「法人法案」事務局:国会審議情報(6月26日参議院文教科学委員会)遠山敦子文部科学大臣 「ウソ答弁」で「お詫び」・「前言取り消し」を連発(2003.6.27)

 

 

6・26参院文教科学委員会

「法人法案」事務局:

国会審議情報(6月26日参議院文教科学委員会)

遠山敦子文部科学大臣 「ウソ答弁」で

「お詫び」・「前言取り消し」を連発

 

 


 

賛同人の皆様、

参議院の委員会の様子をお伝えします。

「法人法案」事務局
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国会審議情報(6月26日参議院文教科学委員会)

6月26日午前10時、16日ぶりに参議院文教科学委員会が再開されました。冒
頭、審議ストップの原因となった前回答弁に関して、遠山文科大臣が「お詫び」
を述べました。

 「お詫び」の内容を要約すれば、

(1)学部・研究科・附置研の中期目標・中期計画の資料を「各大学の判断」で
提出していると答弁したが、その資料については全ての大学に提出を依頼
したものであり、訂正し、お詫びする。

(2)12月資料は、大学側(国立大学協会)の求めに応じて出したものであり、記
載内容についても従来の文科省の答弁と矛盾しない。学部等の資料は、背
景を理解するための「参考情報」である。

(3)12月資料は、その性格やスケジュールについての(大学側の)誤解があり、
結果的に関係者に過度の負担を招いたとの「指摘があることについては」
誠に遺憾である。資料の正確な趣旨を大学に徹底したい。

(4)12月資料は準備作業であるが、これが文科省の名義であったために、中期
目標・中期計画そのものの作成が進められている、とか、国会審議の尊重
という点から問題だ、と指摘されたことについては遺憾であり、お詫びす
る。

要するに、文科省は単なる「準備作業」と考えていたのに、大学が(あるい
は学長以外が)大きな誤解をして、中期目標・中期計画作業に従事したのだと
いう説明でした。文書が広まるにつれて趣旨が曖昧になった、ということだそ
うです。

質疑では、法案成立前の準備作業の可否をめぐり攻防がありました。文科省
は完全に意思統一してきたとみえ、法案の審議や法の成立以前から法人化の準
備をするのは行政の責任として当然であり、特に大幅な設置形態の変更で不安
をもつ大学の要望に応えて準備を行っているという論理でした。この準備作業
は当然、大学が要望しているという二つの論理を崩すことが必要です。

 民主党と共産党は、各大学で大規模な準備作業が進行していること、教職員
数の試算基準や人件費の試算単価表などが作られていること、移行経費を予算
化・配分し、コンピュータ会計システムの入札まで行っていることなどを挙げ、
「法律の執行行為を先行させることは大問題」「何が何でも来年4月スタート
という姿勢をとる限り、国会軽視・無視は続く。それでは審議できない」「法
案が成立してから準備を開始するのが筋だ」と厳しく追及しました。また、国
連(自由党)は、そもそもなぜ独立行政法人制度を準用しなければならないのか
と批判しました。国連の西岡議員は、特に2分間の発言を求め、「13万人の職
員、特に一般職員から公務員の身分を剥奪する法的根拠があるのか。これを次
回質問したい」と述べました。

 こうした野党の追及に対して、文科相、副大臣、高等教育局長は、「法案提
出にともなう準備行為の範囲」「国会軽視などまったくしていない。審議を尊
重している」「来年4月にむけて遺漏のないよう、できる準備をできるだけ進
めているだけ」などの答弁を繰り返しました。

 また本日の委員会では、今までにも増して、暴言や取り消し、「お詫び」が
続出しました。

○総務省の審議会の評価をめぐって、櫻井議員に対して、年次評価と中期計画
終了時の評価を混同して答弁した点について、河村副大臣と総務省の担当官が
「お詫び」。

○林議員に対する副大臣答弁「新会計システムの導入は法人への移行を想定し
ていることは否定しないが、法人化しなくても必要なこと。前倒しして進めて
いる。労働安全衛生法対応だって今からやっている」→「『前倒し』は取り消
し」(労働安全衛生法対応は人事院規則に今でも違反しているから行うのは当
然だが、企業会計原則に基づく会計システムは現在では不要であることを同一
視した)。

○副大臣「法人化自体ダメというなら見解の相違としか言いようがない」→
「取り消し」。

○大臣「(中期目標の問題に関する櫻井議員の追及に対して)その論点は、こ
れまでの審議で繰り返し答弁してきた。先生は差し替えでいらしているから今
までの審議をご存知ないかもしれないが」→委員長が不穏当な発言とし、大臣
は「取り消します」。

与党はすでに昨日の理事懇談会で、7月1日の委員会における審議打ち切り・
採決を提案していました。本日の委員会後の理事懇談会でも、次回7月1日の採
決を提案しており、野党は一致してこれに強く反発しています。今後の審議日
程は明日10時からの参院本会議終了後に開かれる理事懇談会で決まる予定です。

なお、共同通信の記事と本日の東京新聞の記事全文(社会面を含む)を転載し
ておきます。

共同通信ニュース 2003年6月26日

文科相が再三陳謝 16日ぶり再開の参院文教委


 国立大を国の直轄から独立した法人にする国立大法人法案を審議している参
院文教科学委員会は二十六日、審議を十六日ぶりに再開した。遠山敦子文科相
が、空転のきっかけとなった今月十日の自らの答弁を訂正、謝罪した。だが、
その後の質疑で再び答弁を取り消す事態となり、遠山氏は何度も頭を下げた。

 今月十日、民主党の桜井充氏が、法人化後に各大学ごとに策定する中期目標
に関連し「文科省は学部学科や付属研究所ごとに、具体的な業績などを提出す
るよう大学側に文書で求めており、大学は準備作業で大変だ」と追及。遠山氏
は「提出は各大学の判断」と答弁したが、桜井氏は「納得できない」と質問を
中断、審議が空転していた。                      

 与野党折衝で、遠山氏が答弁ミスを認めることで折り合いが付き、遠山氏は
「すべての大学に(文書の)提出を依頼していた。答弁を訂正し、おわびする」
と陳謝。大学側の準備作業についても「過度の負担を招き遺憾」と述べた。 

 ところが再開後の質疑で桜井氏が「法人化で研究の自由が奪われる」と指摘
すると、遠山氏は「これまで十分議論し、そういうことはないと再三お答えし
た」と強調。「(桜井氏は)途中から、突然委員になったので…(知らないの
ではないか)」とも指摘した。

 これに対して大野つや子同委員長が「不穏当な発言があった」と注意。遠山
氏は「取り消させていただく」と再び陳謝せざるを得なかった。

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『東京新聞』2003年6月26日付

 法人化で数百人天下り

 国立大「役員」に官僚出身者

 交付金や業績評価 国との調整役に

 大学側構想

 国立大学などを国の行政機関から離す来春の独立法人化に伴い、各大学に新
設される役員ポストに、文部科学省などの官僚出身者が多数選任される見込み
であることが二十五日、大学関係者らの話で分かった。国からの予算獲得など
をめぐる大学間競争に備えるためで、こうした「天下り」は全国で数百人規模
に上るとみられる。法人化は大学の自主性を高めるとされるが、経営の管理や
立案能力に乏しい大学が、官主導の運営に陥る懸念も広がっている。(=関連
29面)

 法人化後は、学長と学長が任命した理事、文科相が任命した監事が役員となっ
て、民間の経営手法を取り入れながら大学経営を主導する。

 役員数は大学の規模などによって異なるが、一大学につき四−九人。今秋の
統合後の八十七大学・二短大で、計五百三人が予定されている。

 大学関係者らによるとこの役員ポストに文部科学、総務、財務など各省庁の
官僚出身者を迎える構想がある。予算として配分される運営交付金の配分や、
業績評価などを握る国との調整役として、転換期の”即戦力”とするためだ。
法人化法案はまだ参議院で審議中だが、既に「いい人材がほしい」と大学側か
ら打診を受けている省もある。

 例えば、国立大学のモデル校といわれる筑波大の場合、役員数は最大の九人
だが、全員、副学長の兼務ではなく学外者を予定している。「このうち数人は、
マネジメントや財務などにたけた官僚出身者が見込まれている」(同大関係者)
という。

 複数の大学では経営力アップのため、文科省から出向中の大学事務局長を、
理事(役員)に「格上げ」する案も浮上しているという。

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(29面)

 官主導 揺らぐ自主性

 大学は「パイプ」求め

 国立大法人 天下り問題 『転換期、仕方ない』

 国立大学法人化を前に明らかになった、官僚出身者の役員ポストへの大量
「天下り構想」。霞が関のある省の幹部は「既に大学側からの派遣要請が来て
いる」と認めた。法人化後は業績評価と予算配分が連動し、大学の経営能力が
問われる。「失敗すればスクラップもあり得る」という不安と危機感が、天下
り先を求める官側の思惑と一致し、国との”パイプ”を求める動きにつながっ
ている。大学の自主性と独立性を揺るがしかねない構想にも、大学関係者から
は「転換期を乗り切るには仕方ない」というあきらめの声も聞かれる。

 「背に腹は代えられない」とある大学の幹部。「今の大学に経営や計画立案
のプロは少ない。立ち上がりの過渡期に、国とのパイプや運営のノウハウを持っ
た官僚出身者が、経営の中枢に入るのは仕方ない」。官僚を役員として迎える
ことが大学にとって、もろ刃の剣であることを知りながら、そう話す。

 別の大学関係者は「問題は最初の中期計画が終了する六年後」とみる。一度、
「官」が得たポストは経営が安定した後も”後輩”に引き継がれ、指定席とな
る可能性が十分にあるからだ。

 来年度予算の概算要求に向けて、各大学が見積もった役員(学長、理事、監
事)の給与や諸手当などの人件費の試算では、学長や理事が約千九百万−千七
百万円、監事が約千四百万−千三百万円となっている。こうした多額の支出は
小規模な地方大学にとっては負担が重く、副学長が理事を兼務するケースも多
い。ある大学の教授は「役員の人件費は、将来、大学にとって重い負担になる。
教授のリストラや授業料値上げなども検討されることになるだろう」と懸念す
る。

 一方、官の側。ある省の担当者は「私たちだってばかではない。世論の批判
がある中で、簡単に天下りができるとは考えていない」と言う。

 しかし、別の省の幹部は「法人化で失敗すれば、大学経営陣の責任追及もあ
り得る。官僚出身者を役員に迎えることを天下りとみるかどうか、評価は分か
れると思うが、要請があれば、大学側が求める人材を派遣することにつながる
だろう」と、中央省庁が人材供給源になるのは必然、との見方を示す。

 絡み合う大学と官の思惑。こうして官主導のレールが敷かれていけば、大学
改革をうたった法人化のあるべき姿をゆがめることになりかねない。