横浜市議会予算第一特別委員会における

大学当局・事務局の答弁は事実関係を歪曲するものである

 

2004年3月25日

横浜市立大学教員組合

 

3月11日(木)の横浜市議会予算第一特別委員会で横浜市立大学改革問題に関して質疑がなされた。この質疑において、学長、事務局長の答弁に事実関係を歪曲し、それによって議会に対して重大な予断を与える事項が少なからず存在している。教員組合としてこれを座視することはできない。以下、組合員が記録した傍聴記録に依拠して、問題点を指摘しておきたい。

 

1】傍聴記録によれば、小川学長は、「大学像」を「大学が一体となって検討しまとめた」ものであることを強調している。しかし、このような答弁は事実関係を歪曲するものであり、断じて看過し得ない。「あり方懇」最終答申が提出されてから1年を経たが、この間、「大学像」およびその原型となった諸改革案に関して、ほとんどすべての学部、研究所から20件を超える反対決議、意見、提言、疑問などが提出されてきたこの事実は、「大学が一体となって検討しまとめた」ものとは認めがたく、全学の総意を結集しているとは言いがたいことを雄弁に物語っている。

 

2】「大学が自ら決めた『大学像』に対し」反対している学部があるが、それは、どの部局か?との質問に関連して、学長は、「評議会の議を経て決定しているにも拘らず、一部の教授会がこのような対応をとったことはきわめて遺憾である」という趣旨の答弁を行ったと伝えられている。

 

しかし、当日の評議会が如何にして「議を経た」のか。「大学像」(案)を検討した10月22日の臨時評議会においては多くの評議員からの反対意見や疑問の表明が行われ、採決を求める提案がなされた。にも関わらず、「慣例にない」として採決がなされなかった。さらに、この評議会において反対・疑問が集中して議論に多くの時間を費やした人事委員会問題と全教員への任期制導入問題に関して、これに反対した者の氏名を議事録に残すべきであるとする評議員からの具体的な提案をも小川学長は合理的な理由もなく拒絶した。本学の最高の意思決定機関としての評議会の議長たる小川学長は、評議会運営上の手続民主主義において重大な誤りを犯している。

 

このように疑問の多い学長の評議会運営に対して教授会が遺憾表明することは、決して批判さるべきではなく、むしろ、真理探究を旨とする大学という組織として合理的で見識ある意思表明であるといってよい。

 

3】なぜ臨時評議会において、多くの反対意見や疑問の表明がなされたのか。そして、なぜ学長は採決をすることなく、強引に「議を経る」体裁を整えようとしたのか。また、小川学長は、「一部に反対する動き」があると述べて、ことさらに、「大学が一体となって検討しまとめた」のであり、反対する教員は一部であるかのように描き出そうとしているが、それはなぜか?

 

それは、「あり方懇」答申以来、多くの教授会から提出された決議、意見が存在しているという先の厳然たる事実が極めて重く否定しようもないがゆえである。すなわち、教授会という合議体が決議や意見を示すということは、当然のことながら、それを支持する教員の分厚い層が存在していることを事実として示しているのである。したがって、学長の答弁は事実関係を意図的に歪曲するものと言わねばならない。

 

4】本学教員は、大学の教育と研究の質の向上を不断に念じつつ、日々、専心している。大学の質の向上を切に求め現場において呻吟しつつも改革を試みているのは、まさに、現場の一線を担う教員と現場職員なのである。教員とはそのような意味で本質的に改革を真に希求し続ける存在なのである。しかし、今回の市会答弁では前述のように、あたかも「一部の」教員が改革それ自体に反対しているかのような印象を議会に対して与えている。

 

しかし、それが事実と異なることは強調してきたところである。今回の答弁のなかで異様な形で繰り返し強調されたことのひとつが、教員の「意識改革」の必要性である。しかし、当局がこのことをこのように強調すること自体が、むしろ、改革案に関する批判や異論が広汎な教員の中に存在していることの傍証となっているのである。

 

5】傍聴記録によれば、小川学長は、「(任期制について)一部の教員、教員組合が不安をあおるような宣伝をしているのは遺憾である」という趣旨の答弁をしたと伝えられている。学長という公職にあるものの発言としては、極めて不用意でありゆゆしきものである。その表現も極めて野卑であり、これは自らの品位を自ら貶めるものである。

 

教員および教員組合が、現職全教員に対する任期制の導入に関して、見解を自由に述べることは、憲法に保障されている言論、表現の自由に基づく正当な行為である。これに対して、その根拠をまったく示すことなく、教員の「不安をあおっている」などと指摘することは、正規の登録団体としての横浜市立大学教員組合と議会を愚弄するものであり、きわめて遺憾である。学長はこの発言を撤回し、謝罪すべきである。このことに関しては、すでに別途、学長への抗議の申し入れを行った。

 

今後「制度設計」を行うことを前提条件としつつ、現職全教員への任期制の導入を掲げながら、しかし、まったく「制度設計」を示さないままに現職全教員への任期制の導入のみを一人歩きさせている当局の責任は極めて重大である。そのことがまさに、教員の「不安をあおっている」のである。その責めを問われるべきは、任期制導入の法的根拠を明らかにしえず、したがって、「制度設計」を未だ具体的に示しえない大学当局・事務局なのである。

 

6】教員数と教員組合組合員数に関する質問に対し、高井事務局長は、「教員は642名、組合員数は163名」と答えている。また、3月17日の横浜市議会大学教育委員会では、組合の「組織率」は?との質問に対し、高井事務局長は、「全体642名のうち約25%」と答弁し、(統合対象の)「3学部に限ればどうか」との質問に対しては、「商学部48名中40名、国際文化学部49名中46名、理学部56名中42名」と答えている。

 

組合の「組織率」を問う質問に対するこの事務局長答弁は、事務局が明らかに意図的に数値を操作している。組合の組織率とは、管理職など組合員となる資格を持たないものを除いた人数が母数となる。にもかかわらず、これは管理職をも含む全教員を母数とすることで、教員組合の組織率を全体として低くなるように企図した答弁だといわなければならない。

 

ちなみに、母数となる「全体642名」は実は628名であり、「商学部48名」は44名、「国際文化学部49名」は48名、「理学部56名」は53名が正しい有資格者数である。2月に人事係の職員が、組合事務室を訪れ、組合作成の有資格者数、組合員数、組織率を記した資料を求めたので提供した。事務局がこれを答弁の準備に用いたことは明らかである。この組合の資料は当然ながら、全教員数ではなく、その中の有資格者数を記してある。にもかかわらず、この部分を非有資格者をも含む数値に置き換えて答弁しているのである。このよう操作を前提としての議会答弁は、人事委員会への登録団体である横浜市立大学教員組合を愚弄するものであるのみならず、市議会に対する背信行為であるといわなければならない。

 

横浜市立大学教員組合は、昨年の「あり方懇」答申以来この1年間で、これまでの組合活動においては見られなかった勢いで組合員が増大しており、このことは教員の組合への期待の大きさを物語っている。2月15日に教員組合は朝日新聞に意見広告を掲載したが、そのなかで「横浜市立大学教員組合は、統合が予定されている3学部の教員の87%が加入している組合です」と記したが、1ヵ月後の3月23日時点では、3学部教員の加入率は89%へと増大していることを付記しておきたい。