キミの匂いがする風は 緑

 


   後日談というか おまけというか



カレンダーも六月となったせいか、
いつの間にかあちこちで アジサイの花が咲いていて。
赤いのや紫のや、淡いの濃いの、
風車みたいに縁にだけ咲くのとか、
そりゃあ色んな種類のがあるとは知ってたけれど。
小さい花の1つ1つが、
ヤマブキの花みたいなくっきりした形なのを見つけてね、
わあ、これもアジサイなんだって びっくりしたの…と。
朝ご飯中の話題にと、
ジョギング先で見て来たあれこれを、
それは嬉しそうに語ってくれるブッダなのが、
イエスにも それはとっても嬉しくて。

 「わ、わ、そんなアジサイがあるの?」
 「うんvv」

踏切があるほうの商店街の端っこの曲がり角、
集会所へ行く道の手前のお家で咲いてたの、と。
詳細まで話してあげれば、
ああ あそこかぁって大概の目処はつく範囲だし。

 「私も見てみたいなぁvv」
 「じゃあ、今日のお買い物に出たときに
  そっち回って帰ろうね?」

わ、ホント?と笑ったら、
ブッダの側こそ何かご褒美をもらえたように微笑ってくれて。
その笑顔がまた、何とも言えぬまろやかさだったものだから、
イエスはこっそり 別口の“嬉しい”を深々と噛みしめる。

 “ホント、ブッダって 優しいし可愛いなぁvv”

ブッダはきっと、
見たもの聞いたものを その端から
誰ぞかに話さずにはいられないような
そんな落ち着きのない性分じゃあないのにね。
ただ、イエスは目新しいものの話が好きだから、
そういうことを見聞きしたらば すぐにも話してあげなくちゃと、
わざわざ思ってくれるんだとイエスは思う。

 “だって…。”

これはちょっぴり自惚れかもしれないけれど、
いいなぁ素敵だなぁと何か見つけたブッダは 多分、
これってイエスも喜んでくれるよねって、
そうと思って、それこそが嬉しいと思って、
大事そうに抱えて帰って来るんじゃなかろうか。

 “だとしたら…。////////”

そうと思うとそれもまた、
イエスには途轍もなく嬉しくてたまらない。
そうしてあげなきゃと、
他でもない彼から思われている特別感とそれから、あのね?
誰もが認めるそれは立派な如来様が、
小さな子供や 日頃のイエスみたいにわくわくと、
あまりに些細なことを
なのに飛びっきりの宝物みたいに扱って、
忘れずに話さなきゃって心して、
どうぞと見せてくれる話してくれるのが、
なんて可愛いキミなのかと キュンとする。

 “あとは、”

ちょっぴり難しい真理が潜んでいて、
表面だけじゃなく そこまで拾えたかな?というような、
そんな回りくどい作りになってるよなものは苦手だと、
そこも把握してくれたら いんだけど…。

 “銀行の掲示板にあった、何かの美術展の告知のポスター。
  じっと見とれてたからきっと凄い作家さんのなんだろけれど。”

ごめんね 私にはその図柄、
とんでもない印刷ミスだから気になるのか、
それとも…厳しい検閲がかかってて
そのものを見にくる人にしか公開できない作品なのかなと、
そうとしか解釈出来ない何かにしか見えなかったし。(一体どんなものが…)

 「…あ、綺麗だvv」

天気予報目当てにと点けていたテレビでは、
お待ち兼ねのお天気のコーナーで、
今月のテーマフラワーか
アジサイの鉢に囲まれてにっこり笑うお嬢さんが、
それとは別にと そりゃあ可憐な白百合を
山盛りの たんと飾ったディスプレイを背負ってて。

 【 これはカサブランカという大輪種なんですよ。】

という解説をしておいでだったが、

 「植物園にもあったね。」
 「うんっvv」

情報がテレビより早いぞと、
お箸片手にイエスが えっへんとお澄ましするのが何だか可愛くて。
くつくつという笑みがこぼれたのを誤魔化すのも兼ね、

 「そうそう、
  小さいのが線路沿いにちらほら咲いてるの知ってる?」

百合と言えばと身近なところの話をブッダが持ち出せば。
え?と意外そうに目を見張り、こっちを向いたヨシュア様。

 「え? え? 知らないよぉ。」

っていうか、百合ってそこいらにも咲いてるものなの?と、
微妙な訊きようをする彼で。

 「うん。特に人工品種ではないしねぇ。」
 「いやいや、
  野生のや自生のがあるってのは 私にだって分かるけど。」

何たって歴史も古いお花だし…と続けたが。
整理整頓のお話ならともかく
そういうことで自分を見くびってどうしますか、イエス様。(う〜ん)
そのくらい意外だなぁと思ったらしいのへ、

 「うん、気持ちは判る。」

ブッダもやや困ったように眉を下げ、同感だと微笑い返した。
それは可憐で清楚な佇まいの、
いかにも穢れのないという印象のするお花なだけに。
人が踏み込んだり掘り返してなどいない、
静かな山野にしか咲かないイメージがあるけれど、

 「でも、存外したたかと言うか、
  都心ではさすがに無理かもしれないけど、
  このくらいの町なかなら、思わぬところで咲いてるんだよね。」

もーりんの家でも、
毎年思わぬところからニョキニョキって伸びて来ちゃあ咲きます。
年によっては物干しへの石段前に1m以上も伸びたりするので、
いっそ“百合ゲリラ”と呼ぼうかと思ってます。

 “どっかの超能力者みたい…。”

それはともかく。(言うと思った…)

 「百合ってサ、なんかブッダみたいなお花だよねぇ。」
 「はい?」

もう画面は全国のお天気へと切り替わっていて、
日本地図が色んなカラフル記号でトッピングされてるだけなのだけれど。
ほんのさっきまで映ってた白い百合を指してだろう、
そんなことを言い、ふふーと微笑ったメシア様、

 「しっとりたおやかで優しげで。
  そりゃあ優雅に小首を傾げて、
  はんなり“なぁに?”って微笑ってる姿とそっくりじゃない。」

深瑠璃の双眸やふっくらした口許を優しくたわめ、
慈愛の後光に包まれて。
さあおいでなさいと双腕を広げ、
小さき者をくるみ込んでくれる 癒しの微笑みを浮かべる如来様…。
そんなところを想像したらしいイエスならしく、
髪を取り巻く茨の冠に
赤いばらが一つぴこんと咲いたほどの萌えだったらしいのが、
単なる口先だけの言じゃないのが明白で。

 「あ…やだなぁ、そんな。/////////」

それだけに ブッダも
落ち着きがなくなるほどの含羞みを感じてしまい。
頬を染めつつ、口許をうにむにと咬みしめてしまったが。

 “…でも、本気で怒ると そりゃあおっかないんだよね。”

そういや鬼百合って名前の百合もあるんだよねと、
ぼんやり思ってしまったイエス様。
いいですか? それは絶対に、
このタイミングで口にしちゃあいけませんよ? いいですね?(笑)




     ◇◇



今日は何とか、昨日に引き続いてのいいお天気だったれど。
二人して時折顔を見合わせては うふふと微笑い、
外出は出来ないねぇ、そうだねぇと
その割に ちょっぴりわくわくと時を過ごしておれば。
お目当てのお人は、大きなコンテナを乗りつけ、
時間指定をした通り、お昼を過ぎてからやって来た。

 「ありがとうございましたー。」

あくまでも配達だけの人だったようで、
説明にと上がり込むこともなく、
運んで来た荷をそれは丁寧に上がり框へ置くと、
受け取りへのハンコだけで帰ってしまわれて。

 「あ、イエス。丁寧に開けなきゃいけないよ?」
 「うんっ。」

ブッダが応対してる間にも、
六畳間へとっととブツを運んでしまったイエスだったが。
心配せずとも、まずは箱自体を
特別なオブジェででもあるかのように、
矯つ眇めつ、あちこちから眺めておいでなだけであるらしく。
ブッダが戻ってくると、
いそいそと卓袱台を持ち上げて、
押し入れ側へ寄せて場所を大きく空け、
早く早くと視線と表情で促すあたり。

 “…丸投げしましたね。”

これがテレビやHDDなら、
もしくは スマホの周辺機器なら何とか食いついたかもしれないが、
家電の仕組みは、あまりに広範なため やや苦手。
スタンド型掃除機の紙パック交換も、
いまだに要領を得ないというから、推して知るべしというところかと。

 “まま、構いはしませんが。”

そこはそれ、頼もしい人という甲斐性を、
色んな方向から認められてもおいでのブッダ様。
自分としても、
気の済むようにさせてもらえるのは助かるとの苦笑半分、
さあ始めますかと歩み寄り。
箱の外にあった指示通り、手際よく梱包を解いてゆく。
固定用だろう発泡スチロールに上下を挟まれ、
埃よけのビニール袋にすっぽりくるまれた本体を
段ボール箱から よいしょと引き抜くように取り出したが、

 「…結構大きいね。」
 「まあ、売り場が広かったからねぇ。」

それはそれはスリムでコンパクトだと、
二人とも、そこに一番 感心しちゃったのだけれど。
小さめのオイルヒーターのパネルほどという認識は
さすがに図々しかったかなぁなんて (まったくです)
イメージへの下方修正を まずはと構えて…さて。

 「えっとぉ…。」

同梱されたあった説明書を手に、付属品を確かめて、
最初の準備から操作手順まで、
薄いとはいえ何頁かはあったし、字体も小さい説明書を
ぱらぱら手早くめくると、ふむふむと読み進め、
1分もかけることなく把握したらしい釈迦牟尼様。
よしと顔を上げると、

 「置き場所は…この辺になるのかな。」

腰高窓と Jr.の間という一角を見やる。
押し入れの開け立てを考えると、
物を置くのはどうしてもそこになる場所であり。
風通しもある程度はあった方がいいらしく、
窓側にという指示の下、そこはイエスが よいしょと移動させて。
本体の中、それも固定や仮り留めのために貼ってあったらしい
テープやパーツを剥がして外して。
給水タンクへ水道水を入れると、指定の場所へセットし、
扉を閉めてからスイッチを入れる。

 「おお。」

かすかな稼働音こそ立ったれど、
やはり売り場よりは静かな室内でも、
まったく問題のない程度のそれであり。

 「あ、風が来たよ、涼しいね。」

送風口の真ん前にしゃがみ込んでたイエスが、おおと笑ったものの、

 「イエス、それはまだ ただの風だよ?」

中のフィルターが水を吸って、
湿ったそこを通した風が冷たいんであってと、
説明を仕掛かったブッダが…それを途中で辞めたのは、

 「………、…っ!」

イエスのお顔がそれと判る変化を見せてくれたから。
どうやら話しているうちに、
待望の冷風がそよぎ始めたらしくって。

 「す〜ずし〜いvv」

顔へとまともに当たるのをものともせず、
うっとりとまろやかに微笑むのが…
傍から観る分には ちょっとしたコントみたいで何とも可笑しく。
もうもうしょうがないなぁと、
注意を授けるはずだったブッダ様とて、
例外ではなくのくすすと吹き出してしまったものの、

 「あ、でもね、イエス。」

ちゃんと言っとかなきゃあと、気を取り直して、

 「今日はあくまでも試験運転で、
  本格的に使うのは真夏になってからだからね。」

 「真夏になってから?」

そりゃまた曖昧なと思ったらしいのも織り込み済み。
うんと頷いてやってから、

 「8月間近になってから。
  そう、気温が30度以上ってほど暑い日とか、」

 「え〜っ? 真夏日限定なのぉ?」

まだ全部言ってないうちという そりゃあ素早い非難のお声に、
おっとぉと ついつい後ずさりしちゃったほどだったけれど、

 「ここんとこだって結構暑いよ?」

この子は渡さないぞと言わんばかり、
冷風扇を懐ろへ掻きい抱き、庇いにかかったイエスを見やり、

 「だってまだ、晩とか明け方とか涼しいでしょうが。」

正座ではあるが、膝を開いての割り座という座り方。
そのまま立ち上がれるが、でも…と、
頑迷そうに動かぬイエスを見やったままで、しばらく待っておれば、

 「〜〜〜〜。」
 「ほら、寒かったんでしょう。」

冷風が吹き出すところへ密着していたのだから無理はなく。
うううと震えつつ おずおず離れたのを、
ほら見なさいと窘めたところまでは想定内だったブッダ様。だがだが、

 「でもね…。」

くるりとこっちを向いたイエスから、
さっきまで冷風扇を抱いてた腕を広げたそのまま
がばっと抱き着かれたのは微妙に想定外だったようで、

 「わ…っ。///////」

小声で何か言いかけていた彼だったから、
なぁに?と身を寄せかけていたところへの不意打ちでと、
ご本人は思ってるようだけど。
いや、油断してたとしか言えませんて、この場合。(笑)
勢い余って きゃあと畳の上へ押し倒されつつも、

 「…っ、イエスったら胸元も冷たい。
  どんだけ我慢したの、キミっ。」

抱き着かれたことよりも、そっちが心配と、
あっさり切り替わってるくらいだから。
想定の内か外かは さして問題じゃあないらしいブッダ様であり。(ホンマにな)
ちょっぴり真摯に案じてくれてる、やさしい如来様のお顔を見下ろし、

 「だって、
  それは頑張ってキミと選んだウチの子だもの。
  邪険になんか出来ないでしょー?」

 「…おいおい。///////」

どさくさに紛れてどういう言い回しをしてますかと、
物に名前つける性分じゃないでしょキミ、と。
そういう含みからの突っ込みをしているつもりだが、
紛らわしいと 軽く睨んでさえいるものの、
いかんせん、頬から耳から真っ赤では説得力がないというもの。

 「第一、こうやってvv」
 「〜〜〜。//////」

重さはさすがに加減しつつも、
ぎゅうとますます身を寄せて、
密着とやらを今度はブッダ相手に敢行し、

 「ほら、これからの時期は
  くっつくとどうしたって暑くなるでしょう?」

 「うう…。//////」

暑くなると言いつつ、
わあ温かくて気持ちいいvvと、
すっかり暖を取ってるような言いようをしてから、

 「30度以上なんて数字の設定は無し、にしてよ。」
 「でも…。」
 「例えば夜中とか。熱帯夜は25度以上を言うんだよ?」

あれって不思議で、昼間の30度は何とか我慢出来ても、
夜中の27度は殺す気かって思いましたもんねぇ、去年。(もーりん・実話)

 「ね? その時その時でってことで。」

いつまでも のしかかったままでというのは
不遜だし気の毒だと思うたか。
肩の上やら脇の横やら、
隙間を選んで手をついての身を浮かせ、
あらためて訊いてくるイエスであり。
しょうがないなぁとの不承不承、

 「判った。それでいいよ。」

了解を出したブッダ様が、でもでも…と、
ちょっぴり視線を逸らして何か言いたげなのへ、

 「???」

何なに?と、
二人しかいないというに含羞む彼へ、
内緒の話?とこちらも素直に、
再び…お耳を寄せるためその身を伸しかかりの態勢へと戻してみせれば。

 「…わたし、
  そういうこと見越して
  これを買おうって提案したんじゃないからね?」

 「そういうこと? ……あ、熱帯夜のこと?」

はっきりと言葉にされたのが、
ますますと あからさまにされたよな気がしたか、

 「〜〜〜っ。////////」

日頃は緋色のさくら餡を羽二重もちが透かすよな、
そんな赤みがほんのり差す程度の頬が、
ようよう熟れた桃のよに、
さぁっと赤みを増したのがそりゃあ鮮やかで。
そうまでの羞恥から、ぐぐうと言葉に詰まってしまわれたけれど。

 「…ぶっだ。」

そこまで真っ赤になって、
羞恥に取り乱しかかってのこと、
せめてとそっぽを向いてる愛しいお人。
そこを退いてよとの抗いはせぬままで、
力なく投げ出された手や腕が、
自分の男臭い手の間、ただ置かれている光景は、
何とも罪深い構図に見えてしょうがなく。

 「私は、それも嬉しかったけどなぁ。」

 「〜〜。//////」

 「だって
  暑いからくっつくのは勘弁なんて、そんなのヤじゃない?」

 「〜〜〜。////////」

背後にあるのは床の畳、
その身の至近へイエスに手を突かれていて、
左右への寝返りも無理と来て。
そっぽを向く以上には逃げようがないものか、
ますますと赤くなり、
口許をうにむにと咬みしめるばかりの如来様だったれど、

 「………わたしは、多少暑いくらい…。///////」

もしょりと小声でお返事返して、
でもって、

 「〜〜〜〜っ。/////////」

やだやだ、私ったら何を言うつもりだったんだろかと、
ますますと赤くなったその頬へ、

  ちゅ、と

軽やかなキスが降って来て。
その途端、
どうしよどうしよと追い詰められてたお顔が、

  はっ、と

シャボン玉が弾けたみたいに あっさりほどける。
まだ横を向いたままのお顔の、頬やこめかみへ
軽やかなキスはいくらでも降って来て。

 「…いえすぅ…。////////」

 「やっと こっち見た。」

茨の冠 外しつつ、よかったと微笑った彼へ。
投げ出してた腕を伸ばして、首っ玉に巻きつけて。

  …いいの?
  うん…。//////

恥じらいつつもそおと眸を伏せるのへ合わせ、
濃色の豊かな髪も、
ふわりと弾けて周囲へ広がったのが何とも鮮やかで。

 ではと、その髪を撫でながら、
 あらためての口づけを、やさしい抱擁と共に捧げたイエス。

触れた瞬間の甘い熱、
確かめるよに少し離れては何度かついばみ。
その身の下へと腕を差し入れ、ぎゅうと抱きしめながら、
深々と蹂躙するよなキスを幾度も。

 「………ん、んぅ…。///////」

離れかけては まだイヤイヤと、
ねだるみたいにくぅんと鳴くのが可愛くて。
まだあれこれと梱包材が散らばったままな中、

 どれほど互いへ飢えてのキスなのかと思わすように、一心不乱に。
 ずっと一緒ですがそれが何かとの、不遜なまでの傲岸無視態勢で。

文字通りの息をもつかず、お互いの口許を喰み合い抱き合い、
とうとう息が詰まったか、胸元を大きくあえがせながら
唇こそ剥がれたものの、それでもおでこをくっつけ合って、
相手のお顔をそれはもう じいと覗き込む熱中ぶりで。

 「困らせちゃったね、ごめん。」
 「…。//////」

ううんと言ったらしく、でも、
彼にはめずらしくも 口の中でのもしょりとした声。
何につけ頼もしいブッダは、
でもその分、甘えるのが下手な人でもあって。

 “そんなブッダが甘えてくれるのって凄くない?//////”

私、甘えるのも好きだけど、甘えてもらうのも大好きだからと、
イエスは これでも俄然張り切っておいで。
先日のちょっとした諍いも、
トラウマにするどころか、もっと甘えてもらわなきゃと。
ゆっくり とさんと、自分も畳へ横になり、
愛しい伴侶様の肢体を、その懐ろへそおと掻い込む。
これ以上はない不遜かもしれないけれど、
この自分にだけ、自分の物になってくれる時間をくれるよになったのに、

 “そんな素晴らしい夜が減るのはイヤだっ。”

何だか妙な言い分を(ホンマにな)
その胸のうちにてこぶしを握って堅く決意しておいでの
ヨシュア様であるらしく。

  …片や

ああやっぱり素直になれないのはどうしてだろうか、と。
こちらは またまた大反省中のブッダ様。
どうして自分は えいと思い切らねば甘えられないのだろうか。
彼はそんなつもりで言った訳じゃあないのだろうに、
勝手に恥じ入り、振り回し、さんざん駄々こね、拗ねて見せ。
自分で自分を追い詰めてからでなきゃ、
その懐ろへ飛び込めないなんて、なんてまあ面倒な相手だろかと、

 “愛想を尽かされるのは こっちのほうだよね。”

どこが頼り甲斐のある存在なのやらと、
ふしゅんと萎みかかっておれば、

 「…だ、ブッダってば。」
 「あ、なに? …、ひゃ。////////」

聞こえてないと思ったものか、
耳元へ唇がくっつくほどにして囁かれ。
今度こそは不意を突かれてのこと、
ひゃあと肩を跳ね上げた釈迦牟尼様であり。

 「もうもう、余計なこと考えてたでしょ。」
 「ち、違うもの。//////」

それは心外と、くすぐったかった耳元を手で塞ぎ、
ちょいとムキになったよに応じてから、

 「キミのこと、考えてたんだもの。///////」

それを余計なこととは言わせないんだからと。
潤みの増した眸で じいと見上げて来られては、

 「〜〜〜〜〜。/////////」

ああもう、無自覚のまんま何てこと言うのかな、
この如来様はもう、と。
胸元を深々と撃ち抜かれた萌えから、
こんな困った人はこうだっとばかり、
接吻責めのお仕置きにかかった…なんてのは、
わざわざ言うまでもない仕儀だったのでありましたvv



お題 9 『目配せが嬉しいの』





      〜Fine〜  14.06.11.


  *いえね、
   冷風扇を買うぞという方向へお話が向かったおりに、
   『熱帯夜対策ですか、ブッダ様vv』と
   結構な方々から訊かれましてvv
   いやまあ、その通りなんですが、(大笑)
   そうと思ったのは もーりんですので念のため。

   それにしても、どこが“目配せ”のお話か、
   結局 中途半端な消化に終わってしまいました、はい。
   だってイエス様が、目配せで終わらせてくれな(強制終了)

ご感想はこちらへvv めーるふぉーむvv

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