『石原都政を動かすマッチョ』 靖国、天皇、国歌の本気度

石原都知事のもとには、なぜか、マッチョな人が集う。生来のものなのか、石原氏をまねたのか、複雑に絡み合って、都政がさらに右傾化していく。

 

AERA ‘04.8.30号 http://www3.asahi.com/opendoors/zasshi/aera/ より抜粋

 

 

・・・

「超攻撃型3トップ」

都教委が力を入れている国旗掲揚と国歌斉唱も知事になる前は、執着をみせていなかったことの一つだ。

毎日新聞(1999313日付)に掲載されたインタビューは興味深い。

―― 日の丸、君が代を学校の行事に強制しますか。

石原 日の丸は好きだけれど、君が代って歌は嫌いなんだ、個人的には。歌詞だってあれは一種の滅私奉公みたいな内容だ。新しい国歌を作ったらいいじゃないか。好きな方、歌やあいいんだよ。

ところが、石原都政が誕生すると、事態は一転する。

「超攻撃型3トップ」の教育委員3人が「日の丸・君が代」を強行に推し進めた結果、教育現場での完全実施となった。

3トップとは、石原氏と一橘大学同窓の鳥海巌・元丸紅会長と、棋士の米長邦雄・永世棋聖。それに、都庁出身の横山洋吉教育長の3人だ。

・・・

鳥海氏は、国旗・国歌に反対する教職員を指して、「半世紀巣くっているガン。徹底的につぶさないと、禍根が残る」と言い放ち、米長氏も、「都教委の指導に逆らった都立校の校長は呼びつけ、おわびさせるべきだ」といった発言で教育委員会をリードしていった。

・・・

教育長の横山氏は20007月、総務局長から就任した。今夏再任され、石原氏の信任も厚い。タカ派で生粋の国粋主義者という評価がある一方、マッチョ路線に合わせているだけ、という見方もある。

後者の見方が出てくるのは、石原氏の意向をくんで、より過激に行動しないと、すぐにクビをすげ替えられかねないという空気が幹部の問には充満しているからなのである。

「おーい、ヒトラー。負けずにがんばれよ」

石原氏が満面の笑みで横山教育長に声をかけた。教育長就任半年ほどのことだった。

発端は、20011月の日教組教育研究全国集会。来賓の横山氏が祝辞を述べる最中、「ヒトラー」「悪魔」「帰れ」と罵声が浴びせられた。これが報道され、石原氏の目を引いたというのだ。

石原氏も1975年の都知事選で、対立候補の美濃部亮吉陣営から「ファシスト」「ヒトラー」呼ばわりされた経験があるだけに、横山氏に同志意識さえ抱かせる出来事だったのだろう。

「以前、横山さんから国旗・国歌なんて聞いたこともない。ヒトラー発言からでしょ、教育現場との全面戦争に突っ込んでいったのは」と都幹部は指摘する。

・・・

ただ、本心はどこにあるにせよ、テレビカメラを前にした石原氏は、取り巻きをうまく操りながら、強さと独創性を演出し、国民の歓心を買い続けるはずだ。それが、半世紀にわたり、第一線に立つ彼一流の浮遊術だから。

 

編集部 藤生明