市会傍聴記の感想(続々々)

市長の『東京新聞報道は“完全に誤報”発言』を擁護する学長ら[1]

 

 

04/2/16東京新聞報道』 http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040216tokyo.htm が,中田市長の主張する“完全に誤報”や“100%誤報”などでは決してなく,メディアの使命である“真実報道”であったことは,本ホームページにおいて,すでに,徹底的に検証したところだが( http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040303gohou.htm 参照),04/3/11市会「予算特別委員会」では,議員の質問に小川学長らが一丸となって市長を擁護したことに対して,やはりと思うと同時に怒りと失望を禁じえない.

 

高井事務局長や前田副市長(大学改革推進本部長)が市長を擁護して一枚岩の結束を示したのは予想どおりだったとしても,“特に学長の答弁は,ほとんど原稿から目を離すことなく,抑揚のない答弁に終始した・・・おそらく官僚の書いた原稿を読み上げると言う,日本の悪しき慣行を地でゆくお粗末な”ものであった,と『市会傍聴記の感想04-3-17 http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040317kansou.htm にもあるように,学者としての批判精神も良心も捨て去ったような学長の態度には,怒りを通りこして失望を感じた人も多かったのではないだろうか.伊豆利彦氏(横浜市大名誉教授)も,“(部局長の答弁に期待したが、・・・)学長が市当局の被雇用者的卑屈な態度をとっている以上、職を辞する覚悟で証言しなければならないのだと思う。”と指摘している.( 伊豆利彦のホームページ http://homepage2.nifty.com/tizu/ 掲示板2 http://bbs2.idobata.net/pt.cgi?room=tizabc [1157] 参照)

 だいいち,『“完全に誤報”発言』で中田市長が最も強調したことは,“私は、横浜市大の負債ということを理由に改革を持ち出したことはない。・・・負債というバランスシート上の話を持ち出したことは、私は一度もない。”という点であったにもかかわらず,おそらくこれに関しては,新聞報道などによる宣伝が効きすぎた結果,“1140億円の巨額累積負債による改革”という,いまや一般市民もよく知るところとなった圧倒的に不利な事実が存在するためか,学長の答弁はこの点にまったくふれていない.(なお,これらの報道のほとんどが累積負債が巨額なことを強調する一方で,負債の大部分が病院等の資産になっている点にふれていないことから,市長・横浜市に情報操作の意図があったことは明白だろう.)

また,市長の手法が「密室で決定」「いきなり公表」「トップダウン」であることは,上述したように,本ホームページでもすでに徹底検証したところだが,つい先日の『04/3/16朝日新聞報道』 http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040316asahi.htm において,久保新一氏(関東学院大学)が,“市長の諮問機関は、答申で「改革しないと廃校だ」と市大に改革を迫った。市長も「答申を改革に生かしたい」と応じた。これは答申に沿った改革を迫る、一種の脅し。まさにトップダウン的手法だ。”と述べていることからも明らかだろう.にもかかわらず小川学長は,答弁の中でこれを明確に否定している.

 

 学長答弁にある,“研究費0も誤り.・・・「大学像」「あり方懇答申」にも研究費0はどこにも表記されていない.”は典型的な詭弁で,たしかに,“研究費0”と文字どおりに書かれてはいないが,「大学像03-10-29」  http://www.yokohama-cu.ac.jp/daigakukaikaku/daigaku/daigaku_kaikaku/1029houkokusyo.pdf にはつぎのようにある.すなわち,“研究は,外部資金を獲得して行う。そのため、すべての教員は、国家プロジェクトや科学研究費、公募による研究費、共同研究や受託研究等による外部資金の獲得に、その義務として努めなければならない。一方、大学の経費を原資とする研究費は、大学が地域貢献や若手人材育成等必要と認めた場合、競争的資金として効果的に活用する。”また,「あり方懇答申03-2-27」  http://www.yokohama-cu.ac.jp/arikata/toushin.pdf にも,“市費による研究費の負担は,大学が精選した分野を除いて、原則として行わない。外部資金が得られた場合に、研究を進める。”とある.普通の読み方をした場合,これらが“研究費0”を意味していることは明らかだろう.

 

 学長の答弁,“「逃げ出す教員」についても,教員の移籍は,大学相互の人事交流・活発化,さまざまな理由によるもので,大学改革によるものとは考えていない.”に関しては,『市会傍聴記04-3-17』を読んだ匿名氏が,“商学部が先駆けている教員の大量流出は、いくら『東京新聞』の記事を「誤報」と非難しても、「大学相互の人事交流」と取り繕っても、厳然たる事実として止めようがありません。商学部では1年後の法人化・学部統合の際には現時点ですでに14名の欠員が確定しており、その時までには51名の定員が30名程度にまで激減しているでしょう。”と指摘している.

 

 高井事務局長の答弁,“反対派の主張のみをとりあげ,取材が一面的であり,報道の使命に反する.”に対しては,今までさんざん自分たちが行ってきたことをすっかり忘れたかのようで,東京新聞が報道の使命に反するどころかその使命を貫いて“真実報道”を行ったとたんに,“大学として支局にたいして直ちに抗議するとともに,続報記事掲載等の善処方を強く申し入れた.220日には学長名による善処方申し入れを行っている.”などと,厚かましくも公の場で堂々と発言しているのは如何なものか.

 

前田副市長の“大学が自ら作り上げた改革案はすばらしい改革案であると高く評価しているので,このような報道がなされたのは残念.”に対しては,このようなあいまいな答弁ではなく,改革案のどこがどのように“すばらしいと高く評価している”のか,それに対して報道のどこがどのように“残念”なのか,もっと具体的に述べてもらわないと,このままでは反論のしようがないし,一般市民も判断できないだろう.

 

先の伊豆利彦氏は,“質問者はいろいろ重大な問題を提起していたが、答弁はいずれもその場しのぎのいい加減なものだった。こうして議会を通過するのかと思うと、いまの議会制度の空しさが思われる。結局、数の力がすべてを決定する。多数の上にあぐらをかいた議会運営。国会の場合はもっとひどい。こうして、政治不信が増幅していくのだ。・・・民主主義は名目だけのものになり、空洞化する。その果てに待っているものは何か。”と嘆くとともに,この国の近未来に対する切実な不安を述べているが,まったく同感である.( http://bbs2.idobata.net/pt.cgi?room=tizabc [1157] 参照)

 



[]  中田市長の『04/2/16東京新聞報道は“完全に誤報”発言』に関連した質疑応答の箇所(『教員組合:311日横浜市会「予算特別委員会」傍聴記04-3-15 http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040315bochoki.htm より抜粋).

 

 

 

田中:東京新聞の記事は市長は「誤報」だと言っている.誤りがあったのか?

 

小川:明らかに事実と異なった点があったと認識している.

 

田中:どこが事実と異なるのか?

 

小川:「密室で決定」「いきなり公表」「トップダウン」などとあるが,平成10年ころから考えてきたものであり,大学自身で考え,十分議論し,大学自らが策定した案を私から市長に報告した.設置者である市と大学がともに実施しているものであり,「密室・・・」などは市大改革にかんするかぎりされていない.

 

田中:「研究費0」や「逃げ出す教員」など,センセーショナルな見出しもあったが・・・

 

小川:研究費0も誤り.市費による研究費は一律に配布するものではなく,大学の目標に照らして精選した分野に負担(?)する.「大学像」「あり方懇答申」にも研究費0はどこにも表記されていない.「逃げ出す教員」についても,教員の移籍は,大学相互の人事交流・活発化,さまざまな理由によるもので,大学改革によるものとは考えていない.改革には多少の不安を伴うので,極力回避するよう考える.

 

田中:大学の(新聞社への)対応は?

 

高井:反対派の主張のみをとりあげ,取材が一面的であり,報道の使命に反する.大学として支局にたいして直ちに抗議するとともに,続報記事掲載等の善処方を強く申し入れた.220日には学長名による善処方申し入れを行っている.

 

田中:前田副市長の考えは?

 

前田:大学が自ら作り上げた改革案はすばらしい改革案であると高く評価しているので,このような報道がなされたのは残念.広報横浜,HPなどで広く市民に知ってもらう.