公立大学改革問題、横浜市大の小川恵一学長と都立大の石原慎太郎の場合

 

全国国公私立大学の事件情報 http://university.main.jp/blog/

http://university.main.jp/blog/archives/001617.html より

 

 

20040810

公立大学改革問題、横浜市大の小川恵一学長と都立大の石原慎太郎の場合

第1部2007年ショック走る(5)改革迫られる公立大(大学激動)終

日本経済新聞(2004/08/07

生き残りへ「第三の途」
 「累積負債は横浜市立大関連だけで千百四十億円にのぼり、横浜市民の負担になっている。現状のまま同校を存続する道はまったく考えられない」。自校の存在意義をここまで否定され、市立大の小川恵一学長は強いショックを受けた。
     
 中田宏市長の諮問機関に「市立大の今後のあり方」と題する答申を突きつけられたのは昨年二月。「学内では改革を進めてきたつもりだったのに、外部からはこんなふうに見られていたとは」
 八カ月後、市立大が出した答えはかなり大胆だった。二〇〇五年に法人化する。商学部と国際文化学部、理学部を統合する。教員に任期制や年俸制を導入する――
 生き残るための経営改革に、学内外から「大学運営への過剰な行政介入」といった批判が上がる。だが小川学長は揺らがない。「国立大と違い、公立大は自治体と一対一の関係。市民から評価されなければ存続できない。むしろ改革をチャンスと考えなければ」
 全国に公立大学は七十七校ある。だが法人化した国立大と生き残りをかける私大が入り乱れた競争が激化。その中で公立大は、県庁所在地周辺に複数の県立大と市立大が併存するなど、個々の存在が埋没しかねない状況にある。
 今の東京都立大の問題点はどこか。記者会見での質問に石原慎太郎都知事は三月、こう言い切った。「すべてだよ。すべて。大学の現況を世界的な視野で評価し直して、若者のためによりいい大学をつくっていく。そのための改革だから」
 都は来春、都立大など四大学をいったん廃止し、実学を重視した「首都大学東京」を新設する。やはり同大も学部を統廃合し、教員に任期制・年俸制を導入する。
 一部教員は「改革の進め方があまりに強引」と反発、新大学へ移ることを拒否する。とはいっても、都から都立四大学への支出は年間約百五十億円。
 都の幹部は「首都圏に大学は約二百もある。都民のニーズに応えず、何の特色もないミニ国立大の意識のままでは、これ以上の税金投入はできない」と突き放す。
 今春は兵庫県内の三大学が統合。来春は六都府県で統合などによる新たなスタートを切る。ただ複数の単科大を統合したり、短大を四年制にするだけの例も多い。
 法人化するかどうかも対応は分かれる。基本的には各自治体の判断で、法人化または法人化が決まっているのは十公立大だけ。「メリットがない」として、逆に自治体運営のままとする方針を表明する公立大も相次ぐ。
     
 こうした中、全国初の公立大法人として今春、秋田県に国際教養大が誕生した。授業はすべて英語、学生全員に一年間の留学を義務付け、図書館を二十四時間開放する。徹底した英語教育を柱に、型破りの施策を相次いで打ち出す。
 東京外語大学長などを歴任し、国際教養大の初代学長となった中嶋嶺雄氏は断言する。「教授会内部の問題、既得権益などしがらみが多い国立大と違い、公立大はかえって小回りが利いて独自色を打ち出しやすい」
 公立大の生き残りへの議論は今始まったわけではない。四年前に公立大学協会は「従来のような安易な国立大準拠路線を取るのではなく、国立とも私立とも異なる第三の途(みち)を創造的に選択していくことが必要」との報告をまとめている。
 志願者が数字のうえでは全員入学できる「全入時代」まであと三年。日本私立大学連盟の安西祐一郎会長(慶応義塾長)は「小さい大学もチャンスはある。従来のムラ社会から抜け出せない大学は沈んでいく」とみる。大学淘汰(とうた)の足音が近づく中、公立大はいまだ「第三の途」の模索を続ける。=第1部おわり

 

Posted by 管理者 : 20040810 00:25 | トラックバック