反戦ビラ訴訟、3被告に無罪 地裁八王子支部

 

asahi.com

http://www.asahi.com/national/update/1216/020.html 

反戦ビラ訴訟、3被告に無罪 地裁八王子支部

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 自衛隊のイラク派遣反対を自衛官やその家族に訴えるビラを防衛庁官舎の新聞受けに入れたとして、住居侵入の罪に問われた市民団体の3被告について、東京地裁八王子支部は16日、全員に無罪判決(求刑はいずれも懲役6カ月)を言い渡した。長谷川憲一裁判長は「住民のプライバシー侵害の程度は低く、ビラ入れが憲法で保障された政治的表現活動の一つとして民主主義社会の根幹をなすことを考えれば、刑事罰に値するほどの違法性はない」と述べた。

 

 無罪となったのは大洞俊之(47)、大西章寛(31)、高田幸美(31)の3被告で、約10人の「立川自衛隊監視テント村」のメンバー。配布したビラには「自衛隊のイラク派兵反対! いっしょに考え、反対の声をあげよう!」などと書かれていた。

 

 ビラ入れのために他人の敷地に入る行為は、刑事罰を科すほどの違法性があるのか▽それが表現の自由を保障した憲法とのかねあいでどう評価されるか――が裁判の争点だった。

 

 判決はまず、3人が無断で官舎に立ち入ったことについて、「住民らの意思に反しており、住居侵入罪を構成する要件にあたる」と判断。そのうえで、「たとえ要件を満たしても、動機や行為の態様、被害の程度などを考えたときに、違法性が低く犯罪が成立しない場合もある」とした。

 

 これを踏まえて、判決は3人の行為を検討。(1)自衛隊のイラク派遣に関する見解を伝えるという動機は政治的意見の表明として正当(2)訪問販売や勧誘行為などと比べ、居住者が被る迷惑は少ない(3)住民の被害感情を考えても被害の程度は低い――と指摘した。

 

 さらに判決は、「ビラ入れは政治的表現の一つで、商業的宣伝ビラの配布に比べて優越的な地位にある。それなのに、正式な抗議や警告といった事前連絡もせずいきなり検挙し、刑事責任を問うのは憲法の趣旨から疑問だ」と批判。「刑事罰を科す程度の違法性はない」と結論づけた。

 

(12/16 23:05)

 

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Mainichi interactive

http://www.mainichi-msn.co.jp/search/html/news/2004/12/17/20041217ddn041040066000c.html

 

東京・立川の防衛庁官舎ビラ配布:

「憲法が保障」3人無罪−−地裁八王子支部判決

 ◇防衛庁官舎でイラク派遣反対ビラ

 

 ◇住居侵入「罰するほどでない」

 

 自衛隊のイラク派遣に反対するビラを配るため今年1〜2月、東京都立川市の防衛庁官舎の通路などに立ち入ったとして住居侵入罪に問われた市民団体メンバー男女3人に、東京地裁八王子支部は16日、無罪(求刑・懲役6月)を言い渡した。長谷川憲一裁判長は「憲法の保障する政治的表現活動で、住民のプライバシーを侵害する程度も相当低い。罰するほどの違法性はない」と述べた。

 

 判決を受けたのは、いずれも立川市の市民団体「立川自衛隊監視テント村」メンバーで▽練馬区職員、大洞俊之被告(47)▽介護助手、高田幸美被告(31)▽会社役員、大西章寛被告(31)。

 

 判決は官舎への立ち入り行為を「住居侵入罪の構成要件に当たる」と認定したが、「見解を自衛官らに直接伝えるという動機自体は正当で、暴力や騒音も伴っていない。居住者や管理者の法益の侵害は極めて軽微だ」と判断した。さらに、ビラ投かんについて「憲法21条1項(表現の自由)が保障する政治的表現活動で、民主主義社会の根幹をなす。商業的宣伝ビラの投かんより優越的地位が認められる」と指摘。「商業ビラ投かんのための立ち入り行為が刑事責任を問われず放置され、(3人の)行為を長い間不問に付してきた経緯がありながら、防衛庁・自衛隊・警察から正式な抗議や警告なしに、いきなり検挙して刑事責任を問うのは疑問」と捜査手法にも疑問を呈した。

 

 判決によると、3人は今年1月17日、各戸の玄関ドア新聞受けに「自衛隊のイラク派兵反対!」などと書いたビラを配るため、立川市栄町の防衛庁官舎の共用通路などに入った。大洞、高田両被告は2月22日にも立ち入った。3人は事実関係を認めつつ「表現の自由に基づく行為」と無罪を主張していた。【五味香織】

 

 ◇宇井稔・東京地検八王子支部長の話

 

 主張が認められず非常に不満がある。(控訴は)庁内や上級庁と検討して決定したい。

 

 ◇チェック機能働く−−田島泰彦・上智大教授(憲法・メディア法)の話

 

 表現や報道の自由に対する過剰規制が容認される社会的な傾向が強まる中で、民主主義の根幹をなす人権である表現の自由を守る立場から、司法としての最低限のチェック機能が働いた判決だと言える。

 

 ◇ミス犯した判決だ−−渥美東洋・中央大大学院教授(刑事法)の話

 

 憲法21条と住居の不可侵を定めた憲法35条が衝突した問題だけに、双方をもっと慎重に比較したうえで判断してほしかった。日本では政治的自由が主張され過ぎて私的領域の個人の自由への配慮が不足している。ミスを犯した判決だと思う。

 

毎日新聞 20041217日 大阪朝刊

 

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澤藤統一郎の事務局長日記

http://www.jdla.jp/jim-diary/jimu-d.html 

 

20041216日(木)

 

立川テント村弾圧事件に無罪判決  

 

思わず、バンザイを叫んだ。立川自衛隊監視テント村弾圧事件での八王子支部無罪判決にである。今日の判決を、固唾をのんで見守っていた。本当によかった。やられっぱなしではない。わが国の刑事司法はまだ生きていた。警察国家になることからはかろうじて救われた。市民運動の権利が守られた。

 

事件の発端は本年2月27日、市民団体「立川自衛隊監視テント村」の市民3人が逮捕された。刑法130条・住居侵入の容疑である。住居侵入と言うからには、鍵をこじ開けて部屋の中にでもはいったかと思えば、そうではない。集合住宅の通路から、郵便受けにビラを入れただけのことである。ビラなんて、郵便受けにいくらでもはいってくる。え?これが犯罪?

 

3人は逮捕され、起訴された。なんと75日も勾留された。彼らが所属する団体の事務所とメンバーの自宅など6箇所が家宅捜索を受け、書類やパソコンなどが押収された。「たかがビラ入れで」のことである。

 

郵便受けに新規開店の宣伝チラシを入れて逮捕されたという話は聞かない。宅配ピザや不動産、スーパーの広告を配布するために、マンションの通路に入って逮捕とも聞かない。その中で、特定のビラだけが、ねらい打ちされた。逮捕までされたのは、その建物が自衛隊の官舎で、入れたビラがイラク派兵反対の内容だからだ。つまりは、ビラの内容によって弾圧されたのである。

 

これは由々しい問題だ。当然に憲法21条の表現の自由を乱暴に踏みにじる暴挙である。のみならず、日常誰もが行っている些細なことを、突然に権力の恣意で逮捕・起訴・勾留することの危険が指摘されなければならない。

 

幸い、東京地裁八王子支部(長谷川憲一裁判長)は、全員に無罪判決(求刑はいずれも懲役6カ月)を言い渡した。「住民のプライバシー侵害の程度は低く、ビラ入れが憲法で保障された政治的表現活動の一つとして民主主義社会の根幹をなすことを考えれば、刑事罰に値するほどの違法性はない」とした。いわゆる可罰的違法性の欠如である。さらに判決は、「ビラ入れは政治的表現の一つで、商業的宣伝ビラの配布に比べて優越的な地位にある。それなのに、正式な抗議や警告といった事前連絡もせずいきなり検挙し、刑事責任を問うのは憲法の趣旨から疑問だ」と批判したという。

 

この事件を起訴した検察庁・検察官は恥を知るべきである。法律家として、人権や民主主義に思いをはせれば、こんな起訴はありえなかった。勾留75日については言語道断。責任をとらねばならない。

 

実は、板橋高校卒業式の威力業務妨害事件の起訴検事は、同一人物。こちらも無罪をとらねばならない。

 

 

五十嵐仁の転成仁語

http://sp.mt.tama.hosei.ac.jp/users/igajin/home2.htm 

12月18日(土)

 

あまりにも当然の無罪判決

あまりにも当然な判決が出ました。そもそも裁判になどなるはずのない「事件」だったのですから……。

 

 ここ数年、「事件」になるはずのない「事件」が相次いで発生してきました。これまでであれば逮捕されるはずのないような「微罪」でも、逮捕者が出ていたからです。

 たとえば、03年3月20日、アメリカ大使館近くでの抗議行動で4人が逮捕されました。04年3月3日には、総選挙中に政党機関紙号外などを配布した社会保険庁職員が「国家公務員法違反」容疑で逮捕されています。

 また、2月27日には、立川市内の防衛庁官舎の郵便受けに反戦ビラを入れた市民団体のメンバー3人が「住居侵入罪」で逮捕され、9月22日、難民認定を求めて国連大学前で座り込んでいクルド人難民が「暴行容疑」で逮捕、1014日にも、「三菱自動車岡崎工場の閉鎖問題に絡み、同社や労組を批判するポスターを電柱などに張った」として、岡崎市屋外広告物条例違反と軽犯罪法違反の容疑で一人が逮捕されました。

 

 16日に東京地裁八王子支部出された判決は、このうちの立川での「防衛庁宿舎侵入事件」についてのものです。こう書けばたいそうな「事件」のように見えますが、ただのビラ配りにすぎません。

 配った場所が防衛庁宿舎だったところから、ここに「侵入した」ということで捕まったわけです。配られたビラの内容が自衛隊のイラク派遣に反対する内容だったために、警察に狙われたという見方もありました。

 この日の判決は、これを無罪とするものでした。逮捕されて罰せられるような「犯罪」ではなかったということが認定されたわけです。あまりにも当然の判決だと言うべきでしょう。

 

 ところが、「裁判所の判断はおかしい」というコメントがあるので、驚きました。このようなことを言う「学者」もいるんですね。

 『東京新聞』1217日付の社会面で、「裁判所の判断疑問」という表題のもとに、土本武司・帝京大教授(刑法)は次のようにコメントしています。

 

 裁判所の判断はおかしい。宿舎の管理者が立ち入りを拒否しているのは明白で、立ち入り禁止に(強い弱いの)程度はない。裁判所は立ち入り拒否の程度やプライバシー侵害の程度が低いと判断したが、住居侵入の違法性がゼロでない限り、居住者は保護されるべきであり、量刑で判断すべきだ。

 

 「立ち入りを拒否している」場所に入ったら、それだけで有罪だということになります。「立ち入り拒否の程度やプライバシー侵害の程度が低い」からといって無罪にするのではなく、「量刑で判断」して、罰を与えるべきだというわけです。

 驚きました。こんなことを言う「学者」さんもいるんですね。「立ち入った者は全て逮捕せよ」というわけです。

 この宿舎には色々なちらしやビラも配布されているでしょう。宅配ピザや寿司の配達、近所のそば屋の「お品書き」など、わが家の郵便受けにも時々入っています。これらを配った人は、それまでに逮捕されたことがあるのでしょうか。

 

 あらゆるビラ配りが取り締まられ、その一環として今回の事件があったというのであれば、土本教授の論理も成り立ちます。しかし、逮捕されたのは今回の事例だけです。

 しかも、今回の判決では、「被告らの行為は政治的表現活動であり、商業宣伝ビラより優越的地位が認められる」とされています。「訪問セールスや商業ビラ」よりも保護されるべきだというわけです。

 つまり、「訪問セールスや商業ビラ」によって立ち入った人が全て逮捕されるような場合であっても、「政治的表現活動」としてのビラ配布は、それと同等に扱われてはならないということになります。たとえあったとしても、このような逮捕は最後の事例でなければならず、最初の事例であってはならないというわけです。

 

 刑法の専門家に向けてこのような解説を書かなければならないとは情けない限りですが、このような論理からすれば、「判断がおかしい」のは裁判所ではなく土本教授の方でしょう。

 しかも、「プライバシー侵害」という理由が挙げられていますが、ビラ配りによってどれほどプライバシーが侵害されたというのでしょうか。郵便受けにビラを入れるのは一瞬の行為です。それによって侵害されるプライバシーとはどのようなものなのでしょうか。

 さらに、今回の「事件」は訴えがあって捜査が始まったものではありません。「公判過程で、自衛隊官舎の管理人が出した被害届をあらかじめ署名するだけの状態で警察が準備していたことが明らかになった」(前掲『東京新聞』)といいます。

 

 つまり、「事件」は警察によって「作られたもの」だということになります。それも、イラクへの自衛隊派兵反対運動を弾圧する政治的な目的の下に、意図的に準備されていた疑いが濃厚です。

 警察による75日間もの拘留は、このような運動への抑圧や嫌がらせを意図したものだったことは明らかです。罪は、逮捕された3人の側にではなく、無実の人々を逮捕し、拘留した警察の側にあると言うべきでしょう。

 

 検察側は控訴するべきではありません。それどころか、この間の非を詫び、これら3人の方が被った被害を償うべきです。

 なぜ、このような理不尽な逮捕がなされたのか、その責任はどこにあるのか、という点も明らかにされなければなりません。このような民主主義の侵害を見逃さず、きちんと責任を追及していくことによってこそ、「民主主義の堤防」を崩す「蟻の一穴」を防ぐことができるのですから……。

 

 

天木直人 1217日 メディア裏読み

http://homepage3.nifty.com/amaki/pages/ns.htm

 

◇◆ 反戦ビラ無罪判決に思う ◆◇

 

16日、東京地裁八王子支部は、防衛庁官舎の新聞受けに反戦ビラを入れた市民団体の3被告全員に無罪の判決を言い渡した。この件について敢えて次の二点を指摘しておきたい。

 

 17日の朝日新聞は一面トップでこれを報じた。毎日新聞も大きくとりあげたが読売、日経などは社会面などで小さく扱い、産経に至っては報じなかった(私が見落としたのかもしれないが)。このことから明らかな事は、特定の新聞ばかりを読んでいては判断を間違うということだ。色々な新聞を読んでその違いを比較し、どちらの姿勢が正しいのか判断する力を養うべきだ。そして新聞社の方針や記者の視点、筆力を評価する眼力を持つことだ。立派な記者もいれば驚くほど拙劣な記者もいる。金を払って購読する我々読者こそ最強のメディア批評家であるべきなのだ。

 

 もう一つはこの判決だけで本件を終わらせてはいけないという事だ。この判決だけでは3被告が受けた精神的、肉体的、社会的苦痛が回復されたことにはならない。彼らは一ヶ月以上の捜査の末に逮捕され、さらには75日間も長期拘留された。被告の陳述によると、捜査員の捜査態度は殆ど犯罪的行為に近い。「運動を止めて立川から出て行け」と命じ、「二重人格のしたたか女」、「寄生虫」、「浮浪児」などと侮辱的言葉を吐いたという(17日朝日新聞)。このような言動が何ら問題視されずに放置されていいのか。

 

「主張が認められなかったのには不満がある」(宇井稔・東京地検八王子支部長)などとのんきなコメントをしている国家権力側に対し、市民側は損害賠償、名誉毀損、権力の乱用などで逆提訴し、何かにつけて市民社会を萎縮させる公安警察の捜査のあり方を問題にしなければならない。市民も攻勢に転じてよいのだ。

 

 

辺境通信 http://henkyonews.cocolog-nifty.com/articles/ 

 

December 17, 2004

反戦ビラ入れで無罪判決

 東京・立川市の防衛庁官舎の新聞受けに自衛隊イラク派兵反対を訴えたビラを投函し、「住居侵入罪」に問われた市民団体のメンバー3人に対し、東京地裁八王子支部の長谷川憲一裁判長は、16日、全員に無罪を言い渡した。

 無罪判決を勝ち取ったのは「立川自衛隊監視テント村」のメンバー3人。3人は2月27日に警視庁公安部に「住居侵入容疑」で逮捕され、その後、75日間勾留された。(日刊ベリタ、この記事は無料

【「辺境通信」の過去の関連記事】

・アムネスティ、反戦ビラまき逮捕の市民運動家を日本初の「良心の囚人」と認める(4月17日
・反戦ビラ入れ逮捕・起訴で抗議集会(4月26日
・反戦ビラ事件:保釈決定に検察が抗告(5月9日
・反戦ビラ事件:3人が保釈される(5月12日
・反戦ビラ事件:弾圧被害者が報告 「人権と報道・連絡会」で(5月20日

【関連サイト】

立川・反戦ビラ弾圧救援会

【論評】

 「無罪判決」という結論だけとってみると、「当たり前だろ」ということになる。「日刊ベリタ」によれば、無罪判決を受けた3人は喜んでいるのだから、筆者も素直に喜ぶべきだろう。だがそれでも、気になることがある。

 第一に、市民団体への弾圧という警察の意図が、ある程度達成されてしまったということだ。

 逮捕されたメンバーは、75日間も勾留された。この事実だけでも、メンバーの個人生活に多大な影響を及ぼしたはずだ。さらに警察は、暴言・罵倒でもって暴力的に取り調べた。その様子を、5月14日付の東京新聞が特報で伝えた。以前の「辺境通信」でもその様子を引用したが、再度引用させていただく。

 『調べは一日六時間から八時間。「運動なんかやめろ」「この寄生虫」「自転車で立川を走れないようにしてやる」「おまえは鉄砲玉。ほかの連中は責任を押しつけるつもりだ」。・・・実家にも「娘さんはヤクザの使い走りをしている」と電話があったという』

 逮捕されたメンバーの一人が「人権と報道・連絡会」主催のシンポジウム(11月20日開催)で語ったところによると、「取り調べの7〜8割は人格攻撃」だったそうだ。

 弁護士を付けて、7回の公判を経て、逮捕から10か月後、ようやく無罪である。

 公権力にちょっとでも立ち向かったら、こうなるぞ・・・はっきり言って《脅し》だ。そして、《脅し》は今でも現実的なのである。

 第二に、日頃、自分たちの「表現の自由」を大切にしたいらしい、マスコミの報道ぶり。

 この「事件」を報道するマスコミには、2つの流れがあった。ひとつは逮捕に疑問を呈する論調で、前述の東京新聞特報のほか、《ビラ配りでなぜ逮捕》という朝日新聞社説(3月5日付)や、《イラク派兵「銃後のニッポン」に漂うイヤーな空気/郵便受けに反戦チラシ入れたら・・・「住居侵入」で逮捕》として批判的な記事を載せた「サンデー毎日」(3月28日号)が好例だろう。

 もうひとつの流れが、警察の愚かな弾圧を後押しするもので、逮捕直後に実名・犯人視報道した産経新聞・共同通信・フジテレビ、先述の朝日社説を「幼稚すぎる」「左翼小児病」「警世家気取り」と揶揄した「週刊文春」(3月18日号)が挙げられる。(皮肉にも、「週刊文春」は翌週号の田中真紀子前外相の長女に関する記事で、出版前日に東京地裁から出版禁止仮処分命令を受けるという弾圧を受けた。)

 さて、判決報道をインターネットで一通り検索してみたところ、ほとんどのマスコミ報道が、無罪判決を受けた3人を実名報道のうえ、(判決要旨でなく)ニュースで「被告」呼ばわり。無罪なのだから実名はよいのだろうが、無実の者を「被告」とは何事か。それを「アサヒ・コム」がやったのだから呆れる。「ヨミウリ・オンライン」は記事の末尾だけ「さん」づけにした。(紙面はどうなる?)

 それに、長期勾留や取り調べの問題は一体どこで指摘しているのだろうか?

 なお、判決要旨を掲載している地方紙のインターネット版がいくつかある。掲載するだけましか。
岩手日報
山陽新聞
東奥日報

 司法はどうか。

 マスコミの判決要旨によれば、長谷川裁判長は、「ビラ投かん自体は憲法21条1項の保障する政治的表現活動の一態様であり、民主主義社会の根幹をなすものとして、営業活動である商業的宣伝ビラの投かんに比べて優越的地位が認められている」「防衛庁や警察からの正式な抗議や警告などなしに、いきなり検挙し刑事責任を問うことは憲法21条1項の趣旨に照らし疑問の余地なしとしない」としたようである。これは、まともな判断のように思う。

 しかし問題は、3人が立ち入った行為が「住居侵入」の構成要件に該当するかどうか、である。

 判決要旨は、構成要件に該当するとしている。その理由は、「居住者らの意思に反する以上、住居の平穏を害する」から、ということになっている。

 だが、「意思に反する」という「居住者」が一体何人以上なら「住居の平穏を害する」ことになるのか?(もしかして2人以上?) そもそも、「居住者らの意思」に反したら、なぜ「住居の平穏を害する」ことになるのか?(NHKの会長が嫌だからといって受信料支払いを拒否したい家族が住むマンションを訪れるNHK受信料集金員は「住居の平穏を害」しているのか?)

 いまここに、自衛隊イラク派兵を苦々しく思っている夫妻がマンションに住んでいるとする。自衛隊が隊員を募集するチラシをマンションの建物の内側にあるポストに配布したら、それは夫妻の「意思に反する」ので、彼らの「住居の平穏を害する」ことになるのだろうか? まあ、そんなことがあっても、警察は捜査しないだろうが。

 最後に、検察が控訴などという行動に出ないことを祈ろう。

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