浅野 洋

(横浜市立大学名誉教授・数学)

 

「セカンド・オピニオンを訊くべし」・

「座して死を待つことなく,危機に気付き,

立ち上がれ」

 

市民の会通信第16号より)

 


 「あり方懇談会」の答申を見て,その内容のひどさに驚くと同時に,答申に対する大学当局の
反応の仕方に,歯痒い思いをしています。

 

 この答申は市長に向けてなされたものですが,その内容を見て出された学長のコメントが,
「意を体して改革に当る」
というのはいかにも残念で,せめて,「大学としては納得し難い
部分も多々あるが,ご意見を参考にして,今後大学で良く検討致します」程度にして欲し
かったと思います。


 さて,8日の「考える会」に参加しましたが,活発な皆様のご意見に圧倒され,私見を述べる
チャンスを逸しましたので,私見の一端をメールでお送りさせて頂きます。


 (1) 今回の答申内容は,市大を人に譬えるならば,「このままでは命はない。手術をすれば命
は助かるが,結果は植物人間同様になる」という類のもので,市大にとってはまさに生死の分
れ目です。

 

 患者が医者からこのような宣告を受けた場合,最近では,手術をするか否かの決断を下す
前に,
セカンド・オピニオンを訊くことが常識になっています。


 
そこで今回もそれに倣って,今から,もう一つの「あり方懇談会」を立ち上げて,再度,
検討して貰うのが良いと思いますが,如何でしょう。

 

 本来なら,それを学長の下に立ち上げるのが一番良いと思いますが,それが出来なけれ
ば,「市民の会」で立ち上げるしかないでしょう。

 

 後者の場合,費用の点が問題になりますが,350万市民の中には,無償でも引き受けて下
さる立派な方が沢山居らっしゃると思います。

 

 前回に負けない立派な「あり方懇談会」を作り,そこで議論して戴くのが良いと思います。時
間的な問題もありますが,その気になれば,これからでも未だ十分間に合うと思います。ご検
討戴ければ幸いです。


 (2) 「市民の会」の活動に期待するところは極めて大ですが,何と言っても,現役の先生方の
活動が何よりも大切だと思います。

 

 現役の先生方の声が余り聞こえてこないのも,私が歯痒く感じる一つの大きな原因で
す。

 

 過日,理系の大学院研究科会議で,「答申」内容に反対する声明が出されたそうです
が,こういう声明が他の教授会でも次々に出されることを大いに期待しています。

 

 私は気が短い所為か,現役の先生方には酷ですが,「答申に述べられたような惨めな姿
の大学になって生き長らえるぐらいなら,これまで培ってきた市大の名誉を汚すことな
く,潔く廃校の道を選んで欲しい」と思っています。

 

 卒業生にとって母校がなくなることがどんなに悲しいことか,ということは十分に考えた
上でのことです。


 市大を廃校に追いやった中田市長の判断が正しかったかどうかは,後世の人々が判断して
くれるでしょう。

 

 勿論,本音は「座して死を待つ」ことではなく,現役の先生方が「危機に気付き,立ち上
がり,声を上げて下さる」ことを望んでいるのです。


 最後に,市大を守り,民主主義を守る為に,貴重な研究時間を割いて活動を続けていられる
先生方に対して,深甚なる敬意を表します。

 

浅野 洋