横浜市立大学教員組合 基本要求事項

 

 

横浜市立大学教員組合は、横浜市立大学の独立行政法人化には反対の立場を表明してきたし今後もこの立場を保持するが、よしんば横浜市立大学が独立行政法人に移行する場合、最低限以下の事項が満たされることを横浜市立大学学長及び横浜市立大学事務局に要求する。

 

 

【原則的要求事項】

 

1. 法人職員としての承継

 

独立行政法人への移行に際し、全教員が法人職員として承継されることを明確にすること。

 

法人移行時に現教員が同一の雇用・労働条件で法人に移行(承継)することは法的に明らかです。移行時に本人同意なしで任期付き雇用に変更することはできません。事務当局は「全教員任期制」が不可能なことを素直に認めるべきです。

 

2. 現行労働条件の確保

 

独立行政法人への移行に際し、現行の雇用、労働条件を下回るような不利益変更をしないこと。また、研究・教育条件の劣化・悪化も行わないこと。

 

法人化に伴う「大学改革」の名のもとに、地域貢献のただ働き、負担コマの増加など労働強化を許すべきではありません。また、研究・教育予算削減の「つけ」を教員に押し付けることとその結果の労働強化にも反対しましょう。負担増にはそれ相応の手当てを要求しましょう。

 

 

 

【個別的要求事項】

 

3. 教授会の重要事項審議

 

教員の人事など(採用、昇進、昇格、降格、休職、解雇、懲戒)については、教授会の審議結果に基づくこと。また、教員の不利益処分の場合は、異議申し立ての機会を設けること。

 

真理・真実の探求に従事する大学教員の人事などの決定は公権力や外部の介入から独立でなければなりません。そのためには、教授会の議に基づく決定、異議申し立て手続は不可欠です。

 

 

 

 

4. 配転、出向、転籍

 

教員の配転、出向、転籍は、本人の同意を必要とすること

 

法人化後は民間企業の場合と同じ法のもとにおかれます。公務員としての今までの保護はなくなります。使用者側の強引な労働配置(配転、出向、転籍)に対抗する手段のひとつとして本人同意が必要です。

 

5. 労働時間

 

教員の労働時間に関しては、労働基準法38条の3に基づき、原則として裁量労働制とすること。

 

法人化後は民間企業と同様、勤務時間について就業規則の中で定めなければなりません。裁量労働制とは、使用者によって時間管理ができない、働かせ方において労働者の裁量に任せざるをえない種類の労働に適用され、大学教員の実態と必要に最もあった制度です。(国立大学協会の要請に応えて、厚生労働省が大学教員にもこの制度が適用できるよう省令を改正しています。)この制度では、実際にどれだけの労働したかにかかわらず、労使協定で定めた時間を労働したものとみなすものです。

 

6. 給与

 

教員の給与は他大学(他の独立行政法人大学を含む)における同等な教員の給与と比して低くないこと。

 

法人化後の経営効率化圧力は教員給与にも及ぶでしょう。われわれ教員が意欲をもって研究・教育に携われるためにも、他大学と同等の給与水準は最低限必要です。諸手当の削減、昇給や昇格の改悪的運用は問題外です。

 

7. 教員評価

 

教員の評価については、客観的でかつ公正な評価が透明性と公開性をもつ手続によって担保される制度によること。

 

大学改革の諸案には教員評価を処遇に結びつける方向が記されていますが、具体的評価方法や手続については不明のままです。不十分な情報と判断能力に基づく評価や教育・研究以外の視点による恣意的評価を避けるためには、客観性、公正性、透明性、公開性を持つ評価制度が必要です。

 

8. 苦情処理

 

組合員からの苦情申し立てについては、労使の適切な代表による苦情処理委員会を設け、誠意をもって協議し対応すること。

 

法人化後は民間企業と同様に、使用者(設置者)側の労働者に対する不利益処分(例えば、懲戒処分など)の裁量権が拡大します。苦情処理委員会を設け、使用者側の恣意的不利益処分に歯止めをかける必要があります。

9. 定年

 

教員の定年は65歳とすること。

 

現行雇用条件切り下げになる定年年齢引き下げには反対しましょう。

 

10. 産休、育児、介護休業の現行水準維持とそれに伴う業務変更、調整

 

産休、育児、介護休業の現行水準を維持すること。それに伴う代替者の補充、その予算措置、他組合員等の業務変更、調整に関しては、労使で事前に協議すること。

 

法人化後は、特別休暇(出産、育児、介護)の有給制や期間などの法的保障がなくなります。現行水準を維持するよう就業規則などに規定する必要があります。また、任期付き教員には育児・介護休業の法的保障がなくなる点も留意する必要があります。

 

11. 安全衛生法基準遵守と学生の安全

 

法人化後における労働安全衛生法の基準を満たすため、学生の安全を保障するため、予算・人員の措置をすること。

 

法人化後は職場の安全や健康に関する基準は労働安全衛生法に変わり、違反は刑事罰に処せられます。また、学生は労働者ではないので保護の対象から外れます。教職員、学生の安全衛生のために予算・人員措置は不可欠です。

 

12. 移行に伴う労使交渉

 

移行に伴い生じる教員組合との事前交渉には、誠意をもって臨み、かつ充分な時間をあてること。

 

法人化移行の際には、民間企業の労働組合と同様に、われわれの雇用、労働条件を規定する労働協約、就業規則、労使協定などを交渉締結することになります。この事前交渉の成否は法人化後の労使関係を規定すると言って過言ではないでしょう。誠実かつ充分な事前交渉を強く要求しましょう。