石原慎太郎東京都知事の『そもそもの狙い』

 

都立大の危機 --- やさしいFAQ http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/kiki.html より

 

 

・・・「新大学構想」を考えたのは,昨年4月の知事再選の時だろう。それまでの改革案を見ても,「大衆もびっくりするようなパンチ」がなかった。だから「新大学構想」をブチあげ,皆をあっと言わせた(これがそもそもの狙い)。「新大学構想」に反対しているのは,大学の先生。大学の先生は,「えらそうにしているから大衆の敵」。だから,思いつく限りの表現でいびってみる。「頭が固い」,「象牙の塔」,「保身的」,「タコツボ」,「保守的」,「古い」,「知的にうぬぼれている」などなど。ようするに,本当に「大学での教育や研究がどうあるべきか」なんてまーーーーったく考えていないのだ。・・・

 

 

O-9  なんであんなに石原知事は,「新大学」に反対する大学の教員のことを目の敵にするんでしょうか?  次へ

ポーカス博士

わしもいろいろと考えておったのじゃが,先日買った「石原都政副知事ノート」(青山やすし著 平凡社新書209)を読んだところ,前から思っていたことが裏づけられるような説明が出てきた。著者は第一期石原知事時代に副知事をしていた役人で,この本は基本的に知事を誉め称えるというスタンスで書かれている。しかし,都政の内情をある程度読むことができ,話半分に聞いても面白い部分もある。特に,以下の部分はおそろしい話じゃが非常に説得力があった。


P.203
私は、石原知事は、「他人の内心に関心がない」のだと思う。洞察力以前の問題だ。つねに考えているのは、マス(集団)としての大衆から「自分がどう見えるか」だ。「大衆が何を思っているか」だ。大衆の気持を先取りすることにおいて天才であることは、『太陽の季節』が証明している。
...
大衆は、一般に、内省的ではない。直感的、衝動的だ。

P.204
「石原さんは面白い」
「石原さんの言っているとおりだと私も思う」
「私の気持を代弁してくれた」
「石原さんなら何かをやってくれそうだ」
「石原さんに、あいつらを懲らしめてもらいたい」
そういう声をよく聞く。しかし、「石原さんが正しい」という声は聞かない。
当然だ。正しい話は、つまらない。プレスだって報道しない。正しい話をするのではなく面白い話をするからプレスも報道するのだ。知事らしくない、意外な表現をするから、報道されるし、大衆も面白がる。


そう,こういう人が東京都の知事をやっているのだ。ようするに,「正しいこと」を見据えて,世の中のためになるような政治をやるのではないのだ。著者の言葉を借りて言えば,「内省的でない直感的で衝動的な大衆にうけるような」発言をして,行動するのだ。
 「新大学構想」を考えたのは,昨年4月の知事再選の時だろう。それまでの改革案を見ても,「大衆もびっくりするようなパンチ」がなかった。だから「新大学構想」をブチあげ,皆をあっと言わせた(これがそもそもの狙い)。「新大学構想」に反対しているのは,大学の先生。大学の先生は,「えらそうにしているから大衆の敵」。だから,思いつく限りの表現でいびってみる。「頭が固い」,「象牙の塔」,「保身的」,「タコツボ」,「保守的」,「古い」,「知的にうぬぼれている」などなど。ようするに,本当に「大学での教育や研究がどうあるべきか」なんてまーーーーったく考えていないのだ。
 このような「ウケを狙う政治家」と「面白さを求める一般人」,「面白いニュースだけを報道しようとするマスメディア」が,今では複合的に相互作用している。これらは,現代社会を非民主的にしている3つの致命的要因だ。例えば,一般人が気づいていないうちに,アメリカはイラクに大量の劣化ウラン弾を使用した。イラクでは,今でも深刻な放射能汚染が問題になっているのに,そのことをまったく問題にせずにいる被爆国日本の政府。そして,ほとんどそのことを伝えないマスメディア。憲法違反の自衛隊派遣の裏には,こんなに危険な状態があることを,どれだけの日本人が知っているだろうか?
 「うまいラーメン店の紹介」みたいなテレビ番組を見て面白がっている視聴者。そしてその視聴率を気にして番組を作るテレビ会社。これだけではいけない。世界で日々起っていることを,(政府よりではなく,面白さ本意ではなく,アメリカの視点だけではなく)きちっと問題を掘り下げて報道するニュース番組が日本にないというのは,あまりにも情けない。国民がもっと積極的に,公の場で発言していくことが,今ほど求められている時代はない。そこから変えるしか手はないのではないか。