構造改革論者・中田市長の目指すもの(抜粋)

 

 

"横浜モデル"

 

構造改革論者・中田市長の目指すもの

 

2003年2月

 

「中田市政を考える会」(仮)準備会

 

永岑三千輝氏ホームページより)(矢吹 晋氏ホームページ参照)

 


 

【抜粋】全文はこちらをご覧ください. pdfファイルはこちらです.)

 

 

構造改革論者・中田市長の目指すもの

 

 

 

横浜市民、労組の皆様へ

 中田市政がスタートして、1年近くが経過しようとしています。
 

 中田市長は昨年の4月に就任以来、市民がのぞむことを次々に素早く実行してきました。イ
ンターネットによる情報公開がおこなわれ、市民は行政の情報をとりやすくなり、住基ネットの
問題では市民の圧倒的な支持を得、カレーミーティングなど市民との出会いの場も多くなりまし
た。ゴミ問題等、環境問題にも積極的な施策をうちだしています。市民は若い市長に期待して
いました。


 しかし、混迷する神奈川県知事選が取り沙汰されるようになった12月半ば頃から、神奈川新
聞で驚くような報道が続きました。12月14日付け、新港湾病院の民営化案が検討されているこ
と、1月16日付け、横浜市大の廃校も選択肢という改革案がだされていること、1月17,18,29
日付けでは、市長が職員の作成した行政改革案に不満で自らチ一ムを作り策定にのりだすと
いう前代未聞のことが報道されています。・・・

 今、横浜市ではじまっている政策の中味は、中田市長1人というよりも彼のバックにある松下
政経塾と市場競争原理主義者たちが長い時間をかけ研究してきたものです。中田宏氏が強
力な権力をもつ首長となった後、市場競争原理主義者の知識人―宮脇淳・跡田直澄・南学、
北沢猛、橋爪大三郎、森谷伊三郎氏など―をブレインとし、横浜市の情況にあわせ、次々と構
造改革(経済改革、財政改革、行政改革)のプログラムを断行しはじめたのです。

 

 この構造改革が「横浜モデル」として、各地に広がっていくおそれがあります。問題は市民病
院、横浜市大、横浜市職員、横浜市民だけのことではないといえます。・・・

 

 

中田宏市長の経歴http://www.nakada.net/yokohama/page4.htm

 ・・・市長になってからの中田市長の発言では見えない彼の本音―構造改革論者、市場原理
主義者、有事法制推進論者―は、国会議員時代に書いたものから読み取ることができます。
http://www.nakada.net/syucho/kihon/cahindex.html

 

 

NZの規制緩和モデルが中田市長の横浜モデル

中田市長は、国家と地方自治体と違いはあるものの、350万の横浜市の人口とほぼ同じニュ
ージーランドの規制緩和・民営化・行政改革を、横浜モデルにしようとしています。・・・

 

 NZは、1984年、労働党政権が成立すると、若手の攻治家・官僚のリーダーシップにより、行
政に企業会計システムをいれ、国営企業を民営化し、行政が行っていたサービスを企業化し、
公務員法を改悪して公務員の数を半減する構造改革を断行しました。1990年に労働党からボ
ルジャー首相の率いる国民党に政権が交代すると、構造改革の継続とともにサッチャー流に
労働法を改悪して労働組合の権利を奪いました。その結果、一時的に経済はよくなり、企業、
金持ち、外国資本にとってはこの改革は成功したといわれ、世界各地からのNZ詣でが行われ
ました。中田市長もこの1人です。・・・

 

 しかし、若い政治家・官僚の頭の中だけで考えだされた数々の政策の実験場とされたNZで
は何がおきたのでしょうか。


 ジェーン・ケルシーオークランド大学教授「ニュージーランドで何が行われたか」(岩波ブックレ
ットN0458、「規制緩和」)の報告によれば、構造改革の結果、少数民族のマオリ・女性・労働
者・高齢者など社会的弱者・市民は犠牲を強いられ、企業の手にわたされた医療・教育・公共
サービスなどは質の低下を招き、家計に負担を与えたそうです。航空運賃は値下げされたが、
市民が日常使う公共交通は値上がりしました。教育も地域により格差ができ、保険料は高くな
り、医療の質は低下しました。労働組合は組織率を半減させられ、パートタイマーが増え、失
業者の数も増大し、特に若者の失業は深刻な問題となりました。・・・

 

 このNZの失敗も勉強している中田市長とそのブレインは、今まで行政が担っていた福祉につ
いて、市民の善意を利用してNPO等に肩代わりさせる"ボランティア社会"を作り出そうと考えて
いるように推察されます。「協働」というタームは、中田市長のような構造改革論者の「競争原
理」に対抗する夕一ムとして市民のなかからうみだされたものですが、それを逆利用していま
す。また、最初、松下政経塾出身議員が使う「民の力」というタームは「企業の力」を意味する
ものでしたが、中田市長は、「民の力」を「市民の力」と「企業の力」を合わせた意味に使い、さ
らに、市民を前にだし、次に企業をだしています。中田市長およびそのブレインたちが、本当
は市民になにを期待しているのか、さらなる調査が必要でしょう。


 いずれにせよ、NZで失敗に終わった実験が横浜で新たにくりかえされようとしています。

 現在、その一番のターゲットに選ばれているのが、横浜市大と新港湾病院なのです。

中田市長の構造改革

 横浜市のHPにある市長記者会見で中田市政の内容かわかります。
http://www.city.yokohama.jp/se/mayor/interview/index.html)・・・

 

 中田人気が市民の間で湧き上がる裏で、小泉首相以上の構造改革論者・中田市長は、一
連の改革プランを「リバイバルプラン」という名称で準備し、同時に、市民病院、市大、公共サ
ービスの民営化へ着手しはじめていました。・・・

 

 さらに、民営化の手始めとして@公的住宅供給等、A市立病院、B市立大学について自ら
選んだ委員を配置し3つの「あり方懇談会」を8月から9月にかけ次々とたちあげました。また、
次のターゲットとして、ゴミ、水道、学校給食、保育園、公園管理等を民営化する方向でリスト
にあげ、整理・統合する外郭団体のリストも作成しています。・・・

 

 15年度予算編成を前にして、構造改革で中田市長がまず力をいれたのが、財政改革の分野
でした。(http://)www.city.yokohama.jp/me/zaisei/vision/index.html)・・・

 

 いずれにしても、中田市長をはじめとする松下政経塾出身の代議士・イデオローグ、市場競
争原理主義者である学者が長い聞練り上げ、準備していた路線にそい、横浜市のプランが素
早く決められていったように思えます。2月14日に発表された予算案はこの検討チームの意向
が色濃く反映されたものとなっています。


3つの「あり方懇」と行政改革

 

  「横浜市立病院のあり方懇」は、12月に中間答申がだされ、新港湾病院の民営化が提案さ
れていて、その方法として@委譲による民営化A管理を民間に委託B地方公営企業法の全
部適用をあげています。・・・

 

 攻撃が一番厳しいのは、横浜市立大学の改革です。
http://www.yokohama-cu.ac.jp/arikata/arikata_top.html

 「市立大学の今後のあり方懇談会」の座長に、中田市長は大学改革構想で基本的に自分と
同じ考えを共有し、学会、市民運動で評判の芳しくない橋爪大三郎東京工業大学教授を座長
として指名しました。教員の批判を橋爪氏に向けさせることを、考えたのかもしれません。他の
4人のブレイン(南、北択、跡田、宮脇)とはまたちがうあつかいのようにもみえます。・・・

 

 大学教職員の削減、企業会計方式で算出した赤字をターゲットとした予算のカット、2つある
付属病院の民営化、これらを実現すれば、これからの市政全体の行財政改革の突破口を開く
ことになります。教員組合の力も弱く抵抗が少ないとふんだ市長・行政は、「あり方懇」に恣意
的な資料をだし、それが、神奈川新聞によってセンセーショナルに取り扱われる等、大学関係
者の怒りをかっています。当然といえば当然ですが、「あり方懇」の答申は、中田市長・構造改
革論者のもくろんだとおりのものがでてきています。

 横浜市大への攻撃が成功すれば、大学の法人化のモデルとされるばかりか、地方自治体の
構造改革のモデルともされてしまいます。「横浜モデル」が各地に広がらないように、構造改革
に反対する全国から横浜への支援が必要とされています。横浜市大の問題は、この大学だけ
の問題ではないでしょう。

 NZの例を見れば、中田市長が本当にやりたいのは市職員の削減をふくんだ行政改革だと推
察されます。新聞報道によれば、行政改革案(新時代行政プラン)は、当初、職員によって作
成され、2003牢1月、市長に提出されましたが、1月16日、職員案では不十分として、ブレイン・
宮脇淳北海道大学教授をいれ、市長自らチームをつくり、手がけるという前代未聞の行動にで
て、職員の間にショックが走ったといいます。・・・

 

 ちなみに、中田市長の側近中の側近である5人の「民主党横浜みらい市会」に所属する岡本
英子市会議員のHPにのっている政策提案(2003年2月1日)を読むと、市長になってからは、あ
いまいになっている中田市長の構造改革と市政の方向がよくわかります。
http://www5e.biglobe.ne.jp/~eiko/page10.htm)・・・

 公務員の人数をドラスチックに削減し、パートやNPOにシフトしていこうとしている構造改革論
者たちの真意を調査する必要があるでしよう。


中田市長へ批判の声

 ・・・中田市長は、1994年に書いた共著「小沢一郎日本改造計画への挑戦状」では、地方自
治体の首長の権限が強すぎるから制限し、地方議会の権限を強くしなければいけないこと、国
の審議会の内容や委員の選考過程が不透明だと批判しています。しかし、自分が首長となる
とその権力を使い、迅速にという口実でトップダウンの機構をつくりだしています。また、審議会
のような「あり方懇」をつくって、委員の選考過程を明らかにしないまま、短時間で結論を出し、
大学・病院関係者、職員や市民の意向を無視して、自分の意のままに市政をおこなおうとして
います。このような、不透明で、説明責任のないやり方は、「市民の力」を奪うものだと考えま
す。・・・

 

 「改革は、包括的なプログラムを一気に打ち出したほうがいい。政治的な合意を重視して、改
革を段階的に進めようとすると、反対者に時間を与えることになる」中田市長は、日本の料理
法として、日本でも必ず反対者がでるから、NZの改革があらゆる分野で猛烈なスピードでおこ
なわれたように、日本でも例外なくスピーディにやるべきだと書いています。・・・

 

 中田市長とブレインが、松下政経塾をバックに練り上げてきた構造改革という「構想」をもち、
急激なスピードで実行しているのは、予測される市役所、市民、組合の反対者」に時間を与え
ないためと想像されます。・・・

 

 中田市長は、大学を卒業してから、すぐ、松下政経塾に入塾し、そのイデオローグとして養成
され、政治家となりました。社会的経験のまったくない彼が頭で考える構造改革とは誰のため
のものなのでしようか。


 市立病院でも市大でも市民・労働組合による反対運動がはじまりつつあります。

 自治労横浜市従業員組合、横浜市従業員労働組合は、それぞれ、抗議文を出し、署名運動
をはじめています。


 2月1日には、市民団体「市民のための医療をつくる会」がシンポジウムを開き、同日、横浜
市従業員労働組合も懇談会を開きました。


 横浜市大関係者は、「市大を考える市民の会」を立ち上げ、2月8日にシンポジウムを開き、
市民の会通信を出しています。(http://www2.big.or.jp/~yabuki/u-index.html

 右肩下がりの経済と税収の落ち込みのなかで、私たちは市民として何をすべきなのか、本気
で考えなければならない時代にきています。しかし、市民の命と暮らしに不可欠な医療・教育・
公共サービスを企業に手渡すことは、最後までしてはならないことと考えます。・・・