「博士研究員」制度についてのてんまつ


「博士研究員」制度についての

事務局宛公開質問状と学長回答の

てんまつ

 

「市民の会」ホームページ,「議論の広場BBS」No.96-164より)

 

一番の問題は、C学長は所定の人事手続きを事務局長宛依頼する.D事務局長は学長からの依頼が適当と認めた場合,これを決定し,学長あて通知する.との点であると思います.学長の回答には、「大学と事務局の関係には問題が無い」となっていて、上記の点に関する学長の見解のようですが、これは些細な問題ではなく、このような点をないがしろにしてきた結果が今日の混乱を生じさせていることを、学長はまだお気づきになりませんか?(吉岡直人氏コメント)

 

ここまで的を絞って指摘してもなお理解しできないとすると、これはどうしようもない、という感じです(永岑三千輝氏コメント) (注:吉岡・永岑両氏のコメントを抜粋.2005.7.6)

 


 

「博士研究員」制度についての事務局宛質問状 - 佐藤真彦 04/07-12:18 No.96
行動に敬意 Re: 「博士研究員」制度についての事務局宛質問状 - 永岑三千輝 04/07-12:33
No.97
公開書簡:学長の見解表明を要望 - 佐藤真彦 04/07-19:18 No.99
学長からの回答と再度の要望 - 佐藤真彦 04/15-23:06 No.148
Re: 学長からの回答と再度の要望 - 永岑三千輝 04/16-09:01 No.149
「大学人の会」の見識との対比で一言 - 永岑三千輝 04/16-09:02 No.150
Re: 「大学人の会」の見識との対比で一言 - 吉岡直人 04/17-13:59 No.163
問題点が的を絞って指摘されております。 - 永岑三千輝 04/17-14:36 No.164


 

タイトル : 「博士研究員」制度についての事務局宛質問状
記事No : 96
投稿日 : 2003/04/07(Mon) 12:18
投稿者 : 佐藤真彦 <msatou@yokohama-cu.ac.jp>
参照先 : http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/


   「博士研究員」制度についての事務局宛質問状

横浜市立大学事務局長 高井祿郎様
総務部長 中上 直様
2003年4月7日  

平成15年3月17日,研究交流課長名で全教員宛に“通知”された文書,大研第370号『「横
浜市立大学博士研究員実施要領」の制定について』(別紙参照)中で述べられている「博士研
究員」制度に関して,下記の疑問点につき文書にて速やかにご回答願います.

総合理学研究科 佐藤真彦



(A)制定手続きの問題性
教員の研究と密接に関連した「博士研究員」の資格・身分・期間・手続き等に類する事項につ
いての新たな制度の制定に関しては,(事務局と協議しながら)本来,教員の正式な審議の場
である教授会・研究科委員会において審議し,了承を得るべきものである.しかるに,今回の
件に関しては,教授会・研究科委員会における審議をまったく経ることなく,事務局からの一方
的な“通知”という形で行われた点で,手続き的に大いに問題がある.(第一点)

(B)大学の自治(教授会の自治)への侵害
「概要」(5)の手続き(第6条・7条)において,
@研究責任者は,事務局(研究推進課及び総務課人事係)と事前協議をする.
A研究責任者が,教授会又は研究科委員会に諮り,了承を得る.
B部局長は学長へ申請書を提出する.
C学長は所定の人事手続きを事務局長宛依頼する.
D事務局長は学長からの依頼が適当と認めた場合,これを決定し,学長あて通知する.
とあるが,@CDの項目は「学問の自由」を保障するための制度である「大学の自治(教授会
の自治)」制度に対するあからさまな侵害となっている.(第二点)

すなわち,すでに本学教員が「市大を考える市民の会」ホームページhttp://www8.big.or.jp/~y-
shimin の公開文書中で指摘しているように,『大学の最終的で最高の決定権者(決裁者)は教
学の最高責任者としての学長であるべき』ところが,事務局長となっている点である.とくに,
『「博士研究員」と共同研究を行なう大学教学サイドの申請を,研究内容を判断できない事務
(局)が最終的に拒否出きる処理になっているのが,いちばんの問題』である.

(C)なお,上記の文書のまえがき中で『大学院に続くコースにポスドクを位置付け,研究の活
発化及び若手研究者の育成・教育プログラムの充実を図るため,「横浜市立大学博士研究員
実施要領」を定めました.』とあるように,本制度はポスドクの人事手続き等についての規則を
条文化したものであるが,ポスドクの人事手続きを定めたもう一つの制度である「横浜市立大
学客員教員等に関する規程」(02-6-1制定)においては,@CDの項目はなく「学長は,前条
の申請を適当と認めるときは,所定の手続きを経て受け入れを承認し,・・・」となっており,「大
学の自治(教授会の自治)」を侵害しない制度となっている.今回の「大学の自治(教授会の自
治)」を著しく侵害する制度は,この点においても(制度としても)矛盾したものになっている.
(第三点)

(D)また,上記@の項目は,今回,事務局が“通知”した文書〔大研第370号『「横浜市立大学
博士研究員実施要領」の制定について』(別紙参照)〕中で事務局が指定した“手続き”である
〔上記(B)の「概要」(5)の手続き(6条・7条)参照〕が,実際には「実施要領」の6条・7条に存
在せず,したがって,@の項目は事務局が恣意的に加えた手続きであり無効である.(第四
点)

以上
・・・・・・・・・・
(注1):上記の質問状を作成するに至った経緯
去る4月3日(木)の総合理学研究科委員会において,今回の「博士研究員」制度は,以下の4
点,すなわち,@制定の手続き,A教授会の自治に対する侵害,B従来の「特別研究員」(い
わゆる,ポスドク)制度との不整合,B「博士研究員」の申請手続き中に事務局が恣意的に定
めた項目(実際には,条文中に存在しない項目)がある点で問題であることが複数の教員から
指摘され,議論した結果,疑問点を教員の1人(佐藤真彦)が質問状として列挙し,榊原徹研
究科長がその質問状の内容を事務局に伝え,それに対して事務局が文書として回答するよう
に研究科長が要請することになった.

(注2):なお,本質問状を佐藤真彦の個人的ホームページhttp://satou-labo.sci.yokohama-cu.
ac.jp/ に掲載し,あわせて「市大を考える市民の会」のホームページhttp://www8.big.or.jp/~y-
shimin に投稿し,問題の所在を広く大学内外に公表することとする.

・・・・・
【別紙】

                        大研第370号
                      平成15年3月17日
学部長各位
                      研究交流課長

  「横浜市立大学博士研究員実施要領」の制定について

 大学院に続くコースにポスドクを位置付け、研究の活発化及び若手研究者の育成・教育プロ
グラムの充実を図るため、「横浜市立大学博士研究員実施要領」を定めました。また、実施に
際しての細目に関しては、「横浜市立大学博士研究員取扱細則」に依ります。
 平成15年4月1日より実施いたしますので、所属教員へ周知いただくとともに、手続き方よろ
しくお願い致します。
 なお、概要は以下のとおりです。

概要
(T)名 称
横浜市立大学博士研究員実施要領
(2)資 格(第2条)
博士の学位を有する者で、年齢が35歳未満であること。
(3)身 分(第3条)
地方公務員法第3条3項3号に規定する非常勤特別職
(4)受け入れ・研究期間(第5条)
原則として1年以内。更新は原則として2年以内。特にやむを得ない
場合は延長も可能とする。
(5)手続き(第6条、7条)
@研究責任者は、事務局(研究推進課及び総務課人事係)と事前協議
をする。
A研究責任者が、教授会又は研究科委員会に諮り、了承を得る。
B部局長は学長へ申請書を提出する。
C学長は所定の人事手続きを事務局長宛依頼する。
D事務局長は学長からの依頼が適当と認めた場合、これを決定し、学
長あて通知する。
              -1-

(6)施設利用(第8条)
勤務時間外における本学の研究施設等の利用について便宜を提供する
が、利用によって生じた事故等に関しては、横浜市は何らの責任を負わ
ない。
(7)勤務時問(細則第2)
1週間当たり30時間以内とする。
(8)報酬(細則第3-2)
1週間当たり30時間勤務する場合、月額400,000円を基準とする。
その他、通勤手当相当額以外の報酬は支給しない。
(9)経費(細則第第4)
博士研究員の雇用に要する経費はすべて、外部資金研究費の中から横
浜市に納付することとする。
(10)勤怠管理(細則第5)
勤怠管理や業務指示等の労務管理は、研究責任者が責任をもって行う
こととする。
(11)必要経費
必要経費(研究責任者が負担する額)
月額報酬が400,000円で、交通費45,000円の場合

月額報酬  400,000円
交通費   45,000円
社会保険料 58,964円
合計 503,964円
                           担当    
                        研究交流課
                        白柳、中川
                        787-2404 
               -2-



タイトル : 行動に敬意 Re: 「博士研究員」制度についての事務局宛質問状
記事No : 97
投稿日 : 2003/04/07(Mon) 12:33
投稿者 : 永岑三千輝 <nagamine@yokohama-cu.ac.jp>
参照先 : http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/Nisshi.htm

総合理学研究科および佐藤真彦先生のご尽力に敬意

博士研究員制度での公開質問状を拝読し、大学の自治、教授会の自治を守る原則的行動に
敬意を表します。

「市民の会」のカメリアフォーラムの欄で、「学問の自由とはなにか、大学の自治はなぜ必要
か」を見ましたら、大学憲章が載っておりました。この大学憲章の精神をまさに実行しておられ
ると考えます。

すなわち、この大学憲章の第8条「大学人の義務」によれば、次のような大学人の主体的な義
務(権利と表裏をなす)を宣言しています。

 前三条に規定した「学問の自由」、「学の独立」、「大学の自治」の学問教育における三権
は、国家と大学、あるいは、権力と学問の関係の長い歴史の教訓の中から生まれた、大学が
有すべき基本的な権利であり、義務でもある。この三権がおかされようとする時、大学人は全
力を斗してこれを阻止しなければならない。


 佐藤先生のおっしゃるように、一つ一つの具体例において、この精神を実行しないならば、い
つのまにか「思考停止」状態に陥り、場合によっては「脳死状態」におちいると考えます。
 総合理学研究科の着実な行動に敬意を表する次第です。

 一言追加しておきますと、佐藤先生がHPで紹介しておられ、カメリアフォーラムの「学問の自
由とは何か、大学の自治はなぜ必要か」のページに紹介されている、伊ヶ崎暁生『学問の自由
と大学の自治』(三省堂,2001年)の叙述によりますと、

 「大学の自治とは、大学が政治上・宗教上・行政上その他の権力または勢力の干渉を排し
て、大学構成員の意志に基づいて研究と教育の自由を行使することである。・・・」と。

 大学事務局が大学の構成員として学長の統率下にあるとは思えないような規定(昨年来の一
連の行動はその具体例でしたが)、「行政上の干渉」を可能とするような規定が、問題になって
いると考えます。
 学問の自由とこれを保障する大学の自治との相互関係が事務当局においてきちんと整理理
解されていないための介入が、人事問題では頻繁に出てくるということでしょう。

 



タイトル : 公開書簡:学長の見解表明を要望
記事No : 99
投稿日 : 2003/04/07(Mon) 19:18
投稿者 : 佐藤真彦 <msatou@yokohama-cu.ac.jp>
参照先 : http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/


【公開書簡:学長の見解表明を要望】

小川恵一学長への公開書簡を添付し忘れたので,再投稿します.

----- Original Message -----
From: "Masahiko Satou" <msatou@yokohama-cu.ac.jp>
To: "Keiichi Ogawa" <keiogawa@yokohama-cu.ac.jp>
Sent: Monday, April 07, 2003 12:36 PM
Subject: 「博士研究員」制度に対して学長の見解表明を要望する


2003年4月7日
横浜市立大学長 小川恵一様

添付の文書は,今回新たに制度化され4月1日から施行されている「博士研究員」制度に関す
る,事務局(高井祿郎事務局長,中上 直総務部長)宛の質問状です.
本来ならば,大学の自治および学長の権限を著しく侵害するこのような「博士研究員」制度に
対しては,真っ先に学長が異議を申し立てるべきであると考えますが,そのような気配が一向
に見受けられないので,去る4月3日の総合理学研究科委員会における議論を経て,一般教
員から事務局宛に質問状を提出した次第です.
今回の「博士研究員」制度に対して,学長のご見解を文書にて表明されるよう要望するもので
す.

総合理学研究科 佐藤真彦



タイトル : 学長からの回答と再度の要望
記事No : 148
投稿日 : 2003/04/15(Tue) 23:06
投稿者 : 佐藤真彦 <msatou@yokohama-cu.ac.jp>
参照先 : http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/


学長からの回答メールと再度の学長宛要望メールです.

@【学長からの回答メール】
----- Original Message -----
From: "Keiichi Ogawa" <keiogawa@yokohama-cu.ac.jp>
To: "Masahiko Satou" <msatou@yokohama-cu.ac.jp>
Sent: Tuesday, April 15, 2003 6:27 PM
Subject: Re: 「博士研究員」制度に対して学長の見解表明を要望する

佐藤真彦先生
返事が遅れて申し訳ありません。
ポストドックの機関採用についてはもともと鶴見から強い要望が出され、
事務局の努力の結果出来上がった制度です。
この制度について鶴見に問い合わせてところ、
無いときに比べて前進であるとの評価を得ました。
大学と事務局との関係については次回の研究科委員会で
榊原先生から問題が無い旨、はっきりとした説明があると思います。
以上ご報告いたします。
小川恵一

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
A【再度の学長宛要望メール】

----- Original Message -----
From: "Masahiko Satou" <msatou@yokohama-cu.ac.jp>
To: "Keiichi Ogawa" <keiogawa@yokohama-cu.ac.jp>
Sent: Tuesday, April 15, 2003 9:53 PM
Subject: Re: 「博士研究員」制度に対して学長の見解表明を要望する

2003年4月15日
横浜市立大学学長 小川恵一様

先ほど,回答メールを受け取りました.
残念ながら,前回の4月7日付けメール(公開書簡:“「博士研究員」制度に対して学長の見解
表明を要望する”)への回答に,まったくなっておりません.

前回の公開書簡の要点は,「大学の自治」および「学長の権限」を侵害する新制度の一方的
通知という事務局の違法行為に対して,学長としての見解表明を要望するものでしたが,今回
の学長の回答メールは,肝腎のこれらの点にまったく触れることなく,(1)なし崩し的に新制度
を容認する内容で,かつ,(2)“問題なし”という事務局説明を,榊原 徹総合理学研究科長の
口を通して,来月1日の研究科委員会の席上で言わせて終息させようという,事務局に擦り寄
る意図が明白な“ごまかし回答”にほかならないと言わざるを得ません.

再度の「学長見解の表明」を要望するものです.

総合理学研究科 佐藤真彦

PS:今回も,@【学長からの回答メール】,および,A【再度の学長宛要望メール】を,「市民の
会」ご意見箱BBSに投稿し,問題の所在と本質を大学内外に広く知らせることと致します.



タイトル : Re: 学長からの回答と再度の要望
記事No : 149
投稿日 : 2003/04/16(Wed) 09:01
投稿者 : 永岑三千輝 <nagamine@yokohama-cu.ac.jp>
参照先 : http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/Nisshi.htm


学長の回答は、まったく事務連絡のような回答ですね。

 大学の自治、大学における意思決定システムのなかでの学長と事務局(長)との相互関係
で、学長を下位に置くようば事務処理内規の問題性をなにも考えていない、回答だと感じま
す。

 別に問題になっている学長(大学)の市(市長)に対する「あり方懇談会」答申に関する「要
望」と同じく、大学の自治、自立性に対する理解がないということを、つまりすべては行政文書
のやり取りというレヴェルになっているということを示します。

 「あり方懇談会」答申に対する大学人の会の声明の水準と比べるとき、大学の自治の無視・
理解欠如など顕著で、怒りを通り越し、悲しい感じがしています。



タイトル : 「大学人の会」の見識との対比で一言
記事No : 150
投稿日 : 2003/04/16(Wed) 09:02
投稿者 : 永岑三千輝 <nagamine@yokohama-cu.ac.jp>
参照先 : http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/Nisshi.htm

学長の姿勢―大学自治の欠如−
 「あり方懇談会」答申の問題性に対する「大学人の会」の見識との対比で一言追加


 昨日、記者会見で公開された「大学人の会」(本学名誉教授・今井清一氏他)の声明は、すで
に昨日の本HPで紹介されているが、その見識と比べるとき、今回の学長の市への「要望」が、
大学の自治との関連で、いかに問題をはらんでいるか、浮き彫りになると思われる。

 本日16日開催の評議会で、本学の大学人が、その最高意思決定機関でどのような態度をと
るかは、「大学人の会」の呼びかけ人、「市民の会」、卒業生、在学生はじめ、全国の人々が注
視しているところである。

 評議会は、学長の「要望」が持つ問題を適切に指摘し、慎重な、内外に説得的な(アカウンタ
ビリティのある)行動をとって欲しい。



タイトル : Re: 「大学人の会」の見識との対比で一言
記事No : 163
投稿日 : 2003/04/17(Thu) 13:59
投稿者 : 吉岡直人 <yoshi@yokohama-cu.ac.jp>

この問題に関して、研究科委員会で発言したものとして一言.

一番の問題は、
C学長は所定の人事手続きを事務局長宛依頼する.
D事務局長は学長からの依頼が適当と認めた場合,これを決定し,学長あて通知する.
との点であると思います.
学長の回答には、「大学と事務局の関係には問題が無い」となっていて、上記の点に関する学
長の見解のようですが、これは些細な問題ではなく、このような点をないがしろにしてきた結果
が今日の混乱を生じさせていることを、学長はまだお気づきになりませんか?



タイトル : 問題点が的を絞って指摘されております。
記事No : 164
投稿日 : 2003/04/17(Thu) 14:36
投稿者 : 永岑三千輝 <nagamine@yokohama-cu.ac.jp>
参照先 : http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/Nisshi.htm

 
 実施要綱に則して、問題点が的を絞って明確に指摘されております。


 ここまで的を絞って指摘してもなお理解しできないとすると、これはどうしようもない、という感
じです。