落合栄一郎氏からのお便り:

福井氏講演「アメリカの大学の年俸制、任期制」に関して

 

Academia e-Network Letter No 92 (2004.04.09 Fri)
         http://letter.ac-net.org/04/04/09-92.php
        
ログ http://letter.ac-net.org/log.php より


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福井氏の講演の内容に全面的に賛成するものです。私も及ばずなが
 
ら、アメリカの大学−私の場合は私立の4年制大学(いわゆるリベ
 
ラルアーツカレッジ)ですがーの実情をなんとか知ってもらおうと
 
「高等教育フォーラム」などに投稿を試みてきたのですが、どうも
 
日本では、アメリカの事情を知らないかまたは曲解しているケース
 
がかなりあるように感じていました。

 
日本で、大学教職員に「任期制」を採用する動きがあると聞いて、
 
どこからそんな案が出てくるのだろうと不思議に思っていました。
 
アメリカでは、普通最初の5−6年間はプロベーショナリー期間で、
 
その間にその人物の能力その他が評価されて、それをパスすると通
 
常昇任し、テニュアーを得ることになり、それ以後は、よほどのこ
 
とがないかぎり終身雇用状態になる。テニュアー取得後の教師の精
 
進も数年毎にある程度の評価が行われるようにはなっている。しか
 
し刑事事件を起こすとか、大学側の経済事情の変化などの極端な場
 
合を除いて、首を切られることはない。また小さな大学では、各学
 
科内の教師も数も少なく、接触も密なので、怠けているという状態
 
は居心地を悪くする。

 
教師の評価、特に私共の所のように教育主体の大学では教育評価に
 
重点が置かれるのでその評価はかなり徹底して行われるが、それで
 
も絶対的なものはないし、教育効果は授業終了時点で計ることは不
 
可能である。私自身も評価委員を何年も勤めたので、その困難さは
 
承知しているが、そのなかで最善を尽くす努力はしている。

 
「年俸制」とはどういうことを意味するのか、福井氏の講演内容か
 
らは判断しかねるが、給料が年毎に教師の成果に依存して決められ
 
ることを意味するのでしょうか。研究主体の大学教員の場合、その
 
研究費から、研究するための時間を買う(教育義務を減らす)がで
 
きるようになっていることは周知のことと思う。教育主体の大学の
 
場合には、給料はランクと経験年数によって大体決定される。我々
 
のような小さな私立大学は財政基盤は豊かではないので、教師の給
 
与を決定するのは容易ではない。教員側には大学側と給与その他に
 
関して交渉するための委員会があり、毎年昇給の要求を大学側に提
 
出するが、最終的には理事会のさじ加減で決まる。

落合栄一郎
JUniata College
Huntingdon, PA, USA