NHKの内部告発者を守れ

 

澤藤統一郎の事務局長日記 (2005.1.13

http://www.jdla.jp/jim-diary/jimu-d.html

 

 

2005年01月13日(木)

NHKの内部告発者を守れ  

小泉後継と噂される自民党議員の一人に安倍晋三がいる。若いに似合わず、先祖返りの感のある右派。現行憲法の感覚にはなじまず、旧憲法の匂いがする。もう一人の同類・中川昭一ともども、NHKの「慰安婦」番組に圧力をかけていたことが露見した。表現の自由に対する露骨な侵害行為である。こんな人物には国会議員を辞めてもらわねばならない。

12日付朝日の朝刊でこの報道に接するまでは、NHKを国営放送局だと思っていた。これは大きな間違い。NHKは、自民党右派の放送局であった。国民から視聴料をとりながら、自民党右派・右翼が許容する放送しかできないのだ。私は、東大文学部社会学科の出身(中退)。私の同級生40人のうち、確か9人がNHKに就職した。おそらくは、私の同期クラスが責任者の立場にあるのだろう。かつての友らよ、しっかりしてくれ。

それにしても、内部告発の貴重さを改めて噛みしめる。勇気ある告発者がいなければ、すべては闇に葬られていた。だまされていることを知らずに視聴料を支払い続ける人も多かったに違いない。こんなことをする人物とは知らずに、安倍晋三に次の選挙でも投票する山口の有権者もいたであろう。これだけ重い内部告発を敢えてした内部告発者を孤立させてはならない。たいへんな圧力を覚悟で、これを公表した人に敬意を表するとともに、厚い世論の支持でこの人を守らなければならないと思う。

今日、その人が名乗り出て記者会見を行ったことに驚きもし改めて尊敬の念を深くした。その人の名は長井暁さん(42)。教育番組センターのチーフ・プロデューサーだという。問題の番組は、旧日本軍慰安婦問題の責任者を裁く市民団体開催の民衆法廷を取り上げたもの。01年1月30日に放送され、長井さんは同番組の担当デスクだった。

長井さんによると、番組の作成においては、「戦争を裁くことの難しさ」や歴史的な位置づけ、客観性を強調して現場を取りまとめてきたという。事前に右翼団体などから「放送中止」の要請はあったが、放送2日前の夜には通常の編集作業を終え、番組はほぼ完成していた。

ところが、01年1月下旬、中川昭一らが、当時のNHKの国会担当の担当局長らを呼び、番組の放送中止を求めた。担当局長は放送前日の午後、NHK放送総局長を伴って再度、中川や安倍晋三を訪ね説明。放送総局長は「番組内容を変更するので、放送させてほしい」と述べた、という。

こうして、政治家の圧力を背景に、現場の意向を無視して、番組は大幅に変更された。元慰安婦の証言はカットされ、民衆法廷の起訴状も、ヒロヒト有罪の判決も報道されなかった。むしろ、民衆法廷批判の有識者コメントに時間が割かれた。

また、長井さんは「海老沢会長はすべて了承していた。信頼すべき上司によると、担当局長が逐一、海老沢会長に報告していた。会長あてに作成された報告書も存在している」と説明した。その上で、「制作現場への政治介入を許した海老沢会長や役員、幹部の責任は重大です」と訴えてもいる(以上事実関係は、朝日本日夕刊から引用)。

中川・安倍らは、「偏った内容だから、公正な番組にするように意見を言ったまで」という。そのこと自体が大きな問題であることをまるで認識していない。

本日の夕方、8時45分からのNHKニュースを見た。ニュースとして、「一部で言われているような外部からの介入で番組の内容が改編されたという事実はない。NHKは不偏不党」と言っていた。こんな原稿を読ませらるアナウンサーが、かわいそうでもあり、愚かしくもあった。

こんなNHKに視聴料を払うなど馬鹿馬鹿しくっていたしかねる。視聴料は、自民党右翼支持者だけから徴収するのがスジではないか。NHKは完全に国民をなめているのだ。阿部・中川よりは、国民の方が数段力があることを見せつけなくてはならない。