石原慎太郎の差別発言断罪

 

澤藤統一郎の事務局長日記

http://www.jdla.jp/jim-diary/jimu-d.html

 

 

2005年02月24日(木)

石原慎太郎の差別発言断罪      

石原慎太郎という政治家の本領は弱者に対する差別にある。うっかり言葉に出してしまう、という体のものではない。確信犯としての差別主義者なのだ。女性差別、民族差別、障害者差別、そして思想による差別感覚を隠そうともしない。

本日午後1時15分、東京地方裁判所103号法廷で、彼の女性差別発言をめぐる訴訟での判決が言い渡された。河村吉晃裁判長の判決は損害賠償請求は棄却したものの、石原慎太郎の発言を、「このような女性の存在価値を生殖能力の面のみに着目して評価する見解が、個人の尊重、法の下の平等について規定する憲法、男女共同参画社会基本法、その他の法令や国際人権B規約、女性差別撤廃条約その他の国際社会における取り組みの基本理念と相容れないことはいうまでもない」「都知事として不用意な発言」、「不適切な表現が用いられている」と明確に批判した。断罪したと言ってよい。

言わゆる「ババア発言訴訟」である。石原慎太郎が、「閉経した女性が生きていることは罪であり無駄である」という発言をしたことについて、首都圏の女性131人が原告となって損害賠償請求と謝罪広告を求めた。2002年の12月の提訴以来2年にわたった訴訟。毎回の法廷での原告女性たちの意見陳述(陳述書)では、自分は子産みの道具ではないとの思い、子供を産みたくても埋めなかった女性たちの叫び、差別に苦しんできた思い、女性としての社会的存在への侮辱、今大きなバックラッシュにあっているつらい思いなどなどが語られたという。原告弁護団からの報告では、「涙なしには聞けないものでした。裁判官も泣いていることも少なくなかったのです」とのこと。

請求棄却の理由は、「原告個々人に対する発言ではなく、原告らの社会的評価が低下するわけでもない。金銭をもって償う必要がある精神的苦痛が生じたと認めることはできない」というもの。判決の主文はともかく、これだけ明確な事実認定と否定的評価を勝ち取っている。提訴した甲斐があったというものであろう。

とりわけ、判決は石原という人物の薄汚さをはっきり示した。石原は、「週刊女性」01年11月6日号のインタビューで「これは僕がいってるんじゃなくて、松井孝典(東大大学院教授)がいってるんだけど、文明がもたらしたもっともあしき有害なものはババアなんだそうだ。女性が生殖能力を失っても生きてるってのは、無駄で罪ですって」と述べたのだ。あたかも、女性差別が自分の意見ではなく松井教授の見解であるかのごとき発言。しかし、本日の判決では、「松井教授の説には、都知事の説明とは異なり、おばあさんに対する否定的な言及はみられない」と指摘。発言について「教授の話を紹介するような形をとっているが、個人の見解の表明」とした(朝日)。卑怯な石原発言によって傷つけられた松井教授の名誉も回復された。

石原は法的には勝訴だったが、政治的・道義的には完敗した。醜悪な品性が剥き出しになった、と言ってよかろう。131人の原告の皆様ご苦労様。次は、このような人物を都知事にしておけるかという都民の品性が問われる番だ。さしあたっては、こんな人物と握手のポスターを貼りだしている都議候補の品性を問わねばならない。