る自分なのがまた面映ゆい。
大好きな相手だからこそ、こうまで傍に居ながら放っておかれるのはたまらぬと、
隠しもしないで嫌だと口にしてしまうイエスの素直さが愛おしいし、
この彼からそうと思われていることが誇らしいほど嬉しくてたまらぬ。

 “でもね…。”

唐突にというのはキミも同じだったじゃないかと、
ふと、ブッダも思い出すことがないではなかったり。
かつて天上世界にいた折は、
どちらも暇ではない身の上ゆえに、きっちり約束しての逢瀬もままならず。
それでも相手が足を運んでいないかと、
淡い期待半分で出向いたのが、“端境の庭”という小さな森の中。
そのころから既に 自分もイエスへとい抱く想いは似ていたか、
姿を見つけられたらそれは嬉しくて。

 だから、

 『…あ。いけない。』

人から解脱をして目覚め、成仏した自分と違い、
生まれからしてこの天界の光の者であるイエスは、
神の子でもある立場からか、
他の天使たち以上に 過酷な生きざま境遇にあるものを
迎えにと降臨する場合が多いようで。
しかもしかも、人の命運が判るのは神のみということか、
イエス本人へも先ぶれなしの運びになるものだから、
ブッダには尚のこと唐突に宣されるそれであり。

 『ブッダ、ごめん。私 地上へ降りねばならないようだ。』

誰か何かが呼ぶものか、
ふわりとその尊い身が淡く光って、
輪郭から徐々に掠れて消えてゆき、
一旦天乃国へ戻ってから対象の居る地上へ降り立つ彼なようで。
そうとなる運びはいつだって唐突だったし、
ほんのいっときのことではなく、
天へ召される瞬間に舞い降りるのではない
事情が錯綜した降臨もあったとか。
同じ聖なる天上の存在だとはいえ、自分は浄土世界の人間だから、
天乃国の事情なぞ教えてもらえるはずもなく。
時に数年またぎというような、
それだけ難しい事態へ寄り添いに降りたのだろう彼を案じて
ただただ待つしかなかった場合もあったの、今更ながらに思い出してしまい、

 “…何が 忍耐の人だか、だよね。”

その折だって実を云えば心穏やかにはおれなんだし、
今はもっと、
イエスに関して自分に知らないことがあったらと
思うだけでも胸が騒いで落ち着かぬ。

 「…うん。いきなりの瞑想は無し、だね。」

約束しますとあらためて言を重ねた如来様の、
ちょっぴり寂しそうな笑い方へ、

 “…え? 何なに?”

こちらも微妙に、
訳も判らず切なくなってしまったイエス様だったそうでございます。







    〜Fine〜  15.12.06.


 *いきなり忙しくなった師走で、
  更新があっさり止まってすいません。
  しかも、なんか
  新刊のとあるお話にかぶってる出だしなような…。

  あ、ちなみに“降臨”のシステムは完全なフィクションです。
  原作様ではブッダ様もお迎えにいらしてたみたいですし、
  よく判らないのが正直なところです。(おいおい)

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