遠藤紀明(非常勤講師組合委員長):

 

小川恵一学長の

「古き良き時代」「パートのおばさん」

発言と大学改革

(タイトルは,佐藤真彦による)

 


 

 

非常勤講師給与支払い方法変更と大学改革

2003年3月3日

横浜市立大学非常勤講師労働組合執行委員長
遠藤紀明


「市大を考える市民の会」通信,第10号より;永岑三千輝氏ホームページ参照)

 


【抜粋】

「古き良き時代」「パートのおばさん」発言。

非常勤講師労働組合結成以前、非常勤講師有志というかたちで数名のものが小川学長と会
談を行いました。

その結果はきわめて残念なものでしたが、
とりわけ学長が再三にわたって繰り返した「古き
良き時代は終わった」という言葉には愕然とせざるを得ませんでした。

「古き時代」が終わった以上、新しき時代に対応して大学は変わらなければならないことは当
然です。

しかし「良き」ものが悪しきものに変わろうとするなら、大学人たるもの、ましてや一大学の長と
して、悪しきものに立ち向かう気概を持っていただきたいと思います。

少なくとも、あたかも「長いものには巻かれろ」とでもいうかのように、常に時代に迎合す
る視点では真の大学改革は望めないと考えます。

さらに学長は
「パートのおばさんに比べてずいぶん良い給与だと思いますが」とも発言
れました。

学長の認識の中で非常勤講師は「パートのおばさん」に比較される存在なのでしょうか。

もちろんパートタイムの労働者を卑下するものではありません。

そうではなく、同じ大学でともに学生の教育に責任を持つパートナーとして非常勤講師を
見ていただけないのでしょうか。

個々の教員が学生に接するとともに、たがいに協力しあって市大の教育全体を作り上げて行く
のだという認識を、教育者でもある学長がお持ちでないとは思いたくありません。

さらに学長は市民に対するアカウンタビリティという言葉も再三お使いになりました。

非常勤講師の給与を時給制にすることがどうしてアカウンタピリティに結びつくのか不思議で
す。

大学は教育の充実のため優秀な教員を招聘する目的で、非常勤講師に対してもこれだ
けの待遇を行っているという説明なら分かりますが、非常勤講師の給与をここまで削り、
労働もここまで強化しましたというのは、単に投資家に対する経営者のアカウンタピリテ
ィであり、教育に携わる者の発言ではありますまい。

この視点は、目先の「改革」パフォーマンスを売りにする、ある種の政治家や御用学者
の発言と同じものではないかと思われます。


「あり方懇」答申と非常勤講師問題。

「あり方懇」答申による大学改革の方向性を見る限り、教育に重点を置いた大学を構想として
挙げているようですが、その教育を行う教員のモチベーションをいかに高めるかについては、
まさに逆効果を生むような案しか示されていません。

非常勤講師が多くの大学においてこれまで置かれてきた極めて劣悪な労働条件を広範
囲に拡大するだけのことでしょう。

さらに、教員がノルマと評価に追いまくられ、労働時間が「実績」であるという発想しか持

たない事務担当者が人事を左右するようになれば、そこにはもはや教育は存在する余
地が無くなることでしょう。

非常勤講師はこれまで大学の方向性になんら関与することはできず、雇用の継続につ
いて常に不安を抱きつつ、きわめて低い報酬に甘んじながらもなお、より良い教育を学
生に与えようと必死の努力を続けてきました。

その辛さを肌身で知るが故に、そして、今回の給与支払方法の変更によるモチベーショ
ンの低下を如実に感じているが故に、「あり方懇」答申における大学組織改編案が教育
の現場への無知をさらけ出したものであり、こうした改編は教育の質の向上にまったくつ
ながらないということを断言できるのです。


付記。

国立大学の独立行政法人化に対して、首都圏大学非常勤講師組合が声明
出しております。別に掲げますので、是非お読み下さい。