新・港湾病院の「公設民営化」への市職員と

市民の反発&保育所での反対運動

 

2003610

平 智之(商学部教員)

 

 

 今や、中田「民営化」市政の突破口として、教育・福祉切捨てそのものの、大学・病院・保育所の三大「民営化」路線に反対する、横浜市の職員と市民の連帯した運動が各所で急速に盛り上がっています。

 

 私の前投稿のNo.274で、さる7日朝にNHKのニュースを聴いて速報した、市立の新・港湾病院の設置形態を「公設民営」(病院の資産は市が所有するが、経営・運営は民間医療機関に委託するので、実質的には「民間病院」と異ならない方式)とする方向で、市当局が推進中…≠ニいう一方的な「提灯報道」は、その後に他の新聞等も同様の姿勢で報道しました。これは、その夜に大成功・盛況のうちに終わった、井上ひさし氏を招いた市大の「市民の夕べ」に対するマスコミ各社の姿勢と共通し、市長・市役所サイドから何らかの「働きかけ」があった結果なのか?と憶測せざるをえません。

 

 そんな中で、最近、さる1月の「市大の累積赤字1141億円」の大誤報で抗議が集中した以降は、市大問題ばかりでなく、中田市政の諸問題に対する比較的公正な報道に心がけている点では、全国紙の地方版をはるかに上回ると私も評価する『神奈川新聞』の本日6月10日付のネット版の記事だけが、私が知る限りですが、港湾病院の問題でも異彩を放っています。これを、以下に、一部だけ引用します。私が上のNHKのニュースに対し「市従組合が抗議したらどうか?」と呼びかけたあと、もう1つの行政職の組合「自治労横浜」も立ち上がり、市従組合と並んで市当局に抗議活動を早速行なったということで、中田市長に不信や反発を持つ関係職員の声や、その後の診療に不安を抱く患者・市民の声が掲載されています。

 

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港湾病院の民営化に反発

 

◆横浜市職員や医師ら

 横浜市が二〇〇五年春の開業を目指す新港湾病院(同市中区)について「公設民営方式」の導入を掲げたことが波紋を広げている。同方式での病院運営は県内では例がなく、建設途中で運営形態を見直すという手続き自体も異例だからだ。職員労働組合(職員団体)は一斉に反発。医師や職員の間からも不満が漏れるなど、中田宏市長の推し進める改革は新たなヤマ場に直面した。

 

不採算切りを懸念

 先週末(六日)の市側の市会への報告を受け各労組は週明けの九日、「民営化反対」の声明入りのチラシなどを職員や市民へ配布した。自治労横浜は「新しい港湾病院で働くことを目指し、経費節減など血のにじむ改善を進めてきた人たちを裏切る行為。感染症や災害時医療など不採算部門も切り捨てられかねない」と批判。十四日には市民団体と連携し公的医療の意義を訴えるシンポジウム(午後二時、横浜情報文化センター)を開く。

 九日朝に街頭活動を行った横浜市従労組は新港湾病院が地震用の最新設備を有していることについて「災害時に市民の命を守ることが役割。絶対に市直営でなければならない病院だ」と指摘。「小児救急医療などへの市の負担は民営化されても変わらない。経費の軽減にはつながらない」などと反発している。

 両労組とも「県内外の他の公立病院のあり方に波及しかねない」と懸念。「『新港湾病院は公設公営』との過去の合意事項をないがしろにしている」と反発を強める市会との連携で、追及していく構えだ。

 

現場は不満と不安

 新港湾病院の建設現場に隣接する現在の港湾病院には約四百七十人が勤務。九日も普段通りに業務をこなした。しかし目の前で完成していく新病院の起動を目指してきたにもかかわらず、「公設民営表明という形で他職場への配置転換方針が示されるという異常な事態に直面した」(同病院職員)とあって個々人から不満や不安が漏れた。

 四月の市長対話昼食会「カレーランチミーティング」では同病院の若手職員や医師と対話した中田市長が「判断へ向けて意見は聞いていく」と表明。それだけにソフトランディング(軟着陸)を期待していた関係者は多かったという。ある男性職員は「政策を変えるのにはもっと幅広い議論が必要。拙速はいけない」。別の職員は「市長はミーティングなどで示された現場の声をもう一度かみしめるべきではないか。これまでの改革が物足りないというのならボールを投げ返してほしい」と述べた。

 

……【中略】……

 

患者反応さまざま

 患者や通院者の反応もさまざまだ。七十代の主婦は「病院が新しくなるのは良いが、顔見知りのお医者さんや看護師さんがいなくなってしまうのでは不安」。一方、五十代の男性会社員は「良い治療を受けられるのならば経営主体は気にならない」と話す。六十代の男性商店主は「お金のことが議論されているようだが、市営の病院を維持しようというのならば多少高い料金でもみんなで我慢して払うようにすればどうか」などと提案していた。

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 なお、全文を読みたい方は、以下の神奈川新聞社のURLから、6月10日付の「県内ニュース」を検索してください。http://www.kanagawa-np.co.jp/toppage/tp030610.html 

 

  最後に、市立病院と並んで「1年に4ヵ所の民営化」の方針が一方的に決定・発表された市立保育所の反対運動も、私が調べた限りでは、横浜のマスコミにはまだ余り報道されていないようです。しかし、既成マスコミが市大も保育園の問題も、たとえ意図的に報道しなくとも、現代にはホームページやメールというインターネット手段でまたたく間に運動が広がるのは、世界的な反戦運動の最近の発展の実例を見れば明らかです。この点で、市大の「市民の会」とまったく同じように、最初の「民営化」対象となった岸根保育園などに園児の保護者を中心に「守る会」やそのホームページが開設されているのは、本ホームページでも6月に入ってからそのリンクが張られました。http://www.geocities.jp/madokakamen/ 私は、しばしばブラウズしており、特に運動の進め方が市大の場合と同じく(人生の「揺りかごから墓場」までの教育機関としては同じですからね)、いろいろ難問を抱えているようです。

 

 ともあれ、市大・病院・保育園の三大「民営化」反対勢力が、関係の横浜市労連の諸組合を媒介として、それぞれの市民運動と連帯して、中田「民営化」勢力に対する包囲網や統一戦線を築いていく必要を提言する私見は、前回とまったく同じです。