教員組合:学部カリキュラム保障期間に関する学長・事務局文書について―学生の権利保障と学内民主主義を―

 

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学部カリキュラム保障期間に関する学長・事務局文書について
     -学生の権利保障と学内民主主義を-

          2004年4月27日 横浜市立大学教員組合

 今月の入学式およびオリエンテーションにさいして、事務局からは「市立大学改革推進の取り組み」という文書(付録1として抜粋を添付する)が、また、小川学長の名で、「学生・大学院生の皆さんへ 新大学(法人設置)の開設にともなう現大学(横浜市設置)の学生の教育保障について」(付録2として抜粋を添付する)と題する文書(ともに日付なし)が配布された。
 この二つの文書において事務局および学長は、商学部・国際文化学部・理学部(以下3学部)および看護短期大学部に入学した学生が、現学部・現短期大学部に在籍する期間を平成20年度(2008年度、以下西暦で記す)までとし、同年度までに卒業しない学生については、翌2009年度から新学部へ学籍を移したうえで、現3学部・現短期大学部の教育課程を履修すること、その場合、卒業証書等には現学部の教育課程を修めたむねを証することをうたっている。
 以下に見るように、両文書の述べている措置が実行されれば、重大な問題が生じる。問題点はあまりにも多いが、以下おもな点にしぼって我々の見解を述べる。

 第一に、この措置は学生の権利を著しく損なうものである。学生は、当然、現3学部・現短期大学部の学則の許す期間内に現3学部において教育課程を履修し、現3学部・現短期大学部を卒業できるものと考えて当該学部に入学している。3学部について言えば、現行の学則は、8年間の在学を認めており、休学期間のある場合、最大12年間の学籍維持を保障している。他の大学においても8年間の在学期間を保障しているのが通常であり、入学した学部において当然8年間在学することができると期待することは、社会通念上、当然の権利となっている。
 これまでの国立大学における同様の例において、学部の統廃合等の移行措置のさいには、一,二の例外を除いて、旧制度の在学生がいなくなるまで旧学部等は存続させるという措置を採っており、本学において旧文理学部を改組した際にも同様の措置を採っている。
 このように見ると、現時点における在学生は、現行の規定の保障する期間、現学部に在学する権利を有しているとみなすべきである。したがって、本年度3学部入学生は、退学処分等のない限り、本年度から12年間、すなわち2015年度まで現学部に学籍を持つ権利があり、大学は、この権利を保障する義務があるのである。すなわち、現3学部は、2015年度まで存続しなければならない。それよりも前の期間に現学部における在学期間を打ち切ることは、たとえ新学部への移籍後の、現学部教育課程履修を保障するとしても、契約違反にあたり、不当な権利侵害である。
 念のため申し添えれば、同じ理由から、留年・休学をしなかった場合に現在4年次学生となっている3学部2001年度入学生も、2012年度まで在籍する権利を有するのであり、両文書の述べる措置は、新入生のみならず、ほとんど全ての在学生の権利をも侵害するものである。
 なお、学長は「皆さんが現学部を卒業できるよう、個別の指導・相談に応じます」と述べているが、もしこれが、2008年度までに卒業するよう学生に「指導」することを意味しているのであれば、学生の権利を侵害する不当な指導を予告するものであり、良心的な教員はそのような「指導」をすることはできない。
 また、このような学籍の扱いに関する重要な変更は、遅くとも本年度入学生が入試要項を入手するよりも前から、すなわち、昨年中においてそのような予定を公表しておかなければならない。そのようなことは行われなかったので、入学時に両文書をもって周知したとしても、不当性を回避するにはすでに遅い。

 第二に、現3学部の存続を2008年度までとする根拠が明らかにされておらず、上記のような学生の権利侵害を正当化するような、十分な理由があるとは考えられない。学長、事務局も認めるように、2008年度以降も在学している現学生については、現行教育課程を保障しなければならないが、そのような保障のためには、本年度入学生が全員卒業するまで、現学部を存続させることが、最も合理的である。

 第三に、新学部において単位の読替えが可能なのか、きわめて疑わしい。両文書は、2008年度を越えて在学する学生については、新学部の科目を履修し、単位の読み替えをすることで、現学部の教育課程を修了できるように保障するとしている。しかし、本年3月25日に発表された、横浜市大学改革推進本部の「国際総合科学部(仮称)コース・カリキュラム案等報告書」を見るかぎり、新学部の科目は、現3学部の科目に比して、科目数がいちじるしく少なく、対応する科目が見当たらない場合がきわめて多い。したがって、両文書のうたうような「単位の読替等」が実際に可能なのかきわめて疑わしい。特に教職課程の科目に関しては、新学部のカリキュラム案が、英語と理科を除いて教職免許を取得できなくする方針であるために、消滅する予定のものが多く、したがって、これら教職課程科目についての単位読替は不可能であると予想される。学長は「安心して勉学に励んでください」と言っているが、はたして安心していられるのか? 学長・事務局は、このような「単位の読替等」がどのように可能なのか、説明しなければ、学生を瞞着する無責任な態度を取っていると非難されてもしかたがない。

 第四に、このような措置を事務局と学長が、学内の議を経ずに、一方的に通告したことは不当である。この措置が現学部の存続期間を定めようとするものであるにもかかわらず、事前に当該学部の教授会の議を経ることもなく、大学の最高意思決定機関である評議会の決定も経ていない。このようなやりかたは、すでに今回の改革にさいして、さまざまなかたちで行われ、我々が再三その都度批判してきた他の措置と同じく、学内民主主義と大学自治を踏みにじる行為であり、学校教育法第59条 の「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」とする規定に違反するものであり、ひいては日本国憲法第23条の定める学問の自由の原則に違反するものである。また、当事者である在学生に対してもなんら事前の説明をしておらず、この面でも学内の民主主義的な意思形成のプロセスを無視する、事務局・学長の強権的な体質を露呈させるものである。

 以上のように、さまざまな問題点がある今回の措置に対して、我々は強く抗議し、学生の権利を保障するよう要求し、大学自治の原則を尊重してきちんとした教授会、評議会等での討論を通じての決定の手続きを取るよう強く求めるものである。


2004年4月27日
横浜市立大学教員組合



付録1 「市立大学改革推進の取り組み」
独立行政法人化後、学部が統合される商学部・国際文化学部・理学部や、4年制化する看護短期大学部へ入学した学生の教育保障について

 平成16年度以前に現大学の商学部、国際文化学部・理学部及び看護短期大学部に入学した学生に関しては、在学期間中、現行カリキユラムの履修を保障します。ただし20年度までは独立行政法人化後の大学の学部として、商学部、国際文化学部及び理学部を存続させますが、21年度以降は新たな学部に籍を移し、現行の教育課程を履修することとなります。この場合、卒業証書等においては、例えば「商学部の教育課呈を修了した」ことを証することになります。


付録2  小川恵一学長「学生・大学院生の皆さんへ 新大学(法人設置)の開設にともなう現大学(横浜市設置)の学生の教育保障について」

 本学は、平成17年4月に独立法人化し、新たな横浜市立大学へ生まれ変わりますが、既に市立大学に在学している学生・大学院生の皆さんの教育課程の修了に必要な授業科目の提供については、在学期間中保障しますので、安心して勉学に励んでください。
 なお、教育保障の内容は次のとおりです。

1 商学部、国際文化学部及び理学部
(1) 商学部、国際文化学部及び理学部は、平成20年度まで、新たに横浜市が設立する公立大学法人の設置する大学の学部として存続させます。従って、現大学に入学した学生は原則として、現学部で卒業することになります。皆さんが現学部を卒業できるよう、個別の指導・相談に応じます。
※具体的には、市立大学商学部(他学部も同様)の学生は市立大学商学部での卒業となります。

(2) 休学などやむを得ない事情により、20年度までの卒業が困難な学生についいては、21年度から新学部への学籍を移し、新学部において現学部の教育課程を履修するものとしますが、単位の読替等には十分に配慮します。
※この場合においても、学籍は新学部となりますが、卒業証書等においては、例えば「商学部の教育課程を修めた」ことを証することになります。
(3) 教職課程、司書課程、司書教諭課程については、入学した時点で取得が可能であった資格について必用な授業科目を、20年度まで提供します。
(4) 在学期間は、現在の学則で定める期間とします。(休学等を含めて最大12年)
[参考図、略]

2 医学部及び医学研究科
 学部名等に変更がありませんので、法人移行と同時に、新大学に移籍するものとします。

3 医学研究科以外の大学院及び看護短期大学部
 医学研究科以外の大学院及び看護短期大学部は、16年度以前の入学生が在学しなくなるまで存続させます。在学期間は、現在の学則で定める期間とします。