“欺瞞の塊り”「プロジェクトR

 

2003年8月15日 総合理学研究科 佐藤真彦

 

 

来る8月18日に,今まで実質的に秘密裏に進められてきた「プロジェクトR幹事会」の結論が親委員会である「(第3回)プロジェクトR委員会」に報告され,横浜市立大学“改革”の方向の大枠が一方的に周知されようとしている.このままでは,「プロジェクトR」の欺瞞性も横浜市大改革の真相も,一般市民に知らされることなく隠蔽されたままとなるのは必至で,これをこのまま傍観・放置することはできない.

 

ここで,「プロジェクトR」とは,一般教員や卒業生・市民からの広範な反対の声を無視して,横浜市大の縮小・解体(“ズタボロ”化)を企む市長・事務局の指示に従って設置した“全学的改革検討組織”(「市立大学改革推進・プラン策定委員会」)を指すが,これに対して,(事務局によれば)“声援”を頂けるような“愛称”として教職員から“募集”してつけられたもので,正式名は“キャッチコピー”も兼ねて,『プロジェクトR(PROJECT REBORN)“生まれ変われ!横浜市大”』である.しかも事務局は,ロゴマーク作成の記者発表まで行って,“愛称”と“キャッチコピー”の宣伝に余念がない.

 

広範な反対の声にもかかわらず“愛称”と強弁していることをはじめとして,中島みゆきの大ヒット曲「地上の星」と共にNHKの人気番組となった「プロジェクトX〜挑戦者たち」に“擬態”した名称からしてその欺瞞ぶりを推し量ることができるが,「プロジェクトR」が徹頭徹尾の欺瞞で凝り固まった,“欺瞞の塊り(カタマリ)”としか言い様のないものであることを以下に告発・暴露して,“市大改革”の真相を少しでも多くの方々に知って貰うことを期待したい.

 

欺瞞1.“「大学の自治」の原則”の無視

「プロジェクトR委員会」は,形式的には大学における最高議決機関である「評議会」により設置された委員会であるが,実際には,「大学への市長メッセージ03-5-7」

http://www.yokohama-cu.ac.jp/daigakukaikaku/daigaku/daigaku_kaikaku/dk01.html

にあるように,市長・事務局の指示に従って急遽設置したものである.すなわち,「大学へのメッセージ」の中で中田市長は,“副市長を本部長に「横浜市大学改革推進本部」を設置します.大学が構築する,教員・事務局を構成員とする「全学的改革検討組織」が,それぞれの役割を果たしながら改革に取り組んでください.”と述べている.

 

また,「プロジェクトR委員会」は小川恵一学長を委員長として,教員21名+事務局18名,計39名の委員で構成されるが,大学改革を議論する場に,事務局から多数のメンバーが参加していることが,まず目を引く.ちなみに,「プロジェクトR委員会」の前身である「大学改革戦略会議」では,小川学長(座長)以下,教員:事務局=26:6である.

 

また,実質的な議論を行う「プロジェクトR幹事会」では,小川学長と中上 直総務部長を共同の議長として教員:事務局=7:7で構成される.いっぽう,前身の「戦略会議幹事会」では,学長を座長として,教員:事務局=8:2であり,学長以外の教員7名のうち6名が学長指名である.なお,2名の事務局メンバーは,“独裁官僚”池田輝政(前)総務部長(現泉区長)とその“腹心の部下”伊藤公一(前)研究交流課長(現総務部次長兼企画課長)である(下記参照).

 

事務局の発言力の大幅な増大と介入を許す「プロジェクトR委員会・幹事会」のこのような構成は,明らかに,“「大学の自治」の原則”を無視した“不当・違法な”構成であり,教員の誰からも異議が出なかったように見えるのは,不思議と言うほかない.

 

実際,横浜市大卒業生で神奈川県庁OBの荻原昭英氏も,事の本質を鋭く見抜いて,次のように厳しく指摘している.すなわち,“改革推進・プラン策定委員会の構成を見ると、教員21名、事務局18名、幹事会では教員7名、事務局員7名と事務局の人数が異常に多い。大学自治の原則からすれば、大学改革に関して、事務局は本来メンバーとならないはずである。これは、「あり方懇」の答申を前提に、数の力で、教員の意見を抑え、事務的に具体的な詰めをしていこうということである。「あり方懇」の答申を具体化するための作業を迅速に実現するための体制である。”

http://yoogi53.hp.infoseek.co.jp/essay295.htm 参照)

 

欺瞞2.見せかけの“全学的取り組み姿勢”

次に,「プロジェクトR委員会」が,小川委員長(学長)以下39名という大人数であることが目を引く.恐らくこれは,下記の「委員長(学長)挨拶03-5-14」にもあるように,“教員と事務局が一丸となり,大学改革に取り組み「大学の限界」などと言われないよう,期限までに結論を出す”ために,大学が“全学的叡智を結集”して改革に当たっているという姿勢を市民にアピールする狙いがあると思われる.

 

しかしながら,その実態は,以下に述べるように,「プロジェクトR委員会」では実質的な審議や議決が行われることはなく,ほんの一握りの幹事が主導する「プロジェクトR幹事会」が決定した事項の“報告”を,単に受け取る場に過ぎない.実際,市大改革を検討・チェックするための主要な5委員会のうち,横浜市が設置した(1)「市立大学の今後のあり方懇談会」(「あり方懇」),(2)「横浜市大学改革推進本部」,および,学長の諮問機関である(3)「将来構想委員会」の場合には,それぞれ,設置要綱および規程により委員会の目的や権限などがきちんと定められているのに対し,横浜市大評議会が設置した(4)「大学改革戦略会議」,および,(5)「プロジェクトR委員会」の場合には何故か要綱等が存在しない.

 

とくに,現時点で最重要の(5)「プロジェクトR委員会」の場合,かろうじて「小川委員長(学長)挨拶03-5-14」

http://www.yokohama-cu.ac.jp/daigakukaikaku/daigaku/daigaku_kaikaku/dk_iincho.html 

の内容から設置趣旨(目的)および経過を知ることができるのみである.すなわち,「プロジェクトR委員会」の目的は,@「あり方懇答申03-2-27」を踏まえて,A「大学改革戦略会議のまとめ03-1-8」および「将来構想委員会の中間報告02-12-25」を比較検討し,B長期のスケジュールではなく,今年の10月をタイムリミットに,C「独立行政法人化」を前提に,学長が先頭に立って大胆な改革を断行する,というものである.これらの4点は,「市長改学宣言03-5-7」

http://www.yokohama-cu.ac.jp/daigakukaikaku/daigaku/daigaku_kaikaku/dk02.html

の際に,中田市長が小川学長を市役所に呼びつけて誓約させた上で,記者発表して天下に公表したものである(以下,「学長 決意表明03-5-7」と呼ぶ).

 

さらに,殆どが秘密のヴェールに包まれている(下記参照)が,それでも議事要旨等から,「プロジェクトR委員会」には,実質的に,審議・議決等の権限がなく,「プロジェクトR幹事会」が決定した事項の“報告”を単に受け取る場としての意味しかないことが容易に見て取れる.例えば,「プロジェクトR委員会」議事要旨には,“審議した”,“議決した”,あるいは,“了承した”等の文言が一切なく,“報告があった”・“説明があった”などの文言や,せいぜい,“主な意見(要旨)”が記載されているのみである.したがって,「プロジェクトR委員会」は「幹事会」から,単に,“報告”を受け取るだけ(あるいは,せいぜい,発言を許される程度)で実質的な審議は期待されていないことが分かる.

 

この点に関して,荻原昭英氏も,“大学改革推進・プラン策定委員会は、2層構造。実質的方向付けは幹事会で案を作り、委員会がそれを承認する。主要メンバーは両方の構成員である。従って、委員会は翼賛委員会である。幹事会の構成は、教員7名、事務局員7名。・・・事務局の意見は一枚岩、教員側は、学長、副学長、その意を体する教員である。この構成を見れば、今後の大学の改革は明らかで、「あり方懇」の答申を権威づけするだけのことになる。”と指摘している.

http://yoogi53.hp.infoseek.co.jp/essay295.htm 参照)

 

しかも,(幹事会における)「改革案策定議論の進め方」(注:03-6-5「幹事会」において,資料として提出・承認された文書)

http://www.yokohama-cu.ac.jp/daigakukaikaku/daigaku/daigaku_kaikaku/susumekata.pdf 

には,“一度整理・確認した改革案については,重大な諸条件の変更が無い限り決定事項とし一事不再議とする”とあり,第2回「プロジェクトR委員会03-7-15」の資料4(「大枠整理にあたってのプロジェクトRでの議論の概要」)

http://www.yokohama-cu.ac.jp/daigakukaikaku/daigaku/daigaku_kaikaku/2suishini/shiryo4.pdf 

に“整理・確認済みの事項”として,“《現状認識》:大学の評議会等が,ともすれば学部の利害を中心に議論が進み,全学的視点での方針決定ができにくい.学部自治が優先し,学長,学部長の権限が不明確である.・・・”などの「部外秘資料」にある池田輝政前総務部長の粗暴な問題発言

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/page036.html 参照)

あるいは,学部では,“教養教育を重視する.人文・社会科学系の大学院は,旧来の研究者(教員)養成系大学院はニーズが少ないため本学では採用しない.主として社会人を対象とした大学院を検討する.・・・”などの問題箇所の“報告”に対して,「プロジェクトR委員会」において審議・議決等を行った形跡が全く見当たらない.

 

明らかに,「プロジェクトR委員会」が“全学的改革検討組織”であるというのは,実態とかけ離れた“見せかけ”である.

 

欺瞞3.市長・事務局の筋書きに,唯々諾々と従う小川委員長(学長)

市長・事務局は,「プロジェクトR委員会」発足と同時(03-5-14)に,「横浜市 大学改革推進本部」を立ち上げたが,その際,推進本部長の前田正子副市長は,「学長決意表明03-5-7」を引用して釘を刺しながら,上記の小川委員長(学長)挨拶とそっくりの挨拶

http://www.yokohama-cu.ac.jp/daigakukaikaku/daigaku/daigaku_kaikaku/dk_fukushicho.html を行っている.たとえば,両者に共通のキーワードとして,「少子化」「生き残りをかけた」「大学間競争」「市民・納税者が納得する改革」「大学の限界」「最後のチャンス」「あり方懇答申を踏まえ」「独立行政法人を念頭に」などなどが用いられている.

 

また,中田市長による「市立大学改革について〜大学への市長メッセージ〜03-5-7」

http://www.yokohama-cu.ac.jp/daigakukaikaku/daigaku/daigaku_kaikaku/dk01.html

あるいは,事務局による「平成15年度市立大学事務局 運営方針」

http://www.yokohama-cu.ac.jp/houshin/index.html

にも,同様のキーワードが並んでいる.

 

したがって,中田市長・市大事務局作成の筋書きに,唯々諾々と従う小川委員長(学長)の姿が,あらためて,浮き彫りにされた訳である.

 

欺瞞4.「プロジェクトR委員会・幹事会」メンバーの選び方

「小川委員長(学長)挨拶03-5-14」

http://www.yokohama-cu.ac.jp/daigakukaikaku/daigaku/daigaku_kaikaku/dk_iincho.html 

では,「プロジェクトR委員会」の39名のメンバーは,@市民の視点,A経営的視点,B全学的視点に立って議論できるという3つの条件を“全て満たす”人物を,教員および事務局の中から学長が選んだ,ことになっている.しかしながら,少なくとも,教員では学長指名の5名以外は全て,各学部等において一般教員から選挙された学部長等の教員であり,上記の3条件を全て満たす人物というのは“全くの見え透いたウソ”であることが直ちに判明する.

 

真相は,すでに述べた“全学的叡智の結集”をアピールする大人数を揃えることのほかに,事務局のメガネに叶った人物を「プロジェクトR幹事会」メンバーとして紛れ込ますことにあると思われる.

 

また,上記の3条件に関して,ある教員は,“ここに当然あるべき,「学生の視点」が欠けています.学生無視です.(Bの)「全学的視点」とはあいまいであり,ここでは(従来からの事務局の主張である)「学部エゴにとらわれず」としか読めません.”また,“人選が学内の正規の手続きを経ずに,学長の指名で選ばれたこと自体が,これまでの慣行違反です.”と指摘している.

 

幹事は“小川学長と高井祿郎事務局長の話し合い”により,教学側と事務局側各7名として選出したとあるが,(第1回「プロジェクトR委員会」議事概要(03-5-14)

http://www.yokohama-cu.ac.jp/daigakukaikaku/daigaku/daigaku_kaikaku/dk030514.html 参照)「プロジェクトR幹事会」メンバーは全て事務局により厳選された,積極協力派(積極“擦り寄り”派)であると見て間違いないだろう.これは,「プロジェクトR幹事会」の前身である「戦略会議幹事会」の中に,事務局にとっての“裏切り者”(教員側にとっては勇気ある“内部告発者”)の教員がいたため秘中の秘とすべき議事内容までもが,教員側に筒抜けになってしまったという“苦い経験”から,事務局が学習した結果に違いない.(「ようやく公開された『部外秘資料』と市長メッセージ『改学宣言』の欺瞞性」

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/giman030514.htm 参照)

 

なお,上述したように,幹事の人選は小川学長と高井事務局長が“共に合意”した者を選んだとあるが,これは,事実上,事務局長の拒否権を認めたことになり,明らかに学則違反であると思われる.かつて,「博士研究員制度」に関して,同様の学則違反を公開書簡により指摘したことがあるが,小川学長・高井事務局長・中上総務部長らの大学首脳は,不誠実にも,説明責任を未だに全く果たしていない.

(『事務局宛質問状「大学の自治」を侵害する「博士研究員」制度の問題性03-4-7』

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/page090.html ,および,

『「博士研究員」制度についての「学長回答」を巡るてんまつ03-4-23』

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/page102.html ,

『怒りを覚える“ふざけた説明”03-5-2』

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/page106.html 参照)

 

事務局の発言力が強すぎ,“「大学の自治」の原則が大きく侵害されている”という重大な根本問題を別にしても,14名の幹事(教員7名+事務局7名)という人数は,裏切り者が紛れ込むのを排除しつつ,かつ,余りにも少人数による恣意的な議論という印象を払拭するには都合の良い数である.

 

しかしながら,実態は,事務局主導の下に,実質的に数名の幹事により議論が進められていると見るのが妥当だろう.実際,ある教員の分析によれば,「プロジェクトR幹事会」は,実質的に,中上総務部長・伊藤公一総務部次長(兼 企画課長)の主導の下に,小川学長・柴田悟一副学長・奥田研爾副学長・小島謙一理学部教授らの積極協力派(積極“擦り寄り”派)を中心に運営されているという.

 

ところで,「幹事会」の人選に深く関わった高井祿郎事務局長は,「横浜市会 大学教育委員会03-5-26」において,“事実にもとる虚言”・“とんでもない強弁”を行ったことを暴露されたばかりであるが,(『市大高井局長の改悪案を批判し,新横浜総合大学構想を提唱する』

http://www8.big.or.jp/~s-yabuki/doc03/yabuki811.pdf 参照)

この高井事務局長に関して,ある教員は,“なにしろ、この市大改革案つくりのおかげで、彼は定年が1年延びてウハウハの大喜び。ここで独立法人の事務局長にでもなれば、定年はさらに65歳あたりまで延びます。彼がきわめて熱心に中田の走狗役をつとめようとしているのは、私利私欲のためです。”と断じている.

 

実際,国立大学においても,法人化により大量の“官僚天下り”が予想され,その腐敗ぶりが厳しく指弾されている.

(『サンデー毎日03-7-20』:国立大学法人化で始まる「学問の不自由」と「役人パラダイス」

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/page144.html ,

『日刊ゲンダイ03-6-27』:焼け太り「独立」国立大に大量の官僚天下り

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/030627nikkangendai.htm ,

『東京新聞03-6-26』:法人化で数百人天下り 国立大「役員」に官僚出身者

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/030626tokyoamakudari.htm ,

『中日新聞03-6-26』:官僚「天下り」数百人規模に 国立大、法人化で新ポスト

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/030626chunichi.htm ,

『桜井良子:週刊ダイアモンド03-5-24』不要なポストを大幅増設!官僚の天下り先拡大を狙う国立大学法人法の卑しさ

http://www.yoshiko-sakurai.jp/works/works_diamond_030524.html 参照)

 

欺瞞5.「プロジェクトR幹事会」における議論の無内容さ

「プロジェクトR幹事会」においては,すでに述べた“愛称”を決めたり,あるいは,以下に述べるように“御用”シンポジウム開催や“御用”アンケート実施等を行っているが,最重要の仕事は,「あり方懇答申03-2-27」に合致するように,「大学戦略会議まとめ03-1-8」および「将来構想委員会中間報告02-12-25」を比較検討して,改革プランの大枠を決めることである.

 

すなわち,@「大学戦略会議まとめ」および「将来構想委員会中間報告」が「あり方懇答申」に合致していれば,その段階で基本的に大学の案とする.A合致しない場合には,「あり方懇答申」をベースに整理できるものは,それを大学の改革案とする.B簡単に調整できないものは,さらに検討して大学の案とする.C3者比較・方向案の決定作業を優先して行い,改革プランの大枠を決定する.(「改革案策定議論の進め方」

http://www.yokohama-cu.ac.jp/daigakukaikaku/daigaku/daigaku_kaikaku/susumekata.pdf 参照)

 

ここで,「あり方懇答申」とは,その内容の杜撰さで全国に悪名が高く,一方,「大学戦略会議まとめ」とは,“独裁官僚”池田輝政前総務部長(現泉区長)のナマ発言集(“暴言”集)である“部外秘資料2”を市民向けにマイルドにアレンジした“部外秘資料1”そのものである.

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/giman030514.htm 参照)

また,「将来構想委員会中間報告」とは,上記の2文書に比べれば教員の考えが,ある程度,反映されてはいるが,事務局の意向に大幅に“擦り寄った”内容の文書である.

 

したがって,上記の3文書を比較検討して改革プランの大枠を決めるという「幹事会」の最重要目的のためには,極端に言えば,「あり方懇答申」の大枠をそのまま改革プランにすればよく,「幹事会」を毎週1回以上開催して議論する必要など全くない.つまり,「はじめに結論ありき」があからさまな,普通の神経では馬鹿馬鹿しくて議論などできない代物なのである.

 

実際,これまでに「幹事会」で議論されてきたことを,分かりやすく単純化して言えば,市長指示の“独立行政法人化を前提に”,「あり方懇答申」にある“リベラルアーツ・カレッジ構想”(教養教育を中心とする単科大学化構想)と“3学部統合”(現在の商学部・国際文化学部・理学部の3学部を縮小・解体して国際教養学部の1学部に統合)にどのようにもって行くかということが主である.

 

この点に関して,永岑三千輝氏(商学部)も,“幹事会は、大学改革については、「リベラルアーツカレッジ」と「学府‐院構想」としか議論していないようである。これは、この間の内外の意見をいっさい聞かない態度と符合する。・・・いずれにしろ、「あり方懇」答申で押しつけられようとしている「3学部の廃止・解体」と言う方向性をあたかも確定したかのように議論しているようである。”と批判している.(永岑氏ホームページ

http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/Nisshi.htm 大学問題日誌8月7日付参照)

 

いっぽう,議論の無内容さと対照的に,「幹事会」開催回数の多さが目を引く.実際,5月7日の「市長改学宣言」を受けて,5月13日の臨時評議会で「プロジェクトR委員会」設置決定,翌5月14日に第1回「プロジェクトR委員会」開催と同時に「幹事会」設置決定・幹事14名選出・第1回「幹事会」開催と,極めてあわただしく(むしろ,事務局の筋書き通りに“極めて手際よく”と言うべきか)「幹事会」を開始して以来,3ヶ月足らずの間に(8月5日の時点で)合計16回開催している.

 

真剣に議論を重ねているはずの「幹事会」委員には悪いが,議論の無内容さと対照的に頻繁に会議を重ねることの(事務局の)真の狙いは,“これだけ多くの会議を頻繁に開いて,大学改革に精力的に取り組んでいます”というメッセージを一般市民に伝えることにあるのではないか,と疑いたくなる.

 

欺瞞6.“御用”シンポジウム

「大学公式ホームページ」

http://www.yokohama-cu.ac.jp/daigakukaikaku/daigaku/daigaku_kaikaku/symposium/sympo.html によると,「プロジェクトR」が去る7月20日に主催した“市民向け”シンポジウム(正式名:『生まれかわれ!横浜市大大学改革シンポジウム』)の目的は,大学改革の取り組みを,“市民の皆様に関心を高めて頂くとともに,市民の皆様から改革に向けた意見をお寄せいただくための契機とすること”とある.しかしながら,その実態は,市民への周知期間が1週間程度と極端に短いことに象徴されたように,“とにかくシンポジウムを開催すること”を第1目的として,“厳戒態勢”の下に教員や学生の“大量動員”を行い,しかも,会場からの発言を“封じ込めた”ことに対して“怒りの声が噴出して騒然となった”という,まさに事務局主導の“御用”シンポジウムそのものであることを露呈する結果に終わった.

 

この点に関しては,

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/page145.html ,

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/030729yappari.htm ,

あるいは,一楽重雄氏(理学部)

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/page150.html ,

および,永岑氏大学問題日誌7月21日付

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/page149.html 

による報告を参照されたい.

 

ここでは,一楽氏が報告したように,中田市長が@“学長怪文書”(正式名:“「あり方懇答申」に対する要望”03-4-9)

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/gakucho0349.pdf

の内容を確認した後,さらにA“学長声明03-5-7”

http://www.yokohama-cu.ac.jp/daigakukaikaku/daigaku/daigaku_kaikaku/dk11.html

の中で,学長が市長に誓約した改革の方針(すなわち,「あり方懇答申」を踏まえて,独立行政法人化を念頭に,学長が先頭に立って改革を断行するという方針)通りに改革が進められていることを,シンポジウム参加者に対して知らしめたこと,のみを指摘しておく.

 

欺瞞7.“御用”アンケート

「市立大学改革に関するアンケートについて03-7-14」という事務局作成の文書

http://www.yokohama-cu.ac.jp/daigakukaikaku/daigaku/daigaku_kaikaku/2suishini/shiryo8.pdf によると,アンケートの目的として,“市民をはじめ,受験生や教育関係者,企業等産業界などを対象に,横浜市が大学を有する意義や地域社会への貢献等について,意見や要望などをアンケートの形で調査することとし,大学改革の検討や実施のための一助とするとともに,市立大学の大学改革に向けた取り組みをPRすることとします.”とある.また,“調査方法や調査内容等の大学側の案については,幹事会が調整することとする.”となっている.

 

なお,この文書は7月14日の「(第2回)プロジェクトR委員会」において資料として配布されたが,「公式ホームページ」上で公開されたのは3週間後の8月7日である.なぜ,3週間も遅らせる必要があったのか?恐らく,他の多くの情報と同様,一般教員・市民に公開するとしても公開の時期を出来るだけ遅らせて,反論や対抗策を練る時間的余裕を与えないようにするという姑息極まりない考えによるのだろう.

 

事務局主導によるアンケートに関しても,アンケート結果が公表される前から,またしても“御用”アンケートそのものの欺瞞的実態に対して複数の教員から批判の声があがっている.この点に関しては,随 清遠氏(商学部)ホームページ「情報操作の実践」

http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~zuiz/INDEX.HTM/

および,永岑氏ホームページ 大学問題日誌7月31日,8月2日付

http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/Nisshi.htm

を参照されたい.

 

また,永岑氏ホームページ 大学問題日誌8月4日付

http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/Nisshi.htm 

の中で,ある教員も,“御用”アンケートの実態を次のように告発・暴露している.すなわち,“また、事もあろうに夏休みに入ってから(?!)、事務局が実施しているという学生アンケートについては、8月1日のワンデー・オープン・スクールでも守衛所の横にテントが設置され、そこで来場した受験生を対象に配布や回収が行なわれていました。ところが、私が観察したかぎりですが、そこには事務職員と思われる大人は見当たらず、事務局が当日の要員として雇用した学生アルバイトの一部が詰めて実施に当たっていました。そのアンケート用紙には、ロゴマーク以外の実施主体が明記されておらず、設問も事務局が望む「大学改革」の結論に誘導されるような形式となっているなどの、両先生のご指摘を考え合わせると、以下の想像がされます。すなわち、在学生も含めて、事務局としては大学当局実施の「御用アンケート」という性格をできるだけ隠して、できれば学生の自主的なものとでも誤解させるような、非常に姑息な姿勢が見え隠れしています。”

 

ところで,よい統計とおかしな統計を“批判的に”選り分けるための入門書である「統計はこうしてウソをつく」(原題:“DAMNED LIES and STATISTICS”,真っ赤な嘘と統計)(J.ベスト著,白揚社,2002)の中で,「統計を使えば何でも証明できる」という“誰でも耳にしたことのある言葉”が紹介されている.また,著者のベスト氏は,統計を悪用する最も悪質な例として,特定の目的のために意図的に誘導・操作することを挙げている.すなわち,“望みどおりの結果をもたらす調査を考案する.特定の回答を促すような言い回しで質問する.望みどおりの回答をしそうなサンプルを選ぶ.結果が望みどおりの形をとるまでデータを改竄する.極端な例では,嘘をつき,目的に適う数字をでっちあげてしまう.”という訳である.

 

まさに,随氏や永岑氏が指摘したような,“情報操作の手本ともなるようなアンケート調査”が,目の前で行われているのである.

 

欺瞞8.議事要旨公開で露見した秘密主義

「改革案策定議論の進め方03-6-5」

http://www.yokohama-cu.ac.jp/daigakukaikaku/daigaku/daigaku_kaikaku/susumekata.pdf 

には,“幹事会での議事内容については,議事要旨をホームページで公開する”となっているが,途中経過を意図的にあいまいにしたままで,しかも,ポイントとなる内容に関しては全く公開せず,さらに,結論が出たものも出来るだけ遅らせて公開するなど,秘密主義が貫かれている.「幹事会」の秘密主義に関しては,教員組合(藤山嘉夫委員長)による糾弾の書簡

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/page155.html ,

および,永岑氏ホームページ 大学問題日誌8月4日付の批判記事

http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/Nisshi.htm 

を参照されたい.

 

「幹事会」が秘密主義に徹しているのは,恐らく,「あり方懇」を公開にして教員や市民の傍聴を許したために,その実態を赤裸々に暴露されて,反対運動の火の手が一挙に燃え広がったという(事務局にとっての)苦い経験があるためであろう.(教員組合による,「あり方懇傍聴記」シリーズ,例えば,平 智之氏による「第3回あり方懇傍聴記」

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/taira021209.htm 参照)

 

すなわち,「公式ホームページ」では市民向けに“公開する”としながら,その内容のポイントや詳細を実質的に隠蔽するという秘密主義の姿勢が,またしても露見したのである.

 

なお,来る8月18日の「(第3回)プロジェクトR委員会」の重要性を考えて,ある教員が事務局に電話をかけて,“18日の委員会を(一般教員である自分が)傍聴できるかどうか”問い合わせたところ,“委員長(小川学長)判断になるが,現在のところ公開しない方向で考えている(つまり,学内にも非公開)”という返事だったという.

 

欺瞞9.“無法乗っ取り”の「公式ホームページ」からタレ流される大量の“御用情報”

事務局が,学内規則を完全無視して,横浜市大「公式ホームページ」(およびネットワークシステム)を“無法に乗っ取る”という“暴挙”を強行し,これに対して,全学的な抗議の決議や声明が出されたにもかかわらず,相変わらず“無法占拠”を続け,かつ,「公式ホームページ」を通して大量の“御用情報”をタレ流すという憂うべき事態が続いている.詳しくは,『“欺瞞の象徴”「横浜市大公式ホームページ」と事務局によるネットワークシステムの“無法乗っ取り”を糾弾する03-7-3』

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/page142.html を参照されたい.

 

つまり,上記の「プロジェクトR委員会」および「幹事会」,あるいは,「“御用”シンポジウム」・「“御用”アンケート」等々に関する多くの“御用情報”を,「公式ホームページ」を通してタレ流すことで,情報操作を行い,結果的に,大学改革に関する“真実情報”を隠蔽するという由々しき事態となっているのである.

 

せっかく手に入れた「公式ホームページ」を手放すことになれば,事務局は,情報操作の有力な手段を失うことになる.これで,“無法乗っ取り”を告発・暴露されたにもかかわらず,あくまでも“無法占拠”の「公式ホームページ」にしがみつく理由も納得できる.ちなみに,“無法乗っ取り”を計画・実行した(前)責任者は,“独裁官僚”池田輝政前総務部長(現泉区長)であり,その“成果”を引き継いで,あくまでも“無法占拠”を続ける直接的(現)責任者は,池田氏の“腹心の部下”伊藤公一総務部次長(兼 企画課長),および,その上司の中上 直総務部長である.

 

なお,学内規則に基づいてネットワークシステムを管理する正規の組織である「学術情報センターネットワーク部会」のある教員は,専門家としての立場から,そもそも,研究者が中心になってネットワークシステムを開発・発展させてきた歴史的経緯から,“まともな”大学においては教員がネットワークシステムを独占的に管理しており,横浜市大の場合のように,(倫理感の乏しい)事務官僚が独占管理することは極めて危険であるという.実際,「公式ホームページ」からの“御用情報”タレ流しの他に,“言論弾圧”や“メールの盗聴”等が現実となり,あるいは,非常に危惧される状況に至っている.

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/page142.html ,および,

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/page055.html 参照)

 

欺瞞10.“擦り寄り”の見返り

“独立行政法人化を前提として”という中田市長の指示により,「プロジェクトR委員会・幹事会」が全く触れることなく,意図的に避けてきた最重要の根本問題は,かつて,家永三郎氏が明確に指摘したように,「学問の自由」と「大学の自治」を制度的に担保する「教育公務員特例法」による教員に対する身分保障を,独立行政法人化することで取り払うことにより,大学教員の身分を不安定化し,最終的に,批判精神を大学から抹殺せんとする,過去半世紀に及ぶ反動勢力の悪質な企図の問題である.

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/page035.html 参照)

 

この点に関して,小川学長は,“市長からは「法人化についても前提として」検討して欲しいと意見がありましたので,私は「法人化を前提として検討を進めること.法人化することで,大学の自由度が増すので,それをどのように生かしていくかが,私たちの知恵の見せどころであること.」などと答えました.”と全くの無批判ぶり・盲従ぶりを露わにしている.(小川学長挨拶03-5-14

http://www.yokohama-cu.ac.jp/daigakukaikaku/daigaku/daigaku_kaikaku/dk_iincho.html 参照)

 

かつて,小川氏は,「教育公務員特例法」のことを「教育“教務院”特例法」と誤記したことがある(「公立大学協会第60回総会02-5-15」における,文部科学省高等教育局大学改革推進室長 杉野 剛氏による講演「大学の構造改革について」に関する,「小川メモ02-5-15」による).このことは,その時点で小川氏が「教育公務員特例法」の(存在,および,その)重要性を全く認識していなかったことを意味するが,小川氏はいまだに“法人化することにより大学の自由度が増す”と本気で思っているのだろうか.もしそうなら,去る6月の「国立大学法人法案」を審議する衆院文教委員会で“ウソ答弁”と“お詫び”を繰り返した遠山敦子文部科学大臣を始めとする文科省官僚と同様,小川氏の“自己欺瞞”も極まれりというべきだろう.

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/page136.html ,および,

桜井良子氏による「国立大学法人化法案の成立を許せば加速する官僚による大学の私物化」

http://www.yoshiko-sakurai.jp/works/works_diamond_030705.html 参照)

 

また,小川氏は,「市長改学宣言03-5-7」に呼応して,全学的な抗議の動きを完全無視した形で,“独立行政法人化は大学運営の自由度が増すと思う.サイレントマジョリティー(声なき多数派)をまとめて市大を再生させたい.”(神奈川新聞03-5-8付)と記者発表している.

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/giman030514.htm 参照)

同様に,「幹事会」委員の小島謙一理学部教授も(布施 勉国際文化学部教授・馬来国弼理学部長と共に),“「あり方懇答申」も私たちが模索してきた改革方針とほぼ一致している.改革へのサイレント(沈黙)のマジョリティー(多数派)であってはならない.”(神奈川新聞03-5-9付)などと記者発表している.全学的な抗議の高まりにもかかわらず,なお,サイレントマジョリティーを結集すると強弁する態度は,白を黒と言いくるめる態度そのものであり,真理の探究を旨とする大学人の対極にある態度と言わざるを得ない.

 

そもそも,「学問の自由」と「大学の自治」が,日本国憲法・教育基本法・学校教育法・教育公務員特例法等の法制度により幾重にも保障されるに到ったのも,戦前における時の権力による数多の“大学弾圧事件”を経験したことへの反省に基づくものであり,多くの先人の犠牲と努力の末に結実したものである.(伊ヶ崎暁生著「学問の自由と大学の自治」,三省堂,2001

http://www.sanseido-publ.co.jp/publ/daigaku_jiti_rekisi.html 参照)

 

したがって,本来なら率先して「学問の自由」と「大学の自治」を守るべき大学人が,これを時の権力に売り渡すようなまねを断じて許してはならないはずである.ところが,実際に,小川学長以下の「プロジェクトR幹事会」の面々

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/meibo2+.pdf が行っていることは,中田市長らの権力に積極的に“擦り寄る”ことで,「学問の自由」と「大学の自治」を食い潰し,これを権力に売り渡すことなのである.その見返りとして彼らが手にするであろうものの,何と薄汚れて見えることか.

 

欺瞞11.“市民派”中田市長の素顔

東京都立大学では,“ミニ・ヒトラー”石原慎太郎 東京都知事による“ファッショ”的大改革の構想が,例によって,“暴言”のオマケ付き

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/030801ishihara.htm

で発表され,衝撃が走ったばかりである.

(長谷川 宏氏による「都立大に吹き荒れるファシズムの嵐03-8-5」

http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000068.html 参照)

 

いっぽう,中田市長のやり方は,@他に選択の余地のない状態に追い込んでおいて,A大胆な改革案を策定しなければ,売却や廃校もあり得ると恫喝する一方で,B「まず決めるのは,大学自身です」と,あたかも,大学自身が自発的に選択したかのような印象を市民に与えることで,C中田氏自身は“市民派市長”の虚像の温存を図っている点で,遥かに欺瞞的であり,狡猾かつ悪質である.

 

中田市長にとって,市大“改革”とは,市立病院・港湾病院,市立保育所,学校給食,市公営交通等々の民営化・改革の一環であり,市大以外のこれらの現場においても同様の欺瞞的で狡猾かつ悪質な手法が採られていることが,多くの関連ホームページからも見て取れる.

 

この点に関しては,平 智之氏らによる一連の「中田市政批判」の文書,例えば,

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/n-brain.pdf ,

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/030620taira.htm ,あるいは,

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/page070.html を参照されたい.

 

中田市長は,去る6月7日の「市民シンポジウム」における,井上ひさし氏のメッセージ『おかしなことを言う市長は次の選挙で落とせばよい』に,満場の客席から“割れんばかりの拍手”がわき起こった事実を,侮ってはならない.

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/030615inoue.htm 参照)