「法人法案」事務局:これほどの付帯決議が伴う法案はまず例がないのでは?(2003.7.9)

 

 

「法人法案」事務局:

これほどの付帯決議が伴う法案は

まず例がないのでは?

 

 


 

賛同者の皆様、

本日、参議院本会議で「国立大学法人法」が原案通り成立しました。

なお、参院文教科学委員会での付帯決議をお知らせいたします。

これほどの付帯決議が伴う法案はまず例がないのでは?と思われます。
法案の欠陥をあらわに示した付帯決議と申せましょう。

それとともに、今後この「付帯決議」の完全履行を実現する運動も、意味があることと
考えられましょう。


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国立大学法人法案、独立行政法人国立高等専門学校機構法案、独立行政法人大
学評価・学位授与機構法案、独立行政法人国立大学財務・経営センター法案、
独立行政法人メディア教育開発センター法案及び国立大学法人法等の施行に伴
う関係法律の整備等に関する法律案に対する附帯決議

 政府及び関係者は、国立大学等の法人化が、我が国の高等教育の在り方に与
える影響の大きさにかんがみ、本法の施行に当たっては、次の事項について特
段の配慮をすべきである。

一、国立大学の法人化に当たっては、憲法で保障されている学問の自由や大学
の自治の理念を踏まえ、国立大学の教育研究の特性に十分配慮するとともに、
その活性化が図られるよう、自主的・自律的な運営を確保すること。

二、国立大学法人の運営に当たっては、学長、役員会、経営協議会、教育研究
評議会等がそれぞれの役割・機能を十分に果たすとともに、全学的な検討事項
については、各組織での議論を踏まえた合意形成に努めること。また、教授会
の役割の重要性に十分配慮すること。

三、役員等については、大学の教育研究や運営に高い識見を有し、当該大学の
発展に貢献し得る者を選任するとともに、選任理由等を公表すること。また、
政府や他法人からの役員の選任については、その必要性を十分に勘案し、大学
の自主性・自律性を阻害すると批判されることのないよう、節度を持って対応
すること。監事の任命に当たっては、大学の意向を反映するように配慮するこ
と。

四、学長選考会議の構成については、公正性・透明性を確保し、特に現学長が
委員になることについては、制度の趣旨に照らし、厳格に運用すること。

五、中期目標の実際上の作成主体が法人であることにかんがみ、文部科学大臣
は、個々の教員の教育研究活動には言及しないこと。文部科学大臣が中期目標・
中期計計画の原案を変更した場合の理由及び国立大学法人評価委員会の意見の
公表等を通じて、決定過程の透明性の確保を図るとともに、原案の変更は、財
政上の理由など真にやむを得ない場合に限ること。

六、法人に求める中期目標・中期計画に係る参考資料等については、極力、簡
素化を図ること。また、評価に係る業務が教職員の過度の負担とならないよう、
特段の措置を講ずること。

七、国立大学の評価に当たっては、基礎的な学問分野の継承発展や国立大学が
地域の教育、文化、産業等の基盤を支えている役割にも十分配慮すること。ま
た、評価結果が確定する前の大学からの意見申立ての機会の付与について法令
上明記し、評価の信頼性の向上に努めること。

八、国立大学法人法による評価制度及び評価結果と資源配分の関係については、
同法第三条の趣旨を踏まえ慎重な運用に努めるとともに、継続的に見直しを行
うこと。

九、国立大学法人評価委員会の委員は大学の教育研究や運営について高い識見
を有する者から選任すること。評価委員会の委員の氏名や経歴の外、会議の議
事録を公表するとともに、会議を公開するなどにより公正性・透明性を確保す
ること。

十、独立行政法人通則法を準用するに当たっては、総務省、財務省、文部科学
省及び国立大学法人の関係において、大学の教育研究機関としての本質が損な
われることのないよう、国立大学法人と独立行政法人の違いに十分留意するこ
と。

十一、独立行政法人通則法第三十五条の準用による政策評価・独立行政法人評
価委員会からの国立大学法人等の主要な事務・事業の改廃勧告については、国
立大学法人法第三条の趣旨を十分に踏まえ、各大学の大学本体や学部等の具体
的な組織の改廃、個々の教育研究活動については言及しないこと、また、必要
な資料の提出等の依頼は、直接大学に対して行わず、文部科学大臣に対して行
うこと。

十二、運営費交付金等の算定に当たっては、算定基準及び算定根拠を明確にし
た上で公表し、公正性・透明性を確保するとともに、各法人の規模等その特性
を考慮した適切な算定方法となるよう工夫すること。また、法人化前の公費投
入額を踏まえ、従来以上に各国立大学における教育研究が確実に実施されるに
必要な所要額を確保するよう努めること。

十三、学生納付金については、経済状況によって学生の進学機会を奪うことと
ならないよう、将来にわたって適正な金額、水準を維持するとともに、授業料
等減免制度の充実、独自の奨学金の創設等、法人による学生支援の取組につい
ても積極的に推奨、支援すること。

十四、国立大学附置研究所については、大学の基本的組織の一つであり、学術
研究の中核的拠点としての役割を果たしていることにかんがみ、短期的な評価
を厳に戒めるとともに、財政支出の充実に努めること。全国共同利用の附置研
究所についてもその特性を生かすこと。また、各研究組織の設置・改廃や全国
共同利用化を検討するに当たっては、各分野の特性や研究手法の違いを十分尊
重し、慎重に対応すること。

十五、法人化に伴う労働関係法規等への対応については、法人の成立時に違法
状態の生ずることのないよう、財政面その他必要な措置を講ずること。また、
法人への移行後、新たに必要とされる雇用保険等の経費については、運営費交
付金等により確実に措置すること。

十六、国立大学法人への移行について、文部科学省は、進捗状況、課題などを
明らかにし、当委員会に報告を行うこと。

十七、学校教育法に規定する認証評価制度の発展を通じ、国立大学等が多様な
評価機関の評価を受けられる環境を整備し、ひいては我が国における大学評価
全体の信頼性の向上を図るため、認証評価が円滑に行われるよう必要な資金の
確保、その他必要な援助に努めること。

十八、国立高等専門学校については、各学校の自主性・自律性を尊重し、教育
研究の個性化、活性化、高度化が一層進むよう配慮すること。

十九、国は、高等教育の果たす役割の重要性にかんがみ、国公私立全体を通じ
た高等教育に対する財政支出の充実に努めること。また、高等教育及び学術研
究の水準の向上と自立的な発展を図る立場から、地方の大学の整備・充実に努
めること。

二十、職員の身分が非公務員とされることによる勤務条件等の整備については、
教育研究の特性に配意し、適切に行われるよう努めること。また、大学の教員
等の任期に関する法律の運用に当たっては、選択的限定的任期制という法の趣
旨を踏まえ、教育研究の進展に資するよう配慮するとともに、教員等の身分保
障に十分留意すること。

二十一、法人への移行に際しては、「良好な労働関係」という観点から、関係
職員団体等と十分協議が行われるよう配慮すること。

二十二、公立の義務教育諸学校の教職員の処遇については、学校教育の水準の
維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法を
今後とも堅持し、国家公務員に準拠する規定が外されることにより同法の趣旨
が損なわれることがないよう、十分配慮すること。

二十三、高等教育のグランドデザインの検討に当たっては、生涯学習社会の形
成の観点から、専門学校を含む高等教育全体について、関係府省、地方公共団
体等とも連携しつつ、広範な国民的論議を踏まえ行うこと。

 右決議する。


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共同通信 2003年7月8日付

国立大法人法案を可決 自主性重視で委員会決議


 国立大学を国の直轄から切り離す国立大学法人法案など関連6法案は、8日
午後の参院文教科学委員会で、与党3党の賛成多数により可決された。6法案
は9日午後の参院本会議で可決、成立の見通し。

 来年4月には89の国立大法人が誕生。55の国立高等専門学校は1つの独
立行政法人に統合される。

 同委員会は付帯決議で、大学の自主性を重んじるとともに、運営交付金の算
定根拠などを公表することなどを求めた。

 法案は、学長のトップダウンによる学校運営を目指し、役員会や経営協議会、
教育研究評議会の3つの組織を新設。経営協議会には学外の有識者を半数以上
入れることを求めた。

 予算の基本となる運営交付金は、文科省に設置する「国立大学法人評価委員
会」が中期目標をどの程度達成したのかを評価し、反映させる。


Nikkei Net 2003年7月8日付

国立大学法人法案、9日成立


 国立大学を国の直轄から独立した法人にする国立大学法人法案など関連六法
案が8日、参院文教科学委員会で採決され、与党三党などの賛成多数で政府原
案通り可決した。9日の参院本会議で可決、成立する見通し。

 8日の参院委で民主党は、法人化後の大学の運営指針となる「中期目標」を
文部科学相が策定するのではなく、大学が作成して文科相には届け出だけにす
ることなどを柱とする修正案を提出したが、否決された。また委員会は、23項
目の付帯決議で、大学の自主的・自律的な運営の確保や、地方の大学の整備・
充実に努めることなどを求めた。国立大学法人法案など関連六法案は当初、6
月中旬の成立が見込まれていたが、6月初旬に国会審議が中断。同月下旬に再
開したが、国会の会期延長もからんで成立がずれ込んだ。法人化後、国立大学
は文科相が定める期間6年の中期目標に沿って中期計画を策定。文科省が10月
に新設する「国立大学法人評価委員会」が目標や計画の達成状況を評価し、国
が配分する運営費交付金の額に反映する仕組みに変わる。


asahi.com 2003年7月8日付

89国立大法人、来春に誕生 9日に法案成立へ


 国立大学を法人化して国の組織から独立させる国立大学法人法案とその関連
法案が、8日の参院文教科学委員会で、与党の賛成で原案通り可決された。9
日の本会議で成立する見通しで、来年4月、全国に89の国立大学法人が誕生
する。各大学に学長のリーダーシップを生かす運営組織をつくり、学科の編成
や授業料などを独自に定める裁量や、使い道を自ら決められる資金を与える。
より自由にして「個性化」を進めるのがねらいだ。

 文部科学省による「護送船団」方式での運営からの大きな転換。国立大の歴
史上、1886年の帝国大学令公布や1949年の新制国立大発足以来の改革
といえる。

 法人化により、大学運営は学長を中心としたトップダウン型に変わる。これ
までは教授会を軸としたボトムアップ型で、「意思決定に時間がかかりすぎる」
「思い切ったことができない」といった指摘が絶えなかった。「国立大は閉鎖
的で意思決定も不透明だ」との批判にも応えるため、役員などに学外の有識者
を必ず加えることになる。

 文科省が各大学の細かな予算要求をたばねていた仕組みも変わる。大学ごと
に運営費交付金を渡し、その中で自由に使うことができるようにする。有識者
らによる文科省の「国立大学法人評価委員会」が業績を評価し、その結果が交
付金の額に反映される。

 学校間の競争も激しくなることが予想され、それぞれの大学には、自主性や
自律性を高めて教育や研究を活性化することや、国際的な競争力を付けること
などが強く求められる。学長の責任は格段に重くなり、経営手腕が問われる。

 国立大は短大、大学院大を含めて計99校あるが、今秋に20校が10校に
統合するため、来春は89校が法人化する。各大学と関連する機関の教職員ら
13万人余は公務員ではなくなり、それぞれの法人職員になる。

 野党側は、各大学の運営の指針となる「中期目標」を文科相が定めるとの政
府案に「国の統制を強める恐れがある」などと反発。民主党は中期目標を大学
側が届け出る制度にする修正案を提出したが、否決された。

 採決後、委員会は法の施行にあたって、文科省と大学側のやりとりを公表す
るなど透明性を確保することを主眼とした23項目にわたる付帯決議をした。

 関連法案には、全国に55校ある国立高等専門学校を一つの独立行政法人の
下に設置して法人化する独立行政法人国立高等専門学校機構法案も含まれてい
る。


Mainichi Interactive 2003年7月8日付

国立大学:法人法案などが参院委で可決 9日成立へ


 国立大学を来年4月から独立法人化し、国の行政組織から切り離すための国
立大学法人法案など関連6法案が8日、参院文教科学委員会で賛成多数で可決
された。9日午後の参院本会議で可決・成立する見込み。

 法案では学長の権限が強化され、学外委員を過半数とする経営協議会が新設
されるほか、業績評価に基づいて運営交付金の額が算定されることも盛り込ま
れ、従来は一律だった授業料も横並びではなくなる。

 昨年度末で99校あった国立大は今秋までに89校に統合されるため、来春
から法人化するのは89大学となる。【横井信洋】


『産経新聞』2003年7月9日付

国立大法人法案 きょう可決、成立 授業料など固まらぬまま


 全国の国立大学を国の機関から切り離して独立法人化する国立大学法人法案
が八日、参院文教科学委員会で賛成多数で原案通り可決された。九日午後の参
院本会議で可決、成立の見通し。各大学の独自性を高め、競争を促すなど大学
改革の進展が期待される一方で、受験生にとって志望校を選択するうえで不可
欠な授業料など細かいことが固まっておらず、「もっと受験生の立場に立って
積極的に情報を示してほしい」といった声も聞かれる。

 授業料について、遠山敦子文部科学相は「経済状況に左右されないと同時に、
各大学の自主性に留意して決める。予算もからむので、最終的決定はできてい
ない」と従来の見解を繰り返した。

 国立大学の授業料は現在、大学や学部にかかわらず一律五十二万八百円。独
法化後は「国が標準額を示し、それにもとづいて各大学が一定の範囲内で決め
る。標準額は現在の授業料がベースになる」とされている。

 文部科学省は「学部別で標準額に差をつけることはない」としているが、一
定の範囲内ならば大学側の裁量で授業料が決められる。このため各大学の授業
料はもちろん、「同じ大学の学部間で格差がつくかどうか」「大学で決められ
る授業料の上限や下限はいくらなのか」「入学後の学費値上げは許されるのか」
といった受験生にとって不可欠な情報が入試まで約半年の現段階で固まってい
ない。

 予備校関係者は「独法化で大学が将来、何がどう変わるのか具体的なイメー
ジがわいてこない。さらに、肝心な授業料もこの時期に決まってないなんて、
あまりに受験生をないがしろにしている」と戸惑いをみせている。