小川惠一学長インタビュー 特集:市大改革 「横浜市大新聞オンライン」(2004.8.4)

 

http://www.geocities.jp/ycu_press/reform/0408-pr-ogawa.html

 

 

特集:市大改革 

小川惠一学長インタビュー

 横浜市大新聞は7月5日、本学の小川惠一学長に単独インタビューを行った。インタビューの中で小川学長は、改革が性急だったことを認めつつ、「財政が潤沢であったとしても改革は行われるべきだった」として必要性を強調、また学費の値上げについては、国立大学の制限である10パーセント以内にとどまるだろうという見方を示した。

「時間なかったのは認める」

――ここ2年急激に進められた一連の大学改革の目的は?

「大学改革は世界規模で行われている。昨今の急激な社会変化によって、大学は、今どこでも変革を迫られている。背景は一般的には少子化問題などがあげられているが、5年後には選ばなければ大学の倍率は1を切るという予測もあり、大きな流れの中に横浜市立大も身を置いている。私の考える要点は2つ。まず、日本において学問に期待されるものが非常に大きくなったということ。文系、理系に関わらず、学外から知的リソースを求める声は昔と比べてかなり大きくなり、大学は積極的に応えていくべきだと考えている。2つ目に、大学は研究を社会のニーズに合わせる必要がでてきた、ということ。もはや大学は昔のように『象牙の塔』ではいられない。アカデミックなテーマだけを扱っていては社会のニーズを満たしているとは言えない。独立行政法人化法が通り、急がなければならなかったので、時間がなかったのは認める」

――市の財政難によるものでは?

「確かに、横浜市の財政問題と横浜市立大学の運営は切り離して考えられない。しかし、先に述べたことが大学改革の要点だと考えるので、仮に財政が潤沢であったとしても改革は行われなければならなかっただろう」

――教員が市大から大量に流出しているが、原因は?

「いろいろある。純粋な向上心で出て行かれる方もいれば、市大改革の内容への反発から出て行かれる方もいるだろう。また行き先がなくても、辞職された方も何人か聞いている。ただ、学生への影響もあるので薄くなった部分は積極的に補充していく」

「カリキュラムは魅力的」

――次のカリキュラムで優秀な教員が集まる魅力は?

「十分にあると思っている」

――司書と司書教諭課程廃止の理由は?

「市大に限らず、これらの資格を持った人を供給してくれる大学は他にもある。応募は必要以上に多いのが現状であり、供給過剰なら減らすべきだと考えた」

――教職は3科目(英語・理科・数学)で決定か?

「今回のカリキュラムの中では決定している。しかし、今後要望が出てくれば、それを反映させるようなシステムにするので、復活する可能性はある」

検討委員の選抜方法は

――コース案等検討プロジェクト委員会の委員の選抜の仕方、または実際に選抜したのは誰か?

「選抜の仕方は改革推進本部が決めた。選抜は私も関与したが最終決定権は事務局長になる」

――穏健派ばかり選抜されているとの見方もあるが。

「少なくとも私の視点でそういう選び方はしなかった。ただ、やはり決定をスムーズに進めるため、市側は改革推進に理解のある人を意図的に選んだのではないか」

――学府設置の許可は下りたか?

「文科省では『学府』という名称が拒絶され、『学科』を用いることになった。設置審の議論のポイントとして名前というのは大きいので慎重に扱われているようだ」

今後について

――学費の値上げはあるか?

「今のところはわからない。万が一あったとしたら、10%以内という国立の水準に準じるつもりだ」

――冷房の設置は?

「古い変圧器を使用しているため、容量が小さく現状でもフルに稼動させている状態。教室に設置するためには、鉄塔をたてて高圧線を引くところからやる必要がある。財政難を考えると現実的な話ではない。ただ、市大を整備していく上で優先させて考えなければならない問題だとは認識している」
(福)

【論評】小川学長は大学改革への意欲を語るが、実際にはそのプロセスの大部分は市の事務局に委ねられている。7月に受験生向けに発行された大学案内には、どこの大学でも必ず掲載している「学長のあいさつ」が存在しない。学長自身、直前まで案内が発行されることさえも知らされていなかった。一連の改革が、学長ですら手の届かない場所で行われているとすれば、改革後にいくら評価システムを構築すると強調しても、学生や教職員が不安を抱くのは当然だろう。今からでも学生・教職員の意見を真摯に聞き、新しい大学像に少しでも「反映」できるシステムを作ることが必要だ。(細)