天穹に蓮華の咲く宵を目指して
      〜かぐわしきは 君の… 2

 “性懲りのない話”


ひくり、と
それは判りやすく震えたそのまま、
何をか堪えてのこと、その身を縮めた彼だったが。
苦痛にはありとあらゆる苦行で慣れがあっても、
この種の感覚へだけはまだ、耐えるにも限度というものがおあり。

 「う…、ぅう、…くっ。////////」

息を詰めるようにしての我慢もまた、
その堪えよう自体が甘い色香を滲ませているものだから、
罪なコトこの上もなくて。

 「あっ。…や、は…、っく、んん…。///////」

堪えてもかなわずに、切れ切れに漏れてしまう声がまた、
圧し殺してのものだけに、か細くて煽情的で。
ぱっちりと大きな深瑠璃色の瞳を瑞々しくも潤ませ、

 「ん、んっ…あ、ぅ…。////////」

堪えが利かぬか、逃げを打っての身を反らしかかっては、
息継ぎのように はぁはぁと短く息をつくところも。
蓮っ葉な乱暴さなぞとは無縁なままの、
むしろ そのしどけなさこそが何とも言えぬ蠱惑に満ちており。

 「ん、ん…っ。あ…っ。////////」

再び強い何かが込み上げて襲い来たものか、
つま先までもきゅうと折り曲げての身をすくませ、
助けを求めるようにして頬を寄せたお膝へすがる。
体中の肌が汗ばんででもいるものか、
甘い香りが立っていての
それはもう芳しくってむせ返るようでもあって。

 「あ、あ…あぁっ、や、あぁっ!!」

ひくんと再び、しかも今度は総身が跳ねて、
まろやかな顎が反り返っての、目元はぎゅうとつむられているところなぞ、
嗜虐性がなくとも、ぞくんと何かが擽られてしまいかねない威力でもあり。

 「やぁ、やめ…あっ、あ…、」
 「やめるの? やめていいの?」

低いお声で静かにそう訊かれると、

 「〜〜〜。//////」

総身はぎゅうと縮こまったまま、
それでも…しばらくして、
真っ赤なお顔がゆるゆるかぶりを振るところは、

 “存外と判断力も残ってるんだ。”

そうでしょうともと、訊いた側も納得し、
再び手元をそろりと動かせば。途端に、

 「……う、あ、そこ…、あ、ぁんっ!」

堪えが利かぬか、嫋やかな手が宙を泳ぎ、
あ、あ、と忙しくさまよってから、
たまたま間近にあった座布団をきゅうと掴みしめ。
自身を襲う激しい感覚を、せめてやり過ごそうと眸をつむる。
思いの外 長い睫毛が臥せられた先、
いつもなら清楚に白い頬も今は真っ赤に上気しており。
息と声を殺そうと、ぎゅうと咬みしめてしまうため、
ぽってりと愛らしい口元も赤みが強い。
赤いだけならともかく、
先程から息も上がっての急いているせいか、
熱い吐息を浴びてのこと、しとどに濡れており。

 「っん、あ、ぅ…あっ。////////」

とうにほどけてお顔や肩をおおう深色の髪が幾条か、
その艶めいた口許へ掛かるのを、そおと払って差し上げれば、

 「あ、あぁんっ、//////」
 「あ、ごめんごめん。響いちゃったね。」

赤みの差した耳朶に触れたか、
一際 過敏そうな、
それでいて閨房にての喜悦を思わせもするよな、
何とも罪作りな声が、短いそれながら悲鳴のように飛び出して。
ごめんごめんと謝る人へ、

 「ん、んう…。いえすぅ、////////」

ふと、名指しでのお声が掛かったものだから。
なぁにと応じて手を止めれば。
やや乱れて荒い息をしつつの、だがだが甘いままなお声が、

 「…ぃ、いきたい。//////」

今にも萎えかかりそうなとろけるようなお声で、そうと紡ぐ艶なこと。だが、

 「だめ。」

お相手の言葉はにべもなく。
何でどうしてという、あやすような説明もないままなのへ、

 「やぁだ、イクの。
  イきたいお願い、いかせて、イエ、ス…っ、あっ。」

言いつのる声をあっさり途切らせ、
ふるりと肩が震えたブッダが、そのままきゅうと四肢を縮め、身をすくませる。
意地悪な恋人が善いところをわざとにさわりと撫でたからで。

 「ダメって言ってるでしょう? まだ早い。」
 「ん、そんなことっ、なぃ…あっ、やあっ////////」

座布団を掴む手指が、悩ましげにうねり、
ぎゅうとつむられた目元には、
うっすらとした潤みがあふれかかってさえいて。
堪えが利かずに声を上げるほど、辛そうで苦しげな姿だというに、
これほどまでに可憐で美しい様もまた、滅多にないだろう妖冶さで。
悶え乱れる仕草や声は、
さながら修行中の験者を惑わす仙女のごとしであるのだが……。





 もうお気づきですね、皆様。(笑)

朝っぱらからお耳掃除の態勢、
愛するハニーへひざ枕をしておいでのイエス様と、
相変わらずに感度よすぎなお耳のせいで、
もしかせずとも近所迷惑…かも知れぬ、(かも?)
罪なお声を上げ倒しておいでだったブッダ様だが。

 「今から行くったって、薬局の栄さんはまだ開いてないでしょう。」
 「だって…トイレットペーパー、3カ月振りの半額なんだもの。」

しかも個数無制限と来て、これはもうもう“聖戦”なんだと。
ふらふらしつつもイエスのお膝から身を起こし、
上気したままのお顔で、グッとこぶしを握られて力説されても、

 「何か説得力が…。」
 「いいや、イエス、君は判ってないんだ。」

栄さんが扱ってる▲▲堂のトイレットペーパーはね、
今時シングルロールで120m、
しかも厚さも重量もそのまま、5年も据え置きの高品質製品なんだよ?
それだからか滅多に安くならないけれど、
今日みたいに忘れたころに こそりと半額で出してくれて。

 「そんなせいか、情報通が殺到するから、
  無制限なんて書いてあった日には、
  昼まで在庫がもつかどうかの競争だっていうのに。」

だからもう行かせてよと、彼の側からすがるのへ、
だがだが、綿棒を構えたままのイエスとしては

 「ダメっ。」

それだけは聞けませんと、
彼には珍しいほど やっぱりにべもないままであり。

 「大体ブッダがいけないんでしょうが。
  何でティッシュの端っこなんか耳へ押し込むの。」

小さい子じゃあるまいしと、
似たようなことを素でしでかしかねぬ
イエスだって呆れちゃった事態が、(失敬な)
ここ聖さんチでは同時多発してもおり。

 「それはあのその…。//////」

その方がさらり仕上がる気がするから、最後にいつもやってるんだけど、と。
ブッダ様、さすがに失態は恥ずかしいか、もぞもぞ言い訳。
チラシを見つつのながらでなければ、もうちょっと注意もしたのだ、
なのでこれまでは、端っこだけちぎれて中に居残るなんて不手際、
起きたことなんかなかったのに…という、
含羞みながらの弁明を聞きながら、

 “それに、それが取れたとしても…。”

朝っぱらからこうまで色っぽくなってしまっている、
イエスにとっては大事な大事な釈迦如来様を、
何で町中へ無防備にも放さにゃならんのですかと。
そっちのほうが重大事なため、
さっきからイクのイキたいのと艶っぽく散々ねだられたっても
一向に動じないイエス様なのであり。

 “いくらハニーの頼みでも。
  これだけは聞けないよ、ごめんねっ。”

クッと目を閉じ、歯を食いしばり、
その胸中で涙を呑んでおいでのイエス様だったが…。



 だったらその妖しい発言も、
 封じた方が善いと思うよ、ヨシュア様。
 あなた様がたには
 どうやら、もう一個の意味まで
 揃って判ってないようですけれど。///////





   〜おそまつっ〜  13.09.04.


  *久々に(そうでもないか?)ハニー出ました。(笑)
   理屈こねまくりのお話にちょっと疲れたので、
   羽目はずし、もとえ羽伸ばしです。
   きっと松田ハイツの屋根の上には、
   梵天さんが気を遣って寄越した、
   防音の技を持つオナガドリが止まっているのよ。
   ウチの娘が世話かけてすいませんねって。(誰が娘か・笑)
   続きもすぐ書くよん、待っててねvvv。


ご感想はこちらへvv めーるふぉーむvv


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