『学長との往復書簡』―伊豆利彦氏のメールよりー

 

[1] 学長の返事03-12-27

[2] 学長への第1信03-12-25

[3] 学長への第2信04-1-8

 

【まえがき】

伊豆利彦氏(横浜市大名誉教授)と小川恵一学長との間の往復書簡(『学長への第103-12-25』,『学長の返事03-12-27』および『学長への第2信04-1-8』)を公表する.以下は,横浜市大問題に詳しくない方のために,往復書簡に至る背景を理解する一助として横浜市大問題の経緯を簡単に説明すると同時に,現在の取り返しのつかない事態を招来した小川学長(および中田宏横浜市長と横浜市官僚)に対して“怒りの内部告発”を行ったものである.

 

小川学長が“大学側の改革案”として取りまとめた『新たな大学像03-10-29』を受けて,横浜市はこれを全面的に受け入れることを表明した(03-12-1).このことから,表面的には,“横浜市大改革”が,大学自らが提案し横浜市もこれを尊重するという,大学と市の協同による“民主的な”改革のように見えるが,その実態は,中田市長とその意を汲んだ横浜市官僚に主導された凄まじい大学破壊にほかならない.【『自作自演の茶番劇』:03/12/01横浜市が“大学側”改革案の全面的受け入れを表明03-12-04 http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/031204chaban.htm 参照】

 

世間では中田市長 の“市民派”・“改革派”としての“清新なイメージ”が定着しているように見えるが,手遅れにならないうちに一般市民も,“市大改革”の真相(および“民営化”の実態)を知ることで,中田市長の“素顔”とその“改革路線の危険性”を認識する必要があるように思われる.【サンデー毎日1月18日号:“改革派”中田宏横浜市長の『民主度』―市立病院民営化に大ブーイング― http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040106sunday-mainichi2004.1.18.htm ;保育園民営化・学校給食民営化・港湾病院民営化問題リンク集 http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/030623mineika.htm 参照】

 

その後,昨年の12月はじめに,小川学長は“今後は,教員が主体的に中身を検討していく”という意向を明らかにしたが,市当局は乱暴にも,学長に何の相談もなく一方的にその意向を無視し,学部のコースや大学院の専攻などの教学に関する事項についても,横浜市の「大学改革推進本部」(本部長:前田正子副市長)の中に新設する「コース案等検討プロジェクト部会」において市当局自身が検討し,その後,「大学改革推進本部」等が“意思決定”することを伝え,さらに,この方針に協力する意志があるかどうかを全教員に問うた(03-12-17).【『03/12/04 「学長との“対話”集会」の記録03-12-22』“前書き”  http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/031204taiwa.htm 参照】

 

このような「学問の自由と大学の自治」への行政によるあからさまな介入は,言うまでもなく,憲法23条(学問の自由)および教育基本法10条(教育行政)の精神を踏みにじる暴挙であり,また,教員に“踏み絵”を踏ませるやり方は,石原慎太郎東京都知事が“都立新大学構想”に際して用いた強権的手法と酷似する.【横浜市立大学でも役所が踏み絵を用意03-12-25 http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/031225tsujishita-fumie.htm ;都立の大学を考える都民の会ホームページ http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Lounge/3113/index.html 参照】

 

『学長への第103-12-25』の中で伊豆利彦氏は,市当局によるこれら一連の“言語道断の無頼漢的手法”を糾弾し,横浜市大の破壊を阻止するために残された有効な道として,小川学長自身が抗議・辞任することが唯一・最善のものであることを訴え,また,辞任の決断を“逡巡して,彼らの横暴を追認することになれば”,小川学長は“大学史上決定的な汚名を負うことになると思います”と忠告している.なお,同様の忠告を,一楽重雄氏(理学部)も行っている.【小川恵一学長への手紙03-12-22 http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/031223came-11.pdf 参照】

 

にもかかわらず,事の重大さを認識できない小川学長は,伊豆氏(や一楽氏)のせっかくの忠告を無視し,しかも,横浜市当局によるあからさまな侮辱を無抵抗に受け入れて一向に気にする様子も見られない.すなわち,市当局の指示通りに,3名の教員を「コース案等検討プロジェクト部会員」に指名し,それを受けて市当局は「プロジェクト部会名簿」を去る19日に公表した.結局,小川学長は,“大学や研究・教育に無知な”横浜市当局が既定の方針通りに“暴走をつづけることを追認”したわけである.なお,「プロジェクト部会」は計12名の部会員で構成されることになったが,残り9名のうち,7名の教員は市当局(市大事務局長,および,市の「大学改革推進本部」(これは,実質的に市大事務局))が指名・選考し,2名は事務官僚(昨年12月に新設されたポストに本庁から送り込まれた大学改革推進担当部長と前総務部長・現泉区長(“独裁官僚”)の腹心の部下として“市大改革”のツボをよく心得ている総務部次長・企画課長)である.以上の部会員の構成および「プロジェクト部会設置要領(要旨)03-12-17」にある「市立大学改革案に対する設置者の基本的な考え方03-12-1」 http://www.yokohama-cu.ac.jp/daigakukaikaku/daigaku/daigaku_kaikaku/kangaekata.html に基づき“設置者”としての案を作成するという方針からは,またしても,内部事情に詳しくない一般市民にとって表面的には民主的に見えるが,その実態は徹底した官僚主導の“中田市長流”・“似非民主的”手法によるコース案等の作成に終わるのは目に見えている.

【横浜市 大学改革推進本部 コース案等検討プロジェクトの設置について(12/17) http://www.yokohama-cu.ac.jp/daigakukaikaku/daigaku/daigaku_kaikaku/course.html  ;コース案等検討プロジェクト部会のメンバーが決定しました!(1/9)  http://www.yokohama-cu.ac.jp/daigakukaikaku/daigaku/daigaku_kaikaku/dk_course.html   参照】

 

その上,これに先立って小川学長は,その“超鈍感ぶり”を遺憾なく発揮し,伊豆氏(や一楽氏)の説得に対する甚だしく“ピンボケ”した返事(『学長の返事03-12-27』)の中で自己(および中田市長)の正当化を図っている.いわく,“この新しい形の問題の解決には中田市長も主張されているように大胆な大学改革を進め、その過程で大学改革の横浜モデルを打ち立てるしかありません。そのためには市民、市当局、そして何より大学の構成員である教職員と学生からなる「大学」という複雑系の最適化を図るしかないと考えています。”

 

おそらく,伊豆氏が『学長への第2信04-1-8』の中で述べている“学問とは何か”・“大学とは何か”についての懇切丁寧な“解説”も,小川学長には馬耳東風で何のことやら分からないのではないだろうか.これでは,小川学長は,“大学史上決定的な汚名を負う”(伊豆氏),あるいは,“名前が後世に恥辱にまみれる”(一楽氏)ことになっても,自業自得と言うべきであろう.

 

なお,昨年の4月に,「市民の会ホームページ」http://www8.big.or.jp/~y-shimin/ に投稿した私見,『小川恵一学長の見識のなさが混乱・紛糾の原因の第一03-4-16http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/page107.html もあわせてご参照ください.

 

 

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【伊豆利彦氏(横浜市立大学名誉教授)のメールより】

 

年末に私の手紙(注:伊豆氏からの『学長への第1信03-12-25』)に対する学長の返事(注:『学長の返事03-12-27』)が来ましたので、皆さんにご紹介します。

 

 

[1] 学長の返事03-12-27

 

伊豆利彦先生

 

お便りいただきました。ありがとうございます。

 

大分前のことになりますが、漱石に関する先生の新聞記事を文化欄で読んだことが印

象に残っています。

 

さて大学改革の件ですが、市の横暴が私を振り回し「新たな大学像」を纏めさせたの

だ。大学の自治、学問の自由を踏みにじった。学長はその責任を取って辞任すべき

だ、というご主張のように思います。

 

小学校3年生の時に終戦を迎えた私は学問の自由、その背景にある大学の自治の大切

さを肌で知りました。そしてその信念は今も変わりありません。[1]

 

私が苦しむのは、日本のどこの大学も例外なく世界の基準から見て魅力に欠けている

ことです。最近、上海の教育委員会の方からお話を伺いましたが、中国の大学生に

とって日本の大学の魅力はオーストラリアとニュージランドと合わせた程度だそうで

す。これは日本の大学の魅力の程度の低さを示すほんの一例です。それほどまでに日

本の大学は現代社会からかけ離れた存在になりつつあるのです。

 

大学で行われている研究が戦後と比べ想像以上に powerful になり、それだけ社会と

の接点が密になり、その成果が社会から期待されるようになりました。医療然り、生

命科学然り、IT 然り、マネージメント然り、哲学(環境問題、生命倫理などなど)

然り、国際的に活躍できる人材育成然り、枚挙に暇がありません。

 

社会との接点の問題はそれだけではありません。特に理系、医系は装置の規模がます

ます大きくなり、それだけ市民の財政的負担を強いています。したがって財政面から

見ても社会との接点は戦後とは比べものにならないくらいに大きくなっているので

す。市民の負担をこれ以上増やさないためにも外部資金の獲得など今までとは異なる

手法で大学の持続的経営を考えなければならなくなりました。

 

文系の先生方の中にはそれでは理系、医系を切り離せばいいではないかと主張される

方もいらっしゃいますがそうはいきません。理系の研究が衰退すればやがて日本の経

済力も衰退し、日常の生活も事欠くことになります。また不十分な医療しか受けられ

なくなれば、市民は健康に不安を感じるようになり、有能な人材を若くして失いかね

ません。そうなれば文系といえども学問の水準を維持することは困難になります。

 

私が格闘しているのは、一方で学問の自由、大学の自治を維持し、他方で大学と社会

との接点(研究の水準を維持するための財政的負担を市民に強いる事と学問的成果の

市民への還元という両面)を好ましい関係に保つ事を両立させることです。これは日

本の大学がこれほどまでに明瞭な形で当面してこなかった種類の問題です。見方を変

えれば、これは一級国になった日本の贅沢な悩みかも知れません。

 

この新しい形の問題の解決には中田市長も主張されているように大胆な大学改革を進

め、その過程で大学改革の横浜モデルを打ち立てるしかありません。そのためには市

民、市当局、そして何より大学の構成員である教職員と学生からなる「大学」という

複雑系の最適化を図るしかないと考えています。

 

以上私見を述べさせていただきました。お目通しいただければ幸いです。

どうぞ良いお年をお迎えください。

 

小川恵一

 

 

[2] 学長への第1信03-12-25

 

  ----- Original Message -----

  From: IzuToshihiko

  To: 小川学長

  Sent: Thursday, December 25, 2003 1:29 PM

  Subject: はじめてお便りを差し上げます 伊豆利彦 

 

 

  小川恵一様

 

  はじめてお便りを差し上げます。

  市大名誉教授の伊豆利彦です。日本近代文学を研究しています。

 

  ご多忙の一年も暮れて行こうとしています。

  年末年始の休暇で少しはやすらいだ日をお送りでしょうか。

  こんなことになろうとは、多分、想像もしておられなかったことと存じます。学者

としてのご業績については聞き及んでおりますが、学長の仕事は、それとはちがって

大変なご苦労だったことと同情します。

  特に、この一年は市の事務方のごり押しの<改革>で、心休まるひまもなかったの

だと存じます。

  <あり方懇>でいきなり、市の意向に沿った改革をするか、廃校か、その外に道は

ないと脅迫されて、ひたすら、廃校を避けるために、市事務局のごり押しの改革計画

に押しまくられたというのが実態だったのではいかと想像しています。

 

  いろいろ資料を見ていると、事務局の横暴は言語に絶するものがあります。このな

かでご苦労されたと思います。市議会でもこれまでは外との折衝で苦労したが、これ

からは内を固めて、全学一丸になって改革に邁進するといわれております。

  しかし、今度の市当局の理事長予定者任命と同時に市推進本部がプロジェクト部会

を設置し、教員に参加を求めている事態は、そのようなあまたの努力を不可能にする

ものではないでしょうか。

  しかも、それはあなたが関知しないところで決められたので、あなたはそれをご存

じなかったとも聞いております。

  このようなごり押しは教員の改革の情熱をまったく信ぜず、彼らの思うままの大学

を、彼らの主導で、学長や評議会、教授会を無視してつくろうとするものではないか

と思います。

 

  元来、私は市の改革路線にまったく反対で、教員の主体的努力でそれを実現するの

でなければ、外形はいくら大学でもそれは大学ではないと思っています。

  大学の自由、教員個々の自発的な研究意欲が尊重されなければ、いくら予算が出て

も、まともな創造的な研究は出来ないと思っています。

 

  横浜市大は長い歴史があり、市民の支持もある大学です。また、その廃校などとい

うことは、一市長の恣意的な判断で実現できることではありません。それを強行すれ

ば、彼の政治声明の終りになります。廃校云々という脅迫的な言辞を弄して、大学の

存続を願うあなたを市の言いなりにするとは言語道断であります。これはまさに無頼

漢的手法であり、決して許すことができません。

 

  それにしても、このまま推移するなら、大学や研究・教育について無知なかれらが

どのような暴走をつづけるかわかりません。

  これまでのことは、私があなたの辞任を求める発言をしてきたのは、ただ、あなた

の責任を問うということだけではなく、そうすることで、市民に訴え、市長に抗議し

て、彼らの横暴をはばみたいという思いからです。

  いまとなっては、それ以外に有効な方法はないと思います。

  私はいまの辞退が決してあなたの本意でなく、おそらく、たいへん苦慮していらっ

しゃるのだと思います。

  たいへんな決断ですが、それをすれば、大学の自治をまもる上で、大きな仕事をさ

れたことになり、また、それを逡巡して、彼らの横暴を追認することになれば、大学

史上決定的な汚名を負うことになると思います。

 

  私たちは、いまの大学の暴走は決して文科省もふくめて、社会一般の支持を得るこ

とができず、必ず挫折すると思っています。それほどひどいものです。

  現に市大問題は都大問題とともに、全国的な問題になっています。

  個人として、私はあなたに同情しています。

  ぜひ、一刻もはやい決断を期待します。

 

  年末年始の忙しいときに失礼なお便りを差し上げました。お許しください。

 

                             伊豆利彦

 

  なお、記者会見での私の説明その他、私の見解は私のホームページの大学問題を見

ていただきたいと思います。

 

  伊豆利彦のホームページ http://homepage2.nifty.com/tizu/ 

  大学問題 http://homepage2.nifty.com/tizu/daigaku/itiran.htm 

 

 

[3] 学長への第2信04-1-8

 

次のような第2信を送信しました。返事はまだです。
参考までに

小川恵一様 第2信

新年おめでとうございます。
いくらか、おやすみになれましたか。

新年早々恐縮ですが、昨年のご返信に若干誤解されている点があると思いますので、
すこしだけ私の真意を説明させていただきます。

>さて大学改革の件ですが、市の横暴が私を振り回し「新たな大学像」を纏めさせた
のだ。大学の自治、学問の自由を踏みにじった。学長はその責任を取って辞任すべき
だ、というご主張のように思います。<

私は<責任を取って辞任すべきだ>といっているのではありません。
いまの市のやりかたはあまりにひどい。
歴史に残る暴挙である。
それは、多分、あなたの意図を超えたもので、あなたの信頼をふみにじり、あなたを
侮辱するものではないか、これに対して抗議して辞任することが、このような市の乱
暴なやりかたを阻止する道ではないかという意味で申し上げたのでした。

>私が格闘しているのは、一方で学問の自由、大学の自治を維持し、他方で大学と社
会との接点(研究の水準を維持するための財政的負担を市民に強いる事と学問的成果
の市民への還元という両面)を好ましい関係に保つ事を両立させることです。これは
日本の大学がこれほどまでに明瞭な形で当面してこなかった種類の問題です。見方を
変えれば、これは一級国になった日本の贅沢な悩みかも知れません。<

私はあなたのお気持ちを理解しないわけではありません。
しかし、市の態度は常識を越えたもので、これを放置していては、理科系の学問に
とっても、大変な障害になると思うのです。

文科系の学問より、理科系の学問はいっそう普遍性を求めるので、市の言いなりに
なっていては、その発展は求められない事になるのではないかと思うのです。

市が理科系の大学を持ちのは、市の人類に対する貢献であり、それは、横浜市ほどの
大きな富を世界から集めている都市にとっての義務であると思うのです。
その点を理解しない市の事務局の近視眼的態度は、はっきり、これを是正して置かな
ければならないのではないでしょうか。

市立大学は大学であって、市は非大学を大学と詐称することは許されない。
そして、市立大学が市民も立派な国際的に価値のある大学を望んでいるのではないで
しょうか。
市の役人は昔から教養に乏しく、視野が狭く、近視眼的で、市民としては第三流程度
の人物が多い。[2]
市の役人が市民を代表するのではない。
彼らが市大をつぶそうとしても、市民は許さない。
もし、それを強行すれば、市大は市民からもあきれられ、市民との距離がいっそうひ
どくなるでしょう。

市民と大学の関係を研究し、市民的な大学について考えるのは、それは市立大学の課
題だと思いますが、それは行政の要求に従うことではないと思います。
かつて、30年くらい前は、市大と市民の関係はもっと密接だったと思います。
それが、細郷市長になり、高秀市長になりして、市大と市民の関係は政策的に遠ざけ
られてきたと思います。
もし、市民と大学の関係をもっと密接にし、市民の大学として発展させようとすれ
ば、市の行政の言いなりになるのではなくて、そのような課題を大学の課題として、
大学自体に提起すれば、おそらく、いまのプランのような無内容で空疎なものでない
計画がつくられると思います。
そこに、市大の最良のエネルギーが結集して、そこから新しい息吹がわき起こると、
私は確信しています。
いまのやりかたでは、学内の積極的なエネルギーを押しつぶし、教員や学生を受動
的、無気力にして、ひたすら衰滅の方向に進ませることになると思います。

大学を構成するのは、教員と学生です。
彼らの積極的エネルギーを呼び起こすのでなければ、大学の復興は不可能です。
いま、そのエネルギーは、いまの大学潰し計画に反対しているエネルギーではないで
しょうか。
私はもともと、大学には懐疑的になっていたのですが、大学潰しに反対する方々と接
触しているうちに、いまの若い研究者にこのような、報われることのない努力をつづ
けている方々があることに驚きました。
雨降って地固まると言います。
ここで、反転して大学内部のエネルギーに信頼して、新しい市民の大学をつくり上げ
る努力をするならば、市大の前途は明るいと思います。

すでに、時間は限界を超えているとさえ思われるのですが、しかし、ここまで来て、
反転すればそれは巨大な力を発揮するとおもうのです。

私が先生に失礼にも辞職をおすすめするのは、それが、このような反転の合図になる
と信じるからです。

どうも、新年早々、お気持ちに逆らう失礼千万なお手紙を差し上げましたが、なにぶ
んにも、事態が切迫しているのでお許しください。

                                            伊豆利彦
http://homepage2.nifty.com/tizu/

追伸 私のホームページの掲示板2に、地方にいる卒業生の投稿が掲載されていま
す。参考にしていただければ幸いです。



[] 以下に,『03/12/04「学長との“対話”集会」の記録03-12-22』  http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/031204taiwa.htm から,“一般教員と学長との間の質疑応答”の一部を,少し長くなるが引用する.小川学長の応答ぶりから, 学長が「学問の自由と大学の自治」の本質を全く理解していないことが分かる.

 

 

○○(一般教員)

 

一人一問程度、しかも簡潔にやれと、最初に言われましたので、最も基本的なことをお聞きしたい。教員組合の報告によりますと、1111日の市議会での質疑応答の際に、関美恵子議員という方がいらっしゃいますけども、次のようなことを学長に要請しました。つまり、「憲法23条大学の自治の基本精神をもって進めてほしい。その立場でやっていただきたい。」と要請したのに対して、学長は、「人事委員会や他のことにも十分配慮している。私はその精神に乗ってやっていくつもりである。具体的に、大学改革をすすめるときもその精神を守っていきたい。」と答弁しましたが、「大学自治の精神を守っていきたい」という、そういう学長の答弁にもかかわらず、多くの良識的な大学人の間では、全国のことですけれども、改革案の真のねらいが「大学の自治」の破壊、すなわち、“官僚統制大学化”であって、これが先例となって全国の国公立大学に広がるのではないかと非常に危惧されておりまして、いまや全国の注目の的となっている、ということは学長もよくご存知だと思います。私には、さきほど学長が説明されたような事務局主導による改革案作成の過程、それ自体が、すでに大学自治の精神に反していると思うんですが、市議会での答弁では、「大学自治の精神を守っていきたい」などと矛盾したことを言っているわけです。どうも、学長は、自分が矛盾しているということにまったく気がついていないふうに、私は思います。そこで、学長は「学問の自由と大学の自治」の精神が、なぜ大事なのか、どのような経緯で、憲法23条や教育基本法などの法律でこういった規程が設けられるようになったのかを、いったい、ご存知なのかどうか、非常に基本的なことで恐縮なんですが、お答え願いたい。

 

 

小川学長

 

あのー、私は、学問の自由と大学の自治は大切だということは理解していますし、私自身、身にしみてですね、私なりに、私は小学校3年生のときに終戦でしたから、そのなんて言うんですか、時の為政者がですね、支配した場合、どういう悲劇が起こるかということを、身をもって体験した人間ですから、学問の自由だとか大学の自治が大切だということは百も承知です。で、それだけではなくてですね、こういう自由がなければ、大学での研究なんていうのは、あの、クリエーティブな研究なんていうのは進まない。つまり、クリエーションていうのは、新しいものをつくっていくわけですから、そこにですね何らかの束縛があったら、クリエーションなんていうのはあり得ないわけですから。したがって、私は、学問の自由と大学の自治は、絶対重要ですし、もしそれを侵すようなことがあれば、私は身を挺してですね、それを阻止したい。いま、○○さん、笑ってますが、私、○○さん以上にそういうこと思ってますから、あのー,真剣です、私は。

 

 

○○(一般教員)

 

具体的なことで、お答えにならないですね。

 

 

小川学長

 

今は一般論ですから、一般論で答えたんですね。それでね、もう一つ、逆に○○さんにお聞きしたいことがあるんですが、その、学問の自由とか大学の自治とかっていうのが、一方で非常に大切ですよね。で、もう一方でですね、学問、つまり中世のですね修道院が、大体ケルビン(?よく聴き取れない)の思想がそうなんですが、修道院から出てきているんですけれども、そういう、非常にですね学問が、何て言うんですかまだ、こう非常に揺籃期でですね、メンデルの大豆じゃなくて、エンドウをまいて、実験をやって花の種を数えてたという、そういう時代の学問とですね、今の学問では、科学の大きさというのが全然違うんですね。特に理系の場合、お金がまるで違うんですから。医系もそうです。そうするとですね、社会との接点というのを忘れることができないわけですね。学問というのが一方であって、もう一方では、社会との接点。また学問がですね、産学連携なんて言うのは、社会が雇用を創出するなんていうのも関係して、経済も関係して、というふうになってくる。そうするとですね、社会と学問との関係が非常に密接になってくる。そうすると、学問はですね全く自由に何でもやっていいかという、そういう問題になってくる。私は、それはいま多分、答えはないんだと思うんですね。それは、これからみんなで答える。ただ、ひとつはっきりしているのは、だからといって為政者がですね、学問の自由を侵していいか。それは絶対にありえない。そんなことしたら、学問はもう死んでしまう。だから、そこをなんとかその、緩衝地帯を作りながら。だけど、社会との接点、経済とも政治とも関係してきますけれども、そういう接点をですね、きちんとにらみながら、そして、大学の自治とですね、学問の自由を確立していくという、そういう難問に取り組まなければならない。で、この大学はですね、「あり方懇」でも厳しく問われたのは、やはりその、財政的な問題がひとつあるんですね。で、そういうことになってくると、これは学問の自由というのだけでは解決できない問題なんです。だから、そういう2つの点をどういうふうに調和していくか。これは是非ですね、みなさんも考えていただいて、あの、お知恵をですね、拝借したいというふうに思う。それはやっぱり、これから考えていく。だれも答えを持っていないというふうに、私、思いますけれども。これから、だから、この大学は、そういうふうにいいモデルを作って行くという、そのくらいの気概でやっていかないと、いい答えが出てこない。

 

 

○○(一般教員)

 

学長の得意技に、「その場限りの言い訳をとっさに思いついて言い逃れる」、あるいは、「あいまいな議論に誘導して煙に巻く」という得意技がありますが、いままさに、それが出たと思います。学問の自由は大事であると言うが、具体的にはどうするのか。10月17日の「学長声明」http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/031017gakuchoseimei.pdf で「この改革案を実らせる」と言い、市長も12月1日の記者発表 http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/031202houdou.pdf  で「改革案を確実に実行する」と言明しておりますけれども、この改革案を実らせて確実に実行した場合、大学から「学問の自由と大学の自治」の精神が根こそぎにされてしまうと、普通は考えます。一方で改革案を確実に実行し,一方で学問の自由と大学の自治を守る、学長は「○○さんよりも守る」と先ほどおっしゃいましたが、そのようなことが、どうしたらできるのか具体的に言って頂きたい。

 

 

小川学長

 

あの、具体的に答えろと言ってもですね、具体的にというのは、一つずつ実行していくということだと思うんですね。だからここで、なにか私に、「一般論の具体論」を答えろと言われても、私は答えを持っていない。先ほど、煙に巻くというのが、私の得意技であるというのは、まさしく逆に、私から言わせれば、○○さんの得意技であって、私はそんなことを言われるおぼえはない。私は、わたしの論理思考を正直にみなさんにお伝えしているだけで、○○さんがもしそれを、なんか煙に巻く得意技だと言うなら、それはもうしようがない。

 

・・・

 

○○(一般教員)

 

市長から人事と任期制と独法化の3つはしっかりやれと言われた。それから、「あり方懇答申」を踏まえてやれといわれた。これはやらないといけないわけですね。先ほど、小川先生は、自分は戦争中の経験もあると。だから学問の自由が大事であるということも分かっていると。これを体を張ってでも守ると。それでは、具体的にどうしたら守れるのかというと、何も出てこない。学問の自由を守るにはというあいまいな問いかけだから、あいまいに答えるしかないなどと言う。だけど、学問の自由と大学の自治の根幹は、人事や任期制。それと、独法化。これは教育公務員特例法はずしをねらっているんですが。ということで、具体的にどうやって守るかといえば、人事制度をどうするか、任期制などという教員の身分を不安定にする制度を導入するのがよいのか等、あるわけですよ。それに対してはまったく答えないで、あいまいなことを言ったり、これから考えるだのと言ったりするのはおかしいんじゃないですか。つまり、小川先生は、まったく分かってないってことじゃないんですか。

 

 

小川学長

 

学長の諮問機関として人事委員会があって、人事委員会は、内部の教員と外部の人から構成するということになっています。市会でも、人事委員会の主たる構成メンバーは教員であるということを、きちんと私、市会の方でも答弁してますけれども(注:これは,ウソ.下記の注を参照)。あの、なるべくそういう意味では、教員の主体性がきちんと現れるように、そういう人事委員会にする。為政者に振り回されるようなことはしないということで。だから、具体的な制度設計についてはですね、これからそういう方向で考えていくということですから、べつに、具体的に考えていないということではない。

 

注:教員組合の報告によれば,実際には,学長がそのように答弁したところ,高井事務局長から異議が出て,『報告書に書かれているものが全てである』と答弁を訂正した.

 

【教員組合:横浜市会大学教育委員会報告ほか03-11-18 http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/031118shikai-houkoku.htm 参照】

 

 

[] 本ホームページで取り上げた主な市大事務局官僚は,以下の4人である.

(1)   池田輝政氏(前総務部長・現泉区長):

『部外秘資料』が語る,横浜市立大学の"独裁官僚"と似非民主制03-1-28 http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/page036.html ;

3回「市大あり方懇」傍聴記−池田理事・橋爪座長の議事引回しを許さず、民主的・公正な運営と討論を求める−02-12-9 http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/taira021209.htm 

(2)   高井祿郎氏(事務局長):

「大学改革日誌」03/12/11付:『事務局長の恫喝』 http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/031211doukatsu.htm 

(3)   池田輝政氏(前総務部長・現泉区長)・高井祿郎氏(事務局長)・伊藤公一氏(総務部次長・企画課長):

ようやく公開された『部外秘資料』と市長メッセージ『改学宣言』の欺瞞性03-5-14 

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/giman030514.htm ;

"欺瞞の象徴"「横浜市大公式ホームページ」と事務局によるネットワークシステムの"無法乗っ取り"を糾弾する03-7-3 http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/page142.html ;

“欺瞞の塊り”「プロジェクトR」03-8-15 http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/030815katamari.htm 

(4)   高井祿郎氏(事務局長)・中上 直氏(総務部長):

事務局宛質問状「大学の自治」を侵害する「博士研究員」制度の問題性03-4-7 

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/page090.html