「意見広告の会」ニュース125

[1]都立大総長の「意見と要望」

[2]常軌を逸した石原都政と都教委 メディア論調から

 

 

「意見広告の会」ニュース125
  
** 目次 **
1 都立大総長の「意見と要望」
2 常軌を逸した石原都政と都教委 メディア論調から



1 都立大総長が学長予定者・管理本部長に「意見と要望」
 3月29日、教学準備委員会とその結果を受けて

 都立大学茂木総長は、4月2日、今後の協議体制と重要課題についての、「意見と要
望」を、西澤学長予定者(教学準備委員会座長)および山口大学管理本部長に提出しま
した。これは3月31日の都立大学評議会で、去る3月29日の第7回教学準備委員会とそ
の結果を受けた審議の中で提出することが確認されたものです。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

教学準備委員会座長 西澤潤一殿
大学管理本部長 山口一久殿

7回教学準備委員会(2004329日)の審議等に関連した意見と要望

                           東京都立大学総長 茂木俊

                           200442

3
23日の4大学総長・学長等による懇談会および329日の第7回教学準備委員会におい
て確認したように、新大学の設立準備に当たっては、今後、現大学の代表たる総長・学
長、大学管理本部長、学長予定者、理事長予定者の十分な協議を行いつつ、これを進め
ることとなっています。重要なことは、これを各種委員会の編成と運営等においても具
現化することです。
この観点から、本学の127日評議会の見解と要請を踏まえ、また第7回教学準備委員会
での審議およびその後の経過を検討し、若干の意見と要望を申し述べます。よろしくご
高配のほどお願い申し上げます。

1)教学準備委員会の在り方について
 これまでの教学準備委員会は第7回をもっていったん区切りをつけ、今後はその名称
問題は別として、新たな教学関係の委員会を作る方向が示されました。
その委員について、当日座長より公にされた4人の学部長予定者と座長とが相談して決
めるとされましたが、この点について意見があります。
1
つは、「十分な協議」の具現化の観点からみて、これまでは教学準備委員会の委員と
はされていなかった都立大総長および短大学長を委員に加えるべきです(総長を委員に
加えるべきであるとの意見は当日にもある委員から発言がありました)。
2
つは、新たな委員会の編成に当たっては、現大学の長たる4大学の総長・学長に委員を
推薦する機会を与えるべきです。
3
つは、新たな委員会の開催に当たっては議題等および資料の事前送付を行い、また事
後には議事録(議事要録)を作成し、その確認に日程もとるべきです。なお議事録につ
いては当然のことながら329日についても作成すべきです。
 なお、いかに期限が迫っているとはいえ、審査項目の多さからして議論のための十分
な時間をとるべきであり、そのためには委員会開催時間・回数などを見直し、精力的な
審議をすべきであると考えます。

2)設置申請の事前協議の問題
 4月末の設置申請に当たっては、その後の設置審査が円滑に進められるようにするた
めにも、事前にその全資料が現大学に示され、その内容をめぐって協議がなされるべき
です。あらたな教学関連の委員会の設置が何時になるのであれ(仮に5月に入ってから
であればいっそうのこと)、この点は必ず実行される必要があります。

3)「都市教養学部」の名称問題
3
29日の教学準備委員会では、ご承知のとおり、この学部名称について時間をとった
審議があり、ここで詳細は触れませんが「総合教養学部」のほうがベターであるとの意
見が4名、「都市」という言葉を残すべきだという意見が1名、「都市的教養学部がよい
」との意見が1名であったと思います。
最終的には座長一任となったことは承知しておりますが、結果として、いわば少数意見
であった「都市教養学部」が採用されたことについて、強い違和感を覚えるとともに、
「都市教養学部」とした合理的理由の説明を求めます。
この点に関連して言えば、323日、329日(当日)に新大学の準備のために「十分な
協議」をするということを確認した状況のもとで考えると、協議、審議は何のためにす
るのか、疑わしいという意見が出ても不思議ではありません。協議に基づく今後の準備
活動のスムーズな展開を期待する見地から、「強い違和感」があることを表明しておく
次第です。

4)単位バンクについて
 第7回教学準備委員会でのこの件に関する報告と質疑では、単位バンク制度そのもの
に関する質問が多数でました。結果として今後詳細な検討がなされなければならない問
題が多面的に存在することが判明したと言ってよいかと思います。継続して審議すると
されたのは適切であったと考えます。
 ただし、設置申請に当たっては、単位バンクの基本枠組みに関してだけでも現大学と
の間で協議をさらに行うべきです。
 ここで改めて強調しておきたいのは、新大学の教育課程の編成、単位認定等々の事項
は教員組織の責任と権限に属する問題であり、単位バンクシステムにまつわる諸事項も
その例外ではないということです。この点について自覚しつつ単位バンクの設計を進め
るべきです。
 
5)学部の教育組織編成について
 現段階では学部は基本的に1学科で、その下に系・コースを設置する構想になってい
ますが、学生の帰属意識、系統的な学習の保障、入試などのことを考慮し、各学部に複
数の学科・専攻を設置すべきです。この点は第7回の委員会では論議になりませんでし
たが、重要な点であるので指摘しておきます。

                                  以上


2 常軌を逸した石原都政と都教委 メディア論調から

東京新聞 4/5 記事
君が代起立拒否
処分75人が不服申し立て
 卒業式の君が代斉唱で起立しなかったなどとして東京都教育委員会に戒告処分された
都立学校の教職員七十五人が五日、処分の取り消しを求め都人事委員会に不服申し立て
をした。一方、都教委は同日、臨時会を開き公立小中学校の教職員らの追加処分を決め
た。
 六日から八日にかけて都内のほとんどの都立高校や公立小中学校で入学式が開かれる
予定だが、起立しない教職員が出るとみられ、教職員側と都教委の対立は激しくなりそ
うだ。
 申し立てた教職員らは記者会見し「起立の強制は憲法で保障した思想・良心の自由に
反する」「異常で迅速な大量処分は、入学式を目前にした見せしめ的処分だ」「入学式
でも起立しないと重い処分になると脅されている」などと訴えた。
 都教委は先月三十一日、教職員百七十一人を戒告処分にしたと発表。うち三人は定年
退職後に決まっていた嘱託職員への再雇用を取り消された。また、すでに再雇用してい
た嘱託職員五人の更新も取り消された。
 都教委は昨年十月、「国旗に向かって起立し国歌斉唱する」などと厳しく規定し、従
わない場合は処分対象になると通達。一部の教職員が強く反発していた。

***
 
 「日の丸・君が代」問題 前代未聞の教師大量処分へ
 春うらら東京都教委の「もうどうにもとまらない」   サンデー毎日4/11号
 
 まさに狙い撃ちどころか乱れ撃ちである。東京都教委は今春行われた卒業式で「日の
丸・君が代」の実施方針に従わなかった約200人の教職員を大量処分する構えだ。門
出の日を迎えた子供たちの笑顔は陰に押し込まれる。いやはや、学校は誰のためにある
―─

 3月下旬、東京都庁第2本庁舎27階の廊下の隅で3人の男が相対していた。
「聴取を拒否しているわけではない。ただ、公正さを担保するために弁護士の立ち会い
を求めている」
「聴き取りは公正に行う。職務上でのことに答えるのになぜ第三者の立ち会いが必要な
のか」
 1人は都立高教師。1人は都教育庁人事部の職員。
 そしてもう1人は、今年1月、228人の教職員が都教委の「日の丸・君が代」実施
に関する方針に従う義務のないことの確認を求めて起こした「『日の丸・君が代』強制
に反対する予防的訴訟」の弁護団に加わる白井劍弁護士である。

 教師は今年の卒業式で、〈国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する〉という校長の「
職務命令」に従わなかったとして都教委側の事情聴取に呼び出された。弁護団では事情
聴取に弁護士の同席を求めているが、都教委側は認めていない。

「懲戒処分という不利益を受ける可能性がある以上、手続きが公正に進められるかチェ
ックするのが弁護士の仕事」(白井弁護士)
 聴取の際にメモを取らせてほしいという教師の申し出にも職員は「メモは認めており
ません」とかたくなに拒否した。押し問答は1時間にわたり続き、結局、事情聴取に入
ることなく「立ち話」は打ち切られた。

 3月中旬以降、このような教職員と都教委側の丁々発止が連日あった。今回、都立の
高校や障害児学校の卒業式で「不起立」を貫いた教職員は「予防訴訟」原告団によると
190人。
「全員懲戒処分になるかは分かりませんが、大量処分は確実」(都庁関係者)

***
国旗・国歌 そこまでしなくても  東京新聞・中日新聞 4/1 社説
 新年度を迎え、入学式など教育現場で「日の丸」や「君が代」が、引き続き論議の的
となりそうだ。賛成派も反対派も、互いの「内心の自由」を尊重し合い、相手の言い分
も聞こうではないか。

 それにしても、東京都教育委員会のやり方は、強引にすぎる。

 都立高校や都立盲・ろう・養護学校の卒業式で、君が代斉唱の際に起立しなかった教
職員に対し、職務命令違反との理由で、約百八十人を戒告などの処分にした。これから
相次ぐ入学式が思いやられる。

 都教委がある程度、強い態度にでることは予測できた。昨年十月、学校の式典での日
の丸の掲げ方、さらには君が代斉唱の手順に至るまで、こと細かに定め、各校長あてに
通達と実施指針を出していたからだ。

 いわく「国旗は式典会場の舞台壇上正面に掲揚する」「国歌斉唱はピアノ伴奏などに
より行う」などだ。

 内心の自由を持ち出すまでもなく、こんな細かいことまで決めて、教育現場に降ろさ
なければならないのだろうか。式典会場の形状、照明の具合などを考慮した結果、国旗
は正面より斜め横の方がふさわしい、という判断があってもしかるべきだろう。

 東京都の石原慎太郎知事は、処分発表前の記者会見で「先生も内心の自由はあるでし
ょう。しかし、やっぱり教育者として国なり都なり、周りが決めたルールってものを順
守してもらわないと」と述べている。

 確かにルールは守らなければならない。問題は戦後六十年たった今も、戦争の暗い思
いを重ね合わせる国民が多い日の丸や君が代の取り扱いを一律にルールで決めてもいい
のか、ということだ。負のイメージしか抱けない人々に、第三者が「こうしろ」と言え
るものなのだろうか。

 一九九九年八月、国旗国歌法の成立を受けて、小渕恵三首相(当時)は「法制化に伴
い、学校教育においても国旗と国歌に対する正しい理解が促進されるものと考えており
ます」との期待を表明した。ただ、その前段階で「国旗と国歌に関し国民の皆さま方に
新たに義務を課すものではありません」と、わざわざ断りを入れる談話を発表している


 サッカーなどスポーツの国際試合で、会場の観衆がほおに日の丸を描いたり、日の丸
の旗を打ち振る光景が最近、よく見られる。すべて自発的な行為であり、誰にも強制さ
れないし、誰をも強制しない。

 国旗とか国歌とは、そういうものなのだろう。賛成であろうと反対であろうと、押し
つけはよくない。

***
社説: 毎日新聞 4/5
国旗・国歌 都教委の姿勢は本末転倒
 東京都教育委員会は、都立学校の卒業式で、国旗に向かって起立し、国歌を斉唱せよ
などとする校長の職務命令に違反したとして、都立高校教員ら170人余に、戒告処分
や退職後の再雇用合格の取り消しをした。

 いささか、強引に過ぎるのではないか。文部科学省の調べでは、卒業式での国旗掲揚
率、国歌斉唱率は100%近い。それなりに定着している中で、都立学校が突出して混
乱しているのは、都教委が独自の通達を出したためだ。

 通達は、(1)舞台壇上正面に向かって左に国旗、右に都旗を掲揚する(2)教職員
は国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する(3)舞台壇上で卒業証書を授与する(4)
式典会場は児童・生徒が正面を向いて着席するよう設営する−−など、かなり厳密だ。
しかし、学校や会場の都合で違う方式にするのは、許されないことなのか。

 卒業式は、生徒の卒業を祝い、前途を励ますためのものだ。在校生や教師、父母らが
、それぞれの学校の特色や校風をもとに、どんな式にするのか知恵をしぼり、心をこめ
て卒業生を送り出すことが何より大切だ。

 国旗を掲げ、国歌を歌うこと自体が式の目的ではない。都教委は今回、職員を派遣し
て掲げ方や歌い方を細かくチェックした。果たしてそこまでムキになることなのか。教
育の本質とは離れたところで不毛な空中戦をやっているように思えて仕方がない。

 学習指導要領は、「入学式や卒業式などにおいてはその意義を踏まえ、国旗を掲揚す
るとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする」と定めている。99年に制定さ
れた国旗・国歌法が、それを後押ししている。

 しかし大事なのは、当時の国会論議でも小渕恵三首相らが述べたように、個々人に強
制するものであってはならないということだ。日の丸・君が代は戦前の経緯もあり、争
いのあるテーマだった。特に君が代には、抵抗感を持つ人も少なくない。思想・信条に
もかかわることであり、その自由は保障されなければならない。

 学校においても、基本的には同じだ。学習指導要領の規定について村山富市首相(当
時)は、「児童・生徒の内心にまで立ち入って強制する趣旨ではなく、あくまで教育指
導上の課題として指導」との見解を示している。

 都教委は生徒が集団で起立しなかったり、歌わない場合は担任教師を処分する方針も
打ち出したがこれは明らかに行き過ぎだ。

 教師については政府は、国旗・国歌法制定時から「国旗・国歌の教育指導は教職員の
責務であり、従わない場合は、地方公務員法に基づき懲戒処分を行うことができる」と
してきた。公務員にも内心の自由はあるが、政府見解の通りだとしても、起立しないこ
とをもって処分し、事を荒立てるのは、決して好ましいことではない。

 都教委の通達で、日の丸・君が代に対する愛着が深まる、教育がよくなる、とは思え
ない。もっとほかにすることがあるはずだ。
毎日新聞 200445日 2359

***
国旗・国歌 力ずくはなじまない 茨城新聞 4/5 社説

 東京都教育委員会は、都立の高校や盲・ろう・養護学校の卒業式で、君が代斉唱など
の際に起立しなかったとして教職員百七十人余りを職務命令違反で戒告処分にした。引
き続き小、中学校での卒業式の不起立者も処分する方針という。
 国旗・国歌は国民統合のシンボルのはずである。日の丸や君が代に対する敬意は自然
にはぐくまれてこそ根付くもので、力ずくで形だけを整えるようなやり方はなじまない
。処分に至る経過は強引にすぎる。都教委に自制を求めたい。
 都教委は昨年十月、各校長あてに通達と実施指針を出した。
 「国旗は式典会場の舞台上正面に掲げる」「教職員は指定された席で国旗に向かって
起立し、国歌を斉唱する」。国旗の掲げ方から、卒業証書の授与の仕方まで事細かく指
示している。
 学校の現場はロボットの集まりではない。通常の教育活動については現場の創意工夫
を求めているのに、国旗・国歌の問題に限って職務命令まで持ち出し、ここまで口を挟
むのはどうみても異様だ。
 卒業式の主役は子どもであり、保護者である。ようやくここまで育ってくれたか、と
胸を熱くする親も多いだろう。
 養護学校の卒業式でのことだ。都教委の通達で「舞台壇上に演台を置き、卒業証書を
授与する」とされた結果、舞台に上がるためにスロープが設けられた。
 昨年までは、平面のフロアで実施しており、生徒は補助器具などの力を借り、自力で
歩いて証書を受け取ることもできた。だが今年はスロープになったため、自力歩行がで
きなくなり、介助され、車いすで運ばれる卒業式になったという。
 「自分の力で卒業証書をもらうのをリハビリ訓練の目標にする子どももいる。一体だ
れのための卒業式か」という親の嘆きをどう受け止めるか。
 国旗国歌法は成立したが、日の丸・君が代について人が抱く思いはさまざまだ。日の
丸や君が代が好きだという人もいる。日の丸は好きだが、君が代は嫌だ、という人もい
る。戦争体験などから、どうしても受け入れがたい人もいる。
 法はできたが、歴史から自由になったわけではない。あまり強引な指導をすれば、か
えって子どもたちに、国旗・国歌に対する嫌悪感さえ生むことになりかねない。この問
題が先生たちを委縮させエネルギーを奪っていることも見逃せない。
 サッカーなど国際試合での国歌斉唱は、強制とは無縁である。国旗国歌法に尊重義務
がないのも、一般社会の常識では、強制はなじまない、とみられているからだ。
 この問題で、学校だけを突出させるのはもうやめた方がいい。子どもを忘れ、学校を
大人の代理戦争の場にした愚を繰り返してはならない。


***
琉球新報 社説 4/5
入学式と君が代・斉唱の強制はなじまない

 もうすぐ入学式シーズンを迎える。公立学校では、式典で日の丸を掲げ、君が代を斉
唱する準備も進められている。過去の戦争と関連付けて君が代を歌うことに抵抗を感じ
る人もいる。君が代斉唱は、強制することなく、自然に任せることを望みたい。

 東京都教委は都立の高校や養護学校の卒業式で君が代斉唱の際に起立しなかったとし
て教職員百七十人余を職務命令違反で戒告処分にした。

 国旗・国歌は国民統合のシンボルのはずである。日の丸や君が代に対する敬意は自然
にはぐくまれてこそ根付くもので、力づくで形だけを整えるようなやり方はなじまない


 実際の卒業式でも都教委は、監視役の職員を学校に派遣し、座席表と対比して実施状
況をチェックしている。力づくを象徴するやり方だ。

 国旗国歌法が成立したとはいえ、国民の間に根強い抵抗感があるのは事実だ。処分さ
れた教職員は式典を妨害したわけではない。起立しなかっただけで処分というのは、や
はり度が過ぎる。

 国旗国歌法はできたが、歴史から自由になったわけではない。天皇のための戦争で多
大な犠牲を払った沖縄ではなおさらだ。強引な指導をすれば、かえって子どもたちに、
国旗・国歌に対する嫌悪感さえ生むことになりかねない。

 幸い、県内では東京都のような強引な事例は報告されていない。式典では校歌斉唱な
どのため起立した状態のまま君が代を流して歌ったことにしているのが一般的だ。全員
起立の状態から着席するにはエネルギーが要る。この問題が先生たちを委縮させている
ことも見逃せない。

 入学式や卒業式の主役は子どもであり、保護者である。ようやくここまで育ってくれ
たか、と胸を熱くする親も多いだろう。何かを強制される場ではないはずだ。

 サッカーなど国際試合での国歌斉唱は、強制とは無縁である。自然な感情を認めよう
。それが平和な社会だ。この問題で、学校だけを突出させるのはもうやめた方がいい。
 

***
陸奥新報 社説 4/2
都の教職員処分は行き過ぎ
 
 東京都教育委員会は三十日、卒業式で「君が代」斉唱時に起立しなかった都立高校お
よび都立盲・ろう・養護学校の教職員約百八十人を、戒告などに処することを決めた。
起立しなかった嘱託教員は契約を打ち切る方針だ。
 百八十人という大量の教職員の処分は異例である。しかも「君が代」の斉唱時に起立
しなかったという理由での処分は、いささか行き過ぎではないのか。東京都の強引なや
り方に違和感を覚えた国民も多いに違いない。
 今回の教職員の処分は常道を逸していると言っていい。東京都教育委員会は昨年十月
、「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について」という通達を発
している。実施指針を記し、適正な実施が行われるよう指導している。
 国旗は式典会場の舞台壇上正面に掲揚する。国旗を舞台正面に向かって左、都旗を右
に掲揚するよう位置も定めている。式次第には「国歌斉唱」と記載し、斉唱に当たって
は、式典の司会者が「国歌斉唱」と発声して起立を促し、教職員は国旗に向かって起立
し、斉唱することと実施指針を示した。通達に基づく校長の職務命令に従わない教職員
は、服務上の責任を問われるとした。卒業式当日、都教委は監視役の職員を学校に派遣
し、卒業式に目を光らせた。
 そうまでして国旗の掲揚を徹底させ、参加者全員を起立させ、国歌を斉唱させなけれ
ばならないという都の考え方は危険に思われる。
 政府は一九九九年、「国旗及び国歌に関する法律」を施行した。日章旗、いわゆる日
の丸の旗はこの時に正式に国旗と定められた。日章旗が国旗と定められてまだ年月の浅
いことを意外に思う人も多いだろう。
 日章旗は一八七〇年に制定された「太政官布告第五七号商船規則」に基づき、それま
では習慣的に国旗として扱われてきたにすぎなかった。
 だがこの旗の下、さまざまな国策が行われてきた。日清、日露、太平洋戦争において
は、国民は日章旗を振って出征兵士を送った。戦争の忌まわしい記憶と深く結びついた
日章旗に対して、いまだに嫌悪感を抱く国民がいることも否定できないだろう。
 一方でワールドカップやオリンピックなどの国際試合で、日本の選手を応援する時に
日章旗を振るのは、日本人として自然な感情だ。表彰式で日章旗が揚がり、国歌が流れ
るのを聞く時に、熱い思いを抱くのもまた自然な感情であろう。
 だが、国旗と国歌に対する国民の考え方はさまざまであるのが現状だ。国歌と国旗で
愛国心を高揚させようという考えの人もいるだろう。戦争の記憶と結びついた日章旗や
君が代に抵抗感を持つ人もいるだろう。強制的に起立させられたり、歌わせられること
を好まない人もいるに違いない。
 さまざまな信条や思いを持つ人に対し、罰則を設けることで強制的に国歌を歌わせる
ことは逆に反発を生むだけである。日章旗は侵略戦争に利用されるなど不幸な過去を持
つ。二度と国旗や国歌が戦争のシンボルとならないよう願う。日章旗が平和の象徴とな
れればいい。国歌や国旗に対して国民全体の理解を得るためには、力ずくの手段を採る
ことは避けたい。
 
***
AP
Tokyo school board punishes defiant teachers over anthem
By Kenji Hall in Tokyo
April 2, 2004

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Tokyo's school board has punished 176 teachers who refused to stand and sing t
he national anthem at graduation ceremonies, drawing fire from parents and tea
chers in an intensifying dispute over patriotism in public schools.

The Tokyo Board of Education ordered the city's 347 public schools in October
to ensure teachers stood to sing the national anthem at school ceremonies when
 the nation's flag is raised.
Japan's left-leaning teachers' unions view the a
nthem and flag as symbols of a militaristic past.

The board said on Wednesday that it had formally reprimanded the 176 teachers
at 77 schools for defying the policy at graduation ceremonies last month. Five
 of the teachers, whose short-term contracts were ending, would not be rehired
, it said.

Most of the teachers reprimanded stayed seated during the playing of the natio
nal anthem, which honours the emperor. A few walked out or did not attend, and
 one refused to play the piano accompaniment.

Teachers have challenged the policy in court as a violation of their constitut
ional right to free speech, and a group of parents protested at the punishment
s.

"We don't believe education can be achieved by punishing teachers," said Eriko
 Maruhama, 52, a mother of two who has helped collect 6000 signatures opposing
 the policy. She said parents were uneasy with the historic baggage carried by
 
Japan's national symbols, which are still associated with the jingoistic poli
cies that led to World War II.

Tokyo is the only city whose school board has made it mandatory for teachers t
o show respect for the flag and anthem.

Associated Press

***
The Guardian
Tokyo staff ordered to be patriotic

Justin McCurry in Tokyo
Friday April 2, 2004
 
Japan's political drift to the right reached state schools yesterday when the
Tokyo board of education punished more than 170 teachers for refusing to show
respect for the national flag and anthem at graduation ceremonies last month.
Five of the teachers, retired people who had been employed on annual contracts
 until the age of 65, were effectively sacked by having their contracts sudden
ly rescinded, a union official said.

A board statement that it had reprimanded 176 teachers at 77 schools for defyi
ng a city ordinance introduced last October requiring them to stand during the
 playing of the anthem, which reveres the emperor, and to observe the national
 flag.

The teachers have asked the courts to say that the order violates their consti
tutional rights, and a parents' group has drawn up a petition calling for it t
o be overturned.

"The constitution guarantees freedom of speech, so whichever way you look at i
t, it is wrong to force teachers to do this," Akiko Asaoka of the All-Japan Te
achers
Union said.

Although used on national occasions, the flag and anthem were not officially r
ecognised until 1999, after decades of dispute between successive governments
and teachers' unions. Respecting the symbols was made compulsory, but the educ
ation ministry made it clear that objectors in schools would not be punished.

Earlier that year a high school principal in Hiroshima killed himself after be
coming embroiled in a dispute between teachers and the local board of educatio
n.

Tokyo is the only city to punish teachers en masse for refusing to observe the
 regulation.

Rebel teachers who receive three warnings could lose their jobs, Ms Asaoka sai
d. Several of those disciplined yesterday had already been warned after remain
ing seated at other official ceremonies. They face a third caution later this
month when Tokyo schools hold entrance ceremonies.

The controversy reflects a wider dispute about what role, if any, patriotism s
hould play in public education.

Special report
Japan