商学部教授会でも大問題となり「決議」

永岑三千輝氏 『大学問題日誌』7月4日付:商学部教授会でも大問題となり「決議」 ―「大学ホームページからの事務局情報垂れ流し」「教授会人事への事務局の介入」「授業評価の問題性」「プロジェクトR幹事会の隠蔽体質」ほか―

 

(永岑三千輝氏ホームページhttp://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/Nisshi.htmより)

 

 


 

2003年7月4日 昨日の定例教授会には、ロースクール新設ラッシュ関連で、新たな割愛願い
が出され、異議なく了承された。今回は慶応大学の法科大学院の要員(教授待遇)としての割
愛願いであった。これで商学部からは都立大学法科大学院からの割愛と合わせ、2名の割愛
が出たことになる。これをどのように評価するか? 本学の発展との関連では、熟考すべき問
題がいくつもあるように思われるが、ここでは触れないでおこう。

重大な問題となったのは、学術情報センターの「ネットワーク管理」を事務機構改革のドサクサ
にまぎれて、事務局(総務課)が「無法に乗っ取った」こと、それから発生している研究教育条
件の悪化など、大学にとって根本的な問題の数々である。

「学術情報センター情報教育部会」(以下,「情報教育部会」)から,2つの"告発状"が出されて
問題が全学の知るところとなった。

学長宛『要望書』(6月17日付,"告発状1") http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/
030617yobo.htm ,および,『教育・研究用コンピュータ・ネットワークについて(提案)』(6月26
日付,"告発状2") http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/030626teian.htm である.

これを受けて、総合理学研究科においては、"決議"(表題名:『提案』 (7月3日付)) http://
satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/030703ketsugi.htm  が行われた[1]

その趣旨説明とでもいうべき総合理学研究科・佐藤真彦教授の痛烈な批判書は、全大学人が
一読すべきものであろう。

これは、一昨年以来の事務局責任者の強引・「無法なやり方」(大学の最高の審議機関・意思
決定機関である評議会からの事務局員総退場の指揮、大学の自治・学問の自由を侵害する
象徴的行動)の帰結の数々を改めて検証するものとして、おそらくは「独法化」が予想される全
国の大学人にも警告となるものであり、全国的注目を集める事件・問題となろう。

商学部でも、定例教授会の審議において、これが大問題となった。そして、大学の自治・学問
の自由の根幹に関わる世界的な学術情報ネットワークの本学における中枢部分を大学事務
局のたんなる一部局にしかすぎないところ(研究教育という大学の本来的使命を達成するため
の事務的職務の担当部署)が握ってしまい、研究教育を担う教員との合議もいっさいせずに、
勝手に大学ホームページを事務局情報の垂れ流し場所にしていることが、無法なものとして問
題となった。情報教育委員会の問題提起は、この間の事務機構改革が、いかに大学自治を破
壊し学問の自由を脅かすもの(その脅威)となっているか(大学の存立そのものを脅かすものと
なっているか)を明らかにした。

従来は、すなわち無法な制度改悪以前は、そして法律上・規定上は現在も、大学教員から選
挙によって選出された学術情報センター長が、ネットワーク管理者であり、そのセンター長のも
とに一元的に管理されてきた。研究教育機関としての大学の本来的あり方からして、その本来
的な状態に復帰すべきである、というのが商学部教授会の主要な議論であり、商学部教授会
も、情報教育委員会の問題提起(要望書)を受けて、決議を行い、評議会(大学の最高の審議
機関・最高意思決定機関)における問題の審議と解決をもとめることになった。文書等の取りま
とめは、学部長・評議員に一任した。

その他、教授会の人事権(現在の学則が憲法、教育基本法、学校教育法党の諸規定を踏まえ
て規定している人事権)に事務局(独立行政法人化された場合の経営サイド!?[2])が介入し
ている問題として、この間問題になっている商学部の助教授昇進人事・拒否問題のほか、社
会構造論後任人事凍結状態の問題が改めて問題となった。

割愛人事だけは、次々と補充を認め、社会構造論、体育、中国語といった3つの定年退官ポス
トだけを凍結するというやり方(昨年来小川学長・事務局責任者が実施してきたやり方)の問題
性もあらためて浮かび上がった。

商学部教授会としては粛々と、研究教育に必要な人事を進め、主体的な意志を明確に示して
おくということで、あらたに、商法、民法、中国語(現代中国経済論、現代中国社会論)の窓口委
員会などを立ち上げた。

さらにもうひとつ、事務局がいかに専横をほしいままにしているかをしめすものとして、「自己点
検・自己評価」に関わる学生アンケートの実施について、重大な難点がいくつも出された。商学
部教授会としては、議論を積み重ねた結果、手続き的にも、アンケート項目の内容からして
も、またアンケート結果の利用の仕方などについても研究教育の自立的創造的発展、それを
になう教員の人権問題という見地からして杜撰きわまる諸問題を含む今回のアンケートは行
わないこととした。

学部としては、昨年、年度末に学部独自に実施したアンケートに改善を加えて、今年度も、年
度末にアンケートを行うものとした。そして、学部としては今回の学生アンケートを行わないこ
と、その理由書を決議文としてまとめ(学部長・評議員がとりまとめ)、他学部・他研究科・非常
勤の教員各位に伝えるものとした。

最後に、一番重要な点、すなわち、大学改革のプラン策定作業において、この間、「緘口令」が
敷かれて、何が議論されているのか、評議会も教授会も、またプラン策定委員会の全体会も
まったく知らされていない、ということが問題となった。ただ、ちらちら見えてくるところでは、たと
えば、昨日の話題では、「学長は今年度は将来構想委員会に諮問を行わない。ただし、教養
学府に関連して諮問する場合があるかもしれない」といった報告が、学部長からあったが、そ
こから漏れてくるのは、「学府‐院」構想であり、この構想を推し進めているのではないか、とい
うことである。この場合、商学部、医学部、国際文化学部、医学部という4つの学部が廃止され
ることになる。

なお、矢吹教授HPおよび佐藤真彦教授HPには、平商学部教授の「松下政経塾と「中田人脈」
の研究1」が掲載された。今後の市長・副市長(いずれも「松下政経熟」出身)の大学への対応
がどのようなものになるかを見ていく上で、一読しておくべきだろう。続編を期待したい。大学
は、自己の自主的自立的発展を行うためには、4年間の任期を市民から与えられた行政の長
(市長)の考え方と政策、同じく市民から4年間の任期を与えられた市議会の議員の考え方と政
策、そして市民の意識動向を踏まえながら、改革を考えていかなければならないからである。


 

[1] 学長は、全学委員会と教授会の決議(告発状)を踏まえ、評議会という審議機関・最高意
思決定機関でしかるべき審議と決定を可及的すみやかに行わなければならない。



[2]  将来構想委員会の中間報告の「概念図」は、まさに、法人(経営)が学長を下において教
学の人事権を左右しうる構造になっていると思われる。

 大学の自立や自治は、最後の一片まで剥奪される、ということになりはしないか?

 今後、大学の教学・経営全体を含めたシステムのあり方が、きわめて重大問題になってく
る。教員組合が、7月2日の総会で、全大教加盟を決定し、大学関連係争事件を多く扱う有能
な法律家(弁護士)を顧問弁護士とすることに決めたが、まさに時宜を得た決断だったというこ
とになろう。