3月18日

大学改革推進担当部長
コース等検討プロジェクト部会座長
岡村 一 様

理学部数理科学科教室

コース等検討プロジェクト部会(以下,コース部会)が1月13日に始動してから早2ヶ月が経ちました.学府コース案とそれらのコースのカリキュラム案がほぼ纏ったとの情報が流れています.

第1回から第13回までのコース部会議事概要と,第1回(1月29日開催),第2回(2月12日開催) 大学改革推進専門員会(以下,専門委員会)の議事概要が大学のホームページに掲載されています.ホームページで掲載されている議事概要からでは,コース部会でどのような議論が行われているか,外部の教員には窺い知れません.コース部会は箝口令が敷かれている為,コース部会委員に部会での議論の様子を詳しく聞くことが出来ません.しかしながら,コース部会と専門委員会の議事概要から判断しますと,理工学府の数理情報コース案が廃案になっているようです.

我々数理科学科教員は,本学において数理科学科が廃止になること即ち数学の体系的な講義が無くなることに反対であります.

我々は
『如何なる理由で理工学府のコースから数理情報コースが外れたのか』その理由を岡村部長にお尋ねいたします.是非お返事を頂きたく思います.

我々はコース部会でのコース選定に疑問があります.このことに対する我々の意見と問いを以下に述べます.上記質問と合わせてご回答ください.

    (1) コース選定の実質審議が僅か3回しかなされず,コース選定について充分な検討がされていません.このような短時間で,「横浜市立大学の新たな大学像について」(以下,大学像)における学部コース案(国際教養学府4コース,理工学府3コース,総合経営学府5コース)を,どのような審議をして大幅に絞ることが出来たのか疑問に思います.コース部会が始動する前に,2コース案は既に設置者側が案として決めていたのではないのでしょうか.そうなるとコース部会でのコース検討は検討でなく予め出来ていた案の追認会議であったと思われます.この点について如何お考えでしょうか.
    (本学ホームページのコース部会議事概要,専門部会議事概要でコース審議回数が2乃至3回であることが分る.)
    (2) 本学において数理科学科が受験生の人気学科であることが考慮されていません.本学で数学を学びたいという多くの学生の希望を無視して,数理科学科を廃止していいのでしょうか.半世紀以上かけて積み上げてきた伝統と学生に人気のある数理科学科を廃止することが,法人化後の大学の生き残り競争に勝ち(設置者が大学改革をする理由の一つに挙げている)そして持続可能な経営の確立と自立的経営の促進(大学像で述べられている)がどうして出来るのか,我々にはその理由が分りません.
    (添付資料表1参照)
    (3) 数学は,自然科学,工学,情報科学ばかりでなく,数理経済学に代表される社会科学,更には人文科学とも深いかかわりを持ち,これら科学の基礎理論を支える重要な学問として位置付けられています.大学像で述べられている改革案は,本学の学部を「教育」に重点をおく教養学部として位置付けています.理科,文科という枠にとらわれることなく幅広い教養を身に付けさせようというのが改革の狙いです.そうであれば尚更のこと,理系,文系にかかわらず数学を学びたいという多くの学生に応える為に数理科学科は必要なのです.
    (4) 理工学府の2コース(ナノ科学技術コースと環境生命コース)の選定は,余りにも横浜市中期政策プランの産業政策の観点のみから決められています.このようなコース選定では,数学のような基礎学科は大学から消えてしまうことになります.横浜市は,数学が市の産業政策や市民の生活に役立たないということで,数理科学科は不要と考えているのでしょうか.短期的な市の施策の観点だけで,大学の学部や学科を廃止するようなことは好ましいことではありません.
    (5) 数理科学科を維持する経費は実験系学科のそれに較べると非常に少なくて済みます.数理科学科を廃止することで,大学の財政が著しく改善し,他の学科の研究がより活発になるとは思えません.
    (6) コース選定において数理科学科のこれまでの研究成果を考慮していません.また科学研究費を理学部の他学科より多く採択しています.科研費採択数や受賞数については, 添付資料表2 を参照してください.
    (7)数理科学科は,文理学部理科数学課程設置以来今日まで半世紀以上に亘り,学術誌Yokohama Mathematical Journal(以下,YMJ)を発行しています.我々はYMJを国内は勿論のこと海外の多くの大学や研究所に寄贈することにより学術の交流を行っています.大学像では横浜市を「国際都市」と表現しています.YMJは,横浜市が「国際都市」に相応しい文化都市であることを,広く内外に知らせる役目をこれまで半世紀以上果たしてきました.YMJを通し学術交流をしている内外の大学や研究所の人々が横浜市立大学から数理科学科が無くなることを知ったら,彼らはどう思うでしょうか.その判断は大学改革推進本部と専門委員会の委員の方々に委ねます.

今回の大学改革で商学部,国際文化学部のコースがどのように選定され,カリキュラムがどのように作成されたか,我々は承知しません.数学同様に,哲学や歴史等の基礎学科が市の施策に役立たない,また市民の生活にも役立たないと設置者に判断され,コースから外されていたとしたら,非常に残念なことです.