キミと一緒の 秋を迎えに
      〜かぐわしきは 君の… 4

 “豊饒の秋に”


八月の終盤や九月の頭は、
夏の名残りの湿った空気とまだまだ高い海水温が重なっているところへ、
今回のは台風が突っ込んだためだったが、
そうでなくとも秋雨前線が最も活発化してのこと、大雨が多い時期だとか。

 「大きな被害が出るのはいただけないけれど、
  空気を洗ってくれてるのは間違いないよね。」

一雨毎に確実に朝晩の空気は澄んでゆき、
寝起きに布団を蹴っていて、風邪を拾い掛かった人も少なくないかも。

 「ウチはそういうの関係ないけどvv」
 「〜〜〜それはともかく。////////」

ま〜だ 間に合っているからと、
合い布団出してなさそうですね、聖さんチ。(笑)
そうは言っても、昼間のうちはまだまだ陽も高く、気温も高いめ。
数値的には夏場と変わらぬし、
木陰は涼しくとも、汗はかくので水分補給は必須。

 「まだまだ温かいものより冷たいものが嬉しいよね。」
 「そうだね。」

売り出しのチラシに誘われて、
お買い物にと出向いた商店街では、
八百屋さんや魚屋さんの店先に旬の味覚が並んでおり。
さんまに里芋、新のお芋に
イチジク、葡萄、梨などなど、瑞々しいのがとりどりに、
いい香りで誘ってくれる。

 「焼いてあるのになるけど サンマも買おうね?」

芳ばしい香りに誘われて、
日頃はあまり馴染みのない鮮魚店へも立ち寄ったそのまま、
頭も落としてあるのをと、選び始めるブッダであり。

 「え? いや私だけしか食べられないのに…。」

キミは食べないのにそんなの悪いよと、
眉をハの字に下げまでして、
ベジタリアンの彼へ気を遣う言いようをするイエスなのへ。
こちらはこちらで、
くっきりぱっちりした眸をくるんと見張り、
何言ってますか、旬のものには滋養も豊富だしと、
苦笑交じりに言い返したブッダとしては、

 「魚を食べるのがお下手なの、マリアさんが心配していてね。」
 「ううう…。」

そうかそう来たかと、実は正直苦手だったらしく、
額へ縦線を降ろすヨシュア様だったりし。(笑)

 「身も多いし、脂が乗ってるから芳醇で美味しいって。」

そうそう、お腹の苦いところは取ってもらおうねなんて、
せめてもの行き届いた心遣いにうんと力なく頷いたものの、

 「…あ、梨が出てるよ?」

逃げ腰半分からの急ぎ足、
その先の華やぎへ、
早くも気持ちは移っておいでのイエスだったりし。

 「あ、ホントだね。」

売り出しなのだろう、
平棚だけでなく別に台を設けてまで
ザルに盛ったの並べられてるカーキ色した梨たちは、
一見武骨なお顔だが、一皮剥くとそれは瑞々しいこと、
こちらの最聖人のお二人も既にお味見済み。

 「西洋のと微妙に違うんだよね。」
 「そうそう、瑞々しさが勝るというか。」

リンゴも桃もそうですが、
日本人って根菜好きで歯も丈夫な割に、
果物は柔らかめで甘いのがお好きなようでして。
羽二重餅とか大福とかいったスィーツにも、
しっとり柔らかいのが多いですよね。
もしかして“長寿の国”だからかなぁ。(う〜ん?)

 「そういや柿も、堅い派と熟し派が居るよね。」
 「そうだね。」

私、熟したのをサジで食べるの好きvvとイエスが無邪気に言って、
そうだよねぇとブッダが感心し、

 「でも、堅いのがちょっぴり柔らかくなりかかり辺りが、
  私としては食べやすいと思うんだけどなぁ。」

主夫としては食べ方の簡便さもポイントの高さに関わるようで、

 「イエスってば、ご飯粒はくっつけるくせに、
  そういうのは口ひげ汚さずに食べるから器用だよねぇ。」
 「そう?」

いちじくとかで慣れてるからかもねと、
微妙に因縁がなくもない果実の名前を出したりして。(笑)
ちなみに、イチジクも秋種のは今からが旬で、

 「ジャムにしても美味しいんだよね。あと、コンポートとか。」
 「わvv ブッダの作るコンポート、私 大好きvv」

果実を使った砂糖煮ですね。
当初はグラッセとどう違うのかなと思ったですが、
グラッセは、バターと砂糖で煮詰めたり、
表面を糖衣がけにしてつや出ししたもののことだそうで。
肉料理につけるニンジンのとか、マロングラッセはこっち。
コンポートはやや瑞々しい食感を残した砂糖煮で、

 「リンゴや梨、桃などでも作るよね。」

一通りの果物談義をしつつ、
四つほどずつ盛られた梨を見回して、
ようよう甘そうに熟したのを選んだブッダ様。

 「大きめだし二人じゃあ多いかもと思ったけど、
  おやつにはこのまま食べて、
  残ったらコンポートにして晩のデザートにしようね。」

 「わあvv」

コンポートは意外と、発泡系のワインやモヒートに合うそうだから、
ミントとライムも買ってこうねと、それはにこやかに微笑む彼であり。
陽のあるうちはまだ少々残暑の続く秋の初めで、
やっと涼める宵を
楽しく過ごすアイテム揃えて、
今宵は月見酒と洒落込む最聖お二人であるらしく。

 「ラムは まだたんとあったしね。」
 「そうそう。炭酸を買っとかないとね。」

モヒートはミントとちょっぴりの砂糖をマドラーで軽くつぶし、
クラッシュアイスとラムをそそいでから、
炭酸で割ってライムを絞る、どっちかというと夏のカクテルで。

 ブッダはどっちかって言うとワインのソーダ割りが好きでしょう?
 うん、私あんまり飲めないからね。

 「それに、イエスのワインて悪酔いしなくて美味しいし。」
 「やだなあ、そんなvv」

あっはっはと笑ってから、

 「おだてるならミネラルウォーター買ってからにして。」

そこは自分でもいろいろ判っておいでのイエスが、
わざとらしいキメ顔でこそりと言い足した辺り。
ブッダの言いよう、何かネタのようだと思われたらしかったが、

 “いや別に おだてた訳じゃないんだけれど…。////////”

イエスが何かへ嬉しいと思ったことから生まれるせいか、
そんな奇跡から生まれる赤ワインには
祝福の歓喜と彼のおおらかさが染みているよで格別の味わい。
戒律のせいというより、
そもそもあんまり上戸ではないブッダじゃあるが。
かつては王族の総領息子だったので舌も確かだし、
遠い異国のワインも比較できるほどには習知していて、

 “……でもまあ、最近のイエスがそうまで萌えると言ったら。”

そう、このところのヨシュア様をラリホー状態にしたければ(古っ)
ちょおおっと含羞みながら、ブッダからぱふりと寄り添うなんてのが、
文句なしに効果的だったりするのも、さすがに ようよう知れており。

 “〜〜〜〜〜〜っ、////////”

いやいや いやいや、いかんいかん。
そんな物欲、そんな煩悩から


  “イエスにくっつきたい…って想うんじゃあないんだし。///////”






………もしもし? そこの如来様?
微妙に話の、というか、コトの順番が違ってませんか?(笑)

 「ブッダぁ? 洗剤も買うんでしょう?」

薬局の栄さんにも寄るんでしょと、
少し先ゆくイエスからのお声に我に返って、
ああうん待っててと、梨とそれから里芋をお買い上げ。
お空の青さにも透明感が加わって、
秋もいよいよ深まる気配です。





   〜Fine〜  13.09.18.


  *おっ母様属性の色白美人キャラ様が 好き好きvvで、
   魚を食べるのが下手で猫舌で、甘いもの好き…と来て、
   ますますのこと、
   どっかの誰かさんと重なるヨシュア様ですが(ねえ、Hさん)
大笑
   あの子
(笑)と違って、お酒は案外と強そうだと思います。
   ワインを涌かす人ですし、
   遺伝子的な そもそもの体質として、
   東アジアのモンゴル系人種とは
   比較にならないほどお強いそうですからね。
   刀での勝負なんて以っての外ですから、
   ここは呑み比べで挑んでほしいものです、はい。
   あ、惚気合戦でも勝てそうだぞ、
   向こうは口下手だからvv(いやいや、勝負しなくとも)


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