横浜市立大教員組合、「待ってください! 任期制に同意する必要はありません」

 

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2005年03月19日

横浜市立大教員組合、「待ってください! 任期制に同意する必要はありません」

横浜市立大学教員組合
 ●組合ウィークリー(2005.3.18)

待ってください! 任期制に同意する必要はありません。

15日、当局(横浜市大学改革推進本部)は、任期の定めのある雇用契約への同意を取りつけるために、同意書用紙を、松浦最高経営責任者名による説明文書など[1]を同封して、各教員に配布しました。[2]

 任期制導入を含む労働条件の変更については、当組合との交渉が始まったばかりであり、いまだじゅうぶんな交渉を経ないまま、当局が同意書用紙配布によって任期制導入の手続きに入ったことは、きわめて不当であり、誠実交渉を行なっていないと言わざるをえません。当局に対してここに抗議します。
 また、このような文書が来たからといって、任期制に同意する必要はありません。署名捺印するまえに、この新聞を読んで考えてみてください。

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 [1] 横浜市大学改革推進本部最高経営責任者松浦敬紀「任期制運用の基本的な考え方について」(3月15日付)、同「任期の定めのある雇用契約への同意について」(同日付)、当該個人の平成17年度年俸額推計表。このような文書の配布に法的問題がないか検討中です。
 [2] 八景キャンパスでは各教員自宅まで簡易書留で郵送されました。福浦の
 医学部では、所属の教授を介して配布が行なわれ、看護短大では各教員の研究室に届けられました。医学部での配布方法についても、今後問題になるでしょう。
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任期制に同意しなくてもよい

 あらためて確認しますが、任期制は本人の自由な判断にもとづく同意があった場合にのみ導入できます。そのさい労働条件を不利益変更してはならないですから、任期制に同意しなくても、雇用は継続され、給与も支払われるのです(当局も2005年度については、今年度の給与水準と変わらないとしています)。

あまりにも多い不備 ―いま同意する必要はない

 当組合が、要求書においても述べているように、現在当局が提示している任期制の内容は、さまざまな問題点が解決されておらず、あらかじめ明らかにされなければならない事項も明らかになっていません。任期制を受け入れる用意のある人にとっても、現在の案のまま同意するのは危険すぎます。

 制度内容の重要な点が明らかになっていない以上、少なくともじゅうぶんに制度の内容が明らかになるまで、同意については保留する人が多いことは当然です。当局もこのことを認めざるをえず、同意書提出の一応の期限を22日に設定しているものの、年度途中にも受け付けるとしています。今は同意しないでおいて、ゆっくり様子を見てもなんの問題もありません。

差別待遇・不利益変更は許されない

 当局は同封の文書において、任期付雇用を選んだ教員に、いくつかの点で有利な条件のあるとしています。しかし、これは任期制に同意しない教員を差別し、不利益を与えることであり、法制度上も許されることではありません。また、なかにはそもそも法制度上、実施不可能な事項もあります。このような差別は、組合に結集して闘うことによって阻むことができます。(詳細は次頁)

とにかく出さないでおくほうが

 このように、どう考えても、いま同意する必要はありません。同意してしまうと不利ですし、同意しなくても不利にはなりません。
 同意は待ってください。
 ここに挙げたようなことをよく検討したうえで、それでも同意したほうがよいと判断された場合には問題ありませんが、少しでも悩んでいる場合には、諾、否いずれの返事もする必要はありません。とにかく今は、同意書は出さないでおくほうがよいでしょう。

組合は委任状を受け付け中

 いまは回答を保留したいのに、有力な職員・教員が圧力をかけてくるということも考えられます。そのような不安のあるかたは、是非、組合執行委員長に、任期制への合意に関する委任状を提出してください(説明は本紙3月2日号にあります)。回答をしないですますことができます。

(裏面のQ&Aもごらんください。)

 

任期制についての素朴な疑問 Q&A

 

<シリーズ第1弾>

 「同意書」は22日までにあわてて回答する必要はありません。教員がまとまって行動すれば不備な条件を改善・撤廃させる力になります。ぜひ教員組合に委任状を出しましょう。

Q1「同意書」が郵送されてきましたが、もし任期に同意しない場合、雇用はどうなるのでしょうか?

 法人化によって従来の身分はそのままで(有期雇用ではなしに)公立大学法人横浜市立大学に移行することが法律によって認められています。当局も、本人の同意のない場合には従来のままでの身分移行であることは認めています。ですから、任期への同意のない場合には、身分は自動的に移行されます。
 他方、任期に同意しますと有期雇用に変更されます。その場合には、自動的に再任されるわけでなく、雇用主である法人によって再任が拒否される可能性が生じてきます。つぎのQ2で触れますが、学会でも学問的力量が認められ、社会的にも嘱望されて「普通」以上に仕事をしていた京都大学の井上先生が、任期に「同意」していたとして再任を拒否される事件が起きています。

Q2「普通にやっていれば再任する」と言っていますが、本当に大丈夫ですか?

 「普通にやっていれば再任する」と当局はさかんに言っていますが、この言葉はある事件を思い起こさせます。「普通に、まともに仕事していれば、定年まで何度でも再任される」と説明を受けて任期に「同意」させられ、このことを根拠に任期満了と言うことで再任を拒否された事件です。現在、裁判が続けられています。京都大学再生医学研究所の井上一知教授は、日本再生医療学会の初代会長を務め、再生医療の研究業績で国際的に高い評価を受ける研究者です。
 一流の専門家7人によってつくられた外部評価委員会で再任の審査が行われ、委員全員の一致で再任が認められたのです。しかし、研究所は再任を不当に拒否したのです。この事件は、その経過においてきわめて不明瞭・不当な性格のものですが、しかし、任期制という制度の危険性を世間に知らしめてあまりあるものです。

Q3 井上事件の時には、専門家の外部評価委員会が一致して可としたのにそれでも再任拒否となってしまいました。提案されている審査制度で大丈夫でしょうか?

 「普通にやっていれば再任する仕組み」にすると当局はずっと言って来ました。ですから、教員のそれぞれが任期に同意するかどうかを判断しようするときに、この「普通」ということをどのように判断するかは大変に重要な意味を持つ訳です。
 しかし、任期規程には審査の「事項」は列挙されていても審査基準は明示されていません。
 そうなると誰が何を「普通」と判断するのか。
 身分に関わる判断が明確な基準の規程にではなく、「教員人事委員会」の判断に委ねられてしまうという恣意的なものになってしまうのです。しかも、この「教員人事委員会」の構成などについても任期規程にはまったく触れられていません。ですから、任期規程においては本質的に重要な機能を担うべきこの委員会はまったく恣意的に構成され、そのうえ「普通」がさらに恣意的に判断される危険性をもっているのです。
 しかも、当局は「任期の再任審査について」という説明文書では「5段階の相対評価」を行うと言っています。となりますと、相対評価ですから、「普通」をクリアーできない教員の存在が必ず想定されることになります。つまり、再任不可の教員層が一定数常に想定されてしまうことになるのです。これは、当局の主張との整合性という点でも、きわめて不合理な制度設計といわざるを得ません。

* シリーズ第2弾では、<再任不可の時、異議申し立てはどうなるのか?><同意しないと不利になることはないのか?><任期途中での転職はできるのか?><任期付きの場合、育児や介護休業はちゃんととれるのか?><任期制で昇任はどうなるのか?>・・・等々の疑問を考えてみます。
* 任期問題、その他の雇用条件に関して具体的な疑問を沢山お持ちと思います。
どのようなことでもぜひ遠慮なく教員組合までお寄せください。

 

投稿者 管理者 : 20050319 00:09