04/2/25数理科学科主任から学長への手紙2004/3/4up

 

http://suuri.sci.yokohama-cu.ac.jp/reborn/ogawa040225.html 

大学改革に対する 数理科学教室の主張

http://suuri.sci.yokohama-cu.ac.jp/reborn/index.html より

 

http://edmath.sci.yokohama-cu.ac.jp/ogawa040225.pdf 

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040225suri.pdf

一楽重雄氏(理学部)ホームページ http://edmath.sci.yokohama-cu.ac.jp/ 参照

 

永岑三千輝氏(商学部)『大学改革日誌』0435

 http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/SaishinNisshi.htm 参照

 

 

 

【抜粋】

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このような事実から判断して,我々はコース部会において既に(<学部>教育から)数理情報コース案が廃案にされていることが確実だと認識しています.

我々は数理科学科を廃止すること即ち本学において数学の体系的な講義がなくなることに反対であります.プロジェクトR委員会で数学の必要性を最も強く主張したのは学長であると聞いています.「大学像」の数理情報コース案が外されたことについて学長はどのようにお考えでしょうか.・・・

市の大学改革担当者と一部のコース部会委員で予めコース案を決めていたとしか考えられません.・・・教員に最も関わりのあるカリキュラムでさえ自分たちで作ることができないということは,大学として異常ではないでしょうか.・・・昨年学長が不用意に「在り方懇」の答申に対し迎合的に対応したことが悔やまれます.・・・(横浜市の)大学改革推進本部が最終的に決めたコースとカリキュラムを学長は大学として認めるのでしょうか.またこのことについて評議会はどのように対処しようとしているのでしょうか.設置者の過剰ともいえる大学教育への介入を,ただ座視するだけなのでしょうか.

 

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【注1:この『04/2/25学長への手紙』では,横浜市が,(大学院どころか)<学部>教育からも数理科学を消滅させるつもりでいることを知った教員(理学部数理科学科・主任教授)が,その余りの理不尽さを説き,横浜市に再考をうながすよう小川学長に訴えている.ところが,下記の参考資料『03/12/04学長との“対話”集会』では,(学部は勿論のこと)<大学院>教育からも数理科学を消滅させるようなことはしないと学長が確約している.学長は,自ら述べた言葉をよく思い出して,誠意ある対応をするべきであろう.

 

注2:『学長からの回答』 文中の“学長が不用意に「在り方懇」の答申に対し迎合的に対応した”に対し,学長からこのことは“事実に反する”旨の返事がありました.(下記参照)】

 

 

【参考資料

03/12/04 『学長との“対話”集会』の記録 http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/031204taiwa.htm より抜粋

 

[○○(一般教員)]

小川先生と柴田先生に言っておきたいんですが、われわれは情報なんて全然与えられていませんよ。テレビとか新聞でしか知りません。ほとんどここの人は、だいたいそんなもんですよ。全然下の方に伝わってきていない。<大学院>では突如、数理情報が消されて、ナノ(注:ナノサイエンス)と環境生命の2つになった。数理情報はナノに含まれるというバカなことを書く人がいるわけです。それは、われわれは認めるわけにはいかない。<大学院>が、なぜこういう形になったのか。そこを説明していただきたい。

 

[小川学長]

あの、まったく○○先生のご指摘のとおりでして、非常に無理がそこにあるわけですね。これは私、何て言うんですか、これから、先程もご説明しましたように、これから後、見直しをしますので、その時には、いま○○先生がご指摘になったような、あるいは、もっと別の方法があるかもしれませんが、きちっと見直します。≪数理≫はですね、分かりにくいことのないように、必ずいたします

 

[○○(一般教員)]

あ、それじゃあ、ぜひお願いします。

 

[小川学長]

はい。私、≪数学≫はたいへん重要な学問だと思っていますから。

 

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04/2/25数理科学科主任から学長への手紙 全文】

 

2月25日

小川惠一学長様

 

理学部数理科学科教室

 

現在コース案等検討プロジェクト部会(以下,コース部会)でコース案とカリキュラム案が審議されています.コース部会が始動して早1ヶ月余りが経ちました.コース部会は緘口令が敷かれている為,コース部会でどのような議論がなされているのか,外部の教員には全く窺い知れません.しかし我々は,以下に述べる理由で,「横浜市立大学の新たな大学像について」(以下,「大学像」)にある理工学府の数理情報コース案が廃案になることが確実だと判断しています.このような状況下にあって,数理科学科が廃止になることに対する我々の意見を学長に是非聞いて頂きたいと考え,このメールを送ることにしました.

 

以下で述べられる私達の学長への問いかけは大学の全教員への問いかけでもあります.学長には大変お忙しいことと思いますが,このメールを真摯に読んで頂きたく思います.

 

学内のあるホームページに"コース部会は国際総合科学部の各学府を2コースに設定することを決めた"ということが掲載されています.また1月29日に開催された第1回大学改革推進専門委員会(以下,専門委員会)の議事録概要が大学のホームページに掲載されています.学長もこの専門委員会委員ですが,コース部会での検討事項に対する専門委員会委員の意見がまとめられています.コース案について,"コース部会案は「大学像」に示されたコース案からコースを大幅に絞った案である"ことが述べられています.また理工学府のコース案についてはナノ科学技術コースと環境生命コース対する意見のみが述べられています.

 

このような事実から判断して,我々はコース部会において既に数理情報コース案が廃案にされていることが確実だと認識しています.

 

我々は数理科学科を廃止すること即ち本学において数学の体系的な講義がなくなることに反対であります.プロジェクトR委員会で数学の必要性を最も強く主張したのは学長であると聞いています.「大学像」の数理情報コース案が外されたことについて学長はどのようにお考えでしょうか.

 

数理科学教室は小規模ではありますが,文理学部理科数学課程から理学部数理科学科まで半世紀以上に亘り千人を超える卒業生を出しています.卒業生達は社会の多方面で活躍しています.その結果として数理科学教室は社会から信頼を得ています.本学で数理科学科は受験希望者が多い人気学科であります.平成16年度の入試でも数理科学科の受験希望者数は理学部で一番多くまた受験倍率も一番高いのです.我々は,大学改革案通り法人化後に数理情報コースに変わっても,これまで通り受験生や学生に人気のあるコースになるように努力しようと考えていました.半世紀以上かけて積み上げてきた伝統と受験生に人気のある数理科学科を廃止して,ナノ科学技術コースと環境生命コースのみを理工学府に設置することが,どうして法人化後の大学の生き残り競争に勝ち(設置者が大学改革をする理由の一つに挙げている)そして持続可能な経営の確立と自立的経営の促進(大学像で述べられている)が出来るのか,我々にはその理由が分りません.如何なる理由から数理情報コース案を廃案にしたのか,我々はコース部会に是非その理由を聞きたいと考えています.

 

数学はそれ独自の体系内のみで発展して来たのではなく,歴史的にいえば,自然科学や工学等と互いの学問に影響を与え合うという密接な相互関係のもとで発展し,これら科学の基礎理論を支える重要な学問として位置付けられてきました.近年数学は計算機の発展に伴い自然科学や工学ばかりでなく,情報科学,数理経済学に代表される社会科学,更に人文科学とも深いかかわりを持ちながら発展しています.我々は,数理科学を数学理論を基礎とする学問の総称として捉え,これまで学生を教育してきました.「大学像」での改革案は,本学の学部を「教育」に重点をおく教養学部として位置付けています.理科,文科という枠にとらわれることなく幅広い教養を身に付けさせようというのが改革の狙いであるはずです.そうであれば尚更のこと,理系,文系にかかわらず数学を学びたいという多くの学生に応える為に数理科学コースを設置すべきではないでしょうか.

 

「大学像」にある理工学府のナノ科学技術コースと環境生命コースの設置理由は余りに横浜市の「横浜市中期政策プラン」の産業政策(例えば,産学連携事業の推進,産業人材の育成)に迎合し過ぎています.大学改革で,このような市の産業政策の短期的視点のみから,数学が市民に役立たないものと判断されたとしたら,非常に残念なことです.コース部会は数理科学科が本学で受験生に人気のある学科であること,即ち数学を学びたいという多くの学生がいることを考慮していません.

 

我々はコース部会でのコース案検討の審議に疑問を持っています.第1回目のコース部会開催日は1月13日でした.コース部会は週2回開かれているとのことですから,コース部会の日程と専門委員会開催日(1月29日)を考慮すれば,コース検討の実質審議は多くて3回しかなされなかったように思われます.プロジェクトR委員会で長期間議論して作成したコース案を,実質僅か3回程度の審議で大幅に絞ったことになります.このような短期間で大学改革推進本部が言うところの市民・学生の視点,全学的視点,経営的視点からコース案を慎重に検討し審議が出来たのでしょうか.市の大学改革担当者と一部のコース部会委員で予めコース案を決めていたとしか考えられません.

 

現在検討されているコース案とそのカリキュラム案は設置者側の主導で行われています.学長は勿論ご承知のことですが,コース部会は市の大学改革担当者,設置者が推進する大学改革に賛成している教員の中から大学改革推進本部が選んだ教員そして学長推薦の教員から構成されています.構成員の中には大学のプロジェクトR委員だった教員も含まれています.この委員達は自分達が長期間かけて作った「大学像」の各コース案(国際教養学府4コース,理工学府3コース,総合経営学府5コース)を僅か2,3回の審議で半分に減らすことに疑問を持たなかったのでしょうか.初めから半分程のコースでも良かったのに時間をかけて必要も無いコースを作成したのでしょうか.我々にはコース部会におけるこの委員達の対応が全く理解出来ません.

 

学長は,昨年「大学像」に対する設置者の考えが出された後,総合理学研究科委員会で開催された教員との対話集会に出席されました.その場で学長はカリキュラム作成等が私達のこれからの仕事であると明言されました.対話集会で多くの教員からカリキュラムを我々教員に充分に時間をかけて作成させて欲しいという要求が出されました.学長は我々の要求を汲み取ることはしませんでした.そのような仕事を現在しているのは設置者と改革案に賛成する一部の教員です.我々数理科学科はカリキュラムの準備をしていたことを念の為つけ加えておきます.学長は彼らにカリキュラム作成を完全に任せたのでしょうか.緘口令を敷き,ごく少数の教員と市の幹部職員だけで市民や市大を目指している受験生に納得のいくコースやカリキュラムを作ることが本当に出来るのでしょうか.教員に最も関わりのあるカリキュラムでさえ自分達で作ることができないということは,大学として異常ではないでしょうか.学長はコース部会案を検討する専門委員です.専門委員会はコース部会案を審議し,その結果を大学改革推進本部に報告することになっています.学長は行政主導で作られたコース案とカリキュラム案を最終的に決定する役目を担う一人です.学長はその案に対し大学としてどのように対応しようとお考えなのでしょうか.学長は,我々教員に行政主導で作ったコースやカリキュラムを黙って認めろと,いうのでしょうか.

 

プロジェクトR委員会が作った数理情報コース案に我々は反対でした.それは「情報」に反対という意味ではありません.本学には理系の情報コースの講義を担当する専門の教員数が不足しています.「大学像」で述べられている情報教育についての理念を実現するには,情報担当の教員の増員なしでは,無理であると判断したのです.現在大学は定年退職した教員の不補充をしているのですから,そのように判断するのは当然のことでしょう.我々は「大学像」にある数理情報コース案に対し,現在の数理科学科の実情に合った修正案をプロジェクトR委員会に理学部長を通して提出しましたが,修正案は認められませんでした.我々は以前から数理科学科に情報コースを設置することを要求していましたが,実現できないまま今回の大学改革に直面しました.情報コースを設置するどころか,数理科学コースまで廃止されようとしています.我々はこのような状況にあって,可能ならば時間を1年前に戻すことが出来ればと思わずにはいられません.昨年学長が不用意に「在り方懇」の答申に対し迎合的に対応した ことが悔やまれます.

 

我々は(上で述べたことと重複しますが)以下のことを学長に問いたいと思います.学長の考えをお聞かせください.

 

(1)少数の行政側の大学改革担当者と教員で,長期間かけて作った「大学像」の各コース案(国際教養学府4コース,理工学府3コース,総合経営学府5コース)を,僅か2,3回の審議で大幅に減らしたコース部会の審議の進め方をどのように考えますか.市民・学生の視点,全学的視点,経営的視点からコース案を慎重に検討し審議したとは思えません.

(2)理工学府の2コース(ナノ科学技術コースと環境生命コース)の選定は横浜市中期政策プランの産業政策の観点のみから決められています.このようなコース選定では,数学のような基礎学科は大学から消えてしまうことになります.本学で数学を学びたいという学生が多いという事実を考慮していません.このことについて,学長はどのように考えますか.

(3)大学改革推進本部が最終的に決めたコースとカリキュラムを学長は大学として認めるのでしょうか.またこのことについて評議会はどのように対処しようとしているのでしょうか.設置者の過剰ともいえる大学教育への介入を,ただ座視するだけなのでしょうか.

 

注:文中の"学長が不用意に「在り方懇」の答申に対し迎合的に対応した"に対し,学長からこのことは事実に反する旨の返事がありました.