市大改革のための基本理念(第一次案)

 

はじめに

 横浜市立大学は、本年、その前身から数えて創立75周年を迎えます。記念すべきこの年に、「地方独立行政法人法案」が国会に上程されています。「あり方懇」答申の内容を見るにつけ事態は決して楽観視しえません。更には、学内では「市立大学改革・プラン策定委員会」が改革案の策定作業を開始しました。現在、横浜市立大学は大きな転換期を迎えています。この重要な時期に際して横浜市立大学教員組合は、横浜市立大学改革を推進する上での全学の指針となる基本的な考え方を明確にすべきであると考えて、ここに「市大改革の基本理念」(第一次案)を公表します。大学に働き学ぶ学生・教職員の方の率直な討論によって、全大学人が共有できる「基本理念」を全学的に作り上げて生きたいと思います。

 

1 大学の使命

  大学は人類と社会によって付託された以下の使命を果たさなければなりません。

@       大学は、高度の学術研究の蓄積・発展をふまえて次代を担う優れた人材を教育・育成し、もって、人類社会の発展に寄与します。

A       大学は学術の中心として、人類の歴史的な英知の蓄積を踏まえつつ、創造的な知を創出することを通して、世界の平和、人類の文化の創造と発展に寄与します。

 B 大学における教育と研究の創造的な展開は、社会によって付託された使命であるがゆえに、その成果は国民と地域社会に還元されなければなりません。

 

2 教育における独立性

教養教育を踏まえた上で高度の専門性を身につけ、しかし、専門性にひたすら埋没することなく、現代社会において現出している既存の学問領域を横断する現実的な問題群に対しても批判的に接近し、問題を発見・解決する能力を持った優れた人材を養成する。このような自由闊達を旨とする教育の実現においては、一切の「不当な支配」(教育基本法)を免れていることが不可欠の条件であることが強調されなければなりません。

 

3 学問・研究の自由

 短期的な成果を性急に求めたり、経済効率を最優先させることは、学問研究の自由な発展にとって決して好ましくありません。現代社会は、既存の専門領域だけからは解明しきれないような領域横断的な問題群をも現出させています。それらの解明にはさらに一層長期的な視野に立った領域横断的な新たな知の創出をも必要としています。現代において、学問研究の発展のためには、あらゆる既成の権威や固定観念などから自由であることがなおのこと不可欠となっています。

4 大学の社会的責任

 大学における有為な人材の養成と学問研究の高度な発展という課題は、大学が人類と社会によって付託された責務であり、したがって、大学のこの営みは社会に対して責任を負わなければなりません。また、公立大学として、大学の自立性に配慮しつつ、地域社会への大学の適切な貢献に意を払わなければなりません。市民のニーズは多様であり、したがって、大学においては十分に多様な研究分野を確保しつつ、そこで高度な研究を蓄積することが不可欠です。また、大学が自立性を保持しつつ地域貢献を可能とするには、そのための制度的基盤の整備が不可欠です。

 

5 大学の自治

 これらの課題を実現するには、大学を構成する学生・教職員が大学運営に関して自由闊達にその意思を交換し、その総意に基づいて大学を運営するシステムの形成が急務です。そのためには、教員組織が教学・人事においてその責任を担うこと、また、教員組織と学生・職員組織との間に健全な協力と相互評価のシステムを確立することが望まれます。さらに、大学の社会的責任という点からしても、大学の取り組みに関する地域社会からの評価や提言などを受けとめられるような制度構築も急がれねばなりません。大学の使命、教育における独立性、学問・研究の自由、大学の社会的責任を実現するためにも、大学の自治が尊重されなければなりません。

 

             2003619日  横浜市立大学教員組合執行委員会