“御用”ヒアリング:

たった15分の意見聴取で済ませて,強行突破する積もりか

 

2003年8月30日 総合理学研究科 佐藤真彦

 

 

8月28日,総合理学研究科八景委員会が臨時に開催された.開催に至った理由は,去る8月18日に公表された「プロジェクトR幹事会」のこれまでの結論である学長・事務局側改革案大枠(「大学改革案の大枠の整理について03-8-18)に対して,各教授会および研究科委員会の意見をまとめて,8月末までに,箇条書きの文書として「プロジェクトR幹事会」に提出するように,学長・事務局が指示したためである.この指示に忠実に従って,各教授会・研究科委員会が臨時に開催され,このところ連日のように,各学部等からの「意見」が文書化され,(学長・事務局の意に反して)本ホームページ永岑三千輝氏のホームページ矢吹 晋氏のホームページで公開されている.これらの公開された「意見」はことごとく,学長・事務局側改革案大枠に反対もしくは批判的であり,賛成意見は皆無である.

 

学長・事務局の説明によれば,今回の指示の目的は,各学部・研究科・研究所から提出された「意見」に基づいて,各学部長・研究科長・研究所長から個別に,学長・事務局側(「プロジェクトR幹事会」側)が“ヒアリング”を行い,“改革案に反映”させることにあるという.実際,個別のヒアリングを,すでに済ませたところもある.しかしながら,驚いたことには,ヒアリングのための時間が各々たったの15分に限られているという.これでは,学長・事務局側には学内の「意見」を真面目に聞く積りがはじめから全くなく,市長・事務局が指示した“9月末までに大学として結論を出す”という締め切り期限(「全学的改革検討組織(=プロジェクトR)の基本的な考え方03-5-13参照)を目前にして,“大学側改革案”を拙速に作成して,当初の筋書き通りに強行突破を謀るという意図が見え見えである.また,今回のような,気心の知れた学部長・研究科長・研究所長からの“個別のヒアリング”というヤラセくさい間接的なやり方ではなく,教員組合や一般教員が以前から強く要望している全学的な説明集会(例えば最近では,『「大学改革」に関する説明集会の開催要求03-8-5参照)を開催して,直接,一般教員から意見聴取するやり方をあくまで避けてきたのは何故なのか,その理由も,もはや明白であろう.

 

しかも,下記「討議資料03-8-28中で,『「プラクティカルなリベラルアーツ」とは,どのようなものなのか,という質問にたいして,学長は,「14人いれば14とおりの解釈があるので,私としては今,こうだとは言えない」という主旨の発言をし,・・・市の改革推進会議でも,報道発表でも,「プラクティカルなリベラルアーツ」という,あり方懇の方向で行く,と言っておきながら,その内容が上記のようなことであるとは全く開いた口がふさがりません.ようするに,自己矛盾する言葉を羅列したにすぎない「プラクティカルなリベラルアーツ」なるものは,誰も説明しようがないことを,学長自ら吐露せざるを得なかったものとしか言いようがありません.』と,ある教員が指摘しているように,肝心かなめの“プラクティカルなリベラルアーツ”の理念すら提示できないというオソマツぶりを露呈している.もっとも,上記の教員はじめ多くの人が指摘しているように,“実用的”(プラクティカル)でかつ“実用の役に立たない教養”(リベラルアーツ)という元々矛盾した概念では,どうにも説明のしようがないのは当然であろう.

 

さらに,改革案の具体的な細部を意図的にあいまいにしている点に関して,本学卒業生で神奈川県庁OBの荻原昭英氏が的確に指摘しているように,「問題の多い3学部統合,リベラルアーツ構想については,具体的なことはいわない,カードを隠して時間切れを狙っている.・・・最後の瞬間になってカード(具体案)を出し,いやおうなく結論に持っていく戦略」という汚(キタナ)さである(下記の「討議資料03-8-28」中の荻原氏による「横浜市大改革03-8-26参照).

 

そもそも,学長・事務局側改革案大枠(「大学改革案の大枠の整理について03-8-18」)に対してことごとく反対している全学からの「意見」を,どのようにして“改革案に反映”させようと言うのか.“御用”シンポジウム(03-7-20“御用”アンケート(03-8-1に引き続いて,“御用”ヒアリング(03-8月下旬〜9月上旬)を形式的に行ったという既成事実を作るのが第1目的の,またしても,「プロジェクトR」とは,ウソで凝り固めた“欺瞞の塊り”にほかならないという事実を再確認するだけではないのか.(『“欺瞞の塊り”「プロジェクトR」03-8-15参照)

 

 実際,学長・市大事務局・横浜市当局側は学内意見のヒアリングを待つことなく,さっさと,8月21日に「横浜市 大学改革推進本部第2回会議」を開催して,学長・事務局側改革案大枠(「大学改革案の大枠の整理について03-8-18」)を公表・記者発表している.その意図は,明らかに,学長・事務局側改革案が,あたかも,すでに承認・決定済みであるかのように主要メディアを通して一斉に報道し,あるいは,事務局が“無法乗っ取り”した「横浜市大 公式ホームページ」を通して“御用”情報としてタレ流すこと(記者発表「大学改革案の大枠整理03-8-21参照)により,世論操作することにあると思われる.(「各紙“御用”報道03-8-22『“欺瞞の象徴”「横浜市大公式ホームページ」と事務局によるネットワークシステムの“無法乗っ取り”を糾弾する03-7-3参照)

 

なお,小川恵一学長および中上 直総務部長の両氏は,8月18日の(臨時)部局長会議および(臨時)評議会において,それぞれ,“各教授会・研究科委員会においては,意見集約の際に反対決議や声明などを出さないように”と指示したという.このような大学自治の原則を無視する内容の発言を知ったある教員は,「教授会組織を一体何と考えているのか」と怒りを爆発させている(下記の「討議資料03-8-28参照).

 

今回(8月28日)の研究科委員会における教員「意見」の概要に関しては,榊原 徹研究科長による「総合理学研究科八景研究科委員会における意見03-8-28にまとめられている.言うまでもなく,学長・事務局側改革案大枠に対する反対意見・批判意見一色のオンパレードである.研究科委員会において討議のために配布した「討議資料03-8-28にある「理学部教授会(03-8-25)で出た主な意見」と共に参照されたい.

 

ここでは,上記の「総合理学研究科八景研究科委員会における意見03-8-28」中に取り上げられなかったものを含めて,主として,「討議資料03-8-28」に基づいて,研究科委員会で(私が)述べた意見を箇条書きにして,以下にまとめておく.

 

(1)先日まとめられた,「理学部教授会03-8-25で出た主な意見1〜8」はいずれももっともなもので,同感である.

 

(2)また,本学を第2の母校と感じている柳沢 悠氏(東京大学教授,元横浜市立大学助教授)の「意見書03-8-25も,今回の学長・事務局側改革案大枠(「大学改革案の大枠の整理について03-8-18」)の内容を非常に危惧する,心からの叫びであり,共感を覚える.

 

(3)そもそも,「学問の自由と大学の自治」およびこれを制度的に保障する「教育公務員特例法」をはずして,最終的に大学における批判精神を根絶やしにするための姑息な手段である「法人化」を前提にした中田 宏市長による指示を,小川学長のように唯々諾々と,大学人自らが受け入れてはならない.

 

(4)教授会に人事権がないばかりか,教授会そのものもなくなってしまいかねないような制度,あるいは,教員の身分,待遇や研究費を不安定化して,人事(昇進・解雇など)とお金(給与・研究費など)で言うことを聞かせようとするような諸制度(任期制・再雇用制・評価制・年俸や研究費の傾斜配分制など)は,自由で民主的な学園の理想の対極にある最悪の制度で,決して賛同できない.

 

(5)そもそも,@「あり方懇答申03-2-27は,“御用”学者で中田市長のブレインの一人でもある橋爪大三郎東京工業大学教授らが中田市長および事務局(“独裁”官僚池田輝政前総務部長,現泉区長)の意を汲んで作成したものであり,橋爪氏も「リベラルアーツカレッジというのは、お金のかかるところを削ぎ落としてゆくもの」(下記の「討議資料03-8-28参照)と「横浜市 大学改革推進会議03-8-21」の席上で本音を漏らしているように,経費節減を第1目的とした杜撰なものである.橋爪氏の発言は,まさに,“語るに落ちた”発言の典型と言うべきであろう.また,A「大学改革戦略会議のまとめ03-1-8」(注:「横浜市立大学改革の方向性について03-1-8」と同一の文書)」は,「プロジェクトR幹事会」の議論の方向を決定した“独裁官僚”池田氏の“暴言”集(ナマ発言集)である「“部外秘資料2”03-1-28」を市民向けにマイルドにした「“部外秘資料1”03-1-28」そのものであり,B「将来構想委中間報告02-12-24は教員の意向を少しは反映しているが,主として,積極“擦り寄り派”教員の手による,市長・事務局側に大幅に“擦り寄った”内容のものである.(「第3回あり方懇傍聴記02-12-9「“横浜モデル”:構造改革論者・中田市長の目指すもの03-3-12「中田 宏・横浜市長のブレイン研究03-4-22「“部外秘”資料が語る横浜市立大学“独裁”官僚と似非民主制03-1-28「ようやく公開された『部外秘資料』と市長メッセージ『改学宣言』の欺瞞性03-5-14「“欺瞞の塊り”プロジェクトR03-8-15参照)

 

(6)独立行政法人化を前提にして,「あり方懇答申03-2-27」(@)に合うようにその他の2つの文書(A,B)を手直しした,今回の学長・事務局側改革案大枠(「大学改革案の大枠の整理について03-8-18」)は,上記の荻原氏も指摘しているように「最初から結論の決まったやらせの答申をもっともらしく発表」したものにすぎず,要するに,ウソで凝り固めた徹頭徹尾の欺瞞であることが,すでに告発・暴露されており,まったく認めることはできない.(「“欺瞞の塊り”プロジェクトR03-8-15参照)

 

(7)たった15分のヒアリングで学内からの意見聴取を済ませたことにして,当初の筋書き通りの“学長・事務局側改革案”で強行突破しようという非民主的なやり方は受け入れられない.大体,反対・批判で一色の学内「意見」を,どのように“改革案に反映”させようというのか.このような“欺瞞の塊り”そのもののやり方は,いい加減に止めるべきである.

 

(8)「資料03-8-28」中の荻原氏による「横浜市大改革03-8-26は,母校が悲惨な姿に無理やりに変貌させられようとしている事態を憂慮・憤慨する,政策立案過程の裏の裏を知り尽くした官僚OBとしての怒りの告発であるが,その中で荻原氏は,「すでに小川学長のリーダーシップは、学内の支持を失い、大学の将来を危うくする存在となっている。学長に縁も怨みもないが、市大の改革に関しては学長としてふさわしくないとしかいいようがない。 どうでもいいときの学長ならともかく、この激動の時期のリーダーとしてふさわしくない人物である。 優柔不断、日和見、不誠実、問題先送り、自己保身、権力迎合を旨とする。これでは、学長の即時解任もやむを得ない。大学を代表する人格に欠け、支持を失った以上、即時辞任を求めることに賛同する。」と断じている.まったく,同感である.

 

(9)これ程まであからさまに,学長としての見識や資質・人格が不適格であると指弾された学長も珍しい.このような事態に至った以上,研究科委員会として学長に対する不信任決議を出すのも止むを得ないのではないのか.

 

なお,学長に対する不信任あるいは辞任要求の意見は私以外の複数の教員からも出されたが,「今の学長を辞任に追い込むと,“もっと悪い”のが後釜に座る恐れが強い」という主旨の発言で決議には至らなかったことを付記しておく.一般教員の間に,横浜市大首脳部には真に教員を代表する人物がいない,という深刻な不信感と諦念が蔓延している証拠であろう.

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

総合理学研究科八景研究科委員会 討議資料03-8-28

 

(1) 理学部教授会(03-8-25)で出た主な意見 (ただし,個人的な記憶に基づくもので正式な文書ではないことをお断りしておく.)

 

1. プラクティカル・リベラルアーツの概念がはっきりしていないで、それに添った案というのは分らない。理念が不明確である。

2. 3学部を1学部に統合したり、博士課程を縮小するような案で、競争力が保たれるとは思われない。

3. 財政上の問題でこのような案にするならば、その見通し、裏づけが必要であるのに何もない。

4. 学長と理事長の分離には反対である。

5. 入試をどうするのか、3学府1本でするなら、理学部はやっていけない。大枠だからと言っても、重要なことであり、それについて何もないのでは判断に困る。

6. 幹事会でこのような結論になった経過が、ほとんど分らないが、これを説明できるのは学長だけである。理学部に学長が説明に来て欲しい。

7. 大学での検討を来年まで、一年延ばすようにすることを主張したい。

8. 部局長会議において、教授会で「声明や決議をしないように」という要請があったということは明白な学部自治への侵害である。

 

とくに,

 上記1の,「プラクティカルなリベラルアーツ」とは,どのようなものなのか,という質問にたいして,学長は,「14人いれば14とおりの解釈があるので,私としては今,こうだとは言えない」という主旨の発言をした,ということが学部長から話されました.市の改革推進会議でも,報道発表でも,「プラクティカルなリベラルアーツ」という,あり方懇の方向で行く,と言っておきながら,その内容が上記のようなことであるとは全く開いた口がふさがりません.ようするに,自己矛盾する言葉を羅列したにすぎない「プラクティカルなリベラルアーツ」なるものは,誰も説明しようがないことを,学長自ら吐露せざるを得なかったものとしか言いようがありません.

 上記8の,各教授会や研究科委員会で「大枠」についての議論はしてよいが,「決議」や「声明」は出さないように,という主旨の発言が「学長」からあった,という学部長の発言でした.教授会組織を一体何と考えているのか.

 

(2) 教員組合(浮田書記長):「第2回大学改革推進本部会議03-8-21」傍聴記より

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/030825bocho.htm 

 

副市長の挨拶・・・報道によると、東京都においても都立の4つの大学を統合し、新しい大学は、地方独立行政法人となると共に、学部構成などを見直しており、横浜と東京で、良い学生を取り合うこととなるだろう。・・・

・・・

学長:改革の目玉は@プラクティカルなリベラルアーツ、実践的な教養大学として教育に重点を置く。A従来の3学部を1学部に統合して、国際総合科学部とする。その中に3つの学府をおく。学府間の壁を低くし、リベラルアーツを具現できる柔軟な体制にしていく。B教育組織と教員の所属組織を分けて、教育組織から、カリキュラムを実行するうえで最も適した人を研究院から派遣してもらうことを要請してカリキュラムを構成する。C教員の人事制度は、公募制を原則とする。任期制や年報制を導入しやすい形で導入する。D学長と理事長を分離し、それぞれ専門性を発揮し、より高度な機能をそれぞれが発揮して、両者の連携を密にする。・・・

・・・

総務局長:先回のありかた懇の答申では教員は、継続ではなく、再就職の形となっているが、プロジェクトRではどのように話されているのか。

学長:・・・教員は、解雇ではなく再就職の形をとる。基本的にはそういう厳しさを持って臨みたい。既に独立法人化している機関を参考にしつつ進めたい。今は事例を研究している。・・・

・・・

財政局長:財政局としては、基準としては、その辺について、どこまで検討されているのか?

学長検討と言っても、ありかた懇で、3年後には運営交付金を120億からその半分に、5年後には均衡にと、ある種の基準が示されているが、今シミュレーションをしていて、学生数を千人増やさなければならないとか、教員数を何割もカットしなければならないとか,大学の機能が低下してしまう可能性が高く・・・

・・・

事務局長:・・・仮に法人化した場合、学内だけの議論では進まない。評価委員会の設置なども必要だ。法人化にかかわらず、学部の再編及び新しいシステムの導入などは色々な分野で詳細な準備が必要である。大学でも異論のない様に準備したいので協力して欲しい。

橋爪:一番大事なことを一つ尋ねたい。大枠で必要な改革が提案されていた。研究院の設置、組織と教育の分離、教育に重点を当て学府を作って色々なプログラムを構成していく点は評価する。経営組織でも、学長と理事長を置いて連携していくことも良いと思う。学生や市民の方から見ると、どこが目玉なのかが分かりにくい。説明を聞かずに資料を見ると、学部を学府という看板に掛け替えてだけではないか、どこでリベラルアーツをやっているのか分からない。リベラルアーツを全面に出すような改革案が必要。国際教養学部が、パンキョウといわれた人気のない教養学部に見えてきてしまう。リベラルアーツ化をもっと鮮明に出すような工夫が必要だ。

学長:・・・今後は橋爪氏の意向に添った形のものを作りたい。

橋爪1年から4年まで全体がリベラルアーツ化したものを作ってはどうか。・・・

・・・

橋爪:従来の市大に比べて、どこが経費が節減されているか分かりにくい。無駄を削ぎ落としたと市民に説明できるのか?今までよりも経費は節減できるのか。リベラルアーツカレッジというのは、お金のかかるところを削ぎ落としてゆくもの。研究院の予算は精選するのか?

学長スクラップ、スクラップ、アンド、ビルドといって、2つスクラップしてひとつビルドするつもり。・・・

 

(3)柳澤 悠(横浜市市民、東京大学教授、元横浜市立大学助教授):「横浜市立大学の改革に関する意見書03-8-25」より

http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/20030827Yanagisawaiken.htm

 

・・・

「東京大学憲章」も「教員人事は基本組織の議を経てこれを行なう」と記して、教授会による教員人事決定を自明のこととしている。小生の知人も、教授会に人事権がない大学に就職したら、必死で別の大学の職を探して移動してしまった。市大がかかる大学にならないよう、心から望む。なお、アメリカの事情について、大学教育の質的低下を克服するための方策に関する、次の高等教育担当の高官の発言は示唆的である。

「9 質的低下の克服 学術的な事柄は教授団メンバーが決定しなければならないことを政府の行政官は理解する必要がある。教授団メンバーは、教授団の任用や昇進、入学許可や学業水準、学生の試験や評価、カリキュラムの開発やその内容、及び、学内での表現や思想の自由などに対する主要な統制権を保持しなくてはならない。」ケネス・H・アシュワース(高木英明・井口千鶴・秦由美子訳)『アメリカの高等教育―質的低下克服への道』教育開発研究所、平成9年、114-5頁)。

・・・

教員任期制の全面的な採用は、教員水準の決定的な劣化に帰結する。大学が真理追究の場として実現されるためには大学の自治と学問の自由が保障されなくてはならないが、教員の長期雇用の保証はそのための不可欠の条件である。

・・・

「大半がノンテニュアトラック教員(注:いつまでも任期制のままでいる教員)」という「あり方懇談会」答申が主張する方向とは、アメリカの実態はまるで違うことを示している。・・・永久任期制で残る人材は、テニュア(注:終身在職権)取得が困難なような種類の人材だけであろう。

・・・

その点で、日本のある四年制の私立大学の例は示唆的である。この大学は、リベラル・アーツの学部一つの大学で、教員はほとんど全員が任期制で、「優秀な教員は任期を更新して、最終的には定年年齢まで更新を繰り返すことができる」制度である。・・・

開学後9年を経過したが、教員の55%は採用後2年以内で、5年以上の雇用者は24%に過ぎない。開学時からの雇用者は16%に過ぎず、教員の大半が数年以内に移出していることが分かる。・・・

この大学の昨年度の入学定員充足率は、約40%であったことも記しておこう。(主として、ウェッブサイトの教員データから算出)

 「良貨は移出し、悪貨のみ残る」のは、制度設計からして当然のことで、任期制の導入のもつ深刻な危険性を、アカデミック・フリーダムの観点からだけでなく、教員労働市場の観点からも真剣な検討を加えられることを望む。

さらに、任期延長等の人事が主任教授や「人事委員会」等の裁量にゆだねられる程度が大きい場合、これらの危険性が倍増することにも、留意が必要であろう。・・・

・・・

 

(4) 荻原昭英氏(S37年卒業,神奈川県庁OB):「横浜市大改革03-8-26」より

http://isweb44.infoseek.co.jp/travel/yoogi53/essay300.htm 

・・・

(学長側から18日に出された改革案は,)問題の多い3学部統合、リベラルアーツ構想については、具体的なことはいわない、カードを隠して時間切れを狙っている。そんな感じです。
最後の瞬間になってカード(具体案)を出し、いやおうなく結論に持っていく戦略だと思われます。

・・・

「川を渡る途中で船頭を変えるものではない」という。普通はそうである。
よくよくのことでなければ、変えることは望ましいことではない。リーダーを失い、混乱する。相手に弱点を見透かされる。
 しかし、すでに小川学長のリーダーシップは、学内の支持を失い、大学の将来を危うくする存在となっている。学長に縁も怨みもないが、市大の改革に関しては学長としてふさわしくないとしかいいようがない。 どうでもいいときの学長ならともかく、この激動の時期のリーダーとしてふさわしくない人物である。
 優柔不断、日和見、不誠実、問題先送り、自己保身、権力迎合を旨とする。これでは、学長の即時解任もやむを得ない。大学を代表する人格に欠け、支持を失った以上、即時辞任を求めることに賛同する。

 

(注:当日配布した資料では,赤字強調された黄色蛍光マーク部は囲み文字となっている.)