小川学長答弁:『社会が成熟しているので,学問の自由や大学の自治を犯すことはない』

――横浜市議会大学教育委員会傍聴記 理学部 一楽重雄―-

 

 

 

 

 

横浜市議会大学教育委員会傍聴記

理学部

一楽重雄

630日午前10時から議会は閉会中ですが,大学教育委員会が開かれました.数理科学コースの廃止についてどんな議論がなされるか,最後の奇跡が起きないかと思って委員会を傍聴してきました.全体としては,ボタンを大きく掛け違ったまま,こんな改革案が堂々と世の中をまかり通ってしまうのか,これが日本の社会であるのか、というのが私の感想です.長年勤務した数理科学科の消滅が決定する,その最後を見届けた思いがします.十分予想はしていても,なんともやりきれない思いでいっぱいです.

数理科学の問題以外のことも,きちんと聞いておこうと思っていたのですが,一部,聞き取れなかったり,意識が集中できなかった部分もあり,この記録は完全なものではないことをお断りいたします.特に、議会関係の日程について当局から説明があったのですが、メモに取りきれなかったので省略します。その他も、私のメモと記憶にもとづき書いていますので、「おおざっぱに言ってこのようだった」というようにご理解いただきたく思います。質問と答弁がかみあってないように見える点も、私が聞き取れなかったためである場合が多いでしょう。

 

議題:大学改革の経緯と今後の取り組みについて

 

開会後,議題に入る前に川辺委員長から孫福大学改革推進本部最高経営責任者が亡くなられたことが報告され,弔意が表された.

議題に入って,まず,当局からの説明という事で,清水事務局長がこれまでの大学改革の流れを30分弱に渡ってひととおり説明した.大学改革の必要性についての説明で,財政問題をまったく出さなかった.

今後のスケジュールとして以下のことが示された.7月に文部科学省へ届け出または申請,順調にいけば8月に届け出受理,11月に法人設立の届け出を行う.171月の定例会(議会)で,交付金を決定する.その他,議会との関係について説明があった.

次に、公立大学法人横浜市立大学について,その概要が説明された.

局長の説明が終わって質疑に入り,自民党の鈴木議員が次のような質問を行った.

(答弁は、ほとんど局長。一部、岡村部長。)

鈴木議員:これから入る学生,市民の視点からは,大学像が見えてこない.カリキュラムなどが見えない.

答弁:高校などへのPRは考えている.説明会やオープンスクールもする。

鈴木議員:コースカリキュラム案は,決定かまだ変わりうるのか.

答弁:細部は変わりうる.

鈴木議員:中期目標は,いつまでに出すのか.

答弁:「法人の意見を聞いて」となっているが,4月1日までには出す.作成方法は検討中.

鈴木議員:設置者がコース案を大きく変えているが,全体としてどうしてこうなったのか.答弁:市が有する意味などを考えて…等.

鈴木議員:経営について.外部資金の導入が謳われているが,具体的にはどうか.それはいままでも出来たのではないか.

答弁:市の財政支援が重要.運営交付金については市全体の中で考える.

鈴木議員:運営交付金の考え方は?

答弁:現段階で想定しているのは,これまで国が負担してきた分,私立大学との授業料の差,地域貢献などを考慮する.

鈴木議員:病院について,経営三カ年計画をオープンにせよ.

答弁:単年度主義から,三カ年計画は内部文書でしかない.説明はする.

鈴木議員:教育に関して. コースカリキュラム等プロジェクト部会の決定は後退しているのではないか.

答弁:コースカリキュラム等プロジェクト部会には設置者ではなく教員も入って検討した.鈴木議員:その辺にあるような大学になってしまってはもったいない.個人的な考えだが,大学院の中にプロフェショナルコースを設けた方がよいと思うが.

答弁:その議論もコースカリキュラム等プロジェクト部会で出たが,来年4月ということでは,現有の教員のこともあり時期早尚である、近い将来の課題.

鈴木議員:他からの人材確保と同時に今の教員に対して研修などで,トータルのレベルを上げよ.

学長答弁:社会の変化が激しく,10年で通用しなくなる.学問が社会にとっても重要となってきた.日本の大学は試行錯誤段階,これから作り上げてゆく.

鈴木議員:「まあ,この程度の大学」ではなく,突き詰めてよい大学にしてほしい.

 

続いて関議員が質問.

関議員:「府」という言葉が文部科学省で認められなかった理由.「系」という言葉を使う理由は?

答弁:府は,九州大学の大学院で使われていること,一般に府は学部より大きいと理解されること.

関議員:学科をやめて,系にした理由.

学長:系は,学問間の壁が薄い感じでよい.

関議員:学長とは意見が違う.学科の方がよかった.

関議員:評価プロジェクト委員会の中間案について.国会の付帯決議にもあるように,学問の自由,大学の自治について配慮したのか.中間案では,評価委員会に外部から二名入ることになっていて,これは,大学の自治の観点から問題.評価の視点として外部資金の獲得、地域貢献として市や政府機関の諮問委員,学内貢献として共同研究などがあげられている.これらは,学問に制約を与えるものとなりうる.

答弁:あれは中間案であり,これから中味を詰める.中間案は教授会にも説明したところである.意見を聞いて作り上げる.(これは、事実と違う答弁。教授会には説明していない。)

学長:社会が成熟しているので,中間案のように行っても,学問の自由や大学の自治を犯すことはない.

関議員:そんなことはない、問題だ。

関議員:教職課程について.理科,英語は心配ない.数学については,講義科目が少なくなり魅力が減る,教職を取る学生が少なくなるのではないか.需要は大きく,入試倍率も高いのに.これから変わりうるか.

答弁:文部科学省の指導などに合わせるために細部は変わりうるが,大きくは変わらない.

関議員:要望として言うが,数理科学コースを復活させていただきたい.

続いて,小幡議員の質問.

小幡議員:任期制,年俸制はいつごろまでに決めるか.

答弁:プロジェクトでは,9月までにまとめる.

小幡議員:木原研に関してのスケジュールは?

答弁:中期計画をうけてから.(と言ったようだったが,よく聞き取れず自信がない.))

次に石井議員の質問

石井議員:教育については分かったが,経営について分からない.理事長予定者の選任はいつごろまでに?理事はどういうジャンルの人を選ぶか.研究費の取り扱いなどをより自由にするのか.

答弁:自主的な経営,自主財源を増やす.理事長予定者はなかなか難しい.理事は,外部からは企業経営者,本学卒業者などを考えている.知的財産の管理も重要.

石井:教授会と経営、研究教育審議会との整合性は.

答弁:審議会は重要事項.教授会は教務に関すること.

石井:看護短大はいつごろ4年制にするつもりか.

答弁:来年4月

横山議員:「非成長,非拡大」と言っている.それは正しいが,一方,「発展する国際都市横浜」とも言っている.前者にとらわれて発展しないのでは困る.

答弁:従来のような成長,拡大がないということであり,安定的発展はあると考えている.

横山議員:教員の獲得は重要.今いる優秀な教員も重要.各人への年俸などを示すのは9月か.優秀な教員に,早く,よい年俸など正当な評価を示さないとよそへいってしまう.

答弁:9月は制度設計.

横山議員:数理科学の問題は,基本的で学問への姿勢の問題で重要である.学長の見解は.

学長:数理科学は重要.教養として幅広く分布させた.専門家の養成はしない.

関議員:年俸制や任期制の根拠は.

答弁:新たな大学像.

関議員:任期制,年俸制は労働条件であり,関係者と話し合いをしてほしい.

答弁:まだ,意思形成過程である.教授会の場を借りて説明.9月には案が出来る.必要な手続きは行う.