週刊新潮12月4日号

[特集]教授追放!

『京大医学部』を揺るがす「白い巨塔」事件

 

http://www.shinchosha.co.jp/shukanshincho/20031204/mokujitxt.html 

 

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/031127shukanshincho-inoue.pdf (2004年4月19日追加)

 

・・・再生医科学研究所からは井上氏に対し、明確な拒否理由も示されないままに現在に至っているが、元最高裁判事で弁護士の園部逸夫氏はこう語る。「日本の教授会は気をつけないといけない。多数決で決めるものだから、誰かの画策があると判断が変わってしまうことがある。ある程度の実績があれば、再任されるという前提があるのに、気に入らない人がいれば再任しないということができてしまう。そうなると"任期が切れたら辞めさせる"というのは表向きで、実際は辞めさせたいので、再任しない。そういうことができてしまうのですね。学内には救済する措置がなかった、そのため、本来なら学内で解決すべき問題が裁判所に持ち込まれる事態になっています」・・・

 

・・・・・・・・・・

週刊新潮12月4日号

[特集]教授追放!『京大医学部』を揺るがす「白い巨塔」事件

 

【抜粋】

・・・

名門中の名門、京都大学医学部で「白い巨塔」を思わせるような事件が起きていた。今年4月まで再生医科学研究所の教授だった井上一知氏(58)が、昨年、外部評価委員会で教授に再任すべき、という評価を得たにもかかわらず、教授21人で構成される協議員会が再任を拒否。井上氏が京大総長を相手取った訴訟を起しているのだ。教授"遣放"という異例の出来事に京大内では、今や、「昭和の滝川事件、平成の井上事件」(京大関係者)と、称されている。

・・・

再任拒否された井上氏は任期制教授だったが、大学教官の任期制はここ数年、急速に広がりつつある。「教員の雇用を区切って採用する制度です。終身雇用の弊害を避け、大学間の教員の異動を盛んにし、研究を活性化させるのが狙い」(文部科学省担当記者)

京大再生医科学研究所が任期制を初めて採用したのは、平成10年。新設した器官形成応用分野の教授が5年任期となった。その任期制教授第一号として着任したのが、井上氏なのだ。

・・・

教授就任後は対外活動にも積極的に参加。日本再生医療学会創設に加わり、自ら初代会長に、さらには非営利組織・再生医療推進センターを設立して理事長に就任している。テレビ出演をこなし、新聞にも頻繁に登場してきた。マスコミの注目を浴びたという意味では、財前五郎と同じである。

任期制教授は、任期切れの1年前に再任申請をするが、井上氏は何の不安も感じていなかった。「普通にやっていれば、再任されるものだと思っていました」

・・・

だが、昨年12月の協議員会で出た結論は再任拒否だった。

実をいえば、そこに至るまで、水面下ではいくつかの動きがあった。井上氏に"クビ"を言い渡すのではなく、自発的な辞任という形にしようという所長の動きである。

・・・

「所長さんからちょっと話がしたい、という電話があって都内のホテルのレストランで会いました」

というのは、先の出月東大名誉教授だ。「"井上さんは教授に再任されない。そうなると気の毒だから自ら辞任するように説得してくれないか"という趣旨の話でした。しかし、外部評価委員会は再任可、という結論を出したので、違うことは言えない。断りました。井上さんを再任しない一番の理由は、京都府立医大で膵島移植手術の計画に協力しようとしたからです。それがどうも気に入らなかったようです。府立医大の倫理委員会は手術を承認しましたが、京大の倫理委員会がノーということで実現しませんでしたが、そのことを問題にしていましたね」

他大学と組んだ手術がお気に召さなかったらしい。井上氏によれば、「京都府立医科大学から正式に依頼があり、学内のルールに従って、倫理委員会に届けたのであって、何ら問題はありません」

だが、所長は問題ありとする。井上氏の元同僚教授は言う。「今思えば、所長は以前から彼のことを快く思っていなかったのかもしれない。彼が教授会で発言すると所長に遮られることもありましたからね。メディアで目立ちすぎること、日本再生医療学会を勝手に立ち上げたことなども気に入らなかったのかもしれません」

・・・

再生医科学研究所からは井上氏に対し、明確な拒否理由も示されないままに現在に至っているが、元最高裁判事で弁護士の園部逸夫氏はこう語る。「日本の教授会は気をつけないといけない。多数決で決めるものだから、誰かの画策があると判断が変わってしまうことがある。ある程度の実績があれば、再任されるという前提があるのに、気に入らない人がいれば再任しないということができてしまう。そうなると"任期が切れたら辞めさせる"というのは表向きで、実際は辞めさせたいので、再任しない。そういうことができてしまうのですね。学内には救済する措置がなかった、そのため、本来なら学内で解決すべき問題が裁判所に持ち込まれる事態になっています」

・・・