ビラ配り被逮捕者への勾留請求却下 澤藤統一郎の事務局長日記(2005.3.6)

 

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2005年03月06日(日)

ビラ配り被逮捕者への勾留請求却下   

都教委の異常は今に始まったことではない。石原都政誕生以来の一途異常ではある。が、今春の異常さは度を超している。教育を司る部門の感覚ではない。公安部門の感覚そのものだ。これがわが国の首都の教育行政である。時代はおそるべき方向に暴走しつつあるのではないか。

「学校にビラが撒かれたら警察に通報をし、逮捕してもらえ」
都教委は、都立校の各校長にそう指示をしていた。指示中の「逮捕」は言葉の上では「対応」であるが、ニュアンスは完全に「逮捕してもらえ」である。学校敷地内であれば住居侵入、敷地外であれば道交法違反を根拠にせよ、と言う。ここには、表現の自由への配慮は一顧だになされていない。おそるべき「教育」委員会である。

当然に、「日の丸・君が代」強制反対運動を意識してのこと。そのような指示自体の存在が信じがたいこと。「教育の場に警察」は、教育の敗北を表すものとして、極力避けられてきたものである。「こんな指示に従う校長などいるはずもなかろう」と思うのが健全な常識。

その常識がいとも簡単に破られた。都教委のへんてこりん指示を、文字どおりに実践したへんてこりん校長が現れた。それによって、2人の市民が逮捕された。大きな問題である。

4日午前8時45分ごろ、東京都町田市の都立野津田高校の校門外ロータリー・バス停付近で、「日の丸・君が代」に反対するビラを配ったとして、警視庁町田署は、建造物侵入の疑いで、60歳前後の男性2人を現行犯逮捕した。

ビラ配布の場所は明らかに校門の外である。それでも校長は「被害届」を出した。「ビラ撒きの場所は校地として囲われた塀の外側ではあるが、学校の敷地の範囲内だ」と主張した如くである。それで、「校門の外の学校敷地に侵入」という奇妙な被疑事実が大まじめにこしらえられた。

都教委も都教委なら、校長も校長、そして逮捕に踏み切った警察も警察。戦前の言論弾圧体制を彷彿とさせる事態ではないか。北朝鮮から嗤われそう。これが、「教育現場」の実態なのだ。

幸い、その日の内に弁護士接見があり、5日には学校と町田署に抗議行動が組まれた。そして今日、東京地方裁判所八王子支部は、検察官の勾留請求を却下し、さらに検察官の準抗告も棄却された。人権擁護のシステムは、いまだ錆び付かずに健在だった。ひとまずは胸をなで下ろした。

それにしても、である。これは由々しき大事件ではないか。国民の自由や民主主義が危殆に瀕している証しではないか。にもかかわらずマスコミはほとんど無視。ベタで載せた朝日も、事実関係については警察の言い分だけを載せている。

教育よ、しっかりせよ。言うだけ無駄か。むなしい。
マスコミよしっかりせよ。まだ、言う甲斐はあろう。
警察よしっかりせよ。批判が大切だ。
検察官よ、都政や警察の言いなりになるな。法律家としての矜持を忘れるな。

都教委には、選挙のお灸がもつとも効くことになるだろう。まずは都議選。そして都知事を変えることによって、教委・教育長・幹部人事を総入れ替えしよう。それが、時代の暴走を抑止する途だ。