『カメリア通信』第29号:

理学部一楽重雄教授の情報開示請求に関する異議申し立て書

 

 

 

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横浜市立大学の未来を考える

『カメリア通信』第29

  20041015(不定期刊メールマガジン)

Camellia News No. 29, by the Committee for Concerned YCU Scholars

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理学部一楽重雄教授の情報開示請求に関する異議申し立て書

 

大学改革アンケート結果に関する情報開示請求の一部開示決定(大改2号、3号)についての

異議申し立てに関する諮問(諮問第506号)に際しての意見書

                                        平成16年10月12日

横浜市青葉区****************

一楽重雄

 

要約:情報の共有は民主主義の基本的要件であり、情報の非開示については、公共の利益の観点から慎重にすべきである。今回非開示とされた黒塗り部分の一部は、すでに大学当局から公表されているものであり、非開示とする理由がない。アンケート回答の個別意見は、ごく一部のみが公表され、行政に都合のよいものだけを公表している疑いがある。今回のアンケートでは、ごく一部の部分を除いて、回答内容を公表しても回答者が特定される恐れはまったくなく、回答者の利益、権益が犯される恐れもない。それらについて非開示とする理由はない。企業規模など企業自身に関する設問などへの回答を除いて開示すべきである。

 

本論:情報公開制度は、民主主義の基本である情報の共有を目指すものです。特に、行政文書の開示は、権力が恣意的な行政運営を行っていないかを検証するために不可欠なものです。その一方、個人のプライバシーを守る観点から文書の内容によっては、非開示あるいは一部開示とせざるを得ない場合も存在します。この場合、公共の利益と個人のプライバシーの保護というふたつの相反する要素の比較衡量が必要となり、個別の判断が不可欠です。

 今回の情報開示請求は、「大学改革アンケートの結果」に関するものです。アンケートの回答内容をむやみに公表すること、特にアンケート回答を書いた人の氏名などの公表については、その方に思わぬ不利益を与える場合があり得ますので慎重にすべきことであることは十分理解できます。しかしながら、アンケートと一口に言っても、個人や企業に関する実態調査などのような個人や企業自体に関する情報が含まれるものと,今回のアンケートのように大学の在り方について意見を聴く場合とでは大きく状況が異なります.確かに、個人の意見であっても,その個人が特定される可能性があり,またそのおかれた状況などが読みとれる可能性があるものなどについては,情報の開示は慎重にされなければなりません。

 今回の種々のアンケートにおいて,上のような観点も考慮して、非開示が適当と思われるのは,回答者の氏名などと回答企業の規模,業務内容などに限られると思われます.それ以外のものについては,公表しても回答者を特定できる可能性がないものばかりです.さらに,その内容も大学のあり方を中心とするものあり,それを開示したからと言って,回答者の権利権益が犯されることはおよそ考えられません。情報の共有という公共の利益と比較した場合,抽象的に個人の利益権益が犯されるということで非開示というのは不適当であり,具体的な特定の権益が犯される可能性がある場合にのみ非開示とすることが許されるものです。

 また、実施にあたって、公にしないとの条件をつけてアンケートをしたと主張していますが、今回のように大学改革に対する意見は、「法人等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付すことが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの」とは言えず、非開示の理由にはなりません。

 事実,このアンケートの回答については,すでに、大学自身が「個別意見の例」として,一部を公表しています.なぜ,すでに公表されているものまで非開示となるのでしょうか.この点については,大学側の提出した意見書ではまったく触れられていません.

また,一部の個別意見のみを公表する事は,アンケート結果を恣意的に利用したのではないかという疑いを持たざるを得ません。もし,そうであるとすれば,これは民主主義の基本をふみにじるものであり,決して許されることではありません.残念なことに、本件の場合、総合的に判断すると、あらかじめ想定している「大学改革」に都合のよい結果を出すためのアンケートであり、結果の公表であった疑いが捨て切れません。

 実際,アンケート回答には「専門教育を充実すべき」という意見が大変多いにもかかわらず,大学の公表した「アンケート結果概要」では,このことにはまったく触れられていません。そもそも,これらのアンケートは,市民の意見を偏見なく聴くという態度に欠けています.例えば,「米国にある教養中心の大学が日本にもあった方がよいと思いますか」という設問自体,回答者を誘導するものです.市大の大学改革のために質問しているのですから,ここでは「市大がこのような教養中心の大学になることに賛成ですか」というように聴くべきです.日本にはたくさんの大学がある訳で,このような聴き方では「日本にひとつくらいそういう大学があってもよい」という考えのひとは,「そう思う」に丸をつけます.それをもって市大が教養大学になることが支持されているというように話をもっていくことは許されないことではないでしょうか。

 あるいは,入学時点では専門を決めず2年次以降で選択できる制度についてもきいていますが,この場合,実験設備,あるいは,教員の人的資源等から,2年次以降で選択する場合に,おのずと制限が生じることに触れずに、単に「自由に選択出来る制度」についてきいています.希望さえすれば,その専攻に進むことができるかのような表現では,誰でも賛成するに違いありません.このような設問の場合には,当然,希望に進めないことも生じることを示して聴くことが必要です.実際、現在の理学部で行われている学科配属でも、ある学科ではおよそ半数くらいが第一希望以外の学生となっています。このようなことを明らかにして質問すれば、自ずと結果は変わって来ます。

 また、回答を公表すれば回答者と市との信頼関係が損なわれるという市側の主張については、ごく一部の設問、会社の規模などについての設問などを除いてその恐れはないと考えます。また、アンケートは実施に際して「個別の回答を公表することはしない」として実施したから公表できないという市の主張は、一部の回答をすでに公表した事実に矛盾するものです。むしろ、この種のアンケートにあっては「回答された意見は、氏名などを伏せて公表する場合があります」と断るべきものです。実際、文部科学省がパブリックコメントとして意見を募集する際にはそのような断り書きをしています。市民は自由に意見を述べる権利を保有するとともに、その意見には一定の責任を持つべきものであり、内容の公表はむしろ前提とされるべきであり、それをもとに行政と市民とが意見交換をすることにより初めて民主的な行政が可能となるのです。結果の公表をしない、あるいは、結果の一部のみを公表する(いわゆるつまみ食い)ということは、アンケートを実施する意味を持たなくするものであり、アンケート費用は税金の無駄遣いとなります。

 一部をすでに公表している個別意見と同じ範疇である個別意見は、基本的に開示すべきであって、特に回答者が特定される恐れが強いもの、あるいは、回答者の権益が具体的に犯される可能性があるものについてのみ黒塗りとすべきです。今回の一部開示ではあまりに多くの部分を黒塗りとしており、これを容認すれば事実上情報開示制度は意味のないものとなるでしょう。審査委員会の厳正かつ実態にあった審議をお願いする次第です。    以上

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編集発行人: 矢吹晋(商学部非常勤講師)   連絡先: yabuki@ca2.so-net.ne.jp

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