中田市長のめざす市政は…8・24「市民の市長をつくる会」で報告 大貫ジャーナル(2003.2.17)

 

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【横浜市ニュース】

中田市長のめざす市政は…8・24「市民の市長をつくる会」で報告

 

 

「中田市長のめざす市政は」補正予算議会で見えてきたその政治姿勢

 

中田市長のめざす市政は」
 
 補正予算議会で見えてきたその政治姿勢
 神奈川区の建設プラザ大ホールで8月24日、「市民の市長をつくる会」の市政学習会が開催され、日本共産党横浜市議団大貫のり夫団長が記念講演を行いました。
一、最近の中田市長の動きから
   @住民基本台帳ネットワーク問題
   A敬老特別乗車証など
二、中田市長論
   @松下政経塾
   A小泉「構造改革」応援団
三、補正予算議会を終えて見えてきた中田市政
  イ、補正予算概要
  ロ、施政方針演説
   @あいさつ…市民は市長選で何を望んだのか。その乖離は。
   A時代認識…非「成長・拡大」論
   B基本理念…民の力が存分に発揮できる社会
   C横浜ビジョン E新しい都市経営
四、市議会の対応…象徴的な旧与党の態度
五、最後に…「住民こそ主人公」の市政を
 
 みなさんこんにちは、ただいま紹介をして頂きました日本共産党横浜市会議員団の団長の大貫のり夫です。
 「中田市長のめざす市政は」というのが、今日の私の話のテーマです。
 新市長が誕生してこの間の中田さんの発言や行動、特に補正予算議会での施政方針演説を中心にその特徴をお話したいと思います。

 
最近の中田市長の動きから
 
 今年の夏は大変あついですね。地球の温暖化問題がいよいよ重大な問題になっていますが、中田市長の指令で市役所では、庁内の冷房を28度設定して、職員は半そでノーネクタイで仕事をしています。これはいいことですね。 市長が変わって目に見える変化というところでしょか。
 カレーライス・ミーティングも市民に受けがいいです。なんと最高で113倍の倍率だそうです。
 もっとも、ノーネクタイは既に他の多くの自治体でも実施されいます。市民との対話も市民派や無党派を標榜する首長は、手を変え品を変え行なわれています。
 大切な事はパーフォーマンスだけでなく、政策的に市民要望にこたえる政策を打ち出し実行するかです。
 中田市が誕生して5ヶ月たちました。この間の市長の言動から、彼が横浜市政をどのよう「変えよう」としているのかを探って見たいと思います。


 
住民基本台帳

   ネットワークシステム

 いまホットな問題として住基ネット・住民基本台帳ネットワークの問題があります。
 中田市長は、紛らわしいことをする人です。どこに本当のねらいがあるのか見極めが必要です。
 テレビニュースで「横浜市が、住基ネットに参加見合わせ、市民に参加・不参加を決める選択性」と聞いて「お!やるじゃん」と思ったのですが、ところが、その横浜方式は緊急避難的なもので、当分の間というものです。個人情報保護法案が成立し、住基ネットの安全性が綜合的に確認できるまでというのです。確認できれば、不参加を選択した市民も否応なしに、参加せざるを得ないというものです。 
 横浜方式といわれる「選択制」は、参加不参加を市民の自主的な判断に委ねることですから、現状では次善の策です。その点では評価をします。問題は、当分の間ではなく、今後も徹底して「選択制」を貫く必要があります。また、「選択制」については、総務省が違法といい、そのため、神奈川県が全員参加出なければネットに接続しないとしています。 もし「選択制」が違法という結果が出た場合は、中田市長は、国会議員時代から住基ネットに反対してきたわけですから、きっぱりとした対応が必要です。それをせずに、また、個人情報保護法が成立したこと等を理由に全面参加などという事態が生じれば、結局、市民に「選択制」という奇をてらうような目をくらますトリックでごまかし、結果的に、政府の住基ネットに参加する道を選んだことになります。、やっぱり小泉構造改革の応援団ということになります。
 要するに、色々市民の目先を誤魔化して、小泉首相とのこの問題でのねじれを修正しようとするものではないか。そもそも、電子政府・自治体構築は数兆円の市場であり、運営にも年間1兆円規模の経費がかかるわけです。市場万能主義者の中田市長ですから、根本的には住基ネットに反対のはずがないのです。これまでの態度がポーズなのだという声が聞こえます。

敬老特別乗車証(敬老パス)

 敬老特別乗車証(敬老パス)見直しについても憎らしいほど巧みです。
「これまでの一律交付を見直し、辞退者等には交付しない方式に切りかえ約2億円の経費削減を行なう」というもので、往復はがきで「辞退」意志を確認しその人にはパスを交付せず、返事のない人にはすべて交付するというものです。これは市民受けします。「工夫すれば無駄な支出を抑えることができる」ということだけがマスコミを通じてどんどん流されました。
 ところがその措置はとりあえず一年間だけ。その後、今回措置も含めて本格的な見直しを行い、所得制限等の資格や、これまで3年間の使用期限を含め見直しするとしています。
 シルバーパスの有料化の問題で大問題になった東京都の制度と同じように改悪を狙っている。本命はここにあるのです。

セントジョセフ、
戸塚横浜ドリームランド跡地

 中田市長は、若いこともあってフットワークがいい。これも感心します。
 私が、補正予算代表質問で取り上げた中区山手地区のセントジョセフ跡地のマンション建設に係わって、同地域の風致地区として保全されている緑と、歴史的景観を守って欲しいとの住民要求に答え現地を調査しました。また、戸塚にある横浜ドリームランド跡地に計画されている中古車オークション会場建設問題でも、現場に足を運び住民要求を聞いています。
 ドリームランド跡地問題では、動きがでました。市が跡地を買い取る方針を決め、緑地を生かした利用を検討するとのことです。これから取得条件の整理を始めることになります。これは、約13ha、金額でいうと約88億円というものです。その決断はたいしたものです。もちろんこれは、住民の運動の成果です。
 市長との関係では、今後、どんな条件で売買されるのかを注意しなければなりませんが、市長は、住民運動など市民の世論・運動には敏感であることは間違いありません。
 しかし、ここで何故ドリーム跡地だけなのでしょうか。保土ヶ谷のカーリットの森なども永年の保全運動が続いています。中田市長のことですから、なにかここでも市民の目をそらす策動があるのではと考えたとき素直に評価できません。やはり、ありました。実はこれまでの市の施策を、変更する重大なことがセットで隠されていました。 モノレールのドリームランド線の再開の断念です。モノレールの再開は周辺住民強い要望で、今回のドリームランド跡地問題で運動を展開していた地域のみなさんの強い要望でした。横浜市もモノレール再開を基本計画に入れ、毎年、再開のための予算を組んできました。しかし、そのメドは全くたたないもので、前市長自時代は大変な重荷でした。ところが、これまで前市長が決断できなかったことを、中田市長はドリームランド跡地の買取とセットであっさりとやってのけてたということです。

 
中田市長論

 実は、中田ひろし市長の幼い頃を知っているのです。もう30年位前の話ですが、私は当時、青葉区の桜台で家業の「ひろや」という酒屋を手伝っていました。彼の家は私の店から300メートルぐらい先の所にあり、味噌だとか醤油だとか重たいものを配達していました。そういう時、「ひろや」のあんちゃんだった私が、中田さんちの「ひろ坊」と遊んであげた記憶があります。その「ひろ坊」が市長になるなんてというのが実感です。
 彼は緑区の県立霧が丘高校を卒業後、青山学院大学に入り、在学中に松下政経塾の門を叩いたとのことです。
 松下政経塾は「改革のリーダー」を育成するとして松下幸之助が私財70億円を投じて設立したとされています。情報誌phpも松下幸之助が創立者で、資本主義の延命のために人材を作り、情報を流しているのです。
 松下政経塾出身の政治家を観察すると、ほとんど同じことを主張しています。市場万能主義・新自由主義者を輩出しているのです。自民党より右の考えを塾で詰められているのです。

  
小泉「構造改革」応援団

  中田市長は、衆議院議員当時、小泉首班指名の際所属していた民主党・無所属クラブの会派拘束を破って、小泉さんに投票し会派離籍処分をされました。その後も小泉構造改革に諸手を上げて賛同しています。
 横浜市長選立候補の際も、首相官邸に出向き立候補の決を述べ、今後とも小泉「改革」の応援団を誓っています。まさに、小泉構造改革の横浜版を実行しようとしているのです。

 
前市長との違い

 こういう風に言うと語弊を生じるかもしれませんが高秀さんのほうが、まだ良かったという声がきこえます。(比較の問題ですが)
 前市長は、はじめはゼネコン市長としてとんでもない市長でしたが、市民の強い批判を受けて、後年は反省したのかどうか分かりませんが、その評価は別として、自ら「福祉の高秀」を標榜するほどになったのです。彼は行政マン・官僚ですから、各方面からのバランスをよくみていたといえます。
 一方、中田新市長は、行政経験のないしかも社会経験のない学生上がりの政治家です。頭でしか考えない。しかも、松下政経塾で洗脳された頭で考える。しかし、市民の気持ちをつかむことには長けている。困ったものです。 かれの政治信念は「コンセンサスの政治より、信念の政治を」です。まさにファッショ志向だということになります。
 
補正予算議会を終えて
     見えてきた中田市政

 補正予算の概要
一般会計 650億円 (補正後予算総額1兆3160億円)
特別会計  101億円(1兆3410億円)
企業会計  296億円 (6650億円) 
  計1047億円 (3兆3230億円)
純計950億円  2兆4420億円)
 
 補正予算のキーワードは「行政の継続性」「変えるべきものは、変える」です。
「行政の継続性」という理由付けは、旧与党との摩擦を避けるための議会対策であり、心中主義的な都市再生の考えに基づくものです。その際たるものは今回、 ☆高速横浜環状道路(関連街路)8億4000万円、☆ 南本牧など大水深バース整備 45億円。☆ 京浜臨海部再編整備検討に1500万円。
「変えるべきものは、変える」は、民間委託、民営化をすすめるものです。これは、☆ 市立病院・公的住宅・市立大学の「あり方検討」に1500万円を予算化。市民の要求に基づいた前進面として、中小企業などの融資拡大や、小児医療費助成の拡大などがあります。これらが補正予算の特徴です。 後ほど施政方針の中で関係部分を織り交ぜてお話したいと思います。

  
施政方針演説

 中田新市長は、第二回定例会5月29日の本会議で「これからの市政の方向と補正予算案について」とする施政方針演説を行ないました。ボリュームは16,000字に及ぶもので、サブタイトルは「横浜新時代・民の力が存分に発揮される都市経営をめざして」とついています。

 
地方自治の本旨に照らして

 私は、中田市長の施政方針演説を聞いて、中田市長は地方自治そのものを理解していないのではないかと疑念を持ちました。
 「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本とする」という,
地方自治の本旨を全くといっていいほど理解していません。住民が国の悪政に苦しんでいる時その防波堤になるのが地方自治体の長たるものの任務です。
 もっとも、小泉構造改革の応援団を自認している中田市長ですから、小泉政治つまり、国の悪政を悪政と思ってないわけですから、横浜市民は、大変な人を市長にしてしまったというのが実感でした。
 このことは代表質問で質しました。
「国会議員と地方自治体の長とは、その任務が全く違うことを理解されていない」「本市の市長として、349万人の市民の命、暮らしに直接係わる権限をもっていることを、常に念頭に入れておかなければならない」「あなたの判断で、生きていけなくなる市民や、反対に、未曾有の不況から這い上がることも出来る市民も生れる」「あなたの施政方針の中には、毎日、毎日一生懸命生活している、市民に対する思いやりが感じられない」「子育て、高齢者介護、雇用問題など様々な不安の解決を、市民一人ひとりの自己責任と「新生活産業」と称する民間に依拠するとして、自治体の直接責任を回避している」と指摘しました。皆さんのお手元の資料で、私の行なった代表質問の政治姿勢@を参照して下さい。

政治姿勢@】地方自治体の基本は、ひとり一人の市民や暮らしや、地元中小零細業者を守り、住みやすい地域社会をつくることだ。市長の基本理念を伺う。

【A】住民の福祉の増進を図ることを基本として地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を担う。市政の基本は、民の力が存分に発揮される社会の実現を目指したい。そのためには、自由と責任、権利と義務、このバランスを取っていくことが重要だ。
 
 中田市長は、望ましい社会のあり方として、「民の力が存分に発揮される社会の実現」だと言い切っています。
つまり、あえて理解しようとすると「民の力」で住民の福祉の増進を図ろうということでしょうか。
 東京新聞の切り抜きを資料として載せておきました。この女性リポーターの願いと逆の方向、強きもののための市政に向いているのです。
 この回答にも新自由主義者の考えがはっき出ています。彼の言う「自由と責任、権利と義務」は、民間企業・大企業が横浜を舞台に存分に活動するための自由であり権利とし、一般市民は自力自助、自立共助で生活する責任と義務があるとしているのです。この点については、中田市長の施政方針「基本理念」の中に明確に示されています。

 
有事法制に対する態度

代表質問では、市長の政治姿勢として地方自治の立場から有事法制に対する態度を質しました。横浜市には、現在8個所の米軍基地が存在します。また、日本有数の港湾を有しています。市民の命、安全を守ためにも、そして、横浜経済の3分の1を占める港経済のためにもこのも問題は看過できません。

【平和・有事法制】
 市民の命と暮らしを守る市長の責務を本当に認識するなら、憲法の前文と第9条に抵触する有事法制3法案に反対すべきだ。

【A】危機の際に自衛隊を動かす上で何らかの法律がないという状態というのは法治国家としておかしい。
 憲法9条及び憲法前文と有事法制のかかわりについては、国が立法するにあたって憲法に反する法律を提出するとは基本的には考えられない。

 中田市長は、国会議員当時の政策集「中田の八策プラス3策」で「自衛隊を軍隊として位置づける」とした明文改憲論者であり「有事法制を確立せよ」と主張しています。この問題では、多くの知事や地方自治体の長が「慎重審議」や「反対」を表明する中で、中田市長は小泉応援団の本領を発揮したわけです。
 
 
あいさつ
 市民は市長選挙でなにを
望んだのか

 話を「施政方針演説」にもどします。
 今回の市長選挙で「何が『市民の意思』かという問題を、「施政方針演説」のあいさつの中でこう述べています。
「わが国ならびに横浜を覆い尽くしている社会の閉塞状況を打ち破って欲しいという思い出あり、惰性的に継続している旧来のシステムや慣行については改めて欲しいという願い」としています。
 つまり、「閉塞状況の打破」「旧来のシステムの改革」「多選阻止」というのが市民の意思だというわけです。
「多選阻止」は、はっきりしているので分かります。
 マスコミが行った市長選挙の出口調査でも、各種のアンケートでも明らかになっていますが、市長選挙で市民は、「ムダな公共事業を抑制して、景気対策や高齢者福祉など、福祉・医療・環境対策などの充実」を求めていたのです。このことが中田市長の言う「閉塞状況の打破」「旧来のシステムの改革」一致するのでしょうか。言葉の上では大きくとらえれば、市民の思いを包含しているかのようにも思えます。しかし、実際は、中田市長の主張することは、小泉さんの絶叫する、日本社会の閉塞状況を打破するために「自民党を変え、日本を変える」と同じであり、「横浜を変える」という構造改革を市民の意思とすりかえているのです。中田市長の「横浜を変える」と市民の「横浜を変えて欲しい」という思いとは、全く別のものなのであり、少なくとの大きな乖離があるといわざるを得ません。

 
時代認識
  非「成長・拡大」論と「行  政の継続」・「変えるべ  きものは、変える」

 「閉塞状況」という指摘は、中田市長の時代認識を反映しています。彼は、これからの横浜は非「成長・拡大」の時代であり、「成長・拡大を前提にしたシステムがそのまま運用されつづけている」ことが「閉塞感」を呼び起こしているとして、この閉塞感を打ち破り新時代を創造するのだと力んでいます。
 現在「成長・拡大を前提にしたシステム」で動いている事業は何でしょうか。それは、高速横浜環状道路・みなとみらい21事業・京浜臨海部再編整備・南本牧埠頭整備などの大型公共事業です。これらの事業は、まさに、バブル期に、右肩あがりの経済をもとに計画されたものです。市長が指摘した「成長・拡大を前提」にした事業であり、いちばん最初に方向転換させなければならない事業です。
 ところが補正予算では、「行政の継続性」を理由に大型公共事業を温存させています。南本牧埠頭整備などに45億円、横浜環状道路のための関連街路に8億円、京浜臨海部再編整備に1500万円などです。これでは、言っていることやっていることが違います。これでは、これまでの高秀市政と何も変化はありません。

【巨大公共事業】
 行政の継続性を理由に、右肩上がりの経済を基本とした巨大公共事業を進めようとしている。横浜高速環状道路建設、みなとみらい21 事業京浜臨海部再編整備、南本牧埠頭整備に対する見解を伺う。
【A】横浜環状道路については、市民生活の利便性の向上や経済活動の活性化、渋滞解消による環境の改善を図るため、みなとみらい21事業は、民間企業等の進出による市民就業の場の確保や賑わい創出を図るため、京浜臨海部再編整備は空洞化対策、雇用の場の確保、低未利用地活用のために事業を進める。南本牧埠頭整備についても横浜港機能強化のため推進する。

 


 
基本理念
  「民の力が存分に
発揮される社会」

 市政方針演説で一番りきんでいたのは、基本理念の問題です。
 市長は、市政を運営するにあたっての基本的な理念を「民の力が存分に発揮される社会」だ言い切っています。ここでいう「民」とは、一人ひとりの市民のみならず、各種団体、民間企業のことだとしています。
 地方自治の本旨は、「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ること基本とする」いうものです。確かに地方自治法でいう「住民」は、市町村区域内に住所を有する、自然人、法人の双方を含むと逐条解釈ではなされています。
然しながら、組織や自己完結能力を持ち、利益、利潤を追求する大企業等と、生きた生身の一般市民や地元中小零細業者を、同列に扱ってはならなのです。結果的に、一般市民や地元中小零細業者が、第一義的に享受すべき地方自治体の施策や公共サービスを、大企業等に分散させることになります。もちろん、企業も地域社会にとって大切な存在であり、活力ある地域経済活動のために、自治体として中小企業を支援することは必要です。しかし、あくまでも地方自治体の活動の目的は、一人ひとりの市民の命と暮らしや、地元中小零細業者をまもり、住みやすい地域社会をつくることです。市長はその基本を履き違えているのです。

【政治姿勢A】 市長の言う「民」の力を信じ、その力を高めるとは、公共サービス等に民間大企業の参入を促進させようとするものではないか。

【A】住民福祉の増進は、行政が担うべきものだが、公的サービスのすべてを行政が独占的に供給するのではなく、民の力を借りながら最適なサービスを供給していくことが今後一層求められている。

 中田市長は施政方針演説で次のように言っています。ここは重要です。彼の本質が現れています。
「政治・行政の役割は、『民』の力を信じ、その活力を高めることである。別の側面から言えば、社会の構成員たる『民』が、自らの目指すところにより活動していくための自由と権利が保障されている社会ということだ」「民」つまり、民間企業・大企業に対する全面的な規制緩和を主張しています。さらにこう述べています。「同時に互いに尊重しあい、自己のみ利益追求ではない互助互恵の社会でなければならない」一見まともなことを言っているようですが、中田市長は「民」は民間企業も含むといっている以上、この言い分は噴飯ものです。なぜか、企業は自己の利益をあげることが目的の組織です。特に、株式会社であれば自己の利益を追求しない経営者は、背任行為になり訴追の対象になるのです。
また、そのあと特に重要な個所ですがこう述べています。「自由には責任、権利には義務が表裏一体の関係として意識されることが肝要だ。自分の責任は自分で取る、『市民』としての義務はきちっと果すということが抜け落ちて、自由と権利だけが声高に主張される社会であってはならない」こうです。
 気が付かれたでしょうか。「民」と「市民」を完全に使い分けています。
つまり、「民」には「自らの目指すところにより活動していくための自由と権利が保障されている社会ということだ」とし「市民」には「自分の責任は自分で取る」「義務を果す」「自由と権利だけが声高に主張される社会であってはならない」としているのです。中田市長の言う「民」は民間企業・大企業あり、「市民」は庶民・住民なのです。
 しかし、この考え方は別段変わっているわけではありません。新自由主義者・市場万能論者の基本的な考えなのです。本当に大変な人を市長にしてしまいました。しかし、彼ひとりで市政を行う訳ではありません。市の職員もまた、市民の代表である議会があります。今後、ますます議会の役割が重要になります。

横浜ビジョン
都市生活の向上
   「 クオリティライフ


 では、市長はどのような横浜を目指しているのかという問題です。大きな目標として都市生活の向上「クオリティライフ」をあげ、三つのビジョンをしめしています。
 その第一は、市民の力が創り出す生活充実都市の創造としています。
 施政方針では、このところで、はじめて福祉のことに触れて、補正予算部分を除きこれ以降、福祉の文字は一切ありません。しかも次のような叙述です。「自分が納得する人生を送るためには、基本的には個々人が主体的に自立することが大切です」「しかし、子どもやお年寄りをはじめ個人では自立が困難な場合には、思いやりのある社会として補い支援するしくみが必要です」これだけです。内容は自民党の「自助と地域共助」と全く同じであり、福祉ではなく窮民対策であり憲法25条の精神と相容れないものです。しかも、民間の活力によりこの分野での「新生活産業」を横浜型新産業として育てていきたいとしています。要するに「新生活産業」をつうじて都市生活の向上を図るというものです。
子育て・高齢者福祉の「問題については、補正予算代表質問で、資料のように具体的聞きました。この分野ではこれまでの方針と全く同じで、中田市長自身は何一つビジョンを持っていないことが明らかになりました。

【子育て問題】
 保育所の待機児童の解消、学童保育の拡充、中学校給食の実施、30人以下学級、定時制高校の統廃合の見直しについて伺う

【A】保育所待機児童の解消については積極的に取り組む。学童保育は、放課後児童の健全育成事業として引き続き行なう。中学校給食は、弁当持参を基本とし、業者による弁当販売を全校展開する。30人以下学級については、都道府県教育委員会が定めることになっている。定時制高校の統廃合については、横浜市高校再編整備計画に沿って行なう。

 補正予算では、この分野の予算はついていません。わずかに、24時間型緊急一時保育の調査・検討に200万円ついただけです。

【高齢者福祉】
 特別養護老人待機者は4816人に達している。緊特別養護老人ホームへの対応等さまざまな課題がある。  

【A】今後策定する計画案について市民等のご意見を伺う。緊急対策が必要だ。

 第二番目は、環境行動都市の創造です。
中田市長は、選挙での速攻政策の中に「市街地での『緑倍増計画』の実施」を謳っています。この問題での補正予算は500万円「屋上緑化の推進」だけです。これでは速攻政策にはなりません。アリバイ予算です。緑の問題では、今ある緑をどう守るかが必要です。

環境問題】
 住環境や、斜面緑地を無秩序なマンション建設から守るためにも、規制緩和で制度疲労している「住環境条例」の改正が必要ではないか。

【A】「住環境条例」は、建築紛争の未然防止しと住環境保全及び形成を図ることを目的として制定し、現在まで適切に運用されている。直ちに条例改正を行なう考えはない。


横浜の丘の緑が地下室マンションで消えて行っています。ここのところの手立てが必要です。
 そして、ここでも行き着くところは、「横浜という大きな消費市場を背景に、環境産業を活発化する」ことをめざすとしています。
 三つ目のビジョンは個性発揮都市の創造です。
 中田市長は、なかなかうまいことを言います。言葉だけだと、なるほどと思うようなこともあります。例えば、「横浜が、ミニ東京になるような、単なる規模拡大をめざすことに意味はありません。私は『ナンバーワンよりもオンリーワン』であることが大事だと考えます」これです。ところが、南本牧埠頭大水深バース等は、まさに港間競争のナンバーワンをめざしたものです。そこに先ほども言いましたが45億円を投入し、事業を継続するこれはおかしいではありませんか。「横浜港は個性あるシックな港を」という松川さんの言葉を思い出します。
 市長は、横浜の持つ可能性を活かすためには、都市活動のあらゆる側面で、障害となる規制の緩和や支援策の充実が必要として、横浜でこそ誰でもが自由な発想で参入できる21世紀にふさわしい「横浜型特区」を実現するとしています。環境産業育成などの「環境特区」、観光アミューズメントの魅力をつくる「交流特区」その他にも「医療特区」など、新たな産業の受け皿づくりをしようとするもので、そのインフラ整備のために市税を投入しようとするものです。

 
新しい都市経営の指針

いよいよ施政方針演説の最後にして、中田市政の最大の特徴でもある「新しい都市経営の指針」の問題です。
 「市民はこれまでの行政運営の手法では限界があると感じ取っている」として、五つの項目を「新しい都市経営の指針」を提示しました。
その第一は情報公開です
積極的な情報公開には大賛成です。ところが、おまけがついているのです。中田市長は企業が計画性を持った活動をするために必要というのです。どうしてもそこ、つまり企業活動活性化のためということに行き着くのです。
積極的な情報公開として、公共工事入札での談合を防ぐための有力な手立てとして、東京都をはじめ10の政令市で行なっている、入札価格の事前公表を実施すべきとの要求にはあいまいな回答です。これまでの市の姿勢と何ら換わりありません。
 第二は、効率的・効果的行政の推進です。
 厳しい財政状況の中で、ムダをなくし、行政コストの削減に取り組み、常に費用対効果を考えた財政運営を追求しなければならないと気色ばっています。これでは本当のムダ、大型公共事業を免罪して職員の削減など効率的財政運営、自民党流の行革を推し進めようとするものです。また、能力と意欲のある職員の力が発揮される人事制度を徹底するとしていますが、これも、国の「成果・能力の信賞必罰の人事制度」を導入しようとするもので重大です。
 第三は、持続可能な財政の確立です
 中田市長は、先月末「中期財政ビジョン検討チーム」の人選を公表した。座長に構造改革論者で知られている慶応大学の跡田教授をすえ、市債残高4兆7000億円に及ぶ財政改善に意欲を示したと報道されています。
中田市長は、巨大公共事業がこれだけの市債残高を積み上げた元凶であることを不問に付して、自民党流の行政改革を断行しようとしています。
 前市長が進めていた「家庭ゴミの収集」「水道の検針業務」「学校給食の調理」の民間委託・民営化の動きに加え、さらに「公的住宅供給」「市民病院」「市立大学」の民営化をめざした「あり方検討」に補正予算をつけました。
 先日、わが市議団史上初めての横浜市医師会との来年度予算懇談会で、内藤会長は「市民病院」のあり方検討委員会のメンバーに係わって、横浜市医師会や病院協会の意見を聞かないまま委員が選出され、しかも、メンバーには医師会、病院協会から誰も入っていない。これで「あり方」が検討できるのか、市長は市民の立場からの検討ではなく、単に財政的に削るということしか考えていないと批判をしています。
 第4、第5は、民間の活力を引き出す環境の整備、経済活動の活性化・市民の力を活かすまちづくりとしています。
 これは、明快です。「民間にできることは民間に」「公共サービスや事業のあり方基本から考えること」「民間との役割分担を、最適なサービス主体、事業手法の面から考える」つまり、公共―サービスを民間に明渡し、行政はコーディネーターに徹しろというものです。
 その典型がPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)つまり、民間資本による民間主導の公共事業・公共サービスです。
今後の公共施設の整備・運営にあたっては、民間の活力を引き出すために欠かせないとして、PFIを積極的に導入していくための基本方針や、ガイドラインを策定するとしています。
 PFIについてはその評価が二分しています。そもそも利潤を追求することが目的としているのが民間企業です。その企業が公共施設の整備・運営を行なうことは公共サービスを市民に提供することが目的ではなく、その事業をつうじて利益を得ることです。
 PFIは、公共施設を整備する場合、確かに、自治体の初期の財政負担は軽減します。しかし、長期にわたって費用弁済を義務付けられるものであり、かならずしも公共負担が軽減されるとは言い切れません。事業が失敗した時の責任はどうなるのか、さらに、これまでの本市の入札請負制度そのものを崩壊させる恐れもあります。

 中田市長の言う「新しい都市経営の指針」は、行政の民間委託、民営化や公共サービスを通じて、大企業の仕事興しを目的にしているという以外に表現しようがありあません。まさに、新自由主義・市場万能論の実践です。この中田市政から住民を守る大運動がもとめられています。しかし、まだまだ、中田ブームの最中であり、その詐術的な行政手法を見抜いている市民はほんの少数です。
 今後、ゆめはま2010プランに変わる中期政策プランが策定の検討が始まります。大いに住民の要求を市に持ち込み、市民運動で中田市長の動きを包囲しなければなりません。

 
市議会の動き
象徴的な旧与党
特に公明党の豹変

最後に、横浜市議会の対応についてお話したいと思います。
資料で5月30日付けの毎日新聞を資料として載せておきました。旧与党は、高秀前市長を掲げて市長選を戦ったことからその対応が注目されました。
 川崎市では、いまだに旧与党と阿部市長との間には、軋轢があり助役も選任されていません。ところが、横浜ではあれほど辛らつに施政方針演説を批判した公明党まで補正予算に賛成しました。

  
補正予算に反対したのは
       日本共産党だけ

補正予算には、日本共産党以外のすべての会派が賛成に回りました。旧与党は立場からいえば補正予算に反対したいところです。しかし、補正予算の中身が基本的に前市長と変化がなく、むしろ、旧与党が望んでいた公共サービスの民営化路線を、一歩も二歩も先に進める内容だからです。
 ネットは矛盾を深めました。前市長時代は高速横浜環状道路、南本牧埋め立て、みなとみらい21事業に反対をしていたにもかかわらず、今回の補正予算には補正がつかなかったみなとみらい21を除いて、すべて賛成をしました。みなとみらい21についても補正がつけば賛成したに違いありません。ネットはNPO問題で中田市長に期待をしているからです。自分達のワーカーズコレクティブへの支援の拡大を求めているからです。
 結局、議会全体が中田新市長の支持勢力に回るなかで、市民の立場で新市長の本質を見抜いたのはわが党だけでした。これからますますその役割が大きくなることは必至です。

 
最後に

昨日、臨時議会が開かれました。「市民の党」の二人の前議員が、地方裁判所に「除名」取り消しの訴えを出したことに対して、議会としての対応を決めるものでした。
わが党は、多数党の多数の力による横暴も、「市民の党」の議会無視の実力行使にも断固反対をして闘いました。その立場は議会内外から、「一番筋が通って説得力があるのは共産党だ」と評価を受けています。 今回の問題は、市議会の民主主義の問題です。旧与党が圧倒的な数の力で「日の丸の議場掲揚」「少数会派の発言時間削減」を行なったことです。この議会の多数派が中田新市長と組んで、小泉構造改革の横浜版を展開するこれが今後の動きです。この大きなうねりから、住民の命暮らしを守るにはこちらも攻勢的に出なくてはなりません。旺盛な住民要求運動と議会の変革で「住民こそ主人公」の市政に転換させなくてはなりません。市民の会のますますの活躍と、来年のいっせい地方選挙での日本共産党の勝利を決意して私の話をおわります。

記入日時 2003/02/17(月)/00:20:14  No.58