表現の自由を侵害した政治家の介入と、NHKの偽証を断じて許さない!! −徹底した真相究明とNHKの明確な責任を求める!!− VAWW-NETジャパン抗議声明

 

法学館憲法研究所

http://www.jicl.jp/now/saiban/backnumber/nhk.html 

 

 

 

番組改編事件

 

 

 

女性国際戦犯民衆法廷などについて放映したNHKの番組が改変されたことは憲法の「表現の自由」などに抵触するとして裁判が行われている中で、NHKに対する政治的介入問題が浮上してきています。この問題に関わる「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW-NETジャパン)の声明をご紹介します。

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表現の自由を侵害した政治家の介入と、NHKの偽証を断じて許さない!!
−徹底した真相究明とNHKの明確な責任を求める!!−


VAWW-NETジャパン抗議声明

  本日(1月12日)の朝日新聞朝刊で、NHKETVシリーズ2001「戦争をどう裁くか」の第二夜「問われる戦時性暴力」(2001年1月30日放送)の番組内容に対して、中川昭一、安倍晋三両自民党国会議員の圧力があったことが報じられた。
 報道によると放送前日の29日午後、当時の放送総局長松尾武氏と国会対策担当野島直樹氏らNHK幹部が中川・安倍両国会議員に呼ばれ、議員会館で面会した。その席で両議員は「一方的な放送はするな」「公平で客観的な番組にするよう」求め、「それができないならやめてしまえ」と、放送中止を求める発言を行ったという。
 
 番組改ざんについては、女性国際戦犯法廷を主催した国際実行委員会のメンバー「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW-NETジャパン)と同代表(当時)松井やよりが原告となり番組制作に関わったNHKとNHKエンタープライズ21、番組制作会社ドキュメンタリー・ジャパンを相手に提訴(2001年7月24日)した。一審判決(2004年3月24日)は責任を末端の番組制作会社に押し付けるものであり、NHKの行為については「編集の自由の範囲内」として責任が不明確にされたため、原告は控訴し、現在、控訴審を闘っている。
 番組改ざんは、日本軍「慰安婦」制度が人道に対する罪で裁かれたことを覆い隠し、昭和天皇をはじめ被告となった日本軍高官に「有罪」が言い渡された判決結果を削除し、「慰安婦」被害者の証言や日本兵の加害証言、「法廷」の意義を伝える松井やよりのインタビューや「法廷」の基本的な情報をことごとく削除するものだった。
 また、「法廷」を評価するスタジオコメンテーターの発言も不自然な形でカットされ、放送数日前にスタジオ部分を取り直すなど、異常な改編は放送直前まで行われた。このことは、裁判を通して明らかにされた。
 これまでの裁判の審議の中で、被告NHKは外部圧力は無かったと繰り返し否定し、番組の方針は当初から変わっていないとの主張を続けてきた。今回、政治家の関与が明らかにされたことで、これらが重大な偽証であったことは明らかである。
 
 今回の番組放送を巡っては、放送中止を求める右翼の異常な抗議行動があった。中川・安倍両氏は「慰安婦」問題等の教科書記述を調べる研究会「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の幹部メンバー(中川氏は同会代表、安倍氏は同会事務局長)であり、番組への介入は、教科書問題や謝罪・補償問題、歴史認識の問題などと深く関わるものであり、政治家が番組の内容に介入した事実は、憲法が保障する表現・報道の自由を侵害した重大な違反行為であり、公共放送であるNHKが詠う「公平・公正」「不偏不党」の精神に反するものである。「裁き」をテーマにしておきながら、日本軍「慰安婦」制度が裁かれた事実が封じられた背景に政治家の圧力があったことは放送の自律を定めた放送法の精神に背くものであるだけでなく、国会議員と公共放送が憲法を踏みにじる行為を公然とおかし、市民を欺いたことは重大な違憲行為であり、断じて許すことはできない。
 
 今回、こうした事実がNHKの内部告発により明るみに出たことに、私たちは大きな感動を持って受けて止めている。裁判を通して、私たちはNHKの権力構造を目の当たりにし、制作現場の表現の自由が上層部の圧力により侵害されている事実をメディアの深刻な危機として感じてきた。このままの状況が黙認されていけば、真実の報道は制限され、市民の知る権利に甚大な影響を与えることは必至である。今回の内部告発者の勇気に心から敬意を表すると共に、内部告発者の正義と公正が「力」により潰されないことを強く願っている。

 VAWW-NETジャパンは、NHKに対してこうした事実を隠し、司法の場において偽証を続けてきたことを強く抗議すると共に、番組改ざんを巡り何があったのか徹底した真相究明を行い、全ての真実を残すことなく市民の前に明らかにすることを強く求める。
 また、これら事実を隠し、偽証し、責任を回避し続けてきた海老沢会長の責任は重大である。私たちは、即刻、海老沢会長が責任を取って辞任することを強く求める。
 また、国政を担う人物のこのような行為を許すことはできない。中川・安倍両氏が即刻国会議員を辞任することを強く求める。

2005年1月12日
 
「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク
(VAWW-NETジャパン)
共同代表:西野瑠美子・東海林路得子