永岑三千輝氏『大学改革日誌』2005年2月4日付 横浜市大入試、受験者数「激減」

 

 

・・・任期制と成果主義賃金の導入具体化案を見て、予想通りとはいえ、そのひどさにびっくりしています。・・・受験者数が発表になったので、昨年と比べてみました。今年の横浜市立大学の出願倍率はかなり落ちていますね。・・・商学部は半減、理学部はそれ以下ですから、「激減」といっていいですね。・・・全員任期制や成果主義賃金導入で教員が逃げ出し、商学部と理学部をつぶして受験生が逃げ出し、でしょうか。「市場」を無視した横浜市による改革の成果が早速でているような気がします。・・・

 

平成17年度横浜市立大学一般選抜入学試験志願者速報(確定)(PDF)(2/3

http://www.yokohama-cu.ac.jp/jyuken/nyushi/sokuhou/050203.pdf

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/050203nyushi-kakutei.pdf  参照

 

 

24日 本日誌読者から久しぶりにメールを頂戴した。昨日の教授会でも話題になった受験者数のデータに関してである。外部の人がどのように見ているか、昨日教授会で話題となった視角とほとんど同じであるが、以下にコピーしておこう。この客観的データをもとに、社会の反応をどのように分析し、どのように説明するか。市行政当局・大学改革推進本部は下記のような評価に、どのように反論するであろうか?[1][1] [脚注1

私は、任期制や成果主義賃金の導入に関しては、慎重にも慎重に検討を重ねる必要があると考えている。無理押しは、面従腹背の教員を多くし、今年度中にも、さらには来年度以降も引き続いて、脱出を試みる教員を増やすだけだろうと考える。それは、大学活性化とは反対の方向だろうと思う。

任期制の導入は、東大等でもやっているように、全教員(助手、講師、助教授、教授の多様な層がいるが)に対してではなくて、全ポストに対して(科目に関わりなく、すなわち科目による差別なく−思想信条・学問の自由に関わるのでいかなる科目でも可能性ありとするのは憲法にかなっている)可能にすることは制度として考えられる。その場合、具体的なあるポストをいつの時点で活性化のために優遇した条件にするか、そしてその特別優遇のポストに誰をつけるか、ということはしかるべき社会的評価(学界等外部の第三者による客観的評価の検証可能なもの・・・内部のお手盛り的評価は許されない)の上で行う、ということは考えられる。任期制に移行するときに、その担当ポストが時代の最先端を行くとか、しかるべき大学教員任期法が定める資格要件を満たす必要はあろう。それが大学教員任期法の趣旨であり精神だと考える。首切りの脅かしのための全員任期法などというのは(他方では、「普通にやっていれば」問題ないなどという曖昧な、どのようにでも解釈でき内部的な恣意がまかり通る可能性がある規定)、それを就業規則案として公にしたことすら、本学の大学教員全体に対する侮辱ではないかと感じる。

私の得ている情報に間違いがなければ、東大の場合、60歳定年の原則(慣行)が確立してきたため、任期制ポスト(5年任期)への就任は、55歳の時点であり、5年後の定年退職を見越した導入であったという。その後、傾斜的な定年延長があり、任期制導入時点が現在どうなっているのか(定年延長にあわせて、57歳、58歳となっているのかどうかなど)はつまびらかにしないが、こうした事例も参考にはなろう。

ドイツでも、普通の教授に対して(たとえばA教授というのか?)、Cクラスの教授とか言うのがあるそうである。これまであまり興味がなかったので調べたことはなく、人が話しているのを耳にしただけである。たとえば、「あの教授は一番上のランクのCクラスで、月給はこれくらいだろうですよ」、云々と。ドイツの場合、教授にもランクをつけているのであり、教授になってたとえば5年間で、教授クラスの上の段階(Bクラス)に上がるかどうかを審査する、そして最高がCクラスということで、業績を評価しているというわけである。それならば、活性化につながるかもしれない。

5年間に更なる大きな前進を遂げる人もいれば、そうでない人もいるであろう。しかしだからといってひとたび教授になった人が特別の事情のない限り、解雇の恐怖におびえる(同僚の非専門家の管理職教授の顔色をうかがわなければならない)というのは許されないであろう。5年間にしかるべき前進と業績を積まない人は現ランクにとどまればいいのである。

本学の場合でいえば、有期契約3年・5年の差別を維持するとすれば、博士号等の特別の資格を有する人は、理論上(実際の個別事例・個々の教員に関してははわからない)、他からの引き抜きや流出の可能性がそうでない場合よりも大きいという一定の合理的な推定が働くので、それを抑止するために60歳になった時点で他の同じ年齢の教授よりは一ランク上に位置付けその任期を5年とする、博士号等の特別の資格を持っていない人は(それがその人の学問的業績の水準とはまったくべつであるし、最近のように文科系でも博士号が多発される時代とかつてのように何十年かにほんのわずかの人が取得できたという時代とでは博士の重みがまったく違う、博士号はそれ自体としては今後ますます重みがなくなろう・・その限界を見据えた上で)、62歳になった時点で一ランク上の3年の任期制ポスト教授に移行するか、そのまま定年まで普通の教授にとどまるかを審査選択してもらう、というやり方も考えられるであろう。

以上は単なる思い付きに過ぎないが、いずれにせよ、具体的ポストに関するきちんとした大学らしい検討抜きの全員任期制は大学を本当に死滅させるであろう。現在示されている就業規則案は法の精神と法体系を無視し、大学教員任期法の適用を回避するための労働基準法適用も姑息な手段だと考える。

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 任期制と成果主義賃金の導入具体化案を見て、予想通りとはいえ、そのひどさにびっくりしています。

 受験者数が発表になったので、昨年と比べてみました。今年の横浜市立大学の出願倍率はかなり落ちていますね。昨年の倍率は、代々木ゼミナールからとった数値です。

昨年は、
商学部 7.0 倍
国際文化学部 5.3 倍
理学部   5.0

今年は:
国際教養学系 4.1 倍
経営科学系 3.5 倍
理学系 2.0 倍
文系理系共通 4.3 倍
合計 3.5 倍

 商学部は半減、理学部はそれ以下ですから、「激減」といっていいですね。国立大学がいまや5教科、6教科型に戻っているので、国立の志願者は第一希望が多いでしょうが、市大は、3教科受験で私立大学併願型で、私立大学の方に逃げる受験生もおおいでしょうから、正味の倍率はこれよりもかなり低くなるのではないでしょうか。「やさしい」と言うので来年は倍率が上がるかもしれませんが、まず今年度は、厳しい市場の評価です。
 全員任期制や成果主義賃金導入で教員が逃げ出し、商学部と理学部をつぶして受験生が逃げ出し、でしょうか。「市場」を無視した横浜市による改革の成果が早速でているような気がします。

 

 

[脚注1

[2][1] 首大の場合、受験者は相当多そうである。

受験者数の多少もあるが、いずれにしろ、偏差値がどうなるかや、合格して入ってくる学生のやる気などいろいろと今後各種のデータ(社会の評価。市場の評価)が出てくることだろうから、現時点では確実なことはいえないだろうが。

受験生がどうあれ、それを受け止める大学の体制がしっかりととのわなければならないことはいうまでもない。

大学教員がやる気を起こせる体制かどうか、その試金石が任期制や年俸制の内容・適用範囲・適用時期などである。