東京・横浜で突出する「設置者権限」論−公立大学『改革』と自治体の役割

 

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20040819

東京・横浜で突出する「設置者権限」論−公立大学『改革』と自治体の役割

東京・横浜で突出する「設置者権限」論−公立大学『改革』と自治体の役割

細井克彦

 国立大学法人化、学校法人・理事会機能の強化というかたちを取って、競争社会に向けて「設置者権限」の確立が図られているが、その行く末を暗示するような事態がいくつかの公立大学「改革」において生じている。
 現在の公立大学「改革」は、全国的な「改革」動向にあって、自治体の財政難が強調されるなかで、大学の再編統合と独立行政法人化を軸に進められている。前者は複数の大学を持つ自治体、例えば、宮城県、東京都、山梨県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県、長崎県などで進められている。後者は国立大学法人とは異なる形態を取ろうとしている。その特徴は、地方独立行政法人法の特例として「公立大学法人」を自治体と大学の判断で選択できる制度となっており、学長と理事長の分離も可能、中期目標・中期計画に対する設置者と議会の関与、大学専用の評価機関を持たない、教員の非公務員化など、国立大学法人制度よりもあいまいな点が多く、地方自治体の独自性と「設置者権限」を重視するかたちになっている。そこに、東京都四大学、横浜市立大学などに見るように、公立大学「改革」の難しさと危うさがある。
 二〇〇三年八月一日以降の東京都四大学をめぐる事態に対する都の大学管理本部の主張は、「『大学の統合』や『新大学への移行』ではなく、『四大学の廃止と新大学の設置』を行う」「四大学の廃止と新大学の設置は、『設置者権限』であり、これから設置者の責任の下で新大学の設計を行っていく」というものである。

大学との協議ご破算にして
 それまで曲がりなりにも大学と協議遷しながら都立の大学の「改革」構想を作ってきたが、これをご破算にして、一方的に「新大学」構想なるものを大学側に押しつけ、「旧大学とは協議をしない」とし、「首都大学東京」の教育課程編成等を大手受験塾に委託したり、「意思確認書」や「就任承諾書」の提出を求めるなど異例づくめの措置をとってきた。
 また、横浜市立大学でむ新市長が誕生するや大学とは無関係に「あり方懇談会」を作り、「廃止も選択肢」という答申を受けて、設置者と事務局が主導して任期制・年俸制の導入などの「改革」を進めている。そのもとで、いち早く「公立大学法人横浜市立大学定款」を議会で通過させ、学長・理事長分離型、教育研究審議機関への学外有識者の参入、学長選考会議に学外者を過半数配置などを決め、他の公立大学を先導している。
 東京都と横浜市で「設置者権限」による大学「改革」が突出しているが、その特徴は、従来の教授会・評議会などの大学阻織を通じての改革という方式を取らず、首長部局の諮問機関「あり方検討委員会」や「あり方懇談会」などで将来構成を作らせ、これを大学管理本部、大学改革推進本部などによって直接「改革」を進めるやり方を取っていることである。

「改革」の名でもくろむもの
 そこには、憲法が保障する学問の自由・大学の自治の尊重はもとより、大学の自主性・自律性を最大限発揮しうるための措置への配慮すら見えない。しかも、そこでは「改革」の名のもとに、産業開発を軸とした実学志向と人文科学系や基礎研究のリストラ、大学の単位認定の否定など、学問研究と高等教育の根本的な改編がもくろまれている。
 自治体は、当歌公立大学をたんに「地方自治体のシンクタンク」とだけ見ずに、「分権」時代にふさわしく地方自治の観点からこれを見直し、大学との間で改革のルールを確立し、大学の主体性を尊重しながら、協議と同意にもとづく改革を進める必要がある。
(ほそい・かつひこ・教育学者)
しんぶん赤旗(8/17)より転載

Posted by 管理者 : 20040819 00:39 | トラックバック